四大法律事務所とは?事務所毎の比較から年収・激務の実態・就職事情まで解説!
「四大法律事務所って何?」
「どのくらい激務なの?初任給はどのくらい?」
などと疑問をお持ちの方もいるでしょう。
四大法律事務所とは、西村あさひ法律事務所、森・濱田松本法律事務所、アンダーソン・毛利・友常法律事務所、長島・大島・常松法律事務所のことを指します。
これらの事務所に属する弁護士は法曹界のエリートです。
今回はそんな四大法律事務所について、各事務所の特徴や年収、激務の実態、就職事情などを解説するので参考にしてください。
四大法律事務所についてざっくり説明すると
- 1年目から年収1,000万円超え
- 案件の規模が大きい分、かなり激務
- 出身大学は東大が多い
四大法律事務所とは?
国内の法曹界をリードする4つの法律事務所のことを指します。
四大法律事務所に属する弁護士は法曹業界のエリートです。初任給はかなり高く、一年目から年収1000万円を超えると言われています。
しかし、朝9時から翌朝5時まで勤務したり、月に200時間以上働くという噂もあり、実際にかなりの激務のようなので、労働環境は決して良いとは言えません。
比較の観点は複数ある
四大法律事務所は様々な観点から比較することができます。年収の水準に大差はないでしょうが、例えば、得意としている分野はそれぞれで異なります。
また各事務所で雰囲気や士気も違うでしょう。
さらに20代がどれだけ成長できる環境であるかや、有給消化率などデータで比較することも可能です。
西村あさひ法律事務所(NA)
西村あさひ法律事務所は、日本では最も多くの弁護士を抱える事務所です。
危機管理・事業再生・倒産分野に強み
西村あさひ法律事務所では、元検事が危機管理チームのリーダーを務めることもあり、危機管理分野に強みがあります。
また国内最大規模の法律事務所なので、規模の大きなM&Aに関する実績も十分です。
さらに事業再生や倒産などの分野においても、有名・優秀な弁護士が在籍しています。
最多の弁護士数を誇る
この法律事務所の最大の特徴は、在籍する弁護士の数が日本国内で一番多いということです。600人以上の弁護士が在籍しています。
数の強みを活かして、日本企業の大規模なM&Aも成功に導いています。
また後述するアンダーソン・毛利・友常法律事務所とは対照的に、この事務所では全てのタスクがチーム単位で行われるため、若手の弁護士でも専門分野に強くなれる環境です。
採用もチーム単位で行われ、これが弁護士数を増やす要因になっているとも言えるでしょう。
1500名以上の人員を抱える大規模な事務所
西村あさひ法律事務所には、日本法弁護士が594名、外国法弁護士が49名の計643名の弁護士が在籍しています。また弁護士以外にも税理士やパラリーガル、事務職員もおり、それらを全て含めると1,500名以上です。
なお、この日本最大の法律事務所は以下のような経緯で設立されました。
- 2004年、西村総合法律事務所とときわ総合法律事務所の統合により、西村ときわ法律事務所が誕生
- 2007年、西村ときわ法律事務所とあさひ法律事務所の国際部門が統合され、西村あさひ法律事務所が設立される
現在、西村あさひ法律事務所は、東京、大阪、名古屋、福岡に国内拠点を持っています。
海外の拠点は、バンコク、北京、上海、ドバイ、ハノイ、ホーチミン、ジャカルタ、ニューヨーク、シンガポール、台北、ヤンゴン、香港です。
森・濱田松本法律事務所(MHM)
続いては、森・濱田松本法律事務所、通称「訴訟の森」について解説します。
紛争・争訟分野を得意している
「訴訟の森」という呼び名の通り、森・濱田松本法律事務所は、紛争・訴訟分野に強みを持っています。
特に企業法務に関しては国内初の事柄に着手することも多く、判例を作るという意味における貢献や存在感は大きいです。
またM&Aやファイナンス(特にキャピタル・マーケッツ分野)にも強く、賞も色々と受賞しています。
法律事務所の特徴
この事務所では、入所1年目の新人はローテンション制で様々な分野を経験することができます。
そのため、若手が経験値を増やしやすい、得意な専門分野を見つけやすいという意味では良い環境でしょう。
1949年から続く伝統ある法律事務所であり、2017年には日本の法律事務所では初めて海外の大手事務所を買収するなど、今なお発展しています。そのため、信頼度は申し分ありません。
アンダーソン・毛利・友常法律事務所(AMT)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所は、国際法に強いことで名高い法律事務所です。
得意とする法律分野
アンダーソン・毛利・友常法律事務所は、インバウンド及びアウトバウンドの法的支援を得意としています。
海外企業が日本国内で事業を展開する際や、日本企業が海外進出を果たす際には、この法律事務所がサポートを行います。
