簿記で用いられる勘定科目とは?その本質や覚え方のコツまで徹底解説

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簿記

公認会計士たぬ吉

簿記試験を受験するなら絶対に避けては通れないのが勘定科目の仕訳です。勘定科目はとにかく数が多いので、覚えるのが大変ですよね。

苦手意識を持っている人も多い勘定科目ですが、実は覚え方のコツがあります。勘定科目をマスターすることで簿記全体の勉強もスムーズになり、ライバルに差をつけることもできるでしょう。

そこで、この記事では勘定科目や仕訳のポイントを紹介します。仕訳とは何か、勘定科目にはどんな種類があるのかなど、主に簿記3級程度の内容を中心に解説します。勘定科目に関する疑問はこの記事で解決しておきましょう!

勘定科目についてザックリ説明すると

  • 勘定科目は取引におけるお金の分類。
  • 仕訳とは日々の取引の記録。
  • 暗記のコツをつかめば楽勝。

簿記試験合格のためには勘定科目をマスターしよう!

右手

勘定科目は暗記量が多く、簿記の初学者が挫折しやすい最初の関門です。誰もが一度は躓いたことがあるでしょう。

しかし、勘定科目は簿記の最も根本的な部分でもあります。簿記試験での配点も高く、経理の実務にも直結します。言い換えるなら、勘定科目のマスターが簿記試験合格の第一歩ということです。

それぞれの勘定科目の詳細に入る前に、まずは簿記や勘定科目の概要から確認しましょう。仕訳とはどのような作業で、勘定科目はどんなふうに関係してくるのか見てみましょう。

簿記の本質は取引の記録

簿記とは帳簿記入の略称です。帳簿とはお金や物の出し入れを記録するノートのようなものです。つまり、簿記とは取引の記録のことです。

会社はその活動の中で様々な取引をしています。お金を支払って材料を仕入れたり、商品を売ってお金をもうけたり、必要な設備をそろえたりしています。

こうした日々のお金のやり取りを記録する作業が簿記です。この記録は最終的に財務諸表になります。

財務諸表は会社にとって通知表に当たるもので、財務諸表は株主にとって株や企業をどうするか決めるための重要な判断材料です。簿記はそれだけ重要な作業ということですね。

簿記ではお金の出入りは全て記録されます。経理の人が領収書やレシート、出金伝票を必要とするのもお金の出入りを正確に記録するという目的のためです。

「勘定科目」とは?

勘定科目とは会社に出入りしたお金の種類や分類のことです。タグ見出しと言った方がイメージしやすいでしょうか。

会社に出入りするお金は様々です。勘定科目はそのお金がどんなお金なのかを表しています。

たとえば、会社に入ってくるお金で考えてみましょう。商品を売った売上もあれば、火災保険の保険金もあります。政府からの補助金もありますね。保険金が多く入ってきたとしても、会社が成長しているとは言えませんよね。

このように、会社に出入りしているお金がどのようなお金なのかを分類することは簿記において非常に重要なことです。簿記試験においても代表的な勘定科目は暗記しておく必要があります

「勘定科目」の本質は取引の理由付け

勘定科目の本質は取引の理由付けです。取引は二人以上の間で行われますが、このお金のやり取りを詳しく説明する役割を担っています。

取引が何を用いてどのような目的で行われたのか、取引の内容や性質を明確にするのが勘定科目の意味です。そのため、勘定科目は誰が見てもわかるようにする必要があります

「仕訳」の中の勘定科目とは?

勘定科目は仕訳の中でよく使われます。仕訳とは取引を貸方(かしかた)・借方(かりかた)に分類して記録することです。

例えば、Aさんがスーパーでミカンを購入するケースで考えてみましょう。Aさんがミカンを300円で買った場合、Aさんの財布から300円の現金が減ります。同時に、スーパーにとっては300円の売り上げが発生します。

取引の記録は出金伝票や仕訳帳という左側の借方と右側の貸方に分かれた帳簿に記録されます。今回の取引であれば、左の借方に現金300円、右の貸方に売り上げ300円と記載します。この現金や売り上げが勘定科目ですね。

