働き方改革で社労士の需要は増加する?主な法改正の影響を完全解説!
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社労士
のんびり社労士いけい
「最近働き方改革ってよく聞くけど社労士に何か影響があるの?」
「働き方改革について社労士試験で出題されたりするの?」
最近、ニュースでよく目にする働き方改革ですが、こういった疑問をお持ちの方も多くいらっしゃると思います。
実際、政府が主導する働き方改革によって、社労士のニーズはこれまでになく高くなっています。
こちらの記事では、働き方改革が社労士に与える影響や、どのような面で需要が増えていくのかを解説していきますので、是非参考にしてみてください!
働き方改革と社労士をざっくり説明すると
- 働き方改革で企業を取り巻く環境が変わる
- 企業のアドバイザーである社労士の需要は増大する
- 社労士試験には、働き方改革について出題される見込み
働き方改革が社労士にもたらす影響
国策として進められている働き方改革の影響で、企業では雇用形態の多様化が実現しつつあります。
労働者にとっては、仕事と生活の両立を図ることができる点で、良い方向に捉えられています。
その一方、経営者サイドは従来の経営システムでは対応が難しい状況に立たされています。
会社内の就業規則の改正が必要となる等、煩雑な仕事が増えているのです。
そこで活躍するのが社労士です。
今、社労士には労働環境の変化等に直面する会社に、適切な助言を行う役割を期待されているのです。
企業が社労士に期待すること
社労士の有資格者のうち、およそ3~4割程度は独立せず、企業に就職している勤務社労士だと言われています。
近年はブラック企業が社会問題となり、働き方改革という国の方針まで打ち出されていますよね。
悪質な職場環境の改善に向け、従業員の労働環境の整備や長時間労働の中止、十分な給与の保証などが企業に求められており、無論、対応できていない企業には有望な人材が集まりません。
社会保険手続を整備し、人事評価や就業規則、労働契約書を正しく管理して快適な労働環境を用意することは、従業員のモチベーションになり、企業の収益を保証することにつながります。
社労士は経営者からも、労働者からも頼られる存在なのです。
働き方改革で社労士の需要が増加
そもそも政府が主導している働き方改革とは、労働者がそれぞれの事情に応じた働き方を、自分で選択できるようにして誰もがより多様で柔軟に働けるようするための改革です。
「一億総活躍社会」というフレーズをよく耳にしませんか?
老若男女問わず多くの人が多様な働き方ができるように政府が民間に働きかけているのです。
個々人にとって働きやすい環境を構築し、ライフステージに合った仕事の仕方を選択しやすくなることで、
- 国にとっては、労働者の増加に伴う税収増
- 企業にとっては、労働力の確保と生産性向上
が期待され、社会全体として良い影響が期待できる、というわけです。
社労士は労働関連の法律および社会保険の専門家であり、働き方改革による法改正などに専門的に携わることのできる国家資格です。
労働環境の改善は社労士の業務であり、働き方改革の進行によって社労士に対する注目度が高まっています。
実務上で一番多いのは就業規則の変更で、毎年法律が新しくなっているため、法律を遵守した形に内容を作り変える必要があります。
また近年、残業や未払い残業代が注目されているので、どのように残業を減らせばいいかという相談も多いようです。
身近なケース
働き方改革に伴い、「働き方改革推進支援センター」が47都道府県に開設されました。
働き方改革推進支援センターは、全ての事業主が利用することができます。
そこでは社労士などの専門家が、事業主から労務管理上の相談を受け、就業規則の作成方法、賃金規定の見直しや労働関係助成金の活用、といった個別相談支援等を無料で行っています。
社労士の将来性
厚生労働省がブラック企業撲滅に積極的な姿勢を見せる中、企業は悪評を嫌い健全な経営を目指すので、社労士の需要が無くなることはないでしょう。
また、働き方改革による労働の多様化が社労士の可能性と将来性が広げています。
それぞれの企業にあった就業規則や労働形態、賃金制度、社会保険料の適正化など、社労士が必要とされる仕事は確実に拡大傾向にあるためです。
働き方改革は社労士試験にも影響
働き方改革による法改正は社労士試験に影響をもたらすことが予想されます。
過去の出題傾向を踏まえてみると、社労士試験は直近の法改正が狙われやすい試験であることがわかります。今、注目されている働き方改革について出題される可能性は非常に高いでしょう。
労働基準法や雇用保険法など、社労士試験で学ぶ法律の大部分に働き方改革は影響するため、新聞やニュースなどで働き方改革関連の情報が流れていたらこまめにチェックするようにしましょう。
例えば、労働施策総合推進法の第一条を見てみると、
① この法律は、国が、少子高齢化による人口構造の変化等の経済社会情勢の変化に対応して、労働に関し、その政策全般にわたり、必要な施策を総合的に講ずることにより、労働市場の機能が適切に発揮され、労働者の多様な事情に応じた雇用の安定及び職業生活の充実並びに労働生産性の向上を促進して、労働者がその有する能力を有効に発揮することができるようにし、これを通じて、労働者の職業の安定と経済的社会的地位の向上とを図るとともに、経済及び社会の発展並びに完全雇用の達成に資することを目的とする。
