弁護士過剰によって廃業が増えている?開業で失敗する人の割合や特徴を徹底考察!
「弁護士として開業するなら絶対成功したい!廃業など考えたくない!」
誰もがそう思って弁護士資格を取るはずです。
しかし昨今の弁護士過剰により、せっかく開業してもすぐに廃業してしまう方もいるのも事実です。
そこで今回資格Timesでは、弁護士をすぐに廃業してしまう人の特徴や割合のデータを集めると同時に、廃業しないためのコツも考察してまとめました。
弁護士として高収入を目指すために、ぜひ大いにご参考下さい!
弁護士開業で失敗する人の特徴と割合についてざっくり説明すると
- 弁護士開業の失敗には弁護士過剰など多くの原因がある
- 士業で開業した人のうち6割程度が失敗しているというデータがある
- 弁護士として開業して失敗するとワーキングプアになる危険もある
- 成功するためのコツを知ることが大切
弁護士資格取得後の最終目標
弁護士として仕事をする場合、法律事務所で弁護士として勤務する、もしくは独立開業の2択がメインとなります。
とは言え弁護士資格を取得しますと、ほとんどの方が法律事務所に勤務することになります。 いきなり開業する方はかなり稀で、大半の方がまずは法律事務所で経験を積む選択をします。その先に最終的な目標として開業を掲げている方が多いというわけです。
弁護士として開業するとなるとかなりの高収入を狙うことができ、自分で労働時間を調節できるといったメリットがあります。弁護士の資格の一番の魅力はここと言えるので、多くの方が開業を目指して弁護士資格にチャレンジすることでしょう。
しかし一方で、廃業のリスクもかなり大きいのです。
弁護士の開業が失敗する割合は?
弁護士として開業しても失敗してしまう場合があるとして、その割合を考えて行きたいと思います。
弁護士が開業する際に失敗の確率が高いのは以下のような状況の時です。
- 独立開業するノウハウを持っていない場合
- 同業者や他士業の方との人脈がない場合
ちなみに業界全体で見ますと士業全体では6割が、独立しても最終的に廃業してしまうとされています。
近年の弁護士廃業の理由としては、収入そのものを思うように得ることができず、生活を維持できないという切迫した内容も多くなっています。
廃業者数は高止まり
廃業者数は2006年の141件から2014年の389件にまで2.5倍近く上昇し、その後, 若干の変動をしながらも、高止まりの現状が続いています。
年度 | 請求による取り消し(件数) |
---|---|
2006 | 141 |
2007 | 182 |
2008 | 198 |
2009 | 206 |
2010 | 199 |
2011 | 262 |
2012 | 306 |
2013 | 345 |
2014 | 389 |
2015 | 332 |
2016 | 360 |
2017 | 358 |
2018 | 379 |
2019 | 342 |
2020 | 296 |
2021 | 360 |
廃業の原因は開業の失敗だけではない
士業の6割が廃業しているというお話をしましたが、廃業の原因は開業の失敗だけとは限りません。
弁護士を始めとした士業の廃業に当たっては、高齢により引退するパターン、もしくはご本人が交通事故などで死亡してしまうなど、何らかの理由で仕事が続けられなくなるパターンもあります。
弁護士の開業が失敗する主な原因
では改めて、弁護士の開業が失敗に終わってしまう原因を考えていきます。
弁護士の開業で失敗する方の特徴は何種類かありますが、それぞれについて詳しく解説してまいります。
弁護士の数が過剰?
