社労士手続きの電子申請は便利なの?メリットや使い方を徹底解説!
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社労士
のんびり社労士いけい
「電子申請って便利なの?」
「電子申請って簡単にできるの?」
そんな疑問をお持ちの社会保険労務士(以下、社労士)の方はいらっしゃいませんか?
「知ってはいるけど導入するのは大変そうだし・・・」
「紙で申請するのに慣れてしまっているから・・・」
そんな風にお考えの社労士の方も、この記事で電子申請について詳しく説明しますので是非ご覧ください!
今後、一部企業では電子申請の義務化も予定されています。
この記事を読んで電子申請についてよく知って、導入を検討してみてはいかがでしょうか?
電子申請をざっくり説明すると
- 時間・場所の制約が無くなりスムーズな申請が可能になる
- 一方、デメリットも存在する
- 政府主導で電子申請の必須化が進む
社労士の電子申請で使えるe-Govとは
電子申請を行うサイトはこちらです。
e-Govという総務省が運営する総合的な行政ポータルサイトです。
従来紙によって行われていた申請や届出などの行政手続を、インターネットを利用して自宅や会社のパソコンを使って行えるようにするものです。
e-Govでできることは
各府省が所管する様々な行政手続について申請・届出を行うことができます。
社労士が扱う分野では労働保険、社会保険の諸手続きを電子申請できるようになっています。現在では、算定や年度更新などの年次業務を含めてほとんどの手続きをこちらのサイトから申請できます。
各種申請手続きを職場のみならず、自宅のパソコンからもオンラインで行うことができるサービスです。
紙の手続きとの違い
以前から行われていた方法では、各種申請用紙すべてに必要な情報を記入し、会社の代表印と社労士印を押して役所の窓口に提出する必要があります。
例えば新しく入社する人がいるとき雇用保険、社会保険(健康保険、厚生年金)とそれぞれの資格取得届を用意し、それぞれの役所の窓口に提出する必要があります。同じタイミングで出す書類でも出す窓口が違うので、手続きに時間も手間もかかるものでした。
電子申請の手続きなら窓口に行かずに全て一つのパソコンから手続きができます。
社労士事務所が電子申請を使うメリット
電子申請は時間や場所を選ばず、いつでもどこでも役所に書類の申請をすることができます。
すべての書類に手書きで記入し、事業主印を貰い、社労士印を押す手間も必要ありません。
電子申請のページに会社情報などは登録しておくことができるので、使い回しできる部分も多く1件の書類の入力にかかる時間は手書きに比べると圧倒的に短縮できます。
一部の健康保険組合などの回送が必要な手続は紙で届出をしてという手間もありますが、電子申請によって多くの手続きが窓口に行かなくてよくなる分、かなり楽になると言えます。
4月の入退社の手続きなど多くの会社で事務手続きが発生する時期はとにかく役所が混み合うので待ち時間も凄まじいものでしたが、電子申請では役所で待つ必要はありません。
役所が開いている昼間に顧客などの人と会う仕事を入れやすくなりますし、顧客とのやりとりも電子データなどで完結できるので、個人情報を含む書類を書留などで送る手間や時間、経費も節約することができます。
また以前は電子申請のためには事業主の電子証明書が必要でしたが、今は社労士の電子証明書で申請することができるようになり導入しやすくなりました。
e-Govを使うとより便利な顧客
どのような顧客を扱う社労士が、電子申請(e-Gov)を利用すると便利になるのでしょうか?
