行政書士が食えない資格と言われている理由は?資格取得者の実態を解説!

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行政書士

宮城彩奈

行政書士として独立したい、あるいは行政書士の資格を取りたいと考えている方の中でも、

「行政書士として食っていけるのだろうか…」

「行政書士は仕事がないって話を聞くけど、本当なの?」

と不安になっている方もいるのではないでしょうか?

「行政書士は食えない」などといった噂をネット上でよく散見しますが、このような意見の多くは正確とは言えず、行政書士で失敗してしまったという人は資格をうまく使えていないというケースがほとんどです。

行政書士の資格を上手く活用することができれば、成功を収めるチャンスもありますし、就職・転職にも有利に働くこともあります。

一方で行政書士が食えないという話は全くの根も葉もない噂というわけでもありません。行政書士がこうしたネガティブな評価をされているのには理由があります。

ここでは行政書士の仕事や収入事情の実態を解説します!

行政書士の実態についてざっくり説明すると

  • 行政書士は企業勤務できないなど不利な部分も実際に存在する
  • 行政書士の仕事は非常に多岐にわたり、それなりに需要も多い
  • 行政書士として独立後の数年間は収入を得るのが難しく、その間に廃業してしまう人も多い
  • 行政書士資格は就職・転職にも役に立つほか、コンサルティングなどに活かしたりと応用が効く

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行政書士は食えない資格なのか

疑問を持っているイメージ

行政書士は「食えない資格」といわれることも多いようです。

なぜこのようなイメージがついてしまっているのでしょうか?その理由について考察していきます。

企業勤務という道を選べない

行政書士は、社労士や司法書士などのように企業などに所属して業務を行うことは認められておらず、「企業内行政書士」といったようなものは存在しません。

そのため、行政書士は基本的には独立という形で仕事を行うことになっています。

つまり行政書士として働くには、独立して事務所を持つか法人を立ち上げる必要があり、その点で他の士業と比べてハードルが高くなっています。

独立以外の業務形態としては、士業事務所で働くことが可能です。

行政書士が多すぎて仕事がない?

次の表は、主な士業の2022年度受験者数を表にまとめたものです。

士業 2022年度の受験者数
公認会計士 16,801人
税理士 28,853人
中小企業診断士 17,345人(全科目受験者数)
司法書士 12,727人
弁理士 3,177人
行政書士 47,850人
社労士 40,633人

上記の表を見ると、行政書士試験の受験者数は非常に多いということがわかります。

さらに、合格率も他の士業と比べて比較的高く、10%を超えることも多いです。ただし、受験者数は年々減少傾向にあるようです。

また、令和4年10月時点で登録されている行政書士の数は51,147人とかなりの人数になっており、その上でその数はさらに増えています。

一方で、行政書士として登録はしたものの1年や2年で活動を辞める人も多く、さらに受験者数もだんだん減少傾向にあることも考えると、上記で示した数字が表すほどには行政書士がひしめいているというわけではありません

他士業よりも競争が激しい?

現在行政書士以外の士業で登録者数が4万人前後となっているのは、弁護士・税理士・社労士の3種のみです。

中でも税理士の登録者数は80,468人(令和4年12月)となっており圧倒的に多いですが、行政書士は税理士に次ぐ第2位の登録者数となっており、士業の中でも比較的登録者数が多いです

一方、行政書士試験のここ10年間の合格者数は全部で51,068人ですが、2022年10月時点の行政書士登録者数は51,147人で、10年間の合格者数は1年間の受験者数よりも少ない数値となっています。

このような「10年間の試験合格者数>登録者数」の例に該当する士業は行政書士以外では社労士のみで、他の士業ではたいてい「登録者数>10年間の試験合格者数」です。

このデータが示す意味として、行政書士や社労士は第一に「単に受験だけしてみた」という人が多いこと、第二に「登録したが10年の間に廃業した」という人が多いことが考えられます。

反対に、特に難関といわれる司法書士や弁護士などは「登録者数>10年間の試験合格者数」の人数差が極めて大きく、このような士業は一度試験を突破すれば仕事に困ることはなく長続きするためこのような数値になっていると考えられます。

ただし、行政書士登録者数の絶対人数自体が他の士業と比べて圧倒的に多いことを考えると、仕事のニーズもそれなりにあるといえます。

以上のことから、単純に数やデータだけを見て「行政書士は食えない」と悲観するのは間違っているといえるのです。

仕事がAIに奪われてしまう

コンピュータ技術の発達によりAIの開発が進み、将来的にはAIにより数多くの仕事が奪われてしまう可能性が指摘されています。

行政書士の業務については、AIはどの程度関与できるのでしょうか?