② この法律の運用に当たっては、労働者の職業選択の自由及び事業主の雇用の管理についての自主性を尊重しなければならず、また、職業能力の開発及び向上を図り、職業を通じて自立しようとする労働者の意欲を高め、かつ、労働者の職業を安定させるための事業主の努力を助長するように努めなければならない。
とあります。
選択式問題での穴埋め問題または択一式問題において、制定された背景に関する出題が予想されますので、重要な条文には必ず目を通しておきましょう。
ちなみにすべての法律で共通して言えるのは、第1条には制定された背景や目的が述べられている事であり、超重要な条文です。
主な働き方改革の内容
長時間労働の改善
法改正に伴い時間外労働の上限が定められるようになりました。
これまでは実質無限に時間外労働をさせられたところを、残業時間の上限の原則としては月45時間、年360時間となり、違反に対しては罰則が科されるようになります。
ただし、労使協定を結ぶことで年720時間までは時間外労働時間が許可されます。しかし以下の3つの条件を守る必要があります。
- 休日労働を含み、2か月ないし6か月平均で 80 時間以内
- 休日労働を含み、単月で 100 時間未満
- 原則である月 45 時間(一年単位の変形労働時間制の場合は 42 時間)の時間外労働を上回る回数は、年6回までとすることが適当である。
社労士の試験対策上、細かい数字は覚えておきましょう。
長時間労働者の健康措置
過重な労働時間によって健康リスクが異常値をとる労働者もいます。
こうした労働者に対して、医師による面接指導や労働時間の客観的な把握をすることが求められ、会社としては労働時間に関係なく健康リスクがある労働者を把握することが義務付けられました。
ですが労働時間の客観的把握が法的義務になった一方、違反に対する罰則は定められていません。
とはいえ、罰則がないから労働時間の客観的把握義務に対応しなくて良いというわけではありません。
過労死などが生じた際に会社が労働時間を客観的に把握していなかった場合、これまで以上に民事上の賠償責任を厳しく問われることが予想されます。
実務上、完璧に客観的に労働時間を把握することは難しいかもしれませんが、各企業の実情に応じ、社労士として様々な提案をしながら最善を尽くすこと大切になってきます。
有給取得の義務化
10日以上有給休暇が発生した社員には有給休暇を5日間取得する義務が定められました。
有給休暇5日取得の義務化の対象は、正社員に限らず、パート・アルバイトも含まれることを事業主は見落としがちなので、社労士として適切なアドバイスが求められます。
以上のような労働時間の客観的把握や、有給休暇の取得義務の施行などの際、実務レベルにおいて社労士は不可欠な存在です。
非正規雇用者の待遇改善
今現在、非正規雇用者は労働者全体の4割を占めており、非正規は特に女性や高齢者に多いのが現状です。
人口で言うと、2000万人以上が非正規の雇用形態で働いており、終身雇用が崩壊した今、誰もが正規から非正規雇用に変わる可能性があります。
非正規の賃金は正規の約6割であり、賃金格差が非常に大きいので、これを改善すべく「同一労働同一賃金」に向けた法改正が実施されました。
法整備に伴う企業対応には、社労士の専門的な知識によるサポートが重宝されます。
高齢者の労働参画の促進
内閣府の資料によると、65歳以上の完全失業率が低いことがわかりました。
つまり、就業を希望する人はかなりの割合で就業ができているということがわかります。
そこで、労働力人口を増やすためにはさらなる高齢者の就業率の向上を目指すのが有効であり、それには就業を希望する人を今以上に増やすことが必要となります。
希望があれば65歳まで雇用の確保をすることが企業に義務づけられており、こういった法改正への対応も社労士に求められそうです。
また就業規則などを変更する必要が生じた際は、社労士が関わってきます。
セミナー開催の機会も増加する
働き方改革に伴い、企業向けや社労士向けの説明会などが増加しています。
会社に勤務している社労士よりも、開業している社労士にこういったセミナーの依頼がくることは多いです。
セミナー講師として働き方改革を解説できる社労士の需要も伸びており、働き方改革によってどういった変化・変革が企業に求められるのかを説明できるようにしておく必要があるでしょう。
またセミナー以外でも、経済誌でのコラムの執筆などを依頼される独立社労士も多いようです。
社労士の需要に関するまとめ
働き方改革と社労士まとめ
- 社労士の需要は働き方改革によって増大する
- なぜなら働き方改革で労働環境の改善など、社労士の業務に関連して企業改革が行われるため
- 社労士試験の対策上、働き方改革の内容はしっかり把握すべき
社労士は、以前から需要が高い人気資格でした。
加えて、近年の働き方改革の推進に伴い、これまで以上に需要が高まっています。
社労士の取得を検討している方は、是非前向きにトライしてみてください。
社労士のしての資格があるだけで、社会的信用は大きく上がりますので、勤務型でも独立型でもメリットはとても大きいですよ!