簿記は就職に役立つ?簿記資格が役立つ仕事や就活で有利になる理由を紹介
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簿記
公認会計士たぬ吉
「簿記資格とは、持ってると就活で役に立つものなの?」
「簿記を持ってるとどんな場面で役に立つの?」
このような疑問をお持ちの方、いらっしゃいませんか?
簿記とは、多くの人に認知されている人気資格であり、そのため様々な場面で役に立ちます。
簿記検定は級別に分かれていますが、どの級がどのように生かすことができるのか気になりますよね。
では、就職にフォーカスするとどのような場面で有利になるのでしょうか?
資格Timesでは就職における簿記を取得したことによるメリットや就活での活用法について解説します!
簿記と就職との関係をざっくり説明すると
- 簿記検定2級以上は就活で有利
- 就職先の財務が分かるようになる
- 収入増加にもつながりやすい
- 活躍できるフィールドも広がる
日商簿記は就職に役立つ
「簿記資格は就職に役立つ」「結局簿記なんて持ってても無駄」など賛否両論の色々な意見を聞きますが、実際はどうなのでしょうか?
そもそも簿記資格とは
簿記とは、日本商工会議所が実施している経理に関する資格で年間およそ50万人が受験している非常に人気の資格です。
初級から1級まで4段階に別れているため、自分のレベルに応じた受験が可能になっています。
最も受験者の多い3級は合格率43%程度と比較的高めです。
一方、就活の場で役に立つ2級は23%程度、税理士試験の受験資格ともなっている1級に至っては10%程度となっており、門が狭くなっていくことが分かります。
また、就活でも選考を有利にするなど、様々な場面で使えるため学生を中心に人気があることが特徴です。
とある調査で「若い内に取得しておけば良かった資格ランキング」などでも上位に入る資格となっています。
経理の世界を知ることができる
簿記の仕事とは、会社の出納を記録して帳簿にまとめる「経理」という仕事の専門資格です。
資格取得の過程で解く問題は簿記の現場での作業と類似している点が多く、非常に実用的です。
そのため、資格の勉強をすることは経理の仕事の一端を実際に体験することができるため、会社にとっても有資格者は即戦力として計算できる人材というわけです。
つまり、勉強を通じて経理職が自分に向いているかどうかを判断することができることにもなります。
志望企業の営業成績がわかる
勉強をすることで、財務諸表という企業の営業成績がわかる表を読み解く能力が身に付き、様々な分析が出来るようになります。
上場企業の財務諸表は、それらの株を取引する株主向けに一般公開されています。
そのため、志望している企業や興味のある企業の財務動向や営業成績を把握することでその会社の業績を把握することができます。
さらに、分析に慣れてくると競合他社と比較して経営状態が良い企業を選ぶという方法も可能になり、より良い企業選択をするための大きな武器を手に入れることができるのです。
また、財務諸表で経営的なリスクがある企業や業績が芳しくない企業を見抜けることになり、長く働くことができる企業の選定に役立てることもできます。
あまり良くない企業の例として、賞与引当金が積まれていない企業があります。
なぜなら、この企業は、ボーナスが確実に支払われていないことを意味しているからです。
また、利益剰余金が減っている企業であれば、赤字が続き経営が年々苦しくなっていることが分かります。
このように、知識を生かして様々な分析と予測ができるようになるため、参考にすると良いでしょう。
選考時にアドバンテージとなる
ある調査によると「企業が就活生に取って置いて欲しい3大資格」は
- 日商簿記
- TOEIC
- ITパスポート
となっています。
簿記を持っていると、書類選考において企業からの評価も高めることができます。
また、簿記資格は経理の即戦力として活躍することができる能力の証明となるため、資格を持っていない人より内定が出やすいと言えます。
簿記資格を面接で効果的にアピールする方法
簿記資格は就職活動において大きな武器になりますが、学生のうちは特に簿記の知識を要求されることは珍しいです。
面接官は、簿記資格を取得した経緯などを通じて受験生の人柄を見たいと考えているため、面接時には簿記取得の一連の経緯を話し、そこから自分の強みをアピールすることが資格を面接で活用する上で非常に大切になります。
具体的には
- 簿記資格を取得した経緯
- どのような目的をもって資格取得を決めたのか
- 資格に際しての努力・工夫
などの話題に対して自分なりの答えを準備しておき、アピールすることが大切になります。
目的意識の部分では、自分が簿記資格をなんとなく取ったのではなく、きちんと主体性・目的意識をもって取得したことを伝え、会社の業務でもこれらの強みを発揮して業務に熱心に取り組むことができる点をアピールすることが大事です。
また、資格取得においての努力・工夫の点では、難関資格である簿記2級を取得するまでの努力の過程や施した工夫について話すことにより、自己啓発に熱心で、また何事も前向きに取り組むことができる性格や計画性があることをアピールすることもできるでしょう。
このように、自分自身の知識だけでなく、人柄や人間性の面でも良いアピールができるようになるメリットがあります。
簿記資格が役に立たないこと
それでは、資格が役に立たないシーンはどのようなケースがあるでしょう?