各士業のAIによる代替可能性

2015年に、野村総合研究所とオックスフォード大学の研究により今後10~20年における主たる士業のAIによる代替の可能性が示されました。

以下の表は、そのデータをまとめたものです。

士業 AIによる代替の可能性
中小企業診断士 0.2%
弁護士 1.4%
社労士 79.7%
公認会計士 85.9%
税理士 92.5%
行政書士 93.1%

上の表を見ると、行政書士の業務のうちなんと93.1%がAIによって代替される可能性が高いという結果が出ています。

上記のデータで高い数値が示されている原因として、行政書士の業務には単純な書類作成業務が多数含まれているということが考えられます。

一方で、単純な事務作業ではなく、人と人の間のコミュニケーションが不可欠であるコンサルティング業務などをコンピュータで代替することまでは今の時点では不可能です。

そのため、企業や個人を相手に信頼関係を築くことが重要になる中小企業診断士弁護士のような職業は、AIによる代替可能性は極めて低い数値となっています。

行政書士の将来性は低い?

AIの開発が進むにつれ、従来のように書類作成業務のみでやっていくことは難しくなる可能性は高まるといえるでしょう。

一方で、上記で述べたようなAIによる代替説は全て可能性の話であり、実際行政書士が扱う膨大な仕事範囲の中でどの部分が代替されるのかというようなことは今のところわかりません。

また、書類作成などの事務業務が奪われたからといって、行政書士が専門的な法律知識を身に付けているということには間違いありませんので、独占業務の機会がAIに奪われて無くなってしまったとしても法律知識を生かして他の活躍の場を見出すことは十分可能です。

したがって、このデータだけを見て「行政書士の将来性が低い」と判断することはできません

以下の記事では行政書士の将来性についてより詳しく解説しているので、こちらも是非ご覧になってください。

仕事がない行政書士はどれくらいいるの?

困っているイメージ

ここまで、行政書士が「食えない」資格であるとは一概にいえないということがわかりました。

しかしながら、実際に仕事を得ることができず廃業に至る行政書士は多いというのが現状です。

廃業割合は3年で50%前後か

士業以外に個人企業・法人なども全部含め、個人事業主として開業した人全体の数字を見ると、独立開業後3年で60%以上の人が廃業しており法人の場合は独立後3年の廃業者数は40%前後という数値になっています。

士業であり独占業務を持つ行政書士は一般で起業する人よりも有利と見ることもできますが、行政書士は士業の中でも開業が難しいことを考えるとこれらの法人と近い割合であると見て取れます。

つまり、3年で半数近くの行政書士が廃業していることが考えられます。

開業して数年は特に困難

たいていの人は、独立開業してから数年の間は非常に困難な状態が続きます。しかし、これは行政書士だけに限った話ではありません。

というのは、開業してすぐに集客を安定させるのは難しく、特にコネを作りづらい行政書士はなおさら集客には苦労するためです。

しかしながら逆に考えると、最初の数年さえ乗り切ることができてしまえば、同世代の多くのライバル行政書士は脱落していくとも取ることができます。

脱落せず開業行政書士としてうまくやっていくために重要になるものとは、同業者や他の士業の知人との人脈・信頼関係です。これらのつながりを大切にしておけば、いざというとき非常に頼りになります。

