【2015年社労士試験】合格率2.6%の背景と今後の試験傾向
2015年11月6日、2015年度社労士試験の合格発表当日に社労士試験においてこれまでになかった大波乱が起こりました!
なんと、2015年度社労士試験の合格者数が2014年度の4,156人から1,051人に一気に激減してしまったのです!
受験生だけでなく、大手資格学校の職員でさえ驚きを隠せなかったのではないでしょうか。
単純に計算をすれば、前年の合格者のうち4人に1人だけしか合格できなかったのです。
その年の社労士試験に落ちてしまった受験生は、さぞ自分の境遇を恨んだことでしょう。「去年受けてたら受かったのに⋯」と思った受験生も多かったのではないでしょうか。
さらに、2015年度の受験者数に対する合格者数の割合である合格率で見ても2014年度の9.3%から2.6%に激減という結果になりました。
以上の事実から 「社労士試験に合格するのは難しくなってしまったの?」
という風に思った人も多いかと思います。
そんな方のために今回この記事では、2015年の社労士試験で何が起こっていたのか、今後の社労士試験の難易度はどうなっていくのかについて詳しく見ていきます!
2015年社労士試験をざっくり説明すると
- 単純に合格者数が激減し、最難関国家試験になった
- 社労士法改正・救済機能の不全が要因
- 2015年以降は本来の合格率へと回復している
2015年は社労士が最難関の国家資格に!
これまでの傾向と比較して
2015年を含めた10年間の社労士試験の受験者数、合格者数、合格率の変動を下の表を用いて見ていきましょう。
西暦 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
2009 | 52,983 | 4,019 | 7.6% |
2010 | 55,445 | 4,790 | 8.6% |
2011 | 53,392 | 3,855 | 7.2% |
2012 | 51,960 | 3,650 | 7.0% |
2013 | 49,292 | 2,666 | 5.4% |
2014 | 44,546 | 4,156 | 9.3% |
2015 | 40,712 | 1,051 | 2.6% |
2016 | 39,972 | 1,770 | 4.4% |
2017 | 38,685 | 2,613 | 6.8% |
2018 | 38,427 | 2,413 | 6.3% |
ご覧のように、2015年の合格率が格段に低いです。特に前年の2014年と比べると合格者数は4分の1となっているので反響は大きかったのではないでしょうか。
2014年と2015年では受験者数はほとんど同じなので、合格者の数合わせで合格率が低くなったというわけでもありません。
単に合格者数が激減したのです!
他の資格と比較して
これだけ合格率が低い社労士試験ですが、そもそも社労士試験の合格率は、他の主な資格の合格率と比べてどうなのでしょうか?
そこでそれぞれの資格の最近5年(2014年〜2018年)の平均合格率を比べてみましょう!
資格試験 | 合格率 |
---|---|
司法試験 | 24.7% |
公認会計士 | 10.7% |
行政書士 | 12.0% |
社労士 | 5.9% |
もちろん受験者層の違いなどもあるので合格率だけで判断はできませんが、社労士試験に合格するのは他の難関資格と同じくらい難しいのは間違いないと言えるでしょう。
今回の社労士試験の合格率を下げた理由
ではなぜこのようにいきなり社労士試験合格の難易度が上がったのでしょうか?
考えられる理由はいくつかありますが、その中でも特に有力なのは2015年に社労士法が改正されたことです。
全国社会保険労務士会連合会は、今まで社労士の権限を拡大しようとつとめてきました。
特にこの年に行われた改正では、弁護士とともに法廷において発言できるという補佐人制度が設けられ、社労士が民事において大きな権限を持てるようになり、それによって社労士に求められる内容が増えました。
すなわち、社労士の格が上がり今まで以上に社労士に求められる能力が増えたのです。
救済がうまく機能していなかった
もう一つ考えられる理由としては、社労士試験の救済機能がうまく機能しなかったことが挙げられます。次にこの内容について解説します!
社労士試験の形式
救済について説明するために、まずは社労士試験の形式について簡単におさらいしましょう。
毎年8月の第4日曜日に開催される社労士試験ですが、そもそも試験形式や合格基準はどのようになっているのでしょうか?
