障害年金を扱う社労士は儲かる?実態と申請する社労士の選び方を解説
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社労士
のんびり社労士いけい
みなさんは「障害年金」という年金をご存知でしょうか。
生まれながらに体にハンディキャップを抱えていたり、病気やケガで障害が残った時に受給できる年金制度です。
障害年金を受給するためにはいくつかの複雑な条件があるため、一般の方が自力で受給しようとしても非常に時間がかかったり、申請に失敗したりすることも珍しくありません。
近年ではそういった課題に対して、専門知識を身につけた社労士の方が申請を代行するサービスが広がり始めました。
そこでこの記事では、障害年金を扱う社労士の方の収入事情や、社労士に障害年金を依頼するメリット、実際の社労士選びのポイントまで解説していきます!
社労士と障害年金についてざっくり説明すると
- 障害年金の申請は非常に煩雑であり、申請代行の需要は高い
- 社労士に依頼することで短期で申請を通すことができる
- 報酬相場は高いが、支給開始日が早まるので顧客にとってもプラスになることが多い
障害年金を扱う社労士は儲かるのか
結論から言えば、障害年金を扱う社労士は多くの場合儲かっています。
「儲かっている」というと聞こえはあまりよくないですが、つまりそれだけ障害年金の申請で困っている方々が多く、需要の高い仕事だということです。
もちろん収入面でのメリットも大きな要因の一つですが、ほとんどの社労士の方が「困っている人を助けたい」という思いを元にやりがいを持って取り組んでいる業務です。
では、社労士に手続きを依頼した場合の報酬はどのくらいなのでしょうか?
一般的な社労士の報酬を見てみましょう。
障害年金が支給される後に社労士が受け取る報酬
- 支給に成功した障害年金の2か月分
- 初回の振込額の10%+消費税
- 「2」のどちらかの高い方にしている社労士が多い
- 「最低10万円+消費税」を設定している社労士が多い
また、着手金が「0円」と設定されている事務所の場合は報酬額が高額のところが多いようです。
例えば以下のようなケースもあります。
- 初回の年金の2ヶ月分
- 初回の振込額の10%+消費税
- 1+2を請求というケース
近年、障害年金の手続きを扱う社労士が増えている背景には、こうした儲かる仕組みと需要の高まりがあるのも要因の一つと言えるでしょう。
障害年金は手続きが難しい
障害年金の手続きは極めて煩雑であり、一般の方だとなかなか理解できず、申請に失敗し受給できなくなってしまうケースも多いです。
例えば、以下のようなものを知っておく必要があります。
-
厚生年金なのか、国民年金(基礎年金)かで受給額が違います
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厚生年金の場合は「1~3級」、国民年金は「1~2級」に段階が分かれています。一般的に受給額は厚生年金の方が多く、また、盲目や四肢の切断回復の見込みがないものと、うつ病などの回復の可能性がある場合とでは審査基準が異なります。
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受給資格を得るためには「10年間年金保険料」を支払っていなければいけません。ただし、収入が少ないなどの事情で保険料を免除、あるいは減額などが認められていた期間も支払期間に加算されます。
このように要件が複雑で提出する書類も多く、かなり煩雑な手続きといえます。
それだけに、社労士にしてみれば参入障壁が高く自身の事務所の独自の価値を見出しやすい点が挙げられます。
ただし、ちょっと手を出すだけだと中途半端になってしまいがちであり、後で述べるようにそのような事務所は顧客も集まってきません。顧客も専門的な知識をもつ社労士を求めているのです。
手間と時間をかけてこの領域に参入したものの顧客に選ばれなければ意味がありません。
障害年金を社労士に依頼する必要はあるの?
そもそも障害年金の手続きは社労士に依頼しなくても自分で行うことが可能です。それなのに社労士に頼む人が多いのは当然理由があります。
では、障害年金を社労士に依頼するメリットはどのような点にあるのでしょうか?
