弁護士の人数はどれくらい?事務所数や平均年齢から食えない弁護士が余るのか解説!
「司法試験を受けたいが弁護士の人数が増えすぎて事務所数と釣り合っていないと聞いている」
「弁護士になっても食えない悲惨な人生になるのではないかと不安…」
確かに弁護士についてあまり良くない噂がささやかれることがあるのは事実ですが、果たしてこうした噂は真実なのでしょうか。
資格Timesでは昨今の弁護士の人数のデータをまとめました。この記事には事務所数との兼ね合いや現在の弁護士の需要の有無など、司法試験を受ける前に知っておきたい情報が満載です。
弁護士業界の実態を網羅してありますので、ぜひ参考にしてください!
弁護士の人数についてざっくり説明すると
- 弁護士の数は近年どんどん増えている
- 司法試験の合格者の平均年齢は28~29歳
- 年齢を重ねた弁護士や女性弁護士にもそれぞれ活躍できる場がある
- 法律事務所数には限りがあるので希望する事務所には所属できないこともあるが、法律事務所に所属しない働き方もある
弁護士白書によると弁護士の人数は約41,000人
日弁連の弁護士会別会員数によると、2022年12月1日時点で日本弁護士連合会に登録している弁護士の人数は43,960人です。
弁護士数は1990年から2004年ごろにかけて行われた司法改革によって、近年どんどん増加しています。
現在はおおよそ44,000人の弁護士が存在していることになりますが、これはひとつの都道府県につき930人ほどの弁護士がいる計算になります。
弁護士全体の数が増えるに伴って、女性弁護士の人数や割合も増えています。現在では8,600人以上の女性弁護士が存在しており、全体の2割に迫る勢いとなっています。
2000年から2022年の弁護士数の推移
2000年から2022年までの弁護士の推移を表にまとめました。 こちらを見ると、いかに近年急激に弁護士が増えているかがお分かりいただけるでしょう。
弁護士数 | 前年比 | |
---|---|---|
2000年 | 17,126人 | +395人 |
2001年 | 18,243人 | +1,117人 |
2002年 | 18,838人 | +595人 |
2003年 | 19,508人 | +670人 |
2004年 | 20,224人 | +716人 |
2005年 | 21,185人 | +961人 |
2006年 | 22,021人 | +836人 |
2007年 | 23,119人 | +1,098人 |
2008年 | 25,041人 | +1,922人 |
2009年 | 26,930人 | +1,889人 |
2010年 | 28,789人 | +1,859人 |
2011年 | 30,485人 | +1,696人 |
2012年 | 32,088人 | +1,603人 |
2013年 | 33,624人 | +1,536人 |
2014年 | 35,045人 | +1,421人 |
2015年 | 36,415人 | +1,370人 |
2016年 | 37,680人 | +1,265人 |
2017年 | 38,980人 | +1,300人 |
2018年 | 40,066人 | +1,086人 |
2019年 | 41,118人 | +1,052人 |
2020年 | 42,164人 | +1,046人 |
2021年 | 43,206人 | +1,042人 |
2022年 | 44,101人 | +895人 |
弁護士人口は増加している
現在の新しい司法試験が導入されたのは2002年のことです。それ以前の旧司法試験は合格率が例年たったの3%という超難関資格でした。
現在の新司法試験も難関であることには変わりありませんが、合格率は大幅に増加してきており、近年では司法試験の合格率は30%前後となっています。
この背景には、法曹家の数を増やすという国の政策が関係しています。
弁護士をはじめ裁判官や検察など法律の専門家を増やせば広く法律サービスが行き届く社会を実現させることができますよね。そのために日本では近年、司法試験の合格者数を増やすという改革が行われてきたのです。
女性弁護士も増加している
近年は弁護士の全体数だけでなく女性弁護士の割合も増加しています。
