社会福祉士は仕事がないって本当?実際の需要や就職の事情・高収入を得る方法も紹介
「社会福祉士になりたいけど、仕事がないって本当?」
「社会福祉士は大変な仕事なのに、需要はあまりないの?」
こんな疑問や不安を持っている人は多いのではないでしょうか?
実際、社会福祉士は食えないといわれることも多々あります。
この問題は社会福祉士で就職をしたいと考えている人にとっては重要で、ぜひ知りたいことですよね。
そこでこの記事では、「社会福祉士は仕事がないのか」や「どの程度の需要があるのか」「社会福祉士で高収入を得る方法」などを詳しく解説していきます。
もちろん、社会福祉士の難易度も紹介するので、興味がある人はぜひ読み進めてください。
社会福祉士は仕事がないについてざっくり説明すると
- 社会福祉士は仕事が十分にある
- 「食える仕事」に変わってきている
- やり方次第では高収入が得られる
社会福祉士は本当に仕事がないのか?
結論からいって社会福祉士には仕事がたくさんあります。にもかかわらず「社会福祉士は食えない」ともいわれています。
ではなぜ社会福祉士は仕事があるのに食えないのか、その根拠を詳しく解説していきます。
社会福祉士の仕事内容
社会福祉士の仕事は視覚や聴覚などの身体障害者や生活困窮者、さらにはひとり親の家族などを対象に、日常生活をスムーズに送るための相談を受けたり支援をしたりすることです。
その範囲は身体的・精神的・経済的にハンディキャップがある人すべてなので、高齢者から子どもまでありとあらゆる人が対象となります。
各医療機関と連携をして患者や家族とを結び付ける存在として大きな役割を担っています。
精神疾患になる人数が多い
社会福祉士は上記の通り、仕事の範囲が広く忙しいです。そのため最近はうつ病などの精神疾患になる人数が増加傾向にあります。
厚生労働省によれば、「社会福祉、社会保険、介護事業」における精神疾患による労災請求件数は、2014年度時点では140件でしたが、2022年度には327件にまで増えています。
また、介護サービス職に就いている人の精神障害も増加してきています。その中でも「燃え尽き症候群」は特に深刻です。社会福祉士が直面する代表的な精神疾患といわれています。
次から次と相談者が来るので心身のエネルギーが消耗しきって疲労感などから急に意欲が低下してしまうのです。
今社会福祉士はそれほど仕事が多い資格・職業といえるでしょう。
実務未経験の場合は不利
社会福祉士の需要は多いので未経験でも就職は可能です。しかし、実務経験がないと実際に働いたときに不利に感じてしまう場面も多々あります。
例えば、実務経験がないと援助手法の知識や技術がないことを痛感させられるだけでなく、人間性など自分の嫌な部分にも気づかされるからです。これが離職の要因になることすらあります。
そのため、経験をある程度積んで知識や技術、人脈などの「引き出し」が増えてくるまでは大変です。それまでは、実務未経験者は仕事と人間力を磨く相当の覚悟と努力が求められます。
実務未経験者でも仕事はありますが、一旦仕事に就くと実務面でかなりハードといえるでしょう。
理想とのギャップに挫折して離職してしまう人も
社会福祉士は離職してしまいやすいともいわれています。その理由は施設や事業所で勤務をしていると人間関係のストレスが大きく影響してしまうからです。
どこの職場でも上司や同僚などとの人間関係に関するストレスはあります。しかし、社会福祉士の場合は悩みやトラウマなどを抱えている援助対象者と毎日接して話を聞いています。
その影響によって自分自身に起こった問題を悲観的に考えてしまいやすくなるのです。それによってトラブルに巻き込まれると離職してしまおうと考えやすくなってしまうのです。
