簿記を取得するメリットとは?簿記資格が役立つシーンや将来性を解説
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簿記
公認会計士たぬ吉
「簿記の資格って人気だけど、取得するとどんなメリットがあるの?」
「簿記の役立つ場面や必要性が知りたい!」
このようにお思いの方も多くいらっしゃるかと思います。
そこで、ここでは簿記の資格および知識が仕事や私生活においてどのように活躍するのかについて具体的にお伝えします。
これを読めば簿記の有用性を実感し、きっと簿記の勉強がしてみたくなるはずです!
簿記資格が役にたつことをざっくり説明すると
- 簿記はビジネスマンにおすすめの資格であること
- 進学や就職で有利になるため、学生にもおすすめなこと
- 将来、資格を活かして独立などが可能になること
そもそも簿記ってどんな資格?
簿記とは、簡単に言えば会計の基本を学ぶことのできる資格といえます。
企業の業種、形態、大きさを問わず一定のルール従い記録、整理、計算する技術として必要になってくる知識を主に学びます。
簿記の知識を身に着けるメリットとしては、会社の一定時点の財政状態を理解する力を身に付けられることや会社の一定期間の儲けを知る方法が分かることなどが挙げられます。
簿記の素養(簿記の仕組み)を知っているかどうかは、会社の経営を行う上では欠かすことができないポイントだと言えるのです。
その中でも毎年50万人以上も挑戦する「日商簿記検定試験」は、企業が採用の基準としたり、進学に有利になるなど非常に信頼度の高い資格と言えるでしょう。
3種類の簿記の特性について紹介
ここでは、簿記検定のそれぞれの特性について紹介していきます。受検する簿記検定を選ぶ参考にしてください。
日商簿記検定
日本商工会議所が主催する日商簿記検定は、簿記の資格検定として最も著名です。
受験資格は特に必要なく、大学生や社会人など誰でも挑戦できるのが特徴です。試験は実務に密着した内容で構成されており、最も難関とされる1級に合格すると、税理士の受験資格も得ることができます。
全商簿記検定
全商簿記検定は全国商業高等学校協会が実施しており、高校生が主な対象とされています。
この検定の内容は基本的なものが中心で、日商簿記検定や全経簿記能力検定と比べると知名度や難易度が低い傾向にあります。
そのため、1級を取得しても、税理士の試験受験資格は認められていないという特徴があります。
全経簿記能力検定
全国経理教育協会主催の全経簿記能力検定は、経理専門学校の学生や社会人向けに開かれています。
日商簿記と比較して、その合格率は少し高い傾向にあります。特定の受験資格は必要なく、どなたでも受験することが可能です。上級の認定を受ければ、税理士の受験資格も与えられるという点も魅力です。
簿記資格を取るメリット7選
ここでは簿記資格を取るメリットについて、より具体的にみていきましょう。
就職・転職に役立つ
簿記資格は99%近い確率で、就職や転職において役に立つ資格です。
履歴書に簿記資格を取得していると書くだけで、ほぼ確実に良い印象を持ってもらえます。
それほど、業界問わず活躍できる汎用性の高い資格なのです。
就職で有利
まず、経理の仕事に応募する場合は確実に簿記資格は有利に働くでしょう。
特に経理事務職については簿記の知識や素養が不可欠となるので、採用面接の際に話題とすることができたり、仕事を覚えられるスピードも速いだろうと、他の志望者よりも一歩リードすることができるのです。
また、簿記資格は営業職志望でも十分にアピールできる資格といえます。
営業職であっても数字を読む力を持っている方は、実際のデータに基づいて商談を進めることができるため、一目置かれます。
新人内定者向けの研修に簿記が組み込まれている企業もあるくらいです。
もちろん面接では資格の有無以外も見られますが、かなりプラスの印象を与えられるのは間違い無いでしょう。
転職で得する
簿記の知識を持った人を募集する企業は、想像以上に多いです。