一流企業なら簿記資格だけでは足りない
就活は甘くなく、ただ単に「資格を持っている」ということだけでは内定を取ることはできません。
企業の経理部・会計事務所・銀行などの財務業務を扱う部署で簿記資格が直接的に活かせる場であっても、取得の有無が決定的な事項になることは少ないです。
そのため、資格の取得が就活において決定的なアドバンテージとはならない点に留意しましょう。
就活は、あくまで知識だけでなく人柄や伸びしろなどを総合的に判断されるため、コミュニケーション能力なども重要になってきます。
資格を取ったからと言って高飛車な態度で面接に臨んでも、ほぼ確実に落ちるでしょう。
そのため「何のために取得し」「どのような困難を乗り越え」「このような工夫をして成果を残した」などのようにストーリー仕立てでアピールできると効果的です。
未経験での転職となってしまうと厳しい
日本では、新卒が入ってきたときはOJTなどを通してじっくりと人材育成してもらえる特徴があります。
一方、中途採用や転職組はじっくりとOJTをしてもらえる機会はあまりないため、未経験だと実務で問題が出てくるケースが多くあります。
日本の就活市場や転職市場は、若いことがアドバンテージになりやすい点が非常に重要です。
そのため、経理の仕事が未経験で年齢が30代以上だと、経理への転職は厳しいのが現実です。
転職市場は発展しつつあるとはいえ、30代半ばにもなると簿記1級を持っていたとしても、雇ってもらえる確率はかなり低くなってしまいます。
そのため、就職や転職を目指している人はなるべく早く若い内に動くと良いでしょう。
不景気到来なら採用ダウン
そもそも景気動向が不景気だと企業の採用人数が減るため、資格を持っていても評価されなくなります。
最近では、リーマンショックの直後は倒産や解雇が相次ぎ、また求人も非常に少ない時期でした。
この時期の有効求人倍率は1倍を切っており、さすがにこのような不景気にもなると資格を持っていても就職は難しいでしょう。
特に、2020年の東京オリンピックが終わった後は大幅な不景気がくると予測されており、資格を生かして就職・転職を目指しているのであれば、タイミングは今しかないということになります。
簿記取得者の年収や手当はどれくらい?