弁護士が開業に失敗する原因として一番に挙げられるのは弁護士の数が増えすぎたことです。
1949年に日弁連(日本弁護士連合会)が設立された当初、日本国内の弁護士の数は5,800人ほどでした。しかし2022年には全国で4万4千人を超える数の弁護士が存在するようになっています。
単純に計算しても1つの都道府県に対して900人以上もの弁護士がいることになります。つまり同業者同士の競争が激化していることが廃業の原因のひとつと考えられるのです。
事件の数の減少
弁護士の数が多くても仕事があれば廃業には至らないはずです。弁護士の仕事の多くは事件から発生しますが、事件の数はどうなっているのでしょうか。
民事事件の訴訟件数の推移を見ますと、ここ10年ほどの民事事件の件数は緩やかに減ってきています。2010年には222,594件だったのが2020年には133,427件になっています。
一方で弁護士の数を見ますと、2010年から2020年までに約13,000人ほど増えています。つまり民事事件の数が減っているにもかかわらず弁護士の数は大幅に増えているのです。弁護士一人当たりの仕事量が減っているのは間違いないと言えるでしょう。
無意味なプライドがある
物理的な問題以外に、弁護士特有のプライドが廃業に結びついてしまっている可能性も考えられます。
弁護士資格を取るためには司法試験に勝ち抜いた上、さらに司法修習という1年にも渡る過酷な研修を受ける必要があります。ここを通過してきたというプライドから、他者の助言に耳を傾けない方も少なからずいるようです。
しかし独立して少人数で開業する以上、周りの同業者との意見交換は非常に重要です。また、横のつながりだけでなく先輩から意見をいただくことも大切です。
無駄なプライドを捨て柔軟な対応を取ることができるかどうかも、開業を成功させるための鍵となるでしょう。
全て自己解決しようとしてしまう
先ほど挙げた内容とも共通することなのですが、弁護士資格をお持ちの方の中には全てを自己解決しようとする方も多いようです 。こういう方は開業によって問題が生じても他者に頼ることをなかなかしません。
もし人手を増やすことで解決できるのであれば、従業員を増やして仕事を分散させるべきです。事務的な内容であれば弁護士ではなく簿記専門の方を雇うことでも解決できるでしょう。
また弁護士の中にも専門分野が色々あることを忘れてはいけません。ご自身が苦手とする分野の仕事については、その分野を得意とする弁護士に頼るなど、お互いに交流し助け合うことも重要です。
このように周囲の力をうまく使うことを考慮に入れられない場合、廃業に追い込まれるリスクも上がってしまうのです。
地道にタスクをこなせない
弁護士として開業した時、最初からトントン拍子に成功する方も稀にいます。しかしはじめから成功するような場合、実力もそうですが運が味方してくれた可能性も大いにあります。
一度成功を収めてしまいますと次からも同じ状況を期待してしまいますが、成功したことに慢心せず、常に地道な努力を続けることを忘れてはいけません。また、もし周りに一時的な成功をした方がいたとしても、ご自身にもその幸運が訪れることを期待するのは危険です。
大きな成功はあくまでも運です。基本的には日々コツコツ努力を続けたことが土台になり、それが事業の拡大につながっていきます。持続的な成功や収入は努力の先にしかありません。
地道にタスクをこなしていくことが、開業成功に一番必要であるということを念頭に入れておきましょう。
人間関係がうまくいかない
弁護士として開業する時、法律家としての能力はもちろん必要です。 しかし開業するならばご自身で仕事を取らなくてはなりません。顧客の獲得、つまり営業活動もご自身でする必要があります。
弁護士の資格を取るために人との交流を最小限にして勉学に取り組んできた方も多いかもしれませんが、人とのコミュニケーションがうまくいかなければ潤沢に仕事を取ることはできません。開業するならば人間関係を広げる努力も必要になります。
人間関係を疎かにして常に受け身の姿勢で過ごしてしまいますと、徐々に仕事は減っていきます。その先に廃業のリスクも大きく見えてきていまいますので、ぜひご注意ください。
適性がそもそもない
弁護士開業が失敗する時の原因として一番問題になるのがここなのですが、そもそもご自身に弁護士としての適正がなかったという理由も考えられます。
人にはそれぞれ、仕事に向き不向きがあります。弁護士資格を取ることができたからと言って、必ずしも弁護士に向いているとは限らないのです。
この点を判断するのは非常に難しいですが、ご自身としてどう思っているかが一番判断材料になるでしょう。不安や心配があったとしても、「できる」という自信が自分の中に常にあれば、いかなるハードルもクリアしていけるはずです。
もしそうでなかった場合は、他の道を考える必要もあるのかもしれません。
「即独(そくどく)」の難しさ
弁護士として登録して、すぐに自分で弁護士事務所を設立することは「即独(そくどく)」と呼ばれます。
即独弁護士は事務所の経営次第で上限なく稼ぐことができる点は魅力です。また、自分で受けた仕事に対して大きな責任を持って、主体的に取り組むため、弁護士として大きく成長するチャンスがあります。
一方で、これまで法律の学習ばかりしてきた弁護士は経営やマーケティングといった点で苦戦する場合が多いです。
法律面以外の手腕が問われる点が即独の大きなハードルと言えるでしょう。
廃業はしないが飛躍できない人の原因