これには大きく分けて以下の4つをあげることができます。
- 申請を失敗するリスクを減らせる
- 時間的ロスを少なくできる
- 申請による多大なストレスをほぼゼロにできる
- 更新の際も社労士に任せられる
書類手続きが煩雑すぎて自分だと処理しきれない
障害年金の手続きは専門家である社労士でさえ難しいと感じるほど煩雑で難しいです。
例えば、申請に必要な書類だけでもこんなにたくさんあります。
申請に必要な書類
その1:年金手帳。提出できないときは理由が必要。
その2: 戸籍、戸籍抄本など住所を証明するもの
- 障害年金の請求書類を提出する前1ヶ月以内の有効なもの
その3: 診断書
- 医師又は歯科医師が作成したもの
- 障害認定日より3ヶ月以内の現状のもの
- 障害認定日と年金請求日が1年以上離れている場合は、直近の診断書(年金請求日前3ヶ月以内の現状のもの)も必要
- 疾患の内容によって別途追加書類が必要
その4:受信状況等証明書
- 初診時の医療機関と診断書を作成した医療機関が違う場合、初診日を確認する必要がある。添付不可の場合は理由を示す申請が必要。
その5:病歴・就労状況等申立書
- 知的障害で請求する場合で、療育手帳を持っている場合は不要。知的の状態を確認するための補足資料も必要。
その6:病歴・就労状況等申立書
- 知的障害で請求する場合で、療養手帳を持っているときは不要。障害の状態などを確認するための補足資料も必要。
その7:請求者名義の金融機関の通帳
より詳細は「日本年金機構 請求書の提出について」をご覧ください。
この他に、18歳未満の障害者の場合や、第三者による障害原因の場合、請求者本人の状況等によっても提出書類が増えます。
これらの書類や申請を自分の力だけで漏れなくやるのは、かなりの知識と労力が必要になります。
申請が通らず徒労に終わることも多い
せっかく苦労して書類を作って申請しても、通らないのは最悪のパターンです。
需給申請を社労士に頼む最も大きな理由はこの最悪の事態を避けるためとも言えます。
上記したように、これだけ多くの書類を揃えチェックするのは大変な労力です。
記入内容に間違えがあったり、書類が不足していた場合には何度も年金事務所や市区町村の役場を往復しなくてはいけません。
複数回の請求で費用がかさむ
申請の順序は以下のような順序でおこないます
- 年金事務所に行く
- 初診日を調べ、そこで受診状況等証明書を取得する
- 今の医療機関で診断書を作成してもらう
- 病歴・就労状況等申立書を作成する
- 年金事務所に申請する
これだけの工程なので、書類さえ用意してしまえば簡単だと思うかもしれません。
しかし、病院で作成してもらった書類や自分の書いた書類のミス、また書類の不足などがあると、何度も役所と病院を行ったり来たりしなければなりません。
それだけ交通費など余計な費用も掛かりますし、精神的なストレスも溜まってきます。
また、病院の書類に不備があったり、当日持参した書類が足りなかった・不備があった場合は、病院に書き直しをお願いしなければなりません。その場合は再発行の手数料を取る医療機関もあります。
特に多いのが初診日を忘れてしまって、曖昧な記憶で記入してしまったケースです。この場合は最悪、需給ができなくなってしまう場合があります。
このような理不尽な対応を是正するために、厚生労働省保険施行規則の一部改正により平成27年9月24日から救済措置が設けられました。
もしも申請が受理されなくても、何度か再審査請求が可能ですので、あきらめずに社労士に相談しましょう。
社労士に障害年金申請を依頼するメリット
社労士に依頼するメリットは非常に多くあります。
ここでは社労士に申請を依頼することによるメリットを具体的に見ていきましょう。
ほとんどの場合受給に成功する
社労士に依頼すれば、当然依頼費がかかります。しかし、自分で申請して受給に失敗しては元も子もありませんね。
上記したように提出する申請書類は多く複雑ですが、評判の良い社労士を探して、しっかりと作成して申請すればほとんどの場合は受給できるのです。
受給要件
- 障害認定基準を上回る障害状態であること
- 保険料を一定以上未納にしていないこと
- 障害認定日が到来していること
この3つをクリアしていれば、ほぼ需給は成功すると言えます。
最短で受給可能なので受け取れないお金が発生しにくい
受給が遅れるとその分受給額を損してしまうことになります。それを考えると、結果的に社労士に依頼した方がプラスになるでしょう。
障害年金の場合は年金事務所に請求した月の翌月分から支給が始まります。
そのため、自分で申請して失敗してしまった後に社労士に依頼して請求をやり直し場合、社労士による請求日の翌月分から支給になってしまいます。
このことから、はじめから社労士に依頼していた方が、もっと早くから支給されるので、受給開始が遅れてしまった期間分の年金が受給できなくなるという損失はなくなります。
多くの時間と負担を軽減できる
繰り返しになりますが、自分で申請手続きを行うのは相当な労力と精神的な負担を伴います。手続きにかける心労を考えれば社労士に任せてしまうのが得策でしょう。
障害年金申請を社労士に依頼することで、手間やストレスはかなり軽減されます。
一般的に、自分で申請して一度で通るというのは稀なことです。だいたい年金事務所に3,4回足を運んだり、病院や区役所に何度も書類の書き直しに行かなければなりません。