摘要(てきよう) 借方 貸方
(現金) 300
(売り上げ) 300

複式簿記では左が「借方」、右が「貸方」です。横書きで「りし」と書いた場合に左側に「り」があるので左側が「借方」です。同じように右側は「し」のある「貸方」ですね。

単式簿記と複式簿記

上記のような書き方は複式簿記と呼ばれています。現代では簿記と言えば普通は複式簿記のことを指します。

複式簿記とは一つの取引を財産の変化と損益の状態という二面性に注目して記録する方法です。複数の面に着目している簿記と考えると覚えやすいでしょう。

それに対して、単式簿記という方法もあります。単式簿記はお金の増減だけを書く方法で、家計簿のようなものです。先ほどの取引を単式簿記で表してみましょう。

日付 項目 詳細 金額
〇月×日 入金 売り上げ 300

単式簿記は非常にシンプルなので、親しみやすいのが特徴です。出金伝票もこういったレイアウトのものが多いですね。しかし、単式簿記は個人経営などの例外を除いてあまり利用されません。

「仕訳」とは取引のノートである

「仕訳」とは取引の記録を残したノートです。学生の頃、授業の記録を毎日ノートに残していたでしょう。同じように、企業が取引の記録を毎日残したノートが仕訳です。

学生のノートは最終的に試験合格や通知表作成のために使われますよね。企業のノートである仕訳も同じく、通知表にあたる貸借対照表や損益計算書を作成するために使われます

授業のノートは授業の内容を整理してまとめることが成績アップに重要でしたね。同じように、仕訳も日々の取引を正確に分類することが必要不可欠です。そのため、経理に携わる人たちは毎日の取引を分類して記録しているのです。

仕訳問題を押さえれば、簿記は受かる!

簿記試験では仕訳問題のウェイトが大きく、非常に重要です。言い換えれば、仕訳問題を抑えれば簿記試験に合格できるとさえ言えます。

簿記2級や簿記3級では、仕訳問題は第一問で出題されます。4点問題が5問出題されるので、合計20点分です。

簿記試験は簿記2級でも簿記3級での100点中70点を取れば合格できます。そのため、仕訳問題は合格に必要な点数のおおよそ30%弱に当たります。

こちらの問題は、演習を重ねることで満点を狙うことができる分野であることから、確実に仕留めに行くようにしましょう。

「勘定科目」とは仕訳への第一歩!

先ほど例に挙げたAさんとスーパーの取引では、「現金」と「売上」という勘定科目が出てきました。こういった勘定科目は勘定科目一覧にあるものすべてではなくとも一定以上は覚えておく必要があります。

「勘定科目」が変われば仕訳の意味が異なる

仕訳における勘定科目は取引の内容を説明するものです。ただの言葉ではないことに気を付けましょう。

たとえば、Aさんとスーパーとの取引でAさんがクレジットカードを使用した場合を考えてみましょう。この場合、勘定科目は「現金」から「クレジットカード売掛金」に変わります。

「現金」であればすでに手元にお金がありますが、「売掛金」はまだ手元に届いていないので後から回収する必要があります。このように、勘定科目が変われば取引の内容が変わってしまうことに注意しましょう。

勘定科目の分類は5つ!

ノート

これから勘定科目の説明に入っていきます。

まずは5つの勘定科目を覚えよう

勘定科目は大きく5つの分類に分けられます。この分類は後々貸借対照表などを作成する際に重要になるので、分類を意識して覚えていきましょう。

勘定科目の分類その①「資産」

簿記における資産とは企業が持っている財産です。お金、建物、土地、商品、預金や手形などがあります。お金だけでなくものも該当します。お金に換えられる価値あるものすべて、ということですね。

勘定科目の分類その②「負債」

負債は企業が抱えている債務です。支払手形などの支払い金勘定が代表例です。その他にも買掛金などまだ支払っていない代金、決算時点で納めていない税金なども含まれます。

勘定科目の分類その③「純資産」

純資産は企業が持つ純粋な資産で、自己資本とも呼ばれます。主に資本金や自己準備金から構成されます。簿記では資産から負債を差し引いた金額が純資産です。言い換えれば、負債と純資産を足せば資産になるということです。