実際、大手転職サイトでは簿記による絞り込みが可能になっていますし、ハローワークでは「簿記」で検索すると7,000件以上の求人がヒットします。
簿記の資格の取得が、職種・地位に関わらず昇進・転職市場で評価されている証と言えるでしょう。
転職とは言わないまでも、社内で外回りから経理事務への異動も叶うようになっています。
転職の際には前職でどのような業務を行ってきたかや、どのように簿記を生かしてきたかについても、合わせてアピールするとさらに効果的でしょう。
あらゆる業種・仕事で活躍する
事務や経理・財務の現場では「伝票起票・整理」「入出金管理」「財務諸表の作成」で、簿記の知識を生かせます。
会計業務では、「会社の財産管理」「収支管理」「予算編成」「金融関連情報の収入・分析」「資金調達・資金管理などでも、簿記の知識が直接生かせる仕事があります。
また、事務や経理以外でも数字を持って積極的にアピールしたい営業職にもおすすめの資格です。
営業職の場合
営業職といえば会社の顔です。
その営業職の方が得意先に対してとある提案をする際に「売上がこのくらい増えるのに対して、コストはこのくらいで抑えられます」と、具体的な数字をアピールすることにより説得力が増します。
そしてこのような提案をすることによる契約の増加が、企業の業績を伸ばし、営業マン自身のサラリーとして還元されることになるでしょう。
経営者にもおすすめの資格
経営者自身が自社の経理状況を適切に把握し、簿記の知識に基づいた経営状況の運勢を行うことで、経営強化・改善に生かすことができます。
また、長期間のプロジェクト予算案発足・検討を効率的に行うことができるようになります。
他にも、簿記を前提とした経営分析の知識も多く存在するので、これらを組み合わせることで一層経営計画の強化に役立つでしょう。
企画職の場合
新規企画の立案や既存事業の見直しの際に、簿記の視点から事業の状況を分析することができるようになります。
例えば、損益や利益といった数字をベースにした説得力のある世策を提案することもできるようになるでしょう。
なお、上記の経営者や企画職へのおススメの理由となる簿記の学習範囲は、「工業簿記(原価計算を含む)」といわれ、主に日商簿記2級の出題範囲となります。
企業の経営状況が読める
工業簿記とは言っても、基本はやはり商業簿記で学習した知識が必要にです。
企業の財政状態(一定時点の財産)や経営成績(一定期間の儲け)を把握するためにも簿記の知識は役にたつものとなります。
簿記資格の取得によって財務諸表を読む力、経営管理や分析力が身につきます。企業ではお金の動きが頻繁に怒る為、簿記の能力は必須といえるでしょう。
また上述したとおり、一つの商品を作るためにいくらコストがかかったかを分析する原価計算の基となる、工業簿記の知識を身に付けるためにも、経営者や会計管理者の方へは簿記二級の取得をおすすめします。
進学で使えることも
簿記の資格は経済・経営学部におけるAO入試の出願養円で求められることもあるなど、進学の際にも役に立つことがあります。
ちなみに出願要件としては、日本商工会議所簿記検定の2・3級、全国商業高等学校協会主催検定試験1・2級、全国経理教育協会2級以上などが条件となる場合が多いです。
また、大学や専門学校によっては資格を持っていることで入学金が免除または減免されるケースもあります。
さらに日商簿記検定1級や全国経理教育協会上級を高校生の段階で取得する方も少数ではありますがいらっしゃいます。
ほかにも全日制の資格専門学校によっては簿記資格の取得を要件に入学金や授業料の全額免除をしている学校もあります。
これをモチベーションにして、高校生の段階から資格講座を受講し、高いレベルの資格を狙う高校生もいます。
日常生活でも役立つ
簿記の知識は、日常生活においても役立つ場合があります。特に本業にしないまでも投資を始めてみたり、家計の管理にも役立ちます。
家計を管理する
家計簿をつけようとしてみたものの、つけ方が分からなかったり、モチベーションが途切れて途中でやめてしまったという経験はありませんか?
