仕訳がわからない!簿記3級向け仕訳のやり方のコツやルールを徹底解説!

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この記事は専門家に監修されています

簿記

公認会計士たぬ吉

「簿記の勉強を始めたけど、仕訳がわからなくて先に進めない・・・」

「経理の仕事に関わることになったけど、簿記仕訳がわからない・・・」

簿記3級取得のために勉強をしている方の中には、このようにお思いの方も多いと思います。

仕訳は簿記の要であるため、簿記を学びたいなら仕訳をマスターすることは必要不可欠です。

そこでこの記事では、簿記3級の勉強をする際の仕訳のやり方やコツ、ルールについて、分かりやすく徹底解説をします。

この記事を読めば、簿記仕訳の基本を理解した上で正しい仕訳のやり方がわかるはずです。

簿記3級の仕訳についてざっくり説明すると

  • 簿記は「賃貸対照表」と「損益計算書」を作成するためのもの
  • 仕訳には日本全国共通で統一されたルールがある
  • ひとつの取引をすると増加するものと減少するものが発生する
  • 各勘定科目は5つのグループに分類される

簿記3級の必須科目「仕訳」とは?

PCと赤ちゃん

「仕訳」は簿記3級の勉強を始めると早々に登場してきます。

しかし、簿記仕訳を初めて勉強する人にとってはやり方が複雑だったり、なんのために仕訳をするのか分からなかったりして、理解できずにつまずくことが多いポイントです。

まず仕訳を理解するためのウォーミングアップとして、なぜ仕訳をおこなう必要があるのか、どんなルールがあるのかを確認しましょう。

仕訳は会社の取引ノート

そもそも簿記とは会社の「賃借対照表」と「損益計算書」を作るためにあります。

貸借対照表は会社の財政状態を明らかにし、損益計算書は会社の経営成績を明らかにするものです。

しかし、いきなり賃借対照表と損益計算書を作ろうと思っても、毎日おこなわれる取引内容を正確に分類した上で、正しく記録していないと作成できません。

そのため、毎日の取引をひとつずつ分類して整理してから記録する仕訳という作業をおこなうのです。

仕訳のやり方にもルールがある

会社の簿記は家計簿に似ていますが、ルールは家計簿とは異なります。

例えば家計簿なら「食材を〇〇円分買った」など、ただ単に収入や支出を記入します。

一方で簿記の仕訳は、お金の流れや商品の流れなどを「原因」と「結果」が分かるように2つに分解して記入します。

例えば家計簿の「食材を〇〇円分買った」は、仕訳なら「食材が〇〇円分増えた」だから「お金が〇〇円(食材を買った分)減った」という書き方になります。

仕訳には日本全国共通で統一されたルールがあるため、そのルールに従って記入しなければいけません。

仕訳のやり方ルール

本を読む少年

上記の説明で仕訳のイメージや仕訳を行う目的について理解いただけたと思います。

しかし、仕訳においてはそのルールも同様に非常に大切です。

簿記の勉強をするためにはこの仕訳のルールを覚えなくてはいけないのですが、これが非常に複雑です。

そこで以下では、複雑な仕訳のルールを出来るだけわかりやすく解説していきます。

【step0】勘定科目を覚えよう

先ほどは生活の中で身近な「食材の購入」を例に、仕訳のイメージをお話ししました。

ここからは会社で行われる取引で考えてみましょう。

「〇〇社が10万円でオフィス用の机を購入した。」という例を仕訳します。

仕訳をする前に、まず「勘定科目」という分類に従って各グループに分けなくてはいけません。

今回の例なら「机」の勘定科目は「備品」、「10万円」の勘定科目は「現金」です。

会社を運営するために必要な、お金・パソコン・車・建物などには必ず勘定科目が定められており、それぞれの勘定科目を覚えないと仕訳をすることができません。

仕訳の勉強を始める前にテキストなどを使って各勘定科目を覚えましょう。

【step1】取引を増加と減少に分けてみよう

勘定科目が分かったところで、さっそく先ほどの例の仕訳をしてみましょう。

仕訳の問題を解くときには、まずその取引がおこなわれたことで何が増減したか考えます。

先ほどの「原因」と「結果」のイメージを思い出してください。

「10万円の机を購入した」ということは、「机を買った(=机が増えた)」だから「10万円減った」ですよね?