勘定科目の分類その④「収益」

収益は会社に入ってくるお金です。Aさんとスーパーの例で取り上げた売り上げがまさにこの収益の代表です。この他に固定資産売却益や雑益も含まれます。

勘定科目の分類その⑤「費用」

費用は収益とは反対に企業から出ていったお金です。仕入や給料など収益を得るために必要となったコストが該当します。

勘定科目一覧

人々

ここでは簿記試験や経理実務で使われている勘定科目を表形式で説明します。分量は多いですが、問題を解いていれば自然と暗記できるでしょう。

①「資産」の勘定科目一覧

勘定科目 内容
現金 文字通りの現金の他、小切手や為替も含まれる。
小口現金 細々とした経費を精算するためのお金。経理から事前に各部署の用度係に渡されている。
当座預金 小切手支払い用の預金。
普通預金 一般的な預金。
定期預金 期間を決めている預金。
受取手形 代金未回収の約束手形。
売掛金 掛け売りした際に、後から代金を受け取れる権利。
クレジット売掛金 クレジット会社宛の売掛金。
電子記録債権 電子化された約束手形。
貸倒引当金 貸し倒れ(現金を回収できないこと)をあらかじめ予想して引き当てておいた引当金。
商品 販売目的で所有している物品。
繰り越し商品 売れ残って次期に繰り越す商品。
貸付金 貸したお金を後から回収できる権利。
従業員貸付金 従業員に貸したお金を後から回収できる権利。
役員貸付金 役員に貸したお金を後から拐取できる権利。
前払金 先に支払いのみを済ませ、後から商品を受け取れる権利。
未収入金 後から代金を回収できる権利。(売掛金の商品以外版)
立替金 取引先や従業員が支払う金額を会社が一時的に立て替えた状態。(用途や金額が決まっている)
仮払金 用途や金額が不明確なまま、一時的に支払っている状態。
受取商品券 商品券の発行もとに代金を請求できる権利。(商品券で支払いを受けた状態)
差入保証金 債務者が債権者にあらかじめ支払うお金。(敷金など後々変換されるもの)
貯蔵品 次期に繰り越す、処分価値のあるもの。(燃料や郵便切手など)
前払〇〇 当期のうちに支払った来期の費用。
未収〇〇 当期で未回収の収益。
仮払い消費税 商品仕入れ時に支払う消費税。
仮払い法人税等 中間納付した法人税。
建物 会社所有の建造物。
土地 会社所有の土地。
備品 会社所有の固定資産。(パソコンや机など)
車両運搬具(車両) 会社所有の固定資産。(営業車など)
減価償却累計額 時間経過による固定資産価値の減少量の累計額。
のれん 事業を買収した際の超過収益力。

②「負債」の勘定科目一覧

勘定科目 内容
支払手形 支払い義務のある約束手形を渡した状態。
買掛金 掛けで取引を行い、後から代金を支払う義務がある状態。(売掛金の反対)
電子記録債務 支払手形の電子版。
借入金 誰かからお金を借りてきて、後から返す義務がある状態。
役員借入金 借入金のうち、特に役員から借りたもの。
前受金 代金だけを受け取っていて、商品をまだ渡していない状態。
当座借越 当座預金がマイナスになっていて、銀行に立て替えてもらっている金額。
未払金 後から代金を支払う義務がある状態。(商品以外での買掛金。未収入金の反対。)
借受金 用途や金額が決まっていないお金を受け取った状態。(内容がわかっていない一時的な状態)
未払い〇〇 当期にかかった費用のうち、まだ支払っていないもの。
前払い〇〇 来期の利益のうち、当期に受け取ったもの。
預り金 従業員などから一時的に預かっているお金。
借受消費税 売り上げなどで預かっている消費税。
未払い消費税 借受消費税と仮払い消費税の差額。(後から納める必要がある)
未払い法人税等 支払い法人税と仮払い法人税の差額。(後から納める必要がある)
未払い配当金 株主に支払う配当金の債務。

③「純資産」の勘定科目一覧

勘定科目 内容
資本金 会社設立時に会社に払い込んだ資金や株式発行で調達した資金。
利益準備金 会社法で決められている積立金。株式配当金の10%
繰越利益剰余金 利益剰余金のうち、利益準備金と任意積立金以外のもの。

④「収益」の勘定科目一覧

勘定科目 内容
売上 商品を販売した時の売上額。
商品販売益 商品販売時の売上原価と売値との差額。
受取○○ 商品以外で得た利益。(家賃収入など)
雑益 他の勘定科目に該当しない利益や少額の利益。
貸倒引当金戻入 貸倒引当金を減らした際の差額。
償却債権取立益 償却した後から回収した債権。
固定資産売却益 固定資産が額面上の金額より高く売却できた際の利益。

⑤「費用」の勘定科目一覧

勘定科目 内容
仕入 商品を仕入れた際にかかった代金。
給料 従業員に支払うお金。
発送費 商品発送にかかる運搬料。
法定福利費 会社負担分の社会保険料。
広告宣伝費 広告や宣伝にかかったお金。
支払〇〇 商品以外で支払ったお金。
旅費交通費 移動にかかったお金。
貸倒引当金繰入 貸倒引当金を増額した際の差額分。
貸倒損失 貸し倒れになってしまった際の損失分。
減価償却費 経年劣化による固定資産の価値減少額。
通信費 電話やインターネットにかかった金額。
消耗品費 当期中にかかった消耗品の金額。
水道光熱費 オフィスでかかった水道光熱費。
租税公課 固定資産税などの税。
修繕費 固定資産を修理するために必要になった金額。
雑費 お茶代などの費用。
雑損 原因不明の損失。
固定資産売却損 固定資産を売却した際に、帳簿の金額と実際の売却額との差額。
保管費 商品を補完するためにかかった金額。
諸会費 加入団体に支払った費用。
法人税など 法人税など利益に対して課せられる税。

