公務員は司法書士試験の免除あり?詳しい内容や司法書士取得のメリットまで解説!
「司法書士の資格って公務員を持っていると取得しやすいの?」
「公務員が司法書士を取得するとどんなメリットがあるの?」
そんな疑問をお持ちではないでしょうか?
公務員の資格を取得すると、司法書士に興味を持つのは自然な流れです。他方で司法書士の試験は難しいとよく言われます。
公務員になると試験に有利になるのか、公務員から司法書士になるとどんなメリットがあるのか気になることでしょう。
この記事では、公務員が司法書士試験を受ける際の利点や合格後のメリットをわかりやすく解説していきます。
読み終えた頃には、公務員という職業を活かして司法書士試験に受かるための方法や受かった後の資格の活かし方が明確に理解できることでしょう。
司法書士の魅力や試験をざっくり説明すると
- 公務員は裁判所事務官などとして一定期間以上勤務することで、試験を免除して司法書士資格を得られる
- 司法書士は基本的に自由業で自分のやりたい仕事を追い求められる
- 合格までに必要な勉強時間は3000時間以上と超難関資格だが、近年は合格率は上昇傾向
- 合格レベルに達するには2年近くかかる
公務員は司法書士資格取得に有利
司法書士の資格を取得するためには、2つの方法があります。まず1つは司法書士試験に合格することです。毎年7月に試験があり、その試験に合格した人が10月にある面接試験を受けられます。最終の合格発表は11月上旬です。
そしてもう1つが公務員になって試験を免除してもらう方法です。
具体的には裁判所事務官、裁判所書記官、法務事務官、検察事務官として10年以上勤務して法務大臣の認定を得ることで、司法書士の資格を取得することができます。
法務局に勤めていた人が、退官後に司法書士登録をすることがよくあります。司法書士登録をする人は大半が司法書士試験に合格した人ですが、このように公務員経験を利用して司法書士資格を取得する選択肢もあります。
公務員は司法書士試験を受けやすい
公務員試験を受けた方ならおわかりでしょうが、公務員試験と司法書士試験では共通する科目が多々あります。
具体的には憲法、民法、刑法、そして商法(会社法)です。0から勉強するのは大変ですが、ある程度経験のある科目であればとっつきやすいことでしょう。
特に憲法や刑法は、司法書士試験では難易度が比較的低いのが特徴です。条文レベルを問うシンプルな問題がほとんどですので、公務員試験で鍛えた実力をここでいかんなく発揮できます。
ただし、民法と商法(会社法)は要注意です。この2つは公務員試験とは比較にならないほど、細かい知識が要求されます。民法の物権や会社法では他の資格試験の追随を許さない緻密な知識を身につけなければなりません。
この2つの科目では、今まで培った知識をベースに深く掘り下げて行く必要があるのです。
人によってどちらが難しいかは異なる
それでは公務員試験と司法書士試験ではどちらが難しいのでしょうか?公務員試験には色々な試験があり、一概に言えない面もあります。
公務員試験では専門科目と教養科目があり数的処理では数学の知識が必要です。数学が苦手な方には公務員試験の方が難しいと思われるでしょう。
また試験科目は司法書士試験より公務員試験の方が多いので、公務員試験の方が準備は大変と感じる方もいると思われます。
ただ専門科目である法令については司法書士試験の方が難しいです。
司法書士試験で問われる法律知識は広範囲でかなり細かいものが多く、これをカバーするにはかなりの勉強量が必要です。とはいえ、国家公務員の総合職クラスは東大生でも難しい試験ですので、それと比較すると難易度は劣ります。
免除制度を使わず取得する人も多い
他方で公務員に籍を置きつつ、試験に合格して司法書士になろうとする人もいます。例えば自分の力を試したい、相続手続きや借金等で困っている人の手助けがしたい、という思いから勉強を始める人もいます。
司法書士は自営業の人が多いので仕事は自分次第です。人生は1度。公務員で10年以上勤続していると司法書士に仮になったとしても活動できる時間は限られてきます。
司法書士試験は、他の資格試験に比べて、一度社会に出た後に自分の可能性を求めて勉強を始める方が多いのも特徴です。
公務員が司法書士を取得するメリット
資格はないと一定の仕事ができせん。勉強する過程で知識を身につけ、資格を取得することで視野を広げられるのです。それでは公務員が司法書士を取得するとどのようなメリットがあるのでしょうか、そのメリットを紹介します。
仕事を自由に選べる
公務員は組織の中で動いていきますので、仕事を選ぶことはできません。上司からの命令を受けて仕事を処理し、また数年に1度は異動がありますので、自分のやりたい仕事が中々できない可能性があります。
