社労士受験から実務・キャリアまで|社労士YouTuber伊計さんに取材しました!
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社労士
のんびり社労士いけい
「社労士の受験前から現在まで一貫した話を聞いたことがない」
「社労士試験の勉強のモチベーションとなる話が聞きたい」
と考えている方もいるのではないでしょうか?
今回は現役の社労士として活躍し、FunMake所属クリエイター「のんびり社労士いけい」としてYouTubeでも社労士試験の勉強に役立つ公的年金に関わる情報を発信している伊計大樹さんのお話を伺いました。
社労士を目指す前から、受験生時代、合格後の仕事、社労士業界の今後についてまでを一貫して語っている貴重な記事です。
ぜひ、最後までご一読ください!
社労士試験に挑戦するまでの紆余曲折
本日はお忙しい中、インタビューに応じてくださり、ありがとうございます。
「資格Times」を運営しております、株式会社ベンドの清水です。
よろしくお願いします!
社労士Youtuberの伊計です。よろしくお願いします!
よろしくお願いします。
早速ですが、伊計さんが社労士を目指した背景からお話を伺いたいです。
フリーランスの世界に身を置き社会保険の重要さを痛感
実は私は高校卒業後、漫画を描くことを学ぶ専門学校に通っていました。ところがろくに絵を描かずに自主制作映画の製作活動に没頭していたんです(笑)
専門学校卒業後は、アルバイトをしながらフリーランスとしてライターの仕事や映像等の創作活動を24歳くらいまでしていました。
後に民間企業に勤めるようになった際、これまで休みの理由を問わず成果物を納品出来なければ収入がなかったものが、休職中でも一定の生活保障として支給される健康保険の傷病手当金、また失業中に支給される雇用保険の基本手当等の存在を知った時、率直に社会保険や雇用保険ってすごい!と感動したことを覚えています。そこから社労士という資格を知るきっかけになりました。
社労士試験を目指すまでにもこのような紆余曲折があったのですね。
このような苦労と制度に救われた原体験があると、社労士を目指す固い決意が持てそうです。
思い立ったらすぐ行動する性格なのですが、高校卒業以来まともな勉強をしていなかったので、正直全く自信がありませんでした。
最終目標は社労士資格でしたが、段階を踏んで力を養いたいと思い、法律資格の中で当時は初学者でも挑戦しやすいと言われていた行政書士試験に合格してから社労士資格を目指すことにしました。
行政書士試験で手も足も出なければ資格試験の勉強はきっぱりやめようと。法律初学者でしたが、首尾よく行政書士試験には合格できました。
その後、社労士試験には3度の挑戦の末、合格することになりました。
伊計さんの受験生時代
受験生時代のモチベーション
行政書士にスムーズに合格できても、社労士試験では苦労をされたのですね。
どのようにモチベーションを保たれていたのですか?
私の場合、踏ん張って資格試験に合格して、人生を好転させたいという思いがありました。資格に委ねるのではなく、人生を選択してやるという気持ちです。
今思えばネガティブな感情ほど自分を突き動かす強い原動力になっていたと思います。また、社労士試験の学習内容自体が仕事や日常生活に関わる内容ばかりだったので、試験のための勉強に留まらなかったことも大きかったと思います。
社会人受験のメリット・デメリットは?
伊計さんは一度働いた経験を経て、受験勉強に臨まれたわけですが、社会人受験の有利な点やハンディなど感じたことはありましたか?
社労士試験は労働基準法や労災、健康保険に年金など、社会人の方が身近に感じられる学習内容が多いです。そのため、社会人の方だからこそ知識として入ってきやすいので、社労士資格を学ぶことはお勧めですね。
その反面、学生等の方と比べると時間の確保が課題になると思います。
合格を勝ち取った勉強方法
3年間の受験生時代ではどのように勉強を進めていたのですか?