社労士試験は選択式と択一式の二つの出題形式に分かれています。
合格するためには選択式・択一式それぞれの合格基準を満たさなければなりません。(その年の試験の難易度によっては基準が変わる可能性はあります。)
まず選択式ですが、これは文章中の5つの空欄に当てはまる語句を20個の選択肢から選ぶ試験です。文章は労働科目、社会科目からそれぞれ4問ずつ、計8問出題されます。
配点は各問題当たり1点、すなわち各科目あたり5点満点の合計40点満点の試験です。
選択式試験の合格基準は、総得点が24点以上であり、かつ各科目3点以上であることです。ただし、雇用保険法と健康保険法の2科目の点数はどちらも2点以上でも良いようです。
次に択一式ですが、これは5つの文章の中から1つを選ぶ試験です。労働科目、社会科目からそれぞれ35問出題されます。
配点は各問題当たり1点、すなわち各科目あたり10点満点の合計70点満点の試験です。
択一式試験の合格基準は、総得点が45点以上であり、かつ各科目4点以上であることです。ただし、厚生年金法に関する問題は3点以上であっても良いようです。
つまり、選択式試験・択一式試験ともに総得点と各科目点があり、いずれも基準点以上の得点をとると合格となります。
例年は総得点は60%〜70%が基準点で、科目点の基準は選択式が3点、択一式が4点で、総得点が基準点を満たしたうえで科目点も全て基準点に届かないと合格することができないということになります。
全分野まんべんなくしっかりと学習しなければならず、なかなか厳しいテストです。
社労士試験の救済
このように厳しい社労士試験ではありますが、救済措置というものが存在します。
この救済措置は主に選択式の試験に導入されていて、択一式の試験にはほとんど導入されていません。
逆に選択式の試験では救済措置がほとんど毎年行われていて、ある科目の基準点を低くすることで救済するという形をとっているようです。
選択式の基準点は3点以上ですが、救済措置が取られた場合、2点ないしは1点にまで点数が下がることもあります。
2015年に救済されるべきだった科目
2015年の社労士試験で救済措置が取られた科目は労一・社一・健保・厚年の4科目でした。
しかしここで注目しておきたいのは、労災の科目に救済措置が取られなかったということです。
なぜかというと、2015年の社労士試験における労災の平均点は2.2点で、2点以下の受験者の割合が90%と、救済措置が取られて当然の状況にあったからです。
実際、ほとんどすべての大手資格学校が労災において救済措置が取られると予想していました。
以上から、この年の労災は救済措置が取られるべきだったと言い切ることができるでしょう。
例年の救済措置の傾向を見るには以下の記事がおすすめです。
最近は合格率が上がってきた!
2015年に突如として急降下してしまった社労士試験の合格率ですが、近年は回復傾向にあります!
実際、2015年以降の合格率を見てみると
2.6%⇒4.4%⇒6.8%⇒6.3%⇒6.3%
と、本来の合格率平均に近い値で推移していることが分かります。
これにはいくつか理由があると考えられますが、まず挙げられるのは、特定社労士のしくみができたことによって権利拡大をしつつ社労士自体の合格率は据え置くことに成功したことが挙げられます。
2015年以降にそうした仕組みを整えることによって、悲劇が繰り返されなくなるような環境の整備をしてきたのです。そしてその仕組みはもうすでにきれいに設けられました。
よってこれから社労士試験を受けようとするにあたり
「2015年のように、合格率がいきなり低くなって試験に落ちたりしたら後悔するから受験するのをやめておこう」
などと考える必要はないということが分かります!
2015年の合格率を気にして社労士試験を受けるのをやめる、といった行動はもったいないと言えるので安心して受験に挑みましょう!
むしろ、2015年のように合格率がいきなり下がることはないだろうから安心して試験を受けようと思えるような強いメンタルを持つとよいかもしれません。
今後の試験傾向
社労士法第8次改正で社労士の格が上がってきている近年、社労士に求められるものは確実に多くなりました。
そのことにより2015年の試験では過去最低の合格率となってしまいましたが、ここ2年の合格率は6~7%に落ちついています。
この合格率は今後も続くと考えられます。 よって今後も合格率は6~7%となるでしょう。
もう一つ重要な点として、受験者のレベルが上がっていることが挙げられます。
2015年の社労士試験の合格率の低さを見た受験生たちがより熱意をもって勉強に取り組むようになったのです。
2018年の社労士試験の合格者のうち、最低年齢は20歳、最高年齢はなんと84歳でした。
このように社労士試験のライバルはとても多いといえます。
2015年社労士試験と今後の試験傾向まとめ
2015年社労士試験と今後の試験傾向まとめ
- 社労士の権限拡大が合格率低下の背景にある
- 社労士試験の受験者レベルは上がっている
- 2015年のような合格率の急落を不安視する必要はない
ここまで社労士試験の傾向を見てきました。2015年の合格率2.6%はひときわ目を引きますね。
法改正に伴い社労士に求められるものが大きくなったというのが大きな要因でした。今後も社労士には多くのことが望まれるでしょう。
しかし裏を返せば、それだけ社労士は魅力的だということが言えます。
若い人からお年寄りまで様々な人たちが受験し取得を目指している社労士の資格ですが、ぜひ自分の力で取得を目指してみてはいかがでしょうか?
取得すれば必ず達成感を得られるでしょう!皆様の検討を祈っております!