ここまでは弁護士として開業しても廃業に追い込まれてしまう方の特徴をご紹介してきました。
しかし弁護士の中には、廃業とまではいかずともなかなか飛躍できない方も一定数存在します。飛躍できない原因についても探っていきましょう。
弁護士活動がメインではない
弁護士としてなかなか飛躍できない方の特徴のひとつとして、本業以外にも活動をしていることが挙げられます。
開業してから仕事が軌道に乗るまでは、事務所を維持するための十分な収入が得られないこともあるでしょう。アルバイトなど何かしらの副業が必要になる場面もあるかと思います。
しかしその場合でも、本業に割く時間を一定量確保するなど、計画的にやっていかなくてはなりません。貧乏に怯え、副業に時間を取られるあまり本業の時間がなくなり、結果として弁護士としてのビジネスを成功させられないという例も多いのです。
弁護士という素晴らしい資格を持ちながらもワーキングプアになってしまう事例もあります。この点はご自身で軸を持ってバランスを取らなくてはなりません。
不適切な値段設定
弁護士として開業するからには仕事の価格設定もご自身の裁量で行う必要がありますが、どのような仕事でも適正価格というものがあります。ここを把握していないことで経営が上手くいかない方もおられるようです。
異常なまでの高額報酬とするのが良くないのはほとんどの方がお分かりかと思いますが、逆に安さで勝負することも経営の観点からは望ましくありません。弁護士は大量生産の商品を売る仕事ではありませんので、価格を安くして顧客を獲得しても、膨大な業務を安い価格で請け負い続けることになります。
結果的に労働量と対価が見合わなくなり、貧乏暇なし状態になってしまいます。そしてそこから値段を上げようとしてもそれまでの顧客との関係が維持できなくなり、ワーキングプアからの脱却も難しくなるでしょう。
現在世の中にある適正価格が何故存在しているのかをしっかり考慮する必要があります。
プロ意識を持っていない
どのような仕事にもプロ意識は大切ですが、弁護士の場合は特にここが重要となるでしょう。
弁護士として持っている知識を使い、どのように人の役に立てるかを常に考えましょう。その上で適正な対価を頂くことで責任感を持つこともできます。このバランスが欠如しますと、顧客の心が離れてしまいます。弁護士の仕事は人から頼られて成立するものですから、ぜひプロ意識は特に大切にしてください。
またプロ意識が欠如する例としては、女性が結婚や出産の際に「弁護士は副業」と考えてしまうことも挙げられます。ご自身の結婚や出産は確かに大切なことですが、仕事を依頼してくる方にとっては人生がかかっているのです。
顧客を大切にできない方は、弁護士に向いていないと言えるでしょう。
開業を失敗させない為には?
弁護士開業を失敗に終わらせないためには、どのような心掛けで臨むべきなのでしょうか。
以下にご紹介することをよくお読みいただき、今一度開業への意識を見直してみてください。
成功者の考え方
弁護士として開業するかどうかに関わらず「成功者の考え方」を知ることは全ての方にとって重要です。
常に前向きでいること
どのような困難にもめげず、常に前向きでいることは成功者となるための鉄則です。
何かひとつの目標を成し遂げるためには、毎日色々な問題が起きることでしょう。成功の直前まで進んでいたにも関わらず最後の最後で全てがダメになってしまうこともあるかもしれません。10年単位で続けてきたことが一向に日の目をみないこともあるでしょう。
こうした時に、「できない」という事態だけを見つめてはいけません。どうしてできないのかではなく、常に「どうしたらできるようになるのか」を考え続けることが大切です。ポジティブ思考は全ての成功者に共通している考え方です。
人の意見を取り入れすぎない
他人の行動や経験を参考にすることは大切ですが、あまりに左右され過ぎるのも問題です。
成功哲学は色々な先人がそれぞれの経験から提示していますが、それはあくまでもその人の成功哲学です。例えばご自身の尊敬する先人が毎日コーヒーを飲んでいたからと言って、ご自身もそれを真似して成功できるわけではありませんよね。
実践してみることは大切ですが、それが全てではありません。そこからご自身なりの経験を積み、自分自身の独自の道を見つけることが大切です。それによって他の人との差がつけられるようになるのです。
集客にも積極的に取り組む
先ほども少し触れましたが、受け身の姿勢で居続けても成功できる可能性は低いです。ぜひ、顧客は待つだけでなくご自身で開拓していくスキルを身に付けましょう。
例えば弁護士として開業するに当たっては、その地域にどれだけアピールできるかが重要です。チラシや広告、DM、名刺など使えるものは全て使って集客をしていきましょう。また現代ではHPを持つことも顧客獲得だけでなく信頼を得るためには重要です。
いかに上手に集客をするかは、開業する方にとって大きなテーマとなります。
長期的な視点を持つ
独立開業は雇われるスタイルと違い、一時的な視点で考えることが難しい働き方です。
雇われている方の場合は毎月ある程度決まった額の収入があるものですが、開業した場合、一時的に収入が途切れることは珍しくありません。ここで不安になるあまり弁護士業務以外の安定した副業に時間を割きすぎてしまうと、弁護士として必要な集客や営業活動、人脈づくりなどがおろそかになってしまうでしょう。
ぜひ長期的な視点を持ちながら、今やるべきことをしっかり探っていってください。
どんな姿勢でやっていくべき?