1950年においては、女性の弁護士はわずか6人でした。これは弁護士の総数に比べるとたったの0.1%というごくわずかな割合です。しかし現在では女性弁護士の数は8,017人にもなり、全体の割合にすると19.0%にも上ります。
未だ2割にも満たないわけですから女性弁護士が少数派であることには変わりありません。しかし、今後も女性弁護士は増えていくことでしょう。
女性弁護士ならではの仕事
女性弁護士を増やすことは社会全体にもメリットがあると考えられています。
例えば、離婚や家族内のトラブルについてを相談したい依頼人の中には女性の方も多くいます。しかし、デリケートな問題を男性弁護士に依頼する事を躊躇する女性もいるでしょう。
このような時に女性弁護士が存在することには多くの意味があります。弁護士が男性だからという理由で相談をためらっていた女性も、女性弁護士がいることによって行動を起こしやすくなるというわけです。
女性弁護士の詳しい状況については以下の記事も併せてご覧ください。
平均合格年齢は気にしなくていい
司法試験の合格者を年齢別に見ますと、2022年度試験の平均年齢は28.3歳でした。近年の司法試験合格者は例年28~29歳くらいで横ばいになっています。
司法試験と似た資格の「司法書士試験」の合格者を見ると、合格者の平均年齢は37~38歳です。つまり、司法試験の合格者は平均すると司法書士よりも8~10歳ほど若いということになります。
弁護士の合格平均年齢が低い理由とは
上記のデータから、弁護士は若くなければ合格できないと思うかもしれません。しかし、例えば30歳を過ぎたらと言って弁護士ではなく他の士業に志望を変えるという必要は全くありません。
実は司法試験合格者の平均年齢が低いのには理由があるからです。
司法試験の受験者は、司法試験が一生ものの難関試験であるために大学受験中から勉強を開始する層が多くを占めます。このように大学卒業前後から司法試験を受けることになるため、合格者の平均年齢が下がるのは当然と言えるのです。
社会経験を積んだからこそできることがある
30代・40代から司法試験に挑む場合はほとんどの方が社会経験を積んだ上で司法試験にチャレンジすることになりますが、考え方によってはこちらのほうが有利だとも言えます。
弁護士の腕は司法試験の得点だけで測れるものではありません。なぜなら法律の知識だけでなく、社会の色々な要素を知り尽くさなければ弁護士の仕事を果たすことはできないからです。
年齢を重ねたからこそ依頼人の信頼を勝ち取ることができる場面もあるでしょう。受験年齢が高いからと言って弁護士で食えないということはないため、年齢が高いからといって司法試験への挑戦をためらう必要はないといえるでしょう。
司法試験合格者の最高年齢は?
ちなみに2022年の司法試験最小年合格者は18歳、最高齢合格者は68歳でした。合格者の平均年齢こそ30歳以下ではありますが、毎年幅広い年齢の方が司法試験に合格しているのです。
合格者の平均年齢は参考程度にした上で、余り気にするべきではないといえるでしょう。事実、還暦を過ぎても弁護士になるチャンスはあるのです。
需要が減少して弁護士は悲惨?
近年は弁護士の数が増えたことで食えない弁護士が多くなり、弁護士業界は悲惨な状況になっていると噂されることもあります。
司法試験制度の刷新により弁護士の数が増えたのはその通りですし、所属するための弁護士事務所数にも限りがあります。しかし、現実を見ると必ずしも弁護士が食えないというわけではないことがわかるでしょう。
弁護士の数が増える一方、弁護士の仕事の範囲も年々拡大しています。弁護士の仕事はまだまだ十分に需要があると言えるのです。
弁護士数は全国で偏っている
弁護士はどうしても大都市に集中しがちです。日本国内で一番弁護士が多いのは東京都で、現在21,000人以上の弁護士が登録されています。一般市民の人口と比較すると、東京では弁護士一人あたり666人ほどの人口がいるという計算になります。
弁護士が多ければ多いほど依頼人の数も限られるため、東京では特に限られた依頼者の仕事を弁護士の中で奪い合う事態も見られます。
地方では弁護士が少ない分一人あたりの人口が多い
