【独学者向け】中小企業診断士のおすすめ勉強スケジュール|科目の順番はどうする?
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中小企業診断士
平井東
「中小企業診断士を受験するけれど、どんなスケジュールで進めればよいのだろうか」
「科目ごとの優先順位にセオリーはあるのかな?」
中小企業診断士を独学で受験しようと思っている人の中には、学習スケジュールが定まらずお困りの方も多いでしょう。
受験科目は全部で7科目。科目数が多いので、優先順位をつけて勉強するのも重要になってきます。
この記事では中小企業診断士の学習スケジュールや科目ごとの優先順位を紹介します。読み終えるころには、きっと学習計画をより良いものに組み立てることができるはずです!
中小企業診断士の独学スケジュールについてざっくり説明すると
- 理解が重要な科目から先に手を付ける。
- 過去問は出来るだけ早いうちに始める。
- 勉強開始時期によっては翌年の試験も視野に入れる。
- 独学で合格を目指すのはかなり難しいので注意。
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中小企業診断士の独学の注意点
中小企業診断士は「ビジネスマンが取得したい資格」ランキング第1位に選ばれたこともある非常に人気のある資格です。取得することで得られるメリットは、収入面やキャリアアップなど幅広い分野に及びます。
試験を受験する人は社会人が多く、学生はあまりいません。働きながら資格取得を目指す人がほとんどです。
しかし、中小企業診断士は非常に難易度の高い試験です。勉強の途中で挫折してしまう人も少なくありません。
学習期間が長期に及ぶため、モチベーションを保つのが難しいことや勉強の効率が良くないなどが主な理由です。独学で合格を目指すよりは予備校や通信講座を利用する方がスムーズに学習できるでしょう。
独学合格は極めて難しいと理解する
中小企業診断士の試験は1次試験と2次試験の二つの試験からなります。どちらの試験も合格率はたったの20%。両方の試験を合わせた合格率は4%にすぎないという狭き門です。
独学で合格を目指す際に特に課題となるのは2次試験。マーク式の1次試験はまだ対処しやすいのですが、2次試験は記述式なので独学では対策に苦労します。
単純な合格率の低さや試験が2段階で行われることに加えて、独学では対策が困難な記述試験があること。これらを総合すると独学で一発合格するのは非常に難しい難関試験であると言えます。
学習スケジュールは勉強開始時期にもよる
学習期間は少なくとも1年ほどを見積もっておきます。数か月の学習で合格できるほど中小企業診断士は甘い試験ではありません。
中小企業診断士の試験では一度合格した科目の免除が認められています。科目免除の有効期間は3年間だけです。
もし何らかの事情で勉強の開始時期が遅れることになる場合、一度に全科目の合格を狙わず、一部科目だけの合格を目指すのがおすすめです。なお、試験は夏から秋にかけて行われています。
2次試験との関連が薄い科目は早めに科目合格しておき、翌年以降の試験では2次試験と関連の深い科目を重点的に対策するという方法は特に有効です。一度に合格するのが困難な場合にはこういった方法も可能です。
科目ごとに勉強法が異なる
1次試験の科目は全部で7つあります。科目ごとに暗記がメイン、理解がメインなどの特徴が異なるので、科目に応じた勉強法を選びましょう。
暗記がメインの科目
中小企業診断士の試験科目のいくつかは暗記メインで対策できます。「運営管理」「経営情報システム」「経営法務」「中小企業経営・政策」の4科目が該当します。
暗記科目の学習はスケジュールの後半に行うのが基本的にはおすすめです。試験までの時間が空けば空くほど忘れてしまう可能性が高くなってしまうため、短期集中で知識を詰め込むことが大切になります。
暗記科目で大切なのはとにかく繰り返すことです。何度も何度も繰り返しで少しずつ定着させていきます。
また、記憶は夜に定着しやすいと言われています。朝や昼には理解科目を行い、夜に暗記科目を重点的に勉強するという手もあります。
これらの科目はどちらかと言えば重要度が低いので、あまり時間をかけない方が良いでしょう。2次試験との関連も理解科目の方が上です。
理解がメインの科目
残りの科目は理解がメインの科目です。「経済学・経済政策」「財務・会計」「企業経営理論」の3科目ですね。