弁護士として独立開業するにあたっての目指すべき姿勢も知っておきましょう。
カスタマーファースト
カスタマーファーストとは、顧客第一の姿勢のことです。
弁護士として仕事をしていく中では、同じような案件の仕事も増えてくることでしょう。しかし仮に事件内容が似ていても、顧客の数だけ解決方法のバリエーションがあります。経験値に頼りすぎるあまり、顧客が求めていない解決法に進んでしまった場合、顧客から不満を持たれる原因になります。
例えば、その案件についてできるだけ安く済ませたいのか、もしくはスピードを重視するのか。顧客によって要求はそれぞれ異なります。このヒアリングを怠らずに顧客の要望にしっかり応えましょう。
これは営業の際も同じです。ご自身のアピールしたいことだけを押し付けるのではなく、相手の求めていることも臨機応変に読み取り、提供していくことが重要でしょう。
最先端の技術を取り入れる
弁護士の仕事はある程度のPC入力以外はアナログなものだと思われがちですが、近年は機械化の進行やAIの登場により、弁護士の仕事の一部が機械に移行されようとしています。例えば、あまり複雑ではない事件についてはAIが結論を出すことで解決とする事案も出てきています。
こうした技術も、上手く使えば業務の効率化に効果が期待できるでしょう。最先端の技術に怯えることなく、柔軟に、積極的に取り入れていくことも弁護士として生き残っていくためには重要なことです。
年齢の高低に関わらず常に前進していく気概を持つことが、弁護士開業を成功させるためには必要なのです。
廃業後のキャリアは?
ここまでご紹介してきた「失敗するパターン」もしくは「成功のコツ」を全て把握し、日々努力を重ねていけば弁護士開業が失敗する可能性は小さくなります。
しかし、何らかの事情で廃業しなくてはならなくなるケースももちろんあるでしょう。開業する際は、いつか訪れるかもしれない廃業後についてもしっかり考えておく必要があります。
ここでは弁護士を廃業した後のキャリアについてをご紹介いたします。
廃業した弁護士の転職先
独立弁護士を廃業した後の転職先としては、以下のようなものが挙げられます。
法律事務所に勤務する
弁護士開業に失敗したと言っても、弁護士の資格を失うわけではありません。法律事務所に勤務して弁護士を続けることは選択肢のひとつとして考えておきましょう。
独立弁護士として活動した経験は、弁護士事務所でも大いに活かされるはずです。法律事務所側としても、これまでとは違った視点で物を見られる弁護士が入ってくることは、全体としての刺激になるでしょう。
ただし弁護士事務所の求人はあまり多くありません。特に地方ですと求人を見つけるのに苦労するかもしれませんので、この点はご留意ください。
インハウスローイヤーとして就職する道も
インハウスローイヤーとは「企業内弁護士」のことです。弁護士事務所に勤務するのではなく一般企業の法務部や総務部などに就職し、法律家としての知識を活かすことができます。
大手企業は事業内容が複雑ですから、法務部や総務部では法律について深い知識を持っていることが要求されます。弁護士資格を持っていますとこういった企業への転職や就職にはかなり有利になるでしょう。
実務の面でも、独立弁護士として働いた経験、また弁護士資格を取った際の勉強内容などが活きてくるはずです。
弁護士開業で失敗する人の特徴と割合まとめ
弁護士開業で失敗する人の特徴と割合まとめ
- 開業する人の6割ほどがうまくいっていない
- 弁護士開業に失敗する人の特徴を知ることが廃業回避につながる
- 開業には一時的な収入減や貧乏な時期もあることも知っておくこと
- ポジティブ思考や前進する意欲を忘れずに
- もし廃業した後の道もあらかじめ考えておくと良い
弁護士廃業というとショッキングに思えてしまいますが、地道に努力をしていけばリスクは回避できます。
ぜひ失敗や困難を恐れず、全てに立ち向かっていく気概で弁護士開業を成功させてください!