他にも理想と現実とのギャップも離職要因の1つとしてあります。希望を抱いて社会福祉士になったものの思うようにいかないケースが多々あります。
現実を思い知らされて挫折し、悲観的になってしまうあまり離職してしまうのです。
資格取得後も実務経験を積み続ける必要性
ここまで説明してきた通り、社会福祉士は競争社会で知識や技術、人間力を高めた人間がものをいいます。つまり、資格だけでは就職できても仕事をスムーズに勤められません。
資格を取得して施設や事務所に就職し、長い実務経験を積んでようやく仕事ができるようになるのです。それまでは離職せずに粘り強く自分磨きをする必要があります。
このことから途中で挫折して離職してしまう人が多いので「食えない資格」といわれてしまっています。しかし、社会福祉士を求めている人は多く決して食えない資格ではないのです。
社会福祉士は「食える」といえる3つの理由
「社会福祉士になっても、食っていけなかったらどうしよう…」
こんな不安を持っている人は多いですよね。社会福祉士を目指していると必ず「社会福祉士は食えない資格」「社会福祉士には仕事がない」といわれているからです。
しかし、そういった声のほとんどは間違いで実は需要が多いので「食える」資格です。
そこで、ここでは社会福祉士が「食える」資格である理由を3つ紹介していきます。
インターネット上の意見が正しいとは限らない
社会福祉士はすでに述べている通り、需要が多いので食える資格です。
インターネットで調べると「社会福祉士は食えない」「社会福祉士は仕事がない」という書き込みがたくさんあり、あまりに多くて「そうなのか」と思ってしまう人が多いです。
しかし、社会福祉士は基本的に大変で忙しいので「儲かる」「儲からない」などという記事を書いている時間がほとんどありません。
離職した人などがネットで稼げないという趣旨の投稿をたくさんしているために、これらの声が目立ってしまっているのです。
また、SNSでは匿名で書き込めるため社会福祉士ではない人や実際に働いていない人が「稼げない」とウソを書いていることも考えられます。
いずれにしても社会福祉士は需要が多く大変な資格ですので「食える」資格なのです。
インターネットで情報を集めることは大切です。しかし、すべてが正しいとは限らないので正確に情報を集めるようにしましょう。
終身年齢の高齢化で需要は高まっている
社会福祉士の需要は就寝年齢の高齢化で高まることはあっても低下することはありません。そのため、「食える」資格といえます。
日本は世界指折りの長寿国で高齢者の割合が多い国です。しかも世界的に見ても高齢化のスピードは進んでいるので、福祉や介護に関する政治の動きは常に進化しています。
また日本では団塊の世代が控えていて75歳の後期高齢者がドンドン増えてきます。一方で少子化も進んで人材の不足は深刻化することも明らかな状況です。
つまり、援助対象者が増え続けるのです。
さらに介護職は現在でも人が不足していますが、その状況は今後さらに深刻化していくでしょう。
このような社会状況が改善されない限り援助対象者が増え続けるので社会福祉士の仕事はなくならないのです。
AIに仕事を奪われない職種
社会人の心配事の1つは「AIに仕事を奪われないか」ではないでしょうか?実際さまざまなものが機械でできるようになってきました。
しかし、社会福祉士の仕事は決してAIに取って代わられるものではありません。なぜなら主な仕事が人と相談したりカウンセリングをしたりするからです。
高齢者や生活困窮者など人とのコミュニケーションの上に成り立つ仕事なので機械ではできません。
まだまだ声は少ないですが、「食えない仕事」から「食える仕事」という認識に変わりつつあります。
社会福祉士で高収入を得るためには?