都内に対して、例えば秋田県では弁護士は77人しか登録数がありません。そして、弁護士一人当たりの人口は11,948人にも上ります。
もし東京都内では余り活躍できないと感じるならば地方にも目を向けてみると仕事のチャンスも多くあるといえるでしょう。
依頼人となる可能性がある母数はまだまだ地方ごとの偏りを残しつつ全国的に非常に多く存在しているため、弁護士の存在は以前と変わらず必要とされていると言えるのです。
企業内弁護士の増加
弁護士が働き方は、弁護士事務所に所属すること以外にも数多く存在します。そのひとつが「企業内弁護士」です。
2006年の新司法試験の導入以降、インハウスローヤーと呼ばれる企業内弁護士がどんどん増加しています。
企業内弁護士が増える理由
弁護士の就職先というと一般的には法律事務所が有名ですが、最近は法律事務所数が減ってきていることから弁護士の就職や転職先が減少していると叫ばれてきました。
こうした背景もあり、新しい働き方を模索する弁護士が出てきています。その選択肢のひとつが企業内弁護士(インハウスローヤー)というわけです。
企業内弁護士は社員として企業で働きますので、安定した雇用環境がある程度約束されています。それでいて高収入を稼げる可能性が高いということから、企業内弁護士は近年弁護士の就職先として人気があるのです。
企業内弁護士の具体的な数
日本組織内弁護士協会によると、インハウスローヤー(企業内弁護士)は2006年には146人でしたが2014年には1,000人を突破、2022年には2,900を突破しています。
ここ数年で毎年200人ずつ以上も増えていることを考えると、企業に就職して弁護士の資格を活かす道も十分選択肢に入れてよいと言えるでしょう。
それに一般企業の数は弁護士事務所数よりも明らかに多いです。そのため弁護士事務所に所属するための席を取り合うよりは、最初から企業内弁護士を目指したほうがスムーズに就職できるという考え方もあります。
弁護士事務所の弁護士数
弁護士の就職先として一番多いのが弁護士事務所です。弁護士の数が増えたことによって事務所数が追い付かず、それが原因で現代の弁護士は食えないと思っている方もいるかもしれませんね。
実際、弁護士事務所に所属できる弁護士はどれくらいになるのでしょうか。 わかりやすくするために、全国の弁護士事務所のうち所属弁護士の多い順に25位までを表にまとめてみました。まずはこちらをご覧ください。
順位 | 事務所名 | 弁護士数 | 昨年比 |
---|---|---|---|
1位 | 西村あさひ法律事務所 | 565人 | +22人 |
2位 | アンダーソン・毛利・友常法律事務所 | 467人 | +33人 |
3位 | 長島・大野・常松法律事務所 | 458人 | +39人 |
4位 | TMI総合法律事務所 | 428人 | +33人 |
5位 | 森・濱田松本法律事務所 | 413人 | +11人 |
6位 | ベリーベスト法律事務所 | 178人 | +36人 |
7位 | シティユーワ法律事務所 | 152人 | +7人 |
8位 | 弁護士法人アディーレ法律事務所 | 151人 | -21人 |
9位 | 弁護士法人大江橋法律事務所 | 139人 | +2人 |
10位 | 渥美坂井法律事務所・外国法共同事業 | 128人 | +8人 |
11位 | ベーカー&マッケンジー法律事務所外国法共同事業 | 115人 | -2人 |
12位 | 弁護士法人ALG&Associates | 91人 | +20人 |
13位 | 虎ノ門法律経済事務所 | 89人 | +9人 |
14位 | 北浜法律事務所・外国法共同事業 | 82人 | +7人 |
15位 | 弁護士法人御堂筋法律事務所 | 77人 | +2人 |
16位 | モリソン・フォースター外国法事務弁護士事務所 伊藤 見富法律事務所(外国法共同事業事務所) | 49人 | -4人 |
17位 | 岩田合同法律事務所 | 70人 | +4人 |
18位 | 弁護士法人淀屋橋・山上合同 | 59人 | -1人 |
19位 | 弁護士法人中央総合法律事務所 | 54人 | +3人 |
20位 | 牛島総合法律事務所 | 51人 | +5人 |
