宅建と司法書士の関係は?ダブルライセンスのメリットや難易度を解説!

この記事は専門家に監修されています

宅建士

関口秀人

「宅建と司法書士のダブルライセンスのメリットは?」

「ダブルライセンスをするのは難しい?」

このような疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

ここでは宅建と司法書士のダブルライセンスの難易度やメリットについて分かりやすく解説します

宅建と司法書士のダブルライセンスについてざっくり説明すると

  • 業務上の関連が深く相性が良い
  • 仕事の効率化や報酬アップが期待できる
  • 資格試験の範囲が被っているため挑戦しやすい

宅建と司法書士の関係

「関係」のイメージ

宅建は不動産取引の専門家です。司法書士は主に法務局での各種登記の代理業務を行う、法的書類作成・手続きの専門家です。

登記の代理には不動産関連の業務が多く、不動産登記手続きは不動産取引に欠かせないため、この二つはとても関連性の高い資格であると言えます。

宅建合格者がステップアップとして司法書士を目指すケースが多く、また司法書士の方が不動産業務を展開していくために宅建資格を取得することもあります。

試験範囲が被っている

不動産取引に特化した資格である宅建と、司法試験と並び法曹界トップレベルの資格である司法書士では、当然後者の方が試験範囲も広いです。

しかし、司法書士試験の範囲の一部は、宅建の試験範囲と被っているため、宅建合格者や宅建を勉強している人は、司法書士の試験範囲の一部を既に学習出来ているということになります。

具体的には、司法書士の試験範囲は以下のようになっています。

  • 憲法
  • 民法
  • 刑法
  • 商法
  • 不動産登記法
  • 商業登記法
  • 供託法・司法書士法
  • 民事訴訟法・民事執行法・民事保全法

このうち、「民法」と「不動産登記法」は宅建の試験でも重要な部分です。また、宅建では「借地借家法」「区分所有法」「農地法」「登録免許税」などについても深く勉強することになりますが、それらも司法書士の試験範囲に含まれています。

よって宅建資格保有者は、民法や不動産登記法についてある程度の知識を持っているため司法書士試験へのハードルは少し下がると言えます。また司法書士であれば、自分の知識+αで宅建資格にチャレンジできるということになります。

ダブルライセンスのメリット

では、宅建と司法書士のダブルライセンスにはどのようなメリットがあるのでしょうか。

業務上のメリット

宅建の業務を進める上で「不動産登記手続 」が不可欠となります。よって司法書士の資格も取得していれば自身で登記を行うことができ、業務の効率アップや、一貫性のある仕事に対する「やりがい」に繋がります。

また司法書士と宅建士2つの資格を取得していれば、宅建業の許可を得て、不動産業を営むことも可能になります。

その場合、自分が仲介して宅建の仕事をこなして成約となった不動産の取引で派生する登記業務を、そのまま自分が司法書士として受託することが出来ます。 つまり、 不動産の仲介手数料と司法書士報酬をすべて自分のものに出来るということになります。

顧客から見ても、慣れない不動産手続きであちこちの専門家を尋ね回ることなく契約から登記まで一人が担当してくれるとなれば、安心して依頼しやすいはずです。

司法書士・宅建の業務内容については、下記の記事も併せてご覧下さい。

学習面でのメリット

試験分野が被っているため一つの試験の終了後、それまでの学習を風化させなければ次の試験に比較的簡単にシフトすることが出来ます。

それぞれの資格のために別の勉強をするわけではないので、一方の試験のための勉強が、そのまま他方のための勉強にもなるのです。

制約がある場合も

ダブルライセンスで業務を行うに当たっては、制約がある場合があるので注意が必要です。

司法書士法では兼業の制限規定はありませんが、事業所の名称に他の資格の名称が含まれたり、他業種と誤って受け取られる様な名称を付けたりすることは事実上制約されています

また司法書士を本業とし、副業で宅建士として一般企業に雇用されるような場合については、司法書士が持つべき「独立性の維持」が困難になり、司法書士法で定められている「依頼に応じる義務」が果たせなくなる可能性があるため、現実的にはなかなか難しいと言えます。しかし勤務先の了承等があり、規定を満たす状況下であれば可能です。