他方、司法書士として独立した場合、自分のやりたい仕事を追求できます。また司法書士事務所は自宅でも開業できますので、初期投資のリスクは抑えられます。ただし、依頼には重い責任を背負うことになります。
年収アップを望める
司法書士の平均年収は877万円と高収入です。国家公務員の平均年収は約692万円、県庁職員の平均年収が654万円ですから、それらと比較しても高いことがわかります。公務員で、破格の年収を得るのは中々難しいです。
他方、司法書士として独立したのであれば、波に乗れば年収3000万円も無理な話ではありません。
というのも司法書士業界では、過払いや住宅ローンの借換など何年かの周期で大きなうねりがあります。その時々のニーズをうまく掴み、業務に対応していけば莫大な年収を獲得するのも夢ではないからです。
副業禁止に引っかからないよう注意
ところで、公務員の人が司法書士試験を受けるのは副業禁止にひっかかるのでしょうか?結論として副業には当たりません。また司法書士試験に合格したとしても上記のような副業禁止には当たりません。
他方、公務員として働きながら司法書士登録を行えば、副業禁止に該当します。今後、司法書士登録をして活動していきたいのであれば、公務員を退職しなければなりません。
公務員が司法書士になるための勉強法
司法書士試験の概要
ここでは司法書士試験の中身について見ていきます。
1次試験は、憲法・民法・会社法・刑法が、2次試験は不動産登記法・商業登記法・民事訴訟法・民事執行法・民事保全法・供託法・司法書士法が出題されます。さらに書式では不動産登記法と商業登記法の記述問題が出題されます。
なお、1次試験は午前中に行われ、2次試験と書式は午後の同じ時間内に行われます。
試験の合格率
1次試験、2次試験、書式の問題のそれぞれに足きりがあり、1次か2次で足きりになると書式の問題は採点されません。この足きりは年によって異なります。合格率は毎年3%前後で以前より上昇しましたが、依然として狭き門です。
必要な勉強時間と学習法
司法書士試験は試験科目が多くて細かい知識が問われるので、公務員試験よりも多くの勉強時間を確保する必要があります。
そのため効率よく勉強しなければなりません。合格者のほとんどが何らかの形で予備校等を利用しています。
合格には3000時間以上の勉強時間が求められます。毎日5時間勉強したと仮定すると2年近くかかります。基本的な知識はテキストと条文を拾っていきます。
民法では判例の知識が問われますから、判例付き六法を使うと良いでしょう。
基礎的事項を身につけたら過去に出題された問題を丁寧に解いていきます。
1 次試験の出題数と傾向
択一形式の出題数は35問です。次に出題科目について見ていきます。
①憲法 3問
単純正誤の問題が多く、公務員試験での知識があれば十分です。
②民法 20問
民法を制すれば司法書士試験を征します。民法は幅広く出題されるので最も多くの学習時間を要することになります。不動産登記を扱う関係上、物権から10問近く出題されるのがこの試験の特徴です。
③刑法 3問
単純正誤の問題が多く、難易度は比較的低いです。
④会社法 9問
民法同様、守備範囲が非常に広く、細部の事項まで知識が必要です。組織再編の箇所は条文が特に読みにくいですが、「習うより慣れろ」です。
2次試験の出題数と傾向
択一形式の出題数は35問です。次に出題科目について見ていきます。
①不動産登記法 16問
総論と各論から満遍なく出題されます。抵当権と根抵当権は書式でもほぼ毎年出題されますので、ここは丹念に知識を拾う必要があります。
②商業登記法 8問
不動産登記法同様、総論と各論から満遍なく出題されます。株式会社の出題が多いですが、持分会社や各種法人登記も出題されますので、過去問を通して大枠を捉える必要があります。
③民事訴訟法 5問
訴訟手続きの全般に渡って出題されます。基礎的事項と条文をしっかり押さえれば得点源になります。
④民事執行法 1問
読みづらい条文が多く受験生泣かせですが一通り学んだら、過去問を解いてみましょう。不動産の強制競売の概要を把握すれば、後の理解はスムーズです。
⑤民事保全法 1問
民事執行法よりも条文は読みやすいです。民事訴訟法と民事執行法を理解すれば、学習は容易です。
⑥供託法 3問
総論、弁済供託、執行供託等多々ありますが、一通りの知識をマスターすれば過去問を解いて傾向を把握しましょう。
⑦司法書士法 1問
意外に手の回らない科目です。テキストを一通り読み、過去問を解くことができれば問題ありません。なお、秋の面接試験では、司法書士法を詳しく問われるので、合格発表後面接試験前の約2週間でブラッシュアップしていきます。
優先科目は