理解が重要な科目は暗記だけでは対策できません。一つ一つの知識の有機的なつながりを意識して理解を地道に深めていくことが合格に向けて大切になります。
理解重視の科目で重要なのは問題を解くことです。インプットよりもアウトプットの方がより効果的なので、問題演習を通して理解を深めていきましょう。
アウトプットに関しては問題集を解くことももちろん重要ですが、過去問はそれ以上に重要です。過去問を解くことで、出題者の出題傾向を肌で体感することができるため、普段の学習の中で過去問をどんどん取り入れていきましょう。
インプットでは図表やグラフで事象を整理することも大切です。理解科目で扱う内容の中には文章だけでは理解しがたいものもあります。
そういったものには、イラストや図表で知識を多面的な角度で深掘りしていくことが大切になります。
理解がメインの科目は2次試験とも関連が深い重要科目ばかりです。1次試験対策がしっかりできていると、その分2次試験対策が楽になります。
足切りを意識して勉強する
中小企業診断士には足切りがあります。1次試験、2次試験のどちらも採用されている条件は同じです。
足切りの条件は「合計点が総得点の6割以上であり、かつ1科目でも得点率4割未満の科目がないこと」です。これさえクリアできれば合格になります。
ただし、1次試験には科目合格があるので必ずしも一度に全科目合格する必要はありません。有効期間内に全科目そろえればよいのです。
勉強する科目の順番
まずは次の表を見てください。各科目の2次試験との関連度や重要性をまとめたものです。
科目 | 2次試験関連度 | 重要度 |
---|---|---|
企業経営理論 | 高い | ◎ |
財務会計 | 高い | ◎ |
運営管理 | 高い | ◎ |
経済学・経済政策 | 低い | ○ |
経営法務 | 低い | △ |
経営情報システム | 低い | △ |
中小企業経営・政策 | 低い | △ |
中小企業診断士の勉強では、2科目から3科目を同時に進めるのが基本です。1科目ずつ進めても良いのですが、複数科目を同時に進めた方が科目間のつながりが見えやすくなります。飽きた時の気分転換にもなります。
とはいえ一度に全科目をまとめて学ぶのはやめましょう。特に暗記科目は勉強し始めたころは軽くで済ませ、重点的に進めるのはスケジュール後半に回した方が無難です。
重点的に学ぶ科目
重点的に学ぶべき科目は「企業経営理論」「財務会計」「運営管理」の3科目です。どの科目も重要度が高く、2次試験にも密接に関連しています。
また、いずれも理解が中心となる科目であり暗記科目よりも勉強に時間がかかるという特徴があります。その一方で一度理解してしまえば忘れにくいのです。万一忘れてしまっても問題演習ですぐに思い出せます。
そのため、これらの3科目は試験対策を始めた初期のころから優先して取り組むべきです。自身の得意不得意に合わせて、並行して進めていきましょう。
企業経営理論
企業経営理論は中小企業診断士の知識の根本をなす、最も大切な科目です。絶対に理解しなければならない最重要科目といえます。
企業経営理論は「経営戦略論」「組織論」「マーケティング論」の3つに大きく分かれています。これらの科目では企業の現状分析や問題解決について学びます。
中小企業診断士の仕事をする上でも重要なのはもちろんです。それに加えて勉強していて楽しいと感じやすい科目です。モチベーションの維持はしやすいでしょう。
財務会計
財務会計は多くの人にとって最も時間のかかる科目です。後回しにせずに多めに時間を取って対策しましょう。
財務会計で学ぶ内容は財務諸表の読み方など経営分析に役立つ内容です。簿記やファイナンスというとイメージしやすいでしょうか。
簿記の資格を取得している人はご存じかもしれませんが計算問題が多い科目です。とにかく問題演習を積んで早く正確に解答できることを目指しましょう。
1つだけ注意点があります。それは1次試験では電卓が使えないことです。そのため手計算で問題を解くことになります。普段の学習から計算の精度とスピードには気を配りましょう。
運営管理
運営管理は重要科目の中では少々異色の科目です。難易度がやや低く比較的得点しやすいのです。
大きく「生産管理」と「店舗・販売管理」の2分野から構成されています。どちらかというと理解よりも暗記が重視される科目です。