それでは、簿記資格を持つことにより得ることができる金銭的メリットはどの程度なのか見てみましょう。
実務経験や年齢によって大きく伸びる
簿記2級の年収は、実務未経験者で250~350万円程度となっており、1年以上の実務経験がある場合で300~480万円程度となっています。
また、更に長い3年以上の実務経験がある場合では、350~650万円程度となっています。
つまり、実務経験の有無や長さによって年収に差が出てくるのです。
これは、実務経験の差が直接仕事の速さに影響し、出世などに関わってきているためと考えられます。
また、日本全体の経理職について見てみた場合、20代は500万円以下、30代は350~600万円、40代は600万円以上となっていることが多いです。
キャリアをコツコツトと積んでいけば、順調に年収を増やすことが出来るわけです。
資格手当は1,000円〜7,000円
簿記を持っていることで資格手当の対象となるケースがあります。
企業によっては金額はまちまちですが、経理職は資格を持っていることによる「資格手当」が付く企業が非常に多いです。
気になる相場ですが、簿記2級で月額1000~5000円、簿記1級で月額1000~7000円というパターンが多いです。
この手当の金額が高いと感じるか低いと感じるかは人それぞれですが、資格手当は「資格を持っているだけでもらえる」非常にお得な手当なのです。
しっかりと仕事をこなすだけで給与に上乗せしてもらえるお金なので、資格を持っているだけで大きな苦労もなく年収を増やすことが出来るというわけです。
仮に月額で3000円の資格手当がもらえるとした場合、年収にして36000円増やすことができ、10年で36万円となります。
この資格手当をもらえることで、周囲と差を付けることができるのです。
簿記資格が活かせる就職先は?
それでは、どういった職業で役に立つのかを見てみましょう。
簿記を持つことでできるようになること
簿記3級は非常に簡単で合格率も高く、初学者でも取り組みやすい内容となっています。
主に個人商店や小規模の企業の経理がわかるようになるレベルの経理能力を身に付けることができ、これにより「簿記の基本はとりあえずマスターできた」という位置づけになります。
3級では難易度も低いため、就活などでは評価の対象にはなりません。
ただし、「2級を目指して勉強中」など、さらなるステップアップを目指している旨のアピールのネタにはなるでしょう。
2級は、中小企業から大企業までの財政状態と経営成績がわかるようになるレベルの経理能力が身に付きます。
3級の合格率は40%以上あるものの、2級の平均合格率は一気に落ちて20~25%程度となります。
3級では扱わなかった工業簿記という分野が新たに登場し、難易度が大きく上がるのです。
この工業簿記を理解することで工場の経理作業ができるようになるため、3級と比べるとできることが飛躍的に広がります。
また、2級で学ぶ財務諸表が理解できるようになると、経理・財務の即戦力として評価してもらえます。
また、財務諸表は営業活動やコスト管理などに役立つ知識であるため、経理以外の営業部門などでも生かすことが出来ます。
1級は、経営分析やコンサルティングに活かせるような原価計算や会計学、会計法の能力が身に付きます。
簿記の中でも最高ランクの級であるため、難易度も非常に高いです。
企業の会計における法律を踏まえた上で経営的視点で管理や分析が行えるようになり、重要なポストも任せられる人材と言えます。
また、豊富な知識を生かして経営者や公認会計士などと対等に話ができるレベルです。
一般的な経理の仕事では、2級まで持っていればほぼ全ての業務をカバーできるため、1級を目指す人は公認会計士や税理士など、更にステップアップを目指す人に限られるでしょう。
1級は難関なだけあり、保有していると周囲から一目置かれる存在になれるしょう。
会計や財務のプロフェッショナルを目指している人であれば、1級を目指す価値は大いにあります。
簿記資格が生きる職種
簿記資格が生きてくる代表的な職種は、企業の経理部門・会計事務所・税理士事務所が挙げられます。
これらの職種は、簿記資格の保有が応募条件となっているケースもあるため、実務と直結していることがわかります。
また、これらの他にも生かせるフィールドは多くあります。
- 銀行
- 商社
- 保険会社
- 証券会社
- コンサルティングファーム
これらの業界などの、いわゆる経営・財務に関わる会社であれば簿記の知識は多いに役立ちます。
金融機関やコンサルティングファームであっても、細かい数字や経理能力が問われる場面が多くあります。
特に、コンサルティングファームは年収も比較的高い水準にあるため、「バリバリ働いてたくさん稼ぎだい」と考えている人はぜひ検討すべきです。
