社労士の仕事はAIに奪われてしまうのか|AIでなくなる仕事・残る仕事
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社労士
のんびり社労士いけい
「AI社会が広がる今、社労士の仕事に将来性はあるの?」
現在社労士の方、またはこれから社労士を目指している方には、このような悩みを抱えている人も多いのではないでしょうか。
たしかにAIのおかげで現代社会では、多くのことが簡略化され便利になりました。一方でAIで便利になればなるほど、書類作成業務が多い社労士は仕事を奪われそうで安心していられませんね。
しかし心配はありません。進む方向さえ間違わなければ、今後も社労士の仕事は安泰です。
この記事では、社労士の仕事とAIの関連性を改めて確認しながら、「どんな社労士ならAI社会でも残り続けられるのか」ということをお伝えしていきます。
社労士とAIについてざっくり説明すると
- 社労士の仕事の一部はAIに代替される
- AI社会は社労士の需要をむしろ高める可能性がある
- 今後重要なのはより専門的なコンサルティング力
社労士の仕事はAIでどう変わる?
社労士の仕事はAIによって減少していくと言われています。なぜなら社労士の仕事で多いのは書類、手続き代行業務です。人の社労士であれば稀にミスしてしまうことがあっても、AIはノーミスでスピーディーに業務をこなしてしまうからです。
ただ、社労士の仕事すべてがAIに奪われ減っていくのかと言えば、実はそうではありません。人の気持ちを理解し、寄り添う力というAIにはないものを、ヒトである社労士は持っています。
そのため将来的にAI社会が進化すればするほど社労士の仕事は減りますが、その一方で、新たな業務を生み出す方向へと歩むことになるといえるでしょう。
AI社会で減っていく社労士の仕事
多くの人に便利さをもたらすAIですが、それによって仕事が減っていく社労士にとっては死活問題ですね。とはいえ今の世の中がAIを必要としているのですから、社労士としては今後の展望を考えねばなりません。
そのためにはまずは現状を把握することが大切です。社労士を取り巻く現状と、減少する仕事に対しての問題点について1つ1つ見ていきましょう。
社労士の事務手続きが減少する理由は?
AI社会において社労士の事務手続きが減少していくのは間違いありません。その理由は、AIが人よりも正確で早い業務ができる情報処理能力の高さを持っているからです。
今後その能力はますます高くなると言われていますが、社労士の事務手続きの仕事が減少することについては、2つの問題点が挙げられます。
電子申請の促進
これまで社会保険や労働保険などの各手続きをするためには、同じ情報の記入や登録を何度もしたり、様々な窓口を周ったりして申請をしなければなりませんでした。
しかし厚労省や経産省、再生事務局等では2018年度からこれらの手続きについて、電子申請を活用した各届け出時のID・パスワード方式の導入や、各手続きが1回で出来るオンライン・ワンストップ化を促進しています。
つまりAIに代替えすることで、手続き業務をするためにかかっていた無駄な業務や時間を省くことができるわけです。そのため社労士の事務手続き業務は減少するということになります。
参照:働き方改革をめぐる中小企業向け対応策のアクションプラン(5. 行政手続の簡素化)
手続きの簡略化
社会保険や労働保険、労働問題関係の手続き、従業員データの修正管理、帳簿作成などの紙ベースの手続き業務は、単純作業で面倒な業務です。
しかし既に述べたように、これらの仕事にAIを利用すれば、正確にスピーディーに、簡単に手続き業務の簡略化ができるようになってきています。
そのため人である社労士よりも優秀な処理能力が期待できますので、社労士業務の大半を占めていた事務手続き業務は減少するということが言えます。
中小企業数の継続的減少
社労士の顧客は主に中小企業です。そのため社労士の事務手続き業務量は中小企業数と比例するわけですが、現代社会ではその大切な中小企業が以下のように年々継続して減少しています。
西暦 | 中小企業の数 |
---|---|
2004年 | 432.6万 |
2009年 | 420.1万 |
2012年 | 385.3万 |
2014年 | 380.9万 |
2016年 | 357.8万 |
10年前と比べれば51.7万、5年前と比べても39.2万という減少です。つまり、社労士の仕事もそれに伴い減少していますので、社労士の事務手続きは減少しているということになります。
単純な説明業務も減少していく
AI社会で社労士の仕事が減っていくのは、社労士が企業者から受ける単純な説明業務が減少するからという理由もあります。なぜなら仮に「労働トラブルの発生」「従業員の労働時間」「賃金の決め方」などのような簡単な質問であれば、AIを使った方が簡単に済むからです。
社労士の仕事には社員の採用、就業規則、給与規定、退職金などの労働管理や、社会保険、年金などの相談指導業務もあります。
これは社労士の3号業務の中に入る大切な仕事なのですが、相談する側にとってみればこれがAIに代替えされれば便利さを感じることが少なくありません。そのため将来的には企業側もFAQのような簡単な質問に関しては、AIを使ったサービスに代替していくでしょう。
AI社会で需要が高まる社労士業務は?
AIで消える仕事として社労士は不安視される士業ですが、「本当に社労士の仕事はAIに奪われてしまうのか」と言えば、そうでもありません。
たしかに書類作成や手続き代行などを主にしていればAIで消えてしまう可能性はあります。
しかし、社労士の業務にはほかにも複雑なコンサルティング業務があります。これはAIに期待することは難しい、人ならではの仕事です。そのため今後は、高いコミュニケーション能力が求められるコンサルティング業務を主にすることが、AI社会で需要が高まる社労士だといえます。
3号業務の需要は拡大
AI社会において社労士の3号業務の需要はむしろ拡大していきます。
現在では働き方改革が進行しており、今後ますます多くの労働問題が発生する可能性が高いです。それに伴い、経営者からの相談も増えていくからです。人事労務のコンサルティング業務はこれから一層重要性を増していくでしょう。
AIによって労働者の働き方が変化していけばいくほど、そこに対応できる社労士の業務は増えていきますし、増やしていかねばならないのです。
この3号業務の存在のおかげで、社労士はAI時代でも比較的将来性が高い士業となっています。
社労士の将来性についてより詳しく知りたい方は以下の記事を参考にしてください。
社労士+αの資格で自分の強みをアップさせる
将来的にも需要の高い社労士でいつづけるために、社労士とほかにプラスαの資格を身に着けコンサルティング力の向上を測るのも良いでしょう。
今後社労士には3号業務に力を入れ、対人能力やコンサルティング能力が高い人が求められます。ダブルライセンスはそれらの実力をさらに伸ばし、社労士としての自分の強みをアップさせる有効な手段です。
社労士とのダブルライセンスに向いている主な資格を紹介します
- 企業との関りが深く信頼されやすい中小企業診断士
- 1号業務・2号業務に強くなり、コンサルティング能力も伸ばせる税理士
- ライフプランのスペシャリストと企業のコンサルタントとして、実力を発揮しやすいFP
- 経営者や労働者の心の健康を守りながら、コンサル業務ができるメンタルヘルス・マネジメント
社労士とAIの関係性まとめ
社労士とAIまとめ
- 社労士の主な手続き業務はAIに代替されていく
- AIに代替されない仕事は3号業務であるコンサルティング
- 3号業務の需要はAI社会においてむしろ増大する
社労士は企業にとって、大切な相談役となる存在です。そんな存在がAIに仕事を奪われ消えてしまうことはあってはなりませんし、今後そうなってしまう可能性は低いでしょう。
これから社労士になるという人は、不安を抱えることなくAIを使いこなすくらいの気持ちで社労士の仕事ができれば良いですね。