「社会人になったら高収入を得たいけど、社会福祉士ってどうなの?」
こんな疑問を持っている人は多いのではないでしょうか。
結論からいうと社会福祉士の収入は一般的に低めです。
それでも福祉や介護の仕事は社会貢献度が高いので、収入を上げられればモチベーションがさらに高まりますよね。
そこで、ここでは高収入を得る方法を紹介していきます。
社会福祉士の資格を取得する
福祉や介護の仕事で収入を今よりも上げたいのであれば、まずは社会福祉士の資格を取得してください。
社会福祉士は国家資格ですが業務を独占できるわけではありません。あくまで名称独占資格ですので資格がなくても同じ業務に携わることができます。
しかし、「社会福祉士」を名乗れるかどうかで就職のときに有利な条件を引き出しやすくなるのです。
また資格を取得すると業務の幅も広げやすくなるので、勤務先によっては資格手当てをもらうことも考えられます。
上の役職を目指す
収入を上げるわかりやすい方法は、今よりもさらに上の役職を目指すことです。
しかし、施設や事務所によっては社会福祉士の資格が管理職に上がるための条件となっている場合があります。つまり、収入をアップさせるためには資格の取得が不可欠なのです。
ちなみに勤務先が病院などの医療機関の場合、社会福祉士の資格があると将来役員に上がって役員報酬などがもらえるケースもあります。
高収入を得るためには社会福祉士の資格は欠かせないのです。
独立も選択肢の一つ
社会人として働くなら何もどこかの施設に勤めにいくだけが選択肢ではありません。自分で独立開業して社会福祉士として活動する方法もあります。
独立する場合の形態には株式会社やNPO法人がありますが、独立する人の6割近くが個人事務所を設立して活動されています。
独立すると組織に縛られることがないので自分が支援したいさまざまな人を支援できるメリットがあります。
しかし、自分で契約を取ってきて支援相談を行うので豊富な知識や経験はもちろん、人脈の構築や営業活動にも力を入れなければなりません。
ただ、うまく軌道に乗ればかなりの高収入を得られる可能性があります。
ダブルライセンスで広がる将来への道
社会貢献度が高く人のためになる仕事がしたいだけで福祉の仕事にこだわらないという人の場合は、社会福祉士以外の相談業務やカウンセリングの仕事に就くのも1つの手です。
福祉の仕事はどうしても給料が安い傾向にあります。業種が変われば収入面がアップして仕事内容は楽になるケースもあるので、ダブルライセンスで道を広げるのがいいでしょう。
ここでは社会福祉士と相性がいいダブルライセンス候補を2つ紹介します。
社会福祉士とFP2級
社会福祉士とFP2級は相性が良く活かしやすい資格です。例えば、2つの資格を持っていれば社会保障全般の知識を深められるので、より良いサービスを紹介できるようになります。
つまり最適なライフプランを提案できるのです。また社会福祉士として施設を運営する場合は、FPの資金計画や税金に関する知識が役に立ちます。
このように相乗効果が高いので、それぞれの資格を取るメリットが大きいのです。
社会福祉士と精神保健福祉士
社会福祉士と精神保健福祉士は別の資格ですがカバーさせられる点も多いので、両方取得することで福祉の専門性をより高められます。
例えば、精神保健福祉士の主な仕事は精神に障害を抱えた人の相談に乗ることですが、この中には経済的に困窮している人もいます。
そんなときに社会福祉士の資格があれば支援してあげることができるのです。
近年は精神障害者の高齢化も進んでいるので支援できない家族が増えています。社会福祉士と精神保健福祉士のダブルライセンスはかなり社会需要が高いと考えられます。
社会福祉士の難易度はどのくらい?
「社会福祉士に興味を持ったけど、資格の取得は難しいの?」
こんな疑問をお持ちの方もいるのではないでしょうか?