年金事務所や市区町村役場で説明を聞いても分かりにくく、場合によっては市区町村の担当者が間違っていたということもあります。
それだけ年金申請の仕組みは複雑といういうことです。このようなことを考えると、社労士に依頼するメリットは大きいと言えるでしょう。
障害年金の更新の際も安心
障害年金を受給している人のほとんどの方は、定期的に年金機構に診断書を提出して「障害年金の更新」を行います。
精神障害などの場合は、症状が改善することこともありますので、概ね3~5年毎の誕生日、3ヶ月前の月末頃に「障害状態確認届」が送付されてきます。
これを医師に記入・作成してもらい、その月末までに年金機構に提出します。遅れた場合は、支給停止などになりますので注意して下さい。
更新は、受給者の障害の程度が障害年金の受給に相当するものかを確認するために設けられています。症状が良くなっている、又は悪化していることが確認できた場合は、等級が変更されたり、支給停止になることもあります。
こうした定期的な手続きも、同じ社労士になら安心して更新手続きも任せられます。ただし、別途費用はかかります。社労士にとっても手数料が収入の一部になります。
障害年金申請の報酬相場
それでは、障害年金申請のおおよその報酬相場を確認してみましょう。
着手金 | 成功報酬 |
---|---|
なし | 初回入金額の10%または年金2ヶ月分 |
1万円 | 年金1~2ヶ月分 |
大別すると着手金を取るか否かの2パターンに別れています。
報酬については、それぞれの事務所によって多少違いはあるものの、大体どこも同じ料金設定となっています。
障害年金申請を依頼する社労士事務所の選び方
インターネットなどで検索すると、たくさんの社労士事務所が広告を出しています。あまりに数が多いので、どこにお願いしていいかなかなか判断がつきませんよね。
そこで、ここでは評判のいい社労士事務所の選び方のポイントをいくつかご紹介します。
障害年金を専門的に扱うことができる
何も障害年金だけに特化している必要はありませんが、専門的に扱った実績は確認したいところです。
社労士の中には、一度も障害年金請求の代行をやったことがないという人も珍しくありません。
このような実情から、老舗の社労士事務所を選べば安心という先入観を捨て、障害年金を多く扱っている事務所を選ぶ方が、その後のサポートも手厚く安心して任せられることでしょう。
相談員が社労士の方であるか
社労士事務所に務める職員(社労士の資格を持っていない)が主に相談に乗ってくれるところは、相談の質が保証されているとは言えないでしょう。
障害年金の相談に行ったときに、誰が相談を受けてくれるのかは大変重要です。
一部の社労士事務所では、社労士の人数が少なく資格を保有していない職員が対応することも珍しくありません。
しかし、障害年金申請業務は非常に複雑で専門的な知識が求められますので、相談に乗ってくれる方は社労士の方であるに越したことはないです。
融通のきく顧客対応ができるか
社労士事務所の体制も、選択の際の需要な要素です。小さな事務所だと社労士の数が少なく、その社労士が他の案件に対応中は電話対応などがなかなかできないと言った事態になりやすいです。
一概に大きな事務所が良いとは言えませんが、相談できる時間帯や事務所に所属する社労士の数、従業員数などは見ておくと良いでしょう。
社労士が外出していても、電話が繋がる、折り返しの電話をしっかりとしてくれるなど、誠意ある対応も事務所選びのポイントといえるでしょう。
事務所の評判にも気を配ろう
事務所の公式サイトに掲載された口コミは、正直なところ信ぴょう性は定かではありません。
なかなか口コミが本当かどうかは見分けがつきにくいところです。最も良いのは知人からの生の口コミです。
やはり、親身になって対応してくれる社労士が一番です。障害年金の場合は、申請の仕方次第で等級が下がってしまったり、最悪支給されないということもあります。
また、更新の手続きも年に数回あります。その際の対応がずさんでは、等級や支給判断に影響してしまいます。
市区町村の担当者や年金事務所、またはNPO法人障害者支援ネットワークなどの専門機関で、社労士を紹介してくれる機関もありますので、一度相談してみるのもいいでしょう。
また、全国対応していらっしゃる障害年金専門の社労士事務所もございますので、是非ご参考にしていただければ幸いです。
社労士と障害年金まとめ
社労士と障害年金まとめ
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障害年金の申請を個人が自力で行うのは困難
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社労士に依頼することによるメリットは非常に大きい
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社労士を選ぶ際は専門性やサポートの充実度をチェックしよう
障害年金に限らず、年金手続きは煩雑で素人が申請しようとすると、とても時間と労力を必要とします。
一方で社労士に依頼することで、労力や時間を大幅に軽減できるだけでなく、結果的に金銭的にもプラスになることが多いです。
この記事が社労士の方、あるいは障害年金の申請についてお困りの方の一助となれば幸いです。