そのため、運営管理は他の暗記科目と同じく学習スケジュールの後半にもっていくのも一つの手です。とはいえ、重要な科目であることに変わりはないので、対策をおろそかにしないように気を付けましょう。
次点で重要な科目
次点で重要な科目が「経営学・経済政策」および「経営法務」です。どちらも2次試験との関連はあまり高くありませんが、学習に時間がかかります。どちらかと言えば早めに着手しておいた方が良いと言えます。
経済学・経済政策
経営学・経済政策は難易度が高い科目です。苦手としている受験生も多く、人によっては一番の鬼門でしょう。
この科目では図やグラフが多数登場します。多くの人にとっては初めて見るものなので、読み解くのが非常に困難です。そのうえ計算問題も出題されます。
図表の読解や計算が苦手な人にはとことん厄介な科目です。足切りラインにひっかからないように注意しましょう。
経営法務
経営法務は経済学・経済政策に比べるとはるかに簡単な科目です。学習に必要な時間も短く済みます。
その名の通り経営に関わる法律について学ぶ科目です。試験範囲に含まれる法律は幅広いのですが、出題されるものには偏りがあります。傾向をつかんで効率よく学ぶことが大切です。
重要度の低い科目
残りの「経営情報システム」と「中小企業英英・政策」の2科目は重要度の低い科目です。2次試験との関わりが薄く、かつ暗記で対処できます。
本番直前の詰め込みでも対処できますが、足切りのこともあるのであまりギリギリにならないようにしたいものです。暗記で良いからと舐めすぎず、2周くらいは最低限済ませておきましょう。
経営情報システム
経営情報システムではITの知識が問われます。あまり高度なものは出題されず、情報処理技術者試験のITパスポートなどを取得している人ならば対策は容易です。
企業経営理論などに比べると関連は低い方ですが、2次試験に全く出題されないというわけではありません。基礎的なITの知識は2次試験でも問われます。
中小企業経営・政策
中小企業経営・政策は中小企業診断士の試験科目の中で最も重要性が低い科目です。問題はほぼすべて「中小企業白書」からしか出題されません。
「白書」だけで済むので、他の科目と比べると対策は非常に容易です。ただし、過去問から出題されることはないので、他の科目のように過去問ベースの対策はできません。
各科目の難易度や勉強時間についてより詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
いつから勉強を開始する?
勉強を始めるのは早いに越したことはありません。どちらかと言えばいつ受験を決心したかによります。
1年間しっかり勉強できるだけの時間があるなら一発合格を狙うべきです。しかし、半年程度しかない場合には方針は変わってきます。
基本的には1年は勉強できるようにする
6月から11月までに勉強を始めた場合、1年近く学習期間があります。試験そのものは8月ですが、申込期限は5月末です。6月以降に決心すると、必然的に翌年の試験を受験することになります。
1年あれば十分一発合格できる可能性があります。着実に学習を進めましょう。
余力がある場合は、2次試験の対策も並行して行うと、なお良いです。
試験までの残り日数が半年前後の場合
2月から5月くらいまでに受験を決めた場合、半年弱で試験に臨むことになります。こうなると一発合格は難しいので、1年半かけての合格を見据えて対策を行います。
最初の試験では科目合格を目指しましょう。2年目に残りの科目および2次試験対策を行う作戦です。
特に、1年目に経済学や中小企業経営・政策などの科目に合格しておくのがおすすめです。どちらも2次試験にあまり関係しないので、1次試験と2次試験の対策を同時に進めやすくなります。
具体的な勉強の流れ
問題集が学習のメイン
中小企業診断士の勉強の基本は問題集です。重要科目の多くが理解中心なので、テキスト丸暗記だけではうまくいきません。問題演習が重要です。
テキストを一読した後はすぐ問題演習に入りましょう。そしてわからなかった部分を中心に復習していきます。このような形をとることで、重要ポイントに絞った学習ができ、時間効率も良くなります。
逆に、テキストを隅々まで覚えてから問題を解くのはお勧めしません。重要度の低い枝葉末節まで覚えることになるので時間効率で劣るからです。
また、テキストを読むことを意識しすぎるて演習量不足になっては本末転倒です。財務会計の計算問題が特にそうですが、アウトプットを繰り返さなければ問題を解くスピードは上がりません。
過去問はいつから着手する?