簿記資格を取得できるレベルになっていれば、会計簿程度の家庭の帳簿であれば、レシートや通帳を基に簡単に記録することができるでしょう。
帳簿をつける能力も備わっているので、途中で挫折することも少ないと思われますので、自己啓発の一環としても簿記資格の取得はおすすめです。
家計を適切に管理する能力であれば、簿記3級の取得で十分身に付けられます。
簿記を学ぶことで、財務諸表を分析するように、家庭を一つの企業に見立ててお金の出入を管理できます。
ライフスタイルに合わせたお金の使い方や、人生を長い目で見たお金の使い方ができるようになるでしょう。
投資を始めてみる
簿記資格の取得は、今後、投資をやってみようという方にはおすすめです。
簿記を学んだだけでは帳簿をつける知識までしか身につきませんが、{財務諸表の構造を理解できるレベルには確実になっています。
そこで一歩進んで、財務分析や財務諸表の比較(高いレベルでなくて構いません)まで学ぶと、投資の才能が開花するかもしれません。
財務諸表を読むことができれば、会社の経営状況を知ることができます。このことによって目標と根拠をもって投資を始めることができるでしょう。
資格を生かして独立も可能
簿記3級程度の知識があれば、個人店を経営することも可能なくらい、会計に関しては知識を有しています。
現在は日商簿記検定の出題区分の改定により、個人商店は3級の1つ下の級の「初級」で出題されることになりますが、大体の出題内容やレベルはさほど変わりません。
そして財務諸表(損益計算書・貸借対照表など)の作り方や、そこにどのような資金がどのくらいはいるのかが判断できれば、市販の本を見ながらでも「資金計画」「事業計画書」を作成することも可能です。
必ずこれらの書類は税理士か会計士の先生に依頼しなければならないとお考えの方がまだいらっしゃいますが、特に支障がなければ自分で作ったものでも構わないのです。
起業後
起業後に簿記資格は、「予算の作成」「業績の評価」「改善」「決算」「税務申告」などに生かされます。
とは言え簿記資格で学んだ知識のみでは、「予算の作成」「税務申告」は専門性が高く、自分ですることが難しい場合があるので注意しましょう。
その際には、無理をせず税理士の先生などに依頼されるのもおすすめです。近年は税理士の先生側も、「顧客はある程度インターネットなどで調べて、知識を持って来るものだ」と分かっています。
そのため、遠慮なく「ここの部分だけ教えてください」と言っても悪い印象は持たれないでしょう。
上位の資格取得に有利
簿記の資格は企業活動の幅広い分野に精通するので、他の資格取得の第一歩となると言えるでしょう。
簿記2級または3級取得者
簿記2級や3級を取得した方は、ステップアップとして販売士や中小企業診断士などの経営に関連する資格を目指す方が多いです。
また、FP(ファイナンシャルプランナー)はお金を扱う資格に共通する知識を扱うため、簿記資格を取った方であれば比較的簡単に取得できるでしょう。
1級取得者
簿記1級の資格を取った方は、さらなるレベルアップを目指して会計系資格の最難関である税理士や公認会計士などにチャレンジする方も多いです。
日商簿記1級と全国経理教育協会上級は税理士の受験資格に指定されていますので、これらを取得していれば大学の卒業を待たずに税理士試験にチャレンジすることができるようになります。
そのため、上記の2つの資格を目指す方は取得がゴールではなく、税理士受験のための通過点とする場合が多々あります。
簿記3級から1級のメリットの違い
簿記3級の価値
簿記3級は、経理・会計の基礎が身につく、いわば「簿記への入門」のための初心者向け資格であり、個人の商店や中小企業の経理事務を行えるレベルを保証するレベルです。
また、上記以外の方でも営業・販売・管理部門などあらゆる仕事において、財務的な視点から物事を考えられるようになるため、簿記3級の知識があれば、個人商店や中小企業で働く際には十分役立つと言えます。
ただし、簿記3級では就職や転職の際にあまり評価はされないので、より資格の威力を発揮したい場合は簿記2級の取得を目指すのが良いでしょう。
簿記2級の魅力
簿記2級であれば就職や転職、さらには昇格・昇級まで、あらゆる場面で資格が生きてくることになるでしょう。
簿記2級取得者向けに資格手当を出している企業も多いので、資格の取得が直接的に収入増加に繋がる機会も多いです。
中小企業勤務の方にとっては簿記2級までの知識を得る必要性なく、意味ないと思われるかもしれません。
しかし簿記2級で初めて学習する工業簿記(原価計算を含む)は、会社の規模、取扱商品の種類に応じて「一つの商品を作るためにコストがいくらかかったか」を知ることができます。
そこで経理事務員以外の営業担当者も、減価意識を持つことができますし、取引先のニーズを自社の製造部門に伝えることにも役立ちます。
また会計事務所に転職する際に、税理士資格がなくても簿記2級の知識があるとアピールすれば他の志望者よりも有利に転職をすることができます。
簿記1級まで目指す必要はある?