行政書士の開業の厳しさは以下の記事でも併せて確認してみてください。

行政書士の収入の実態

お金のイメージ

実際、行政書士はどの程度稼ぐことができるのでしょうか?また、年収1000万円を稼ぐ行政書士もいるといいますが、実際のところどうなのでしょうか。

年収1000万円は本当なのか

結論から言えば、年収1000万円以上を稼いでいる行政書士は、全体から見れば割合的に少ないものの、確かに存在します

さらに言うと、行政書士自体の数が非常に多いことも考えると人数的にはかなりの数の行政書士が年収1000万円以上を稼いでいると考えられます。

行政書士の業務は単価が高い

業務にはよりますが、行政書士の報酬単価は非常に高額です。1~5万円程度の仕事もありますが、多くの業務の単価は10万~数十万円となっています。

中には100万円を超える単価の仕事もあり、そのような業務は非常に困難で条件も厳しいというのもありますが、扱うことができれば強力な武器になります。

これらのことを考えると行政書士の需要は高いと考えることができ、顧客さえ獲得できれば行政書士が超高年収を狙える可能性は十分にあるのです。

行政書士の業務単価についてより詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

行政書士の平均年収は結局いくら?

行政書士の平均年収は600万円といわれています。

しかしながら、行政書士の業務形態は基本的には独立であるため、人によって差が大きく開いているのが現状です。

年収数千万円と非常に大きく稼いでいる行政書士もいれば、平均以下の年収しか稼げない行政書士も多数います。

つまり年収600万円という平均値はあまり意味を成さず、具体的に「年収いくら稼げる」という結論を出すことは難しいです。

ただし前述したように行政書士の業務の報酬単価はかなり高額であるため、月に数件程度しか顧客を獲得できなくても「食えない」ということはありません。

「行政書士資格は意味がない」はウソ

本当はポジティブなイメージ

行政書士の廃業率が高いことや、企業勤務できないことなどを理由に、「行政書士資格は意味がない」といわれることもあります。

しかしこのような考えは早計であり、行政書士資格の取得メリットは多数存在します。

取得メリットは多くある

行政書士は同じ法律系の資格である司法書士などと比べると、試験の難易度も比較的易しく資格を取得しやすいため、仕事をしながらでも勉強する余裕を持つことができます。

また、行政書士は多くの法律に長けた資格です。

民法や会社法・商法などに関する深い知識は多くの企業が必要としていますし、あるいは書類作成に関する行政書士の権限を生かして、会社・法人、組合などの設立手続きやサポートなどといった部分にまで手を回すことも可能です。

許認可申請などといった面倒な手続きを任せることができる人材というのは、企業にとって非常に役に立つ存在となります。

このように行政書士の資格を就職・転職に生かすことが可能ですし、仕事の幅も広がるというのは大きなメリットといえます。

取得難易度は比較的易しい

行政書士は、他の法律系資格と比較すると取得もしやすくコスパが良い資格といえます。

他の法律系資格として司法書士を例に挙げると、司法書士試験は合格率が3%であるのに対し、行政書士は10%と比較的易しいです。

司法書士が難関といわれる理由としては、司法書士試験の合格基準は成績上位者から順に合格する相対評価であるためです。つまり、司法書士試験に合格するためにはかなり高い正答率を上げなければなりません。

一方行政書士試験の合格基準は絶対評価であり、6割以上正解できれば必ず合格できます

司法書士試験の試験科目は非常に幅広い上に深い知識を持っていないと合格が難しいため、かなりの勉強量が必要となりますが、行政書士試験は仕事をしながらでも多くの人が1~2年程度の勉強で合格しています。

食える行政書士になるためのポイント

成功への道を示すイメージ

ここまで、行政書士は必ずしも「食えない」わけではないということを説明しました。

それでは、「食える」行政書士になるためにはどのような点に気をつければよいのでしょうか。

専門分野を持つ

近年はインターネットの普及により情報収集が容易になり、手続きが特に複雑でないものは申請者自身の手によって手続きを行う人も増えていますし、各種手続き代行などの業務を内製化する企業も増えてきているのです。

つまり行政書士にわざわざ代行を依頼するという業務は複雑で専門的なものが多くなる傾向にあり、行政書士の専門化はより求められつつあります。

行政書士の扱うことのできる業務の種類は非常に多く、その数1万以上といわれていますが、1人で全ての仕事を行うことは難しいため、たいていの行政書士は業務の範囲をある程度絞って仕事をしています。