またグローバルに評価されている事務所なので、国際的な金融取引・証券取引などに関する実績も豊富です。
法律事務所の特徴
国内だけでなく、海外企業からの信頼もあるアンダーソン・毛利・友常法律事務所は、グローバルに活躍しています。
なお、固定のチームが様々存在する西村あさひ法律事務所とは違い、この事務所では案件ごとにチームが編成されるため、所属する弁護士は色々な分野を経験することができます。
また自由な雰囲気なので、若手でも伸び伸びと働ける環境です。
長島・大島・常松法律事務所(NOT)
長島・大島・常松法律事務所はニューヨークやシンガポールに拠点を持つ国際的な法律事務所です。
得意とする法律分野
ニューヨークやシンガポール、上海をはじ、多数の海外拠点を持つ長島・大島・常松法律事務所は、国際的な規模の大きい案件を得意としています。
また前身の一つである常松簗瀬関根法律事務所が銀行や金融、キャピタルマーケッツに強かったこともあり、それらの分野での実績も豊富です。
なお、昨今はAI技術を駆使したリーガルテック(リーガル×テクノロジー)や法務の自動化などにも力を入れています。
法律事務所の特徴
長島・大島・常松法律事務所は、所属する弁護士全員が協力し合って、クライアントに最高のサービスを提供するということを理念としています。
そのため、依頼者ごとに適材適所のチームが作られ、事務所全体で一つひとつの法務サービスに取り組むような風潮があります。
よって依頼者にとっては非常に心強い法律事務所だと言えるでしょう。
TMI総合法律事務所
四大法律事務所にTMI法律事務所を加えて五大法律事務所と呼ぶことも多いです。
得意とする法律分野
TMI法律事務所は、特許や商標、著作権などの知的財産権の分野に強みを持っています。
また海外拠点を持っており、いくつかの海外の法律事務所とも提携して業務を行うので、グローバルに活動しています。
なお、「知財のTMI」という通称もありますが、M&Aやファイナンス、IT、スポーツなど、多岐にわたって総合的な法務サービスを提供する事務所です。
法律事務所の特徴
TMI法律事務所には、各分野を専門する弁護士が在籍しており、外部の専門家の協力体制も整えられているため、強力なチームを作って業務にあたります。
また中途採用も行っており、特に司法修習から4年以内の若手弁護士の採用には熱心です。
弁護士数は日本法弁護士が428名、外国法弁護士が14名の計442名で、四大法律事務所に準ずる規模を誇ります。
四大法律事務所に就職するメリット
四大法律事務所への就職には以下のようなメリットがあります。
大規模な業務に参加出来る
四大法律事務所の信頼度は抜群なので、お金を持っている企業はこぞって四大法律事務所に依頼します。
四大法律事務所には国内外からスケールの大きい案件が集まってくるのです。
よって入所すれば、大規模な参加し、貴重な経験を積めるというメリットがあります。またスケールが大きければ、その分仕事のやりがいも大きいでしょう。
レベルの高い環境で成長出来る
四大法律事務所で働く弁護士は、法曹界のエリートばかりです。そのため、入所すればトップレベルの環境で働くことができます。
凄腕の先輩の姿を見て様々なノウハウを学んだり、質問して他では学べないようなことを教わることもできるので、自分の弁護士としてのレベルは格段にアップするでしょう。
また研修制度も充実しているので、弁護士として活躍するための基礎を盤石にすることも可能です。
四大法律事務所の年収・給与
四大法律事務所に就職するもう一つのメリットとしては、年収・給与の水準が高いということが挙げられます。
初任給でも1,200万円
四大法律事務所の初任給はかなり高く、例えば、森・濱田松本法律事務所の1年目の年収は1,200万円程度です。
またアソシエイト(一般的な勤務弁護士)の年収は徐々に上がっていくため、勤続年数が長くなれば、さらなる高年収が期待できます。
加えて福利厚生も充実しているので、経済的にはかなり恵まれていると言えるでしょう。
パートナーなら4,000万円以上を目指せる
四大法律事務所のパートナーになれば、4,000万円以上の年収が期待できます。また事務所への出資を行うエクイティ・パートナーであれば、年収1億円以上も夢ではありません。
しかし、30代を超えてパートナーになれるのは5人に1人とも言われているため、パートナーになるのは比較的難しいです。
ただし、アソシエイトのままでも年収2,000万円超えは可能なので、パートナーになれなくとも十分稼げます。
なお、弁護士全体の平均年収などについては以下の記事で詳しく解説しています。合わせて参考にしてください。
四大法律事務所に就職することのデメリット
四大法律事務所への就職には、以下のようなデメリットも存在します。
激務になりやすい
扱う案件の規模が大きくなればなるほど、やらなければならない仕事も多くなるので、四大