試験において最も重要なのが過去問です。これは中小企業診断士でも同じです。
過去問から似た問題が出題されることも多く、重要な論点の把握には欠かせないものです。過去問で出題されている内容は合格には必要不可欠な内容とさえ言えます。
ここで重要なのが過去問にいつごろから取り組み始めるかです。多くの人は試験の傾向になれるために試験が近づいてから始めるのでしょう。
しかし、この記事ではもっと早くから過去問に取り組むことをお勧めします。普段の学習の中で積極的に活用していきましょう。
過去問を早くから解くことで、試験本番のレベルを知ることができます。今の自分との差がわかれば今後の指針にもなります。なにより、頻出問題がわかります。
ただし、例外が1科目だけあります。中小企業経営・政策の科目だけは過去問からは出題されません。中小企業経営・政策の科目だけは過去問からは出題されません。頻出問題を知るためではなく、試験のレベルと傾向を知るために取り組むくらいにしましょう。
反復学習が基本
勉強の基本は反復演習です。一度解いた問題も必ず解きなおすことを心がけましょう。復習は一番大切な学習過程です。
暗記科目、理解科目どちらも一度解いただけで覚えられるという人はほぼいないはず。問題集がボロボロになるまで何度も反復学習することで定着させます。
また通信講座についてくるスマホで学べるオンライン問題集も、通勤時間などに手軽に周回しやすいのでおすすめです。
毎日勉強する時間を取る
当然と言えば当然ですが、毎日勉強する癖をつけましょう。予備校の授業と違い、独学では一日の勉強時間も自分次第です。怠けようと思うといくらでも怠けられます。
「ローマは一日にしてならず」ということわざもあります。日々の積み重ねが最終的に合格という成果につながるのです。
プロ直伝の勉強法も参考になる
短期合格のためには効率の良い勉強法が大切と分かってはいても、自分の勉強法が正しいかどうか判断がつかないですよね。そんな時は資格試験のプロの意見を参考にするのが近道です。
大手資格学校のクレアール では、同学校に在籍するベテラン講師の執筆した中小企業診断士試験の攻略本「非常識合格法」を無料プレゼントしています。
この記事でお伝えした科目別の特徴やおすすめの学習スケジュールについてもより詳しく記述されており、中小企業診断士試験に最短合格するためのノウハウが凝縮された一冊だと言えます。
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二次試験の勉強も同時に行うべき?
一次試験の勉強と同時に、二次試験の勉強を進めるべきなのか不安に思っている方もいらっしゃるでしょう。
結論から言うと、基本的に二次試験の勉強を並行して行う必要はありません。
しっかりとスケジュール通りに進めていれば、一次試験終了後から勉強を開始して、十分に間に合うと考えられるからです。
上記のように、一次試験の勉強中に余裕があると感じる場合のみ、早めに着手しておくと良いでしょう。
また、並行して二次試験対策を行う場合は、事例4の財務・会計の計算問題を行うことがおすすめです。
事例4の財務・会計で出題される計算は、一次試験の計算よりも難易度が高く、一次試験の計算が楽になる可能性があります。
この部分を得点源にしておくと、安定して高い点数が取りやすくなる、と言う点でも早めに着手することがおすすめだと言えます。
中小企業診断士の独学スケジュールまとめ
中小企業診断士の独学スケジュールまとめ
- 1年あるなら一発合格を、半年程度なら科目合格を目指す。
- 企業経営理論や財務会計などの2次試験に関連する科目を優先する。
- 過去問は普段の学習に取り入れる。
- 暗記科目は後回しで良い。
ここまで、中小企業診断士を独学で受験するためのスケジュールについてご紹介してきました。中小企業診断士は覚える量が多く、学習期間が長くなりがちです。
短期間の対策で終わる試験と異なり、学習スケジュールや科目ごとの優先順位が重要です。効率よく学習することで合格を勝ち取りましょう。