21位 | 田辺総合法律事務所 | 47人 | +1人 |
22位 | 阿部・井窪・片山法律事務所 | 45人 | +5人 |
23位 | 弁護士法人心 | 46人 | +1人 |
24位 | 弁護士法人法律事務所オーセンス | 44人 | +4人 |
25位 | 弁護士法人泉総合法律事務所 | 43人 | +5人 |
5位までに入っている弁護士事務所は「五大法律事務所」とも呼ばれており、弁護士業界の中でもかなり有名で人気がある事務所です。それだけに所属している弁護士の数も400人以上と非常に多くなっています。
多くの弁護士事務所が所属弁護士をどんどん増やしている
表の右端は各弁護士事務所の弁護士数の前年比です。一部を除いて、どの事務所も前年度よりも弁護士数が増えているのことがわかるでしょう。 五大弁護士事務所に至っては、前の年より20~30人前後も弁護士の数が増えています。
大手の法律事務所では、一年目から1,000万円以上の年収を稼ぐことも可能です。優秀な弁護士を雇うことは弁護士事務所全体のレベルアップにもつながるので、大手の事務所ほど弁護士数を増やす傾向にあるようです。
中堅の法律事務所の存在にも目を向けよう
大手が存在する一方で、中堅の法律事務所も全国で200前後存在します。中堅法律事務所には10人~100人程度の弁護士が所属することになります。
しかし、近年は弁護士数が少ない法律事務所でも、毎年10人以上を新規採用するところも増えてきました。つまり中堅の事務所にも目を向ければ大規模事務所にこだわらなくても弁護士として在籍できる席はまだまだ余っています。
法律相談事務所に就職や転職を考える場合は大手や中堅など複数の事務所を並行して受けるようにすれば、法律事務所に所属することは十分可能であると言えるでしょう。
弁護士数を他の士業の人数と比較
弁護士数は他の士業と比べるとどれくらいの人数なのでしょうか。社労士や行政書士など、弁護士と同じく法律を扱う職業で人数を比べてみました。
こちらの表をご覧ください。
士業 | 人数 |
---|---|
弁護士 | 約4.4万人 |
行政書士 | 約4.6万人 |
司法書士 | 約2.2万人 |
社労士 | 約4.1万人 |
弁理士 | 約1.3万人 |
税理士 | 約7.7万人 |
こちらの表を見ると、弁護士の人数は社労士や行政書士とほぼ同じくらいの人数がいることがわかります。税理士のみ7.7万人と突出しており、それに比べると弁護士は少ないですが、概ね他の士業と同じくらいの人口がいると言えるでしょう。
他の士業との関係
弁護士の人数が他の士業と同じ程度という実情を見ると、弁護士の需要はあまりないのではと思う方もいるかもしれません。しかし決してそのようなことはありません。
どの資格を取るか迷うのであれば間違いなく弁護士
弁護士は他のあらゆる士業の資格領域で活躍できる仕事です。もし士業のうちどの資格を取れば良いか迷うのであれば間違いなく弁護士をおすすめします。
例えば弁理士の場合、弁護士の資格を持っていれば修習を受けるだけで弁理士の資格を取ることができます。また、行政書士や司法書士の仕事においても弁護士の力が必要になる場面もあります。
弁理士が弁護士の仕事を代わりにこなすことはできませんが、その逆は可能です。このように弁護士はまさに資格の王様であり、法律分野の士業におけるトップ資格だといえるでしょう。
そのため、合格しても仕事があるのかといったことは心配せずに胸を張って司法試験を受験し、弁護士資格を勝ち取ってください。
弁護士の人数まとめ
弁護士の人数まとめ
- 弁護士の人数が増加傾向なのは確かだが、仕事も増えているため食えない資格では全くない
- 中堅の弁護士事務所にも目を向ければ採用枠は多く存在する
- 弁護士事務所数には限りがあるが、企業内弁護士を目指せば就職先は豊富にある
- 他の士業と比べてどの資格を取るか迷う場合も弁護士が一番おすすめ
この記事から弁護士が食えない、悲惨という噂は嘘であるということがおわかりいただけたでしょうか。
弁護士は他の士業資格と比べても間違いなく最高峰の資格といえます。ぜひ迷うことなく司法試験合格を目指して勉強し、弁護士となって活躍してください。
この記事を読まれた方の今後のご活躍を心からお祈りしています。