このように、どんな取引でも、ひとつの取引をおこなうにあたって必ず 「増加するもの」と「減少するもの」のふたつが存在します。

これを「取引の2面生」といいます。

問題を解くためには、この取引の2面生を意識して、ひとつの取引に対して発生した「増加」と「減少」を記述してみる必要があります。

【step2】勘定科目の増減に書き換えよう

ひとつの取引に対して「何が増加して何が減少したか」ということが分かったら、次は勘定科目の増減に置き換えて記載しなくてはいけません。

「机」の勘定科目は「備品」、「10万円」の勘定科目は「現金」でしたね?

つまり今回の例の取引では 「備品の増加」と「現金の減少」と書き換えられるのです。

【step3】複式簿記の仲間分けで分類しよう

さて、勘定科目の増減に書き換えるところまで理解できましたか?

次は、それぞれの勘定科目を複式簿記の仲間分けで分類しなくてはいけません。

複式簿記の仲間分けとは「備品」や「現金」などの各勘定科目を 「資産」「負債」「純資産」「費用」「収益」 の5つのグループ化して分類することです。

これらはさらに貸借対照表に含まれる項目と、損益計算書に含まれる項目の2つのグループに分けられます。

貸借対照表

以下が貸借対照表に含まれる項目です。

項目 説明 勘定科目の例
資産 会社が保有する財産 現金、備品、売掛金、建物、受取手形など
負債 返済の義務があるもの 借入金、買掛金、支払手形、未払費用など
純資産 会社や事業の元手 資本金など

損益計算書

以下が損益計算書に含まれる項目です。

項目 説明 勘定科目の例
費用 事業を営むのにかかるお金 給料、広告宣伝費、支払家賃、水道光熱費、雑損、租税公課など
収益 事業を営むことで得たお金 売上、受取手数料、受取利息、雑収入など

今回の例の「備品」と「現金」は複式簿記の仲間分けでは「資産」に分類されます。

つまり「備品の増加」=「資産の増加」、「現金の減少」=「資産の減少」と書き表せられます。

【step4】借方と貸方にしたがって書いていこう

複式簿記の仲間分けは分かりましたか?

分類することができたら、次は実際に取引を記録する伝票に、取引に関する「勘定科目」と「金額」を書き込んでいきます。

この伝票は 「借方」と「貸方」 のふたつに分かれた表になっています。

そして借方は左側、貸方が右側というのも決められています。

勘定科目を 表のどちらに記入するかには厳格な決まりがあり、間違えて記入すると全く違う意味になるため注意が必要です。

例えば同じ「資産」でも増加の時は借方(左)、減少の時は貸方(右)に記入します。

ルールは8つだけなので、がんばって覚えましょう。

借方 貸方
資産 増加 資産 減少
負債 減少 負債 増加
資本 減少 資本 増加
費用の発生 収益の発生

今回の例は「10万円の机の購入」です。

増えたのは、机=備品=資産です。

資産の増加のため、左側の借方に「備品 100,000」と記入します。

逆に減ったのは、10万円=現金=資産です。

資産の減少なので、右側の貸方に「現金 100,000」と記入します。

借方 貸方
備品 100,000 現金 100,000
(資産(=机)の増加) (資産(=10万円)の減少)

【step5】総勘定元帳に転記しよう

ここまでの仕訳作業が終わったら、勘定項目ごとに金額を集計する「総勘定元帳」に仕訳の内容を転記します。

このように簿記は日々の取引がおこなわれる度に「仕訳→転記」 という流れを正確にこなすことが基本であり、とても重要です。

覚えておきたい!仕訳のコツ

本と眼鏡とペン 仕訳の流れは理解できましたか?