すでに行政書士の勉強をしていたため、学習習慣はある程度ありました。それでも自宅で勉強するのが大の苦手。集中力がないんですね。
自分の性格や習慣を考えると自習室を利用した方が良いと思い、通学スタイルの予備校に通っていました。
1年目は社労士試験の学習範囲の科目をこなすことで精一杯(笑)得点はできても正答の理由を説明できないような問題も数多くありました。
2年目は択一式試験で全科目7割をどうにか確保できそうというレベルに達しましたが、選択式試験の社会保険一般常識で3点を確保できませんでした。
そして、3年目は独学に切り替えて直前期だけ予備校に通い、ようやく合格することができました。
2年目と3年目でレベルアップしたと感じることはありましたか?
一問一答形式の問題で正誤の理由を説明できるようにすることを意識していました。声にだして人に説明をするようなイメージです。身振り手振りでずっと一人言をブツブツ言っていましたね(笑)
正誤が正解と一致しているかではなく、正誤を判断した理由が正解と一致しているかを突き詰めていきました。
正直、手間のかかる取り組みでしたが、この学習方法のおかげで3年目には択一式試験の合計得点で10~15点と飛躍的に点数を伸ばすことができ、受験をした5回の模試すべてで合格基準点の目安になる7割を超える56点以上を取ることができました。
情報の一元化と学習時間の確保も意識
その他にも3年間の受験を通じて意識されたことはありますか?
「情報の一元化」と「勉強時間の確保」の2点です。
私の場合、予備校から提供される科目ごとのテキストに情報を集約することを意識していました。配布されるレジュメや書き留めたメモ等も「情報の一元化」の一環としてすべてテキストの該当箇所に張り付けていました。
復習する際にはテキストを開けばいいだけという状態を作ることで、直前期では効率的に復習が出来たように思います。
「勉強時間の確保」については、私の場合、週に25時間は社労士試験の勉強をすることをルール化していました。そのため、予備校でのカリキュラムの学習時間も含め、平日2~3時間+土日で10~15時間程度の社労士試験の勉強をするようにしました。
週に25時間という数字はどのように決定したのですか?
当時通っていた予備校の講師の方に個別に相談したんです。学習時間の目安について週あたり25~30時間程度学習時間を確保できている受験生に結果が出ている傾向があるということを教えて頂きました。
学習時間がそのまま実力になるわけでは決してありませんが、一定の学習量をこなすことで学習の質が変わることは理解できました。
学習時間の捻出には頭を抱えましたが、電車での通勤時間を試験勉強に当てたり、60分ある昼休みも30分でご飯を食べ、残りの30分で1問でも多く問題を解くなど地道に勉強時間を積み重ねていきました。
明確な根拠を持って、数値目標を立てていたのですね!
実際に努力を続けられたことにも尊敬です。
厚生年金の問題は毎日解いた
特に重点的に対策した科目はありましたか?
2回目の試験勉強から厚生年金の問題は毎日最低1問は解くようにしていました。
厚生年金保険法の科目は制度の仕組みを掴めた人ほど得点源にできるようになりますが、思うように仕組みを掴めないままでいると、はっきりと差がついてしまう科目でもあります。
初めての受験の頃は厚生年金が最も苦手で、遺族厚生年金の学習に入った時期にサジを投げてしまい、予備校の授業をサボって一人カラオケをして帰ったこともありました(笑)
厚生年金で得点できるようにならなければ合格はないと思い、毎日年金に取り組むようになって苦手意識を克服することが出来ました。
現在ではありがたいことに実務で年金の知識は欠かせず、YouTubeでも年金をテーマにお話ができるほどの得意分野となっています。
どんな仕事をしてきたの?
続いては、社労士試験合格後のキャリアパスについてお伺いしたいです。
社労士試験合格後は人事労務に携わることができる職場に転職しました。
そこでは、社員の入社や退社の手続きをはじめ、健康保険に関する申請、女性社員の産休・育休、助成金の申請に関する業務を経験させて頂きました。
受験生時代に学んでいたことを実務の中で再確認することができ、社労士としてのレベルアップに繋がったと感じています。
そして2016年に自分で社労士事務所を立ち上げて現在に至ります。
社労士のやりがいと苦労
社労士の仕事を続けてきて、特にやりがいに感じることはなんですか?