福祉業界で貢献しながら収入も高めたい人なら、資格取得の難易度や方法は気になりますよね。
ここでは合格率や受験資格について紹介していきます。
合格率と合格基準
まず社会福祉士の合格率は18~30%で開きがありますが、直近5年を平均すると27%で推移しています。
合格ラインは総得点約60%以上、かつ18科目すべてで得点することが必要です。仮に総得点が8割を超えていたとしても、0点の科目が1つでもあれば不合格になります。
なお、合格ラインは問題の難易度によって毎年補正されるので、毎年合格基準となる得点が発表されます。
勉強方法としては18科目すべてで得点できるように、一通りは学習しておくことがおすすめです。
受験資格を満たす必要も
社会福祉士は専門性が高い資格なので受験には条件が設けられています。受験するためにはそれらの条件をクリアする必要があるのです。
その条件とは学歴や実務経験によって12通りあります。ただし、ここでは大きく3つに分けて説明をしていきます。
福祉系大学・短大の場合
福祉系の大学・短大で指定科目を履修して卒業した場合は、以下の条件で受験資格が得られます。
- 福祉系大学等(4年)+指定科目履修
- 福祉系短大等(3年)+指定科目履修+相談援助実務(1年以上)
- 福祉系短大等(2年)+指定科目履修+相談援助実務(2年以上)
4年制の福祉系大学等を卒業して厚生労働省が指定した指定18科目を履修していれば、すぐに受験が可能です。
福祉系短大等の場合は、学校の年数によって相談援助実務がそれぞれ求められます。
例えば、3年の学校なら相談援助実務が1年以上、2年なら相談援助実務が2年以上あって受験資格が得られます。
短期養成施設の場合
福祉に関する学校で基礎科目を履修したり福祉に関する実務経験があったりする場合は、6ヶ月以上学習する短期養成施設を利用して受験資格が得られます。
- 福祉系大学等(4年)+基礎科目履修+短期養成施設等
- 福祉系短大等(3年)+基礎科目履修+相談援助実務(1年以上)+短期養成施設等
- 福祉系短大等(2年)+基礎科目履修+相談援助実務(2年以上)+短期養成施設等
- 社会福祉主事養成機関(2年以上)+相談援助実務(2年以上)+短期養成施設等
- 児童福祉士司/身体障害者福祉司/審査指導員/知的障害者福祉司/老人福祉指導主事の実務経験4年+短期養成施設等
福祉系の学校で基礎12科目を履修した場合は、短期養成施設等で学習をすることで受験資格が得られます。なお、学校の年数によっては相談援助実務が必要です。
他にも、「社会福祉主事養成機関に2年以上いて、かつ相談援助実務を2年以上」や「児童相談所や老人福祉事務所の主事として4年以上勤めている」など実務経験があれば短期養成施設等で学習することで受験資格が得られます。
一般的な施設の場合
一般の大学を卒業したり相談援助実務経験があったりする人は、1年以上学習する一般養成施設等を利用することで受験資格が得られます。
- 一般大学等(4年)+一般養成施設等
- 一般短大等(3年)+相談援助実務(1年以上)+一般養成施設等
- 一般短大等(2年)+相談援助実務(2年以上)+一般養成施設等
- 相談援助実務(4年)+一般養成施設等
ここでも、4年制大学等は一般養成施設で学習するだけで受験資格が得られますが、短期大学等の場合は相談援助実務が学校の年数によって加わってきます。
また、相談援助実務を4年以上してきた人も、一般養成施設で学習することで受験資格が得られます。
受験資格内容参考:受験資格(資格取得ルート図)
社会福祉士は仕事がないについてのまとめ
社会福祉士は仕事がないについてのまとめについてのまとめ
- 社会福祉士は仕事が溢れている
- 資格を取得することで仕事の幅が広がり高収入を得やすくなる
- 独立して自分のやりたい仕事に特化することもできる
- ダブルライセンスを取得すれば可能性はさらに広がる
「社会福祉士は仕事がなく就職できない」「社会福祉士は食えない資格」といわれていますが、決してそんなことはありません。反対に需要が多くて仕事が忙しいのが実態です。
また、福祉の仕事は収入が低いともいわれていますが、社会福祉士の資格を取得すると役職が上がったり手当てがついたりして収入を増やしやすくなります。
就職だけでなく独立することも可能ですので、特に支援したい対象があるという人にはおすすめの働き方です。
なお、その場合はFP2級などを取得してダブルライセンスで働けばより仕事の可能性を広げやすくなります。
社会福祉士はAIに取って代わられない仕事です。将来の可能性を秘めた資格ですので興味がある人は取得を目指してみてはいかがでしょうか。