⑥その他の勘定科目一覧

勘定科目 内容
損益 損失と利益を振り替えるため特殊な勘定科目。帳簿締め切り時にのみ使う。
現金過不足 帳簿上の金額と実際の金額との間の差額。

勘定科目の覚え方のコツ

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ペアを意識する

勘定科目を覚える時はペアを意識すると覚えやすいです。「資産」と「負債」、「収益」と「費用」は真逆のカテゴリーなので対になる勘定科目がいくつかあります。

たとえば「売掛金」と「買掛金」です。掛けで商品を売った場合は売掛金、掛けで商品を買った場合は買掛金ですね。支払い金勘定にはペアになる組み合わせが多くあります。

これらの組み合わせは、支払う側なのか受け取る側なのか、プラスなのかマイナスなのかが異なるだけでやり取り自体は変わりません。まずはこういったペアになる勘定科目から覚えていきましょう。

「資産」と「負債」

資産 負債
受取手形 支払手形
売掛金 買掛金
未収入金 未払金
貸付金 借入金
電子記録債権 電子記録債務
前払金 前受金
仮払消費税 仮受消費税
前払○○ 未払○○
未収○○ 前受○○

「費用」と「収益」

費用 収益
仕入 売上
雑損 雑益
支払○○ 受取○○
固定資産売却損 固定資産売却益
貸倒引当金繰入 貸倒引当金戻入

勘定科目は丸暗記しない!

勘定科目を学ぶときは丸暗記して終わりという方法はやめましょう。ただ言葉だけを暗記していても役に立ちません。

簿記3級などの試験でも暗記だけで解ける問題は滅多にありません。実際に仕訳をする問題がほとんどです。ひとつひとつの勘定科目を覚えることも大事ですが、仕訳とは何か学ぶことがより重要です。

覚えたら実際に仕訳をしてみよう

勘定科目をある程度覚えたら、実際に仕訳をしてみましょう。簿記試験での仕訳とは、それぞれの取引を「貸方」と「借方」に分けていくことです。最終的にバランスがとれていれば仕訳成功と言えます。

初心者のうちは、勘定科目は予想できるけど「借方」と「貸方」のどっちに当てはまるかわからないことが多いでしょう。ここで、「資産」や「負債」といった分類が役立ちます。

資産と費用は増加する時は借方に、減少する時は貸方に書きます。負債と純資産と収益はその逆で増加する時に貸方、減少する時に借方に書きます。

もしどの分類がどっちだったかわからなくなった時は、単純な取引で考えてみると良いでしょう。現金が左ということさえわかっていれば思い出せます。

お金を借りる取引なら、現金(資産)が増えて借入金(負債)が増えます。資産が左だから負債は右。税金を支払うなら、お金が出ていくので現金が右側です。そのため、費用は左側です。

勘定科目を覚えるには手を動かそう

勘定科目を覚えたいなら、必ず手を動かしましょう。例えば簡単な仕訳問題にチャレンジしてみる。そこで取り上げられていた勘定科目の内容を随時確認していく。

こうすると主要な勘定科目に絞って暗記できます。一覧表を暗記するよりも効率が良いでしょう。

筆者も何度も何度も仕訳を切る内に自然とこれらの勘定科目名を書けるようになったため、ぜひみなさんも根気強く手を動かし続ける学習方法を実践してみてください。

簿記試験で用いられる勘定科目の覚え方まとめ

簿記試験で用いられる勘定科目の覚え方まとめ

  • 「資産」などの分類を意識する。
  • ペアになっている科目はセットで覚える。
  • 仕訳問題を解きながら覚えていく。
  • 丸暗記はしない。

この記事では簿記や経理で用いられる勘定科目を中心に、仕訳とは何か、簿記とは何か紹介してきました。勘定科目は簿記3級でも配点の高い重要分野ですが、初心者が最も躓きやすい山場でもあります。

仕訳や勘定科目は覚える量が多く、そのまま丸暗記しようとすると挫折しやすいです。問題演習の中で少しずつ覚えていきましょう。使用頻度の高いものから順に自然と覚えられますよ。

勘定科目と仕訳がマスターできれば簿記3級の合格はグッと近づきます。仕訳とは何かなんとなくわかった、という人はぜひ受験してみましょう!

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