前提として社員が多くなればなるほど電子申請を利用する方が便利になると考えられますが、その上でもぜひ導入すべき顧客をご紹介します。
全国展開している会社
申請書の提出は、各事業所ごとに必要となります。支店があるとそれぞれの支店を管轄する役所に申請する必要があります。ただし、一定の要件を満たすと手続きにより本社で一括申請できるものもあります。
社労士が手続きをするにあたって、色々な支店に書類を郵送して印を貰う為に確認してもらう必要も出てきたり、場合によっては遠くの役所に書類を申請する必要もあります。
電子申請ならネット回線でのやり取りができ距離に左右されないので、全国どの支店に対しても、時間やお金を気にする必要がありません。
つまり、全国どこにある企業と顧問契約を結んでも電子申請を利用すれば役所への申請に関しては問題ありません。
以上の点から、全国展開をしている企業は電子申請を導入するメリットが大きいと言えるでしょう。
入退社などの変化の多い会社
雇用保険、社会保険と資格取得に資格喪失と手続きの回数が多くなるので毎回の手続きを役所の窓口でするのは大変です。
入退社の多い企業は、電子申請を使うことで社労士の負担を減らし効率的な業務に役立てられます。
入退社に限らず、女性は出産にあたり産前産後休業や育児休業をとる可能性があります。
特に育児休業をする社員に関しては、定期的に職業安定所に申請する必要が出てきますので、電子申請を利用するととても便利です。
同様に60歳を超える高齢社員にも定期的に必要になる申請がありますので、年齢性別など多様な社員を抱える企業はメリットが大きくなると考えられます。
まだまだ利用率が低い
電子申請はとても便利な点が多いのですが、現状としては利用率が高いとは言えません。
社会保険、労働保険の分野では利用率10%ほど
行政手続全体のオンライン利用率はおよそ半数を超えています。
しかし社会保険、労働保険といった社労士の管轄する分野では2018年において総じて10%台以下というデータがあります。
利用率の低さがまだまだ顕著であると言えます。
利用率が伸びない理由
普及の低さの理由としては
-
面倒である
-
周囲に普及していないので始めようと思わない
-
そんなに申請の量が多くないので紙で充分である
などの理由が挙げられます。
電子申請の際、申請者が送信する電子データの安全性を確保するために実印に相当するものとして電子証明書が必要となります。
電子証明書の導入に対して抵抗があるということも利用率の低さに繋がっているということも考えられます。
また、申請件数が多くなると一括申請をするためのファイルを作るためにAPI対応の専用ソフトを用意する必要がありますが、それを用意できていない場合も考えられます。
ただ社労士は社労士専用ソフトを用意すれば一括申請にも対応しているので、導入しやすい環境にあるといえます。
今始めれば流行の先駆けに
紙の申請に慣れてしまっている方や資格をとって間もない方などは、電子化を始めるのにかかる時間や費用などの手間を考えてやりたくないと思うのも無理がないでしょう。
しかしその手間や費用を一回かけることで浮く時間や経費、電子申請をすることで得られるメリットを比較すると導入経費は必要経費といえるのではないかと考えられます。
これから電子申請は確実に増加し、必須化されるとされています。
なるべく早く導入することをオススメします!
電子申請のデメリットは?
電子申請のメリットは様々にお伝えしましたが、デメリットはないのでしょうか?
デメリットと考えられるものも残念ながら存在します。
一番は、電子申請を始める為に電子証明書の用意など、準備に必要な費用と手間がかかることでしょう。一括申請をするにはソフトウェアの導入も必要となります。
また、e-Govでの電子申請の進め方が煩雑なので、申請する件数が少ない場合は、紙で記入する方が早い場合もあります。慣れるまでは手続きを進めるのが難しく感じるかもしれません。
もう一点気をつけたいこととしては、電子申請を行うと手続きの完了までに日数がかかります。もし何か足りないものがあり返戻となると、返戻を受け取るまでの時間と再度申請を一から行うこととなり時間が余計にかかることになってしまいます。
窓口で手続きをするのが一番確実で早いことは事実ですが、慣れてしまえばミスをすることも減ってきますのでそんなに問題にはならないでしょう。
電子申請の義務化とは
「2020年、電子申請の義務化」
この言葉を聞いたことがありますか?
言葉の通り、2020年に電子申請の義務化が行われようとしています。
資本金または出資金等の合計額が1億円を超える法人などを対象に、労働保険と社会保険の一部の手続きを電子申請で行う事を義務化する省令が発令されます。
2018年3月に省令が公布され、2020年4月から施行予定となっています。
対象となる届出は以下の通りです。
社会保険(健康保険・厚生年金)
被保険者賞与支払届
被保険者報酬月額算定基礎届
被保険者報酬月額変更届
雇用保険
被保険者資格取得届
被保険者資格喪失届
雇用保険被保険者転勤届
高年齢雇用継続給付支給申請
育児休業給付受給資格確認票・育児休業給付支給申請
労働保険
労働保険概算
増加概算
確定保険料申告書
石綿健康被害救済法一般拠出金申告
以上が義務化が予定されている届出であり、申請の量が多いと考えられる届出が該当しています。
CD-Rなどの電子媒体ではなく電子申請をすることが義務化となるので、企業のみならず社労士も対応が必要となります。
社労士手続きの電子申請の利便性まとめ
社労士手続きの電子申請の利便性まとめ
- 窓口に行く必要がなくなり、いつでも申請できる
- 利用率は未だ低いが、早期導入のメリットが大きい
- 必須化に伴い、社労士も対応が迫られている
記事を読んで、電子申請はメリットも多いことがわかったと思います。
まだ利用率は低いですが、政府の方針もあり今後電子申請は必須化されていくと考えられます。
始めるまでに少し手間と費用はかかりますが、長期的に見て必要な投資と考えられますので、是非電子申請の導入を検討してみてはどうでしょうか?