ここまで、11科目の試験の出題数と試験勉強の対応法を説明しました。民法・会社法・不動産登記法・商業登記法の4法が学習の中心です。後の科目は概要をマスターすれば、過去問を解いて感覚をつかむことです。
主要4法の習熟度合いで合否が分かれますので、手をつける際は主要4法から先に学習を始めるとペースが作りやすいと言えるでしょう。
その他公務員が有利な資格一覧
資格試験は色々あります。公務員になると試験科目が免除されたり、また試験そのものが免除されるなど、優遇されるものもあります。ここでは司法書士以外の資格についての業務と試験科目、優遇条件について紹介していきます。
行政書士
行政書士は主に行政庁に提出する書類の作成を業務とする資格です。
具体的には建設業の許可、宗教法人の許可など行政庁への許認可手続きを行う他、戸籍等を集めて遺産分割協議書を作成するなどの業務を行っています。
行政書士試験は公務員試験と同様、一般教養と専門科目に分かれていて試験の守備範囲が広いのですが、公務員試験と重なっている分野が多く受験しやすいのが特徴です。
また、行政職に17年以上勤務すると行政書士の資格が取得できます。
市役所等を勤め上げた公務員の方が行政書士登録をすることが多いのも、この資格の特徴となっています。
中小企業診断士
中小企業診断士は、主に中小企業の経営課題等についてアドバイスを行うことを業務としています。コンサルタントと違い、この試験に合格した人だけが中小企業診断士と名乗れます。
独立して活動する方もいれば、企業に在籍しつつ中小企業診断士という資格を活かす方も多いです。銀行員として中小企業の経営をサポートしたり、商工会議所等で勤務しながら中小企業のコンサルをされる方もいます。
試験は、1次試験と2次試験に大きく分かれ1次試験では経済学・経済政策や財務・会計等の科目が出題されます。公務員の場合は、東京での養成課程を受ける必要はありますが、試験科目が免除されます。
※現在は中小企業診断士試験における公務員の免除は実施されていません。
社労士
社会保険労務士は、主に会社の労務関係の仕事を取り扱います。具体的には労働保険の適用や就業規則の作成、年金についての事務を行ったりしています。
試験は労働法令や社会保障法令、一般常識などが出題されます。公務員として労働社会保険法令関係に従事した期間が通算して10年以上であれば、試験科目の一部が免除されます。
なお、従事していた立場と業務により免除科目が異なります。例えば、国家公務員で労働基準法等の業務に従事していた者は、労働基準法と労働安全衛生法の試験科目が免除されます。
弁理士
弁理士はアイデアや発明などの知的財産権に関する業務を行います。具体的には特許や商標、実用新案などの権利を特許庁に対して出願するのが主な業務です。
試験科目は、特許・実用新案に関する法令、意匠、商標、工業所有権や著作権法、不正競争防止法などが出題されます。主に理系の人が受験しています。特許庁の審判官や審査官を7年以上行うと、無試験で弁理士資格が与えられます。
税理士
税理士は税金に関する申告や相談を行うのが業務になります。代表的なものとしては会社の法人税の申告や個人の所得税、相続税の申告などが挙げられます。弁護士と並ぶ知名度の高い資格です。
試験は共通科目の簿記論と財務諸表、どちらか1つを選択しなければいけない所得税と法人税、あとは選択科目の酒税や贈与税等があります。
10年又は15年以上税務署に勤務した方などは、経験した職域に応じて試験科目が免除されます。税理士は、主に税務署OBからなる公務員出身者が他の士業に比べて多いのも一つの特徴です。
公務員の司法書士試験免除まとめ
公務員の司法書士試験の免除まとめ
- 裁判所事務官等を10年以上勤務することで、司法書士資格が取得できる
- 公務員試験と司法書士試験では、試験科目が複数科目で重なっている
- 自由とやりがいを求めて司法書士試験を受験する公務員や社会人は多い
- 効率的な勉強をするために、合格者のほとんどが予備校を利用している
- 他の資格でも、公務員の場合は試験に関して優遇措置がある
ここまで、司法書士試験での公務員の優遇措置や、合格率、勉強方法について見てきました。
前述したように合格率は低いです。また公務員試験で共通する科目はあるものの、試験範囲は広くて細かい知識が求められます。
とはいえ、共通する試験科目は多々あります。公務員試験に合格した方は憲法や刑法をそのまま武器にできます。
民法や会社法は、基礎的なことは押さえてますので、好スタートを切れるでしょう。
資格はあって邪魔になるものではありません。概して司法書士は独立志向をもつ人が多く、開業後は人から感謝されながら仕事に勤しんでいる人が多いです。
読み終えた皆さんが、新しい扉を開けることを心待ちにしております。