このように、簿記を生かせるフィールドはとても広いため、多くの場面で活躍できると考えられるのです。
経理以外の職種も
簿記を生かせる職種と聞いて、真っ先にイメージするのはやはり経理部門ですよね。
しかし、経理以外でも簿記の知識を生かせる職種は多いのです。
例えば、営業職、販売職・製造部門で働く場合です。
簿記の資格を持っていることで、会計の知識・財務諸表の読解力・経理管理の基礎・分析力などを身に付けることができます。
その結果、具体的な数値や経営情報を踏まえた説得力のある提案ができるようになり、営業や企画などでも大活躍することが期待できます。
また、製造部門にあってはコスト管理能力や無駄を省いた効率的な運営が求められます。
このようの場面でも、知識を生かしてコストカットなどを提案し、実行することによって会社の利益の工場などに貢献できるようになるのです。
級別!簿記が活かせる就職・転職先まとめ
それでは、簿記が活かせる職業を級別に紹介していきます。
簿記3級が活かせる就職先
簿記3級は、商売の記帳の仕方の基礎から学ぶレベルであり、個人商店規模の経理処理を想定した資格です。
企業において行われたお金の出し入れを記録するための伝票の付け方や、年度内に行われた取引などの複数の伝票を一つの帳簿に記録していく「簿記」の基本的なルール学びます。
また、その年度内に記録した帳簿を整理してまとめた「試算表」や、それを元に財務諸表を作成するのが「決算」と呼ばれる作業までの一連の流れを理解できるようになります。
就職転職する際は中小企業の会計補助職、もしくはフリーランスという働き方が主流となっています。
3級レベルてあっても、個人事業主や小規模企業の経理には役立ち、確定申告もスムーズに行うことができるでしょう。
簿記2級が活かせる就職先
簿記2級にもなると、3級よりも実践力が身に付いているため即戦力と見なされます。
商業簿記では、株式会社会計・本支店会計・連結会計といった内容も加わり、行うことが出来る業務の幅が広がります。
また、3級では扱わなかった工業簿記では、商品を自社で製造して販売する活動(工場の生産活動のイメージです)を記録・計算できる能力が身に付きます。
3級と比べても、企業の規模が大きくなるため支店や子会社を持ったりするケースが出てきます。
2級レベルは中小企業や大企業の経理処理を想定しているため、就職先や転職先としては中小企業の経理や会計職、税理士や公認会計士の事務所が多いです。
それぞれの企業や事務所においての経理担当、大手企業の経理部に採用されるケースが非常に多く求人も豊富にあります。
2級の評価は一般的にかなり高いため、多くの企業や事務所で重宝されるでしょう。
簿記1級が活かせる就職先
1級は非常に難易度が高いため、市場価値の高い人材になれます。
1級レベルにもなると、上場企業の会計やコンサルティング能力を身に付けています。
また、会計学・原価計算や会計基準・財務諸表等規則・会社法などの企業の会計に関する法律までカバーしています。
そのため、上場企業の会計職や将来の会計管理職候補として採用されやすく、年収も比較的高い額が期待できます。
なお、1級は税理士の受験資格でもあるため、取得後に税理士試験を受けて税理士として開業するパターンも少なくありません。
このレベルにもなると独立開業する人も多くなるため、将来的な独立開業を目指している人はどんどんスキルアップを目指していきましょう。
簿記は就職に役立つのかまとめ
簿記と就職まとめ
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得たスキルは様々な場面で役に立つ
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資格手当など、金銭面メリットもある
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就活で能力だけでなく、努力面のアピールもできる
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税理士など、ステップアップにもつながる
簿記とは、認知度も高く就活の選考など様々な場面で役に立つ非常に有意義な資格です。
簿記は「つぶしが利く」仕事と言われており、経理の部署であれば企業を問わず活躍できるのです。
1級を目指したり、公認会計士や税理士を目指したりと、自分自身の価値を高めるモチベーションにもなるので、まずは3級か2級から勉強して少しずつ自信を付けていきましょう。
魅力たっぷりの資格なので、是非取得を検討してみてください。