それでも勉強を進めていく中で、「仕訳がわからなくなってしまった」「まだ仕訳がわからない」という時のために、対処法や勉強方法の紹介をします。

困ったときはぜひ以下の点を意識して勉強に取り組んでみてくださいね。

「仕訳がわからない」時の対処法

そもそも「仕訳がわからない」という場合は、まだルールを完全に理解できていなかったり、イメージができていない可能性があります。

まずは参考書やこの記事の「仕訳のやり方ルール」の手順に従って、勘定科目や複式簿記の仲間分けを覚えましょう。

焦らずに逐一確認をしながらゆっくり解き進めて、理解を深めていくことが重要です。

「仕訳」の見直しのコツ

取引によっては勘定科目が複数になることもあります。

例えば「10万円の机を現金5万円と買掛金5万円で購入した」とします。

この場合、仕訳は下記のようになります。

借方 貸方
備品 100,000 現金 50,000
買掛金 50,000

このように、貸方と借方のどちらかの勘定項目だけが複数になっているとアンバランスに見えます。

しかしどれだけ勘定項目が増えたとしても、借方の合計と貸方の合計は必ず一致します。

万が一このふたつの合計が一致しない場合は、計算ミスや分類ミスをしている可能性があります。

仕訳が終わったら、貸方と借方の合計が一致しているかの確認を必ずおこないましょう。

問題集で練習あるのみ

仕訳は複雑に見えるかもしれませんが、ルールを覚えて慣れてしまえば、取引を分類するゲームのようなものです。

クイズのようにどんどん問題を解いて練習していくことで、必ず上達します。

暗記しようと思うよりも、問題を通して練習した方が仕訳ルールが身に付きやすくなるので、どんどん問題を解いていきましょう。

もちろん初めは参考書を片手にゆっくり挑戦してかまいません。

数をこなす内にだんだん慣れていくので、いつの間にか仕訳ができるようになっていくはずです。

簿記3級の勘定科目一覧

先ほど複式簿記の仲間分けについて話しましたが、ここで、勘定科目の5つのグループとその各項目についてお話ししましょう。

資産の勘定科目

  • 現金 お金だけではなく、小切手や郵便為替証書なども素早く現金化できるために当てはまります。

  • 小口現金 小学の支出に用いるお金で、切手や文房具の購入に使われる現金です。

  • 普通預金 いつでも預けたり引き出したりできる預金の形態です。

  • 当座預金 主に手形や小切手の支払いに使用される特定の預金です。

  • 定期預金 一定期間、お金を預けるタイプの預金です。

  • 受取手形 手形代金を満期日に受け取る権利を指します。

  • 電子記録債権 債権が電子化されており、満期日にその代金を受け取る権利です。

  • 繰越商品 次の期に持ち越される商品のことです。

  • 売掛金 商品を掛け売りした際の未回収の代金です。

  • クレジット売掛金 クレジットカードによる売り上げで、後で代金を受け取る権利です。

  • 貸付金 借りた人から返済を受けることが期待されるお金です。

  • 手形貸付金 約束手形によってお金を貸し、後で回収する権利です。

  • 従業員貸付金 従業員への貸し付けで、後で返済される権利です。

  • 役員貸付金 会社役員へ貸し付けたお金で、返済を受ける権利です。

  • 未収入金 商品以外の販売による、後で受け取るべき金額です。

  • 前払金 商品受取前に支払った代金、あるいは手付金のことです。

  • 仮払金 支払いは発生しているが、詳細が未確定のお金のことです。

  • 立替金 他人に代わって支払い、後で返してもらう権利です。

  • 受取商品券 もらった商品券のことを指します。

  • 差入保証金 敷金や保証金など、後で返却される予定の支払金です。

  • 建物 オフィスやビル、店舗、倉庫などの建造物を指します。

  • 土地 事業用の土地、例えば駐車場や店舗の場所などを指します。

  • 備品 会社で使用するパソコン、家具などの一般的な用品です。

  • 車両運搬具 業務で使用する車両やトラックなどです。

  • 貯蔵品 期末に残った価値を持つ物品で、次期に繰り越します。

  • 仮払法人税等 中間納付した法人税などを指します。

  • 仮払消費税 仕入れ時に支払う消費税のことです。

  • 前払費用 次期にかかる費用を先に支払ったもの、例:前払家賃や保険料など。

  • 未収収益 受け取る予定の収益がまだ手元に入っていないものです。