さらに、会社員として勤務している人が「副業」として司法書士業務を行うということは、同様の理由により認められていません。これは日本司法書士連合会の正式な見解となっています。

宅建と司法書士の難易度比較

「難易度」のイメージ

国家資格の難易度ランキング

主な国家資格の難易度ランキングは以下のようになっています。

資格 難易度 勉強時間の目安
FP2級 150~300時間
FP1級 ★★ 500時間
宅建士 ★★ 200~300時間
行政書士 ★★ 500~800時間
社労士 ★★★ 1,000時間
中小企業診断士 ★★★ 1,000時間
税理士 ★★★★★ 3,000時間
司法書士 ★★★★★ 3,000時間

同じ国家資格でも、宅建士と司法書士では司法書士の方が難易度が圧倒的に高くなっています。宅建士については難易度は普通と言えます。

宅建・司法書士の難易度については下記の記事をご覧ください。

勉強時間

宅建士と司法書士では、合格に必要とされる勉強時間にも大きな開きがあります。

宅建が3ヶ月~1年程度と言われているのに対し、司法書士は3年~5年の勉強が必要と言われています。

宅建は1年間頑張れば、受かる確率が高まるのに対し、司法書士は複数年勉強を続けなければいけないため、この点でも大きな差が生まれているといえるでしょう。

合格率

直近6年の合格率の比較です。

試験年度 宅建 司法書士
令和4年度 17.0% 5.2%
令和3年度 17.7% 5.1%
令和2年度 16.8% 5.2%
令和元年度 17.0% 4.39%
平成30年 15.6% 4.32%
平成29年 15.6% 4.07%

宅建合格率出典:試験実施概況(過去10年間)

司法書士合格率出典:法務省 司法書士試験

宅建と司法書士の合格率の差を比較すると、すべての年で10ポイント以上離れていることがわかります。

ここから、司法書士の合格率がいかに低いかが分かります。

受験資格

宅建・司法書士ともに、受験資格は特にありません。希望すれば誰でも受験することができます。

誰にでも門戸が開かれている点では、社労士など一定の受験資格を満たさなければいけない資格と比較して、易しいといえるでしょう。

その他のダブルライセンスを検討できる資格

「相性」のイメージ

宅建士と相性の良い資格

  • FP(ファイナンシャルプランナー)・・・難易度的にも取りやすい。物件購入時等のお客様への資金計画のアドバイスの信頼性が増す。
  • 行政書士・・・宅建士業務を進めていく中で行政書士との関わりは深く、関連性が高い。
  • 不動産鑑定士・・・公正な立場から不動産の価値を判定することが主な業務。全国に9,000人程度しかおらず、希少性が高い。
  • マンション管理士、管理業務主任者・・・難易度的に取りやすく、不動産業の主に管理分野で活用できる。

司法書士と相性の良い資格

  • 社労士・・・業務の関連性も高く、特定社労士になると、簡易裁判所での訴訟についての代理権が与えられる。

  • 行政書士・・・試験科目の「憲法」「民法」「商法(会社法)」が重複しており、チャレンジしやすい。

  • 土地家屋調査士・・・「登記」に関する資格であることが共通。不動産登記をワンストップで行うのであれば不可欠の資格。

  • 司法試験・・・法曹界のトップに位置する試験。司法試験及び予備試験共に、司法書士試験と共通する試験科目が多い。

宅建と司法書士の関係とダブルライセンスまとめ

宅建と司法書士のダブルライセンスのまとめ

  • 業務上の関連性が高い
  • 試験範囲が被っているためチャレンジしやすい
  • 業務の展開、収入増が望める
  • 兼業には制約がある場合もあるので注意が必要

このように宅建と司法書士は業務の関連性が高いので、両方を取得することによるメリットは大きいです。

試験範囲が被っており試験形式も似ているため、宅建に合格することで司法書士試験への自信にも繋がります。司法書士の実務でも、宅建で学んだ知識は役立ちます。

司法書士を目指している人には、司法書士試験合格の前提に宅建試験の受験を、またダブルライセンスを目指す宅建士の方にはステップアップして司法書士試験へのチャレンジをおすすめします。

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