簿記1級を取得していれば、会計処理に関する非常に高度な専門知識を持っているという証明になるので、社内外から一目置かれる存在になることができるでしょう。
また、前述のように簿記1級は公認会計士や税理士への足掛かりになるので、将来的に会計の専門家を目指す方にとっては非常に価値のある資格となります。
一方で、勤務する会社や部署によっては、簿記1級は少々オーバースペックになってしまうことも少なからずあります。
簿記1級は非常に難易度の高い資格なので、取得の前には本当に狙うべきなのかをじっくりと検討することをおすすめします。
簿記を目指す上で注意すべきデメリット
結論から言うと、簿記の資格を取るデメリットはほとんどありません。簿記3級ならば独学でも取得が可能な方が多いです。
ただし、求人票に「簿記2級取得者」などと書いてあったとしても、日商・全経・全商のどの機関が主催するものを想定しているのか。
また、最近の簿記試験は難化してきています。採用担当者としてもその認識が無かったりするため、就職や転職に十分な条件ではありません。
簿記資格の将来性
ここまで簿記資格のメリットについて解説してきましたが、こうした簿記の魅力は今後も継続して認められていくものなのでしょうか。
ここでは簿記資格の将来性について考察していきます。
試験の解答マシンでは意味がない
簿記資格の短期合格者は、極めて要領のいい方が多いです。例えば、Aという聞き方だったらBという答えしかないから、簿記の問題を丸暗記してしまう方です。
こういった方は、受験テクニックに詳しく、ほぼ満点解答を作ります。
しかし、簿記の実務ではそうはいきません。
現場では、経営者がどのような意図で、何をしたかを把握することもあれば、経営者に質問をしなければならないことも多いです。
ただ顧問先が行った会計が正しいかどうかを見るだけなら、今後益々発展してくAIに仕事を取られてしまう職員になってしまうでしょう。
人間対人間との関係を築くスキルも、簿記の現場では求められるのです。
AI時代も役立つ資格なのか
近年は、AIができることはAIに任せ、人間の仕事を削減しようという流れになってきていることは事実です。
しかしながら、AI時代はまだ始まったばかりで、現場では実際、経理人材は足りていません。
確かにAIにより経理処理のスピードや正確性などの利便性は向上すると思われますが、「経理」の仕事は必要不可欠なのです。
人間の関わらない経理というものは、まだ実現しそうにありません。
例えば得意先と食事をしたといっても、昼なのか夜なのか、金額は一人当たり何円なのか、どのようなお店で食事をしたのか、相手方はどのような立場なのかなどを、実際に営業担当者に確認する必要があります。
これは人間でなければできません。AIなら形式的に出来そうにも思います。しかし、担当者が嘘をついているなどすると、やはり経理担当者と営業担当者が直接話をすべき可能性もあります。
結局、簿記の知識を身に付けた人間は、いつの時代も変わらず重宝される存在であると言えるのです。
簿記のメリットまとめ
簿記資格のメリットまとめ
- 簿記資格は持っていて損な資格ではない
- 職種を問わず、現代ビジネスマンの考えの基本である
- 1級は資格を取るためにかなりの労力がかかるため、本当に必要かをしっかり検討しよう
簿記資格のメリットや必要性について解説しました!
簿記は決して簡単な資格ではありませんが、就職・転職市場で企業への印象も良く、学習した努力も認めてもらえます。
難しいからと尻込みをせず、是非チャレンジしてはいかがでしょうか。