負債の勘定項目

  • 買掛金 商品の仕入れ時に後日支払う約束をした義務。商品以外の未支払いは「未払金」として扱います。

  • 支払手形 手形による支払いの約束で、満期日に代金を支払う必要がある義務。

  • 当座借越 当座預金がマイナスになった際、銀行からの一時的な立替金のこと。

  • 借入金 他人からの借金で、将来返済する義務。

  • 役員借入金 会社の役員から借りたお金で、後日返す必要がある義務。

  • 手形借入金 約束手形により他人から借りたお金を、将来返済する義務。

  • 電子記録債務 電子化された負債で、満期になると支払いが必要な義務。

  • 未払金 まだ支払われていない金額の義務。

  • 前受金 先に受け取った代金で、後で商品を渡す約束のお金。

  • 仮受金 使用目的が未定の金額で、先に受け取っていること。

  • 預り金 一時的に第三者から預かるお金。

  • 従業員預り金 従業員から一時保管するお金。

  • 未払配当金 配当の金額が決定後に株主へ支払う必要がある金額。

  • 未払法人税等 確定した法人税と仮払法人税の差額で、最終的に税務署に納付する分。

  • 仮受消費税 商品の販売時に先に受け取る消費税。

  • 未払消費税 決算で判明する消費税の未払い分で、国に納める必要がある。

  • 未払費用 予定された費用で、当期中に未払いの部分。

  • 前受収益 次期に発生予定の収益で、既に受け取っている金額。

純資産の勘定科目

  • 資本金 企業の創業時に株主から提供される資金や、株式発行、過去の利益などから成り立っている基本資金のことです。

  • 利益準備金 会社が未来の配当に備えて確保しておくべき資金で、法律により配当金の10%以上を会社内に留保することが要求されています。

  • 繰越利益剰余金 決算において計上される当期純利益(または損失)を次の期に繰り越すための勘定科目で、会社の財務状況を反映します。

費用の勘定科目

  • 売上 商品の販売から得られた収益を記録する勘定科目で、損益計算書上では「売上高」の名称で現れます。

・商品売買益 商品の仕入と売上の差額を記録する勘定科目で、繰越商品を使用しない際に採用されることがあります。

  • 受取利息 貸し付けた資金から発生する利息の収益を表す勘定科目です。

  • 有価証券利息 保有する国債や社債から生じる利息の勘定科目で、場合によっては受取利息に組み入れられることもある。

  • 貸倒引当金戻入 以前に確保していた貸倒引当金が減少した際の戻入金額を表します。

  • 償却債権取立益 貸倒とみなしていた債権が回収された際に発生する利益のことです。

  • 固定資産売却益 固定資産(例:機器、車両)の売却時に帳簿価格以上で売却された場合に生じる利益です。

  • 受取地代 土地の貸し付けにより受け取った代金を記録する勘定科目です。

  • 受取配当金 保有する株式からの配当金を受け取った際に使用する勘定科目です。

  • 雑収入 特定の分類に当てはまらない小さな収益を集約して記録する勘定科目で、雑益とも言われます。

その他の勘定科目

  • 貸倒引当金 売掛金や受取手形など、回収が不確実な項目に対して予め準備しておくお金の勘定科目です。

  • 減価償却累計額 資産の価値が減少する際の償却を積み重ねた、現在までの合計金額です。

  • 現金過不足 帳簿上の現金の額と現実の現金額に差異があるときに一時的に記録する勘定科目です。

  • 損益 会計期間末に収益と費用のバランスを計算し、帳簿を整理するために使用する勘定科目です。

  • 法人税、住民税及び事業税(法人税等) 企業の利益に基づいて課される税金で、その企業の所得状況に応じて変動します。

簿記3級の仕訳まとめ

簿記3級の仕訳まとめ

  • まずは勘定項目とルールを覚える
  • 借方と貸方の合計金額は必ず一致するので、見直して確認する
  • 仕訳はどんどん問題を解いて練習する

仕訳の流れやルール、コツは理解できましたか?

一見難しそうに見える仕訳ですが、勘定項目とルールさえ分かれば決して難しいものではありません。

仕訳は経理や簿記3級の勉強をする上で、避けては通れないポイントです。

わからないことがあったらしっかり調べるなどして、きっちり理解した上で、正しく仕訳できる力をつけておきましょう。

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