どのお仕事でもそうですが、相手から感謝される時は何よりも嬉しいです。
それは相手が個人であっても、法人であっても変わらず、感謝されることはモチベーションとなっています。
一方で、特に仕事をしていて大変なことがあればお伺いしたいです。
特に個人のお客様の場合、報酬の支払いがないまま連絡が取れなくなることがないように気をつけています。
しっかり仕事に対する報酬を受け取るためには、お客様との信頼関係を築くほか、面談の際に思い違いがないよう、料金体系だけではなく具体的な金額感を伝えておくことを心掛けています。
社労士の仕事では、報酬をしっかりと頂くことにも神経を使うのですね。
今後社労士の活躍は見込める?
続いて、今後社労士資格を持っていることで活躍の余地はどれほどあるのかについてお伺いしたいです。
社労士資格保持者には「追い風」の状況が続くのではないかと考えています。
昨今の社会状況から雇用の維持のために活用できる雇用調整助成金をはじめ助成金業務のニーズが高くなっていることや、まだまだ従来の給与計算業務や社保手続き業務等の対応のため、採用枠を拡大している社労士法人も多いです。
さらに、勤め先の企業内で勤務等登録を行い「インハウス社労士」として人事労務を担って活躍している方もいます。
また2022年度には、年金制度の大きな法改正も行われるため、年金相談業務に携わる社労士にもスポットライトが当たりそうです。
実際に社労士が必要とされる業務量自体が増えているのですね。
私自身が30代実務未経験で人事労務として転職できましたし、40代実務未経験でも社労士事務所に入所して新しいキャリアに向かって挑戦をされている方もいます。
今後は、社労士が後見人制度に取り組んでいくケースやフリーランスで働く人たちの雇用関係を巡っての対応等、高齢化や働き方の変化に対応して社労士の需要は堅調と見込んでいます。
身につけたい社労士+αのスキル
社労士資格の他に、身につけていると活躍の幅が広がるスキルや資格として何が挙げられますか?
法人のお客様の場合、お話の中で税に関することをよく聞かれますね。税に関する知識が一定以上あったり、税理士の知り合いがいたりすると良いかもしれません。
また、お客様となる法人の社長の方等は年長の方も多いので、年金について詳しいと話に花が咲いたりします。
具体的な資格としては、簿記・FP・年金アドバイザーなど、取得することでお金回りのことに詳しくなれるものがおすすめです。
簿記やFP、年金アドバイザーなどの資格は単体では仕事を獲得することは難しいイメージがありますが、社労士との相性はとても良いのですね!
これら3つであれば日頃忙しい社会人でも現実的に目指せそうです。
伊計さんの今後の目標
続いて、伊計様がどのような活躍を目指していきたいかお聞きしたいです。
これから障害年金をはじめ年金手続きに関わることでお困りの方の役に立てるよう年金業務に取り組んでいきたいです。
年金には将来受給できる老齢年金の他にも障害年金や遺族年金といった年金があります。これらの給付を受けるべき人に受給して頂くことが、受給者本人だけではなく、支えるご家族のお役にも立てると思っています。
また、年金制度のより一層の周知を目指してYoutubeチャンネル「のんびり社労士いけい」で発信を継続していくこと、そして年金専門社労士の先生方や年金アドバイザー等の方とも協力し、年金制度の理解を深める機会作りにも挑戦をしていきたいと思います!
社労士資格があるからこそできる社会貢献を志されていて、感銘を受けました!
社労士受験生へのメッセージ
最後になりますが、社労士試験合格を目指す方に向けてメッセージを頂きたいです。
社労士資格は今後のキャリアの選択肢を広げることができる「資格の強みを活かしやすい資格」だと思います。
社労士試験で問われる知識の多くは、社会人として働く上で知っておきたいルールや万が一の場合に備えた保険関係、そして健康保険や年金といった生活上必要なものばかりです。受験中は多くの困難なことがあると思いますが、これからの人生を選択する素晴らしい挑戦にどうか胸を張ってください。
そして身近な家族や友人等の役に立つことから何か1つ始めてみてください。社労士試験に挑戦をするあなたを応援しています!
本日は貴重なお話、ありがとうございました!