行政書士は書類作成のプロとしてミスなくスピーディに業務を行うことが求められるため、自分の得意な分野、あるいは過去経験を積んでいる業務を専門分野としておけば、スムーズに業務を行うことができるでしょう。

コンサルティング業務を武器にする

身に付けた深い法律知識を利用して、企業などのコンサルティング業務を行うという選択肢も可能です。

コンサルティング業務は人と人とのつながりが重要となり、単なる事務業務だけで終わらないという点では難しいものですが、将来的にはAIによって代替される可能性も低く有利である点は先に述べました。

例えば、行政書士の独占業務である許認可申請と帳簿作成・記帳代行等の会計業務などを掛け合わせて、財務コンサルティングを行うことも可能です。

その他にも、権利関係・事実証明に関する書類作成の仕事を生かして個人・企業間のトラブルを未然に防ぐ予防法務」に携わり、サポートをすることもできます。

新しい技術を有効活用する

今後はAI以外にも新しい技術が次々開発され、行政書士の従来の仕事の場も奪われつつあります。

しかしながら、逆にそういった技術を用いることで複雑な行政書士の仕事を効率化させることも可能ですし、さらに集客ツールとしても利用できる可能性があります。

つまり、新しい技術がどんどん開発され利便化されているからといって、仕事を奪われることを恐れるのではなく、技術を応用して自分の武器にしていくことが重要なのです。

これを可能にするために、新しい技術のキャッチアップも怠ることなく常にチェックしておく必要があるでしょう。

士業の業務を助けるツールも増えている

近年、業務効率化ツールも多数開発されており、士業においても役立てることができます。

例えば、ホームページ作成に役に立つ「Wordpress」や「Jimdo(ジンドゥー)」、確定申告の際にも心強い会計ソフト「freee(フリー)」、名刺管理ツールの「Eight(エイト)」や「メイシー」、顧客管理ツールのキントーンやメールワイズなど。

これらのソフトやツールを利用することで、事務や経理といった面倒な業務を効率的に行うことが可能です。

また、今日のインターネットの発展により、ネット集客も大切になっていくことが予想されます。紹介メインで集客を行っている人でも、事務所のホームページは今後重要になるでしょう。

甘い見立てを持たずに継続して努力する

開業した直後の時点では、思ったように集客できなかったり仕事がうまくいかなかったりですぐに辞めてしまう人が多いです。

そのようなことにならないように、先を十分に見越した準備をしておき、継続して努力し続けていくことが大切です。

具体的には、同業者や他の士業の人との人脈を形成すること集客方法を工夫すること、独立前に士業事務所などに勤務して経験を積んでおくことなどが挙げられます。

特に営業については、最初のうちは集客方法を確立するのに苦労するはずです。

開業セミナーなどに足を運んで、営業方法を学ぶのも手です。また、セミナーでは他の開業行政書士・他士業の人との交流を深めることができるチャンスもあります。

行政書士の実態まとめ

行政書士の実態まとめ

  • 行政書士の働き方は独立開業がメインで、登録者数の多さの割には集客がうまくいかずに廃業してしまう人も多く「食えない」「仕事がない」というイメージがついているが、実際は行政書士の需要は高い

  • 行政書士の独占業務は事務作業が多いため将来的にはAIなどに仕事を奪われる可能性も高いが、書類作成業務以外にも法律知識を生かしてコンサルティング業務などを行うことも可能

  • 行政書士資格は取得難易度も高くなくてコスパが良く、法律知識や行政書士の権限を生かして就職・転職に有利に働くなど資格取得のメリットも多い

ここまで、行政書士が「食えない」資格であるかどうかについて解説してきました。

実際は行政書士の資格には多くのメリットもありますし、今後も仕事の幅を広げてますます活躍の場が増えていくことでしょう。

ネットの情報を鵜呑みにして「行政書士は仕事がない」などと嘆かず、本記事で述べた働き方などを参考に、行政書士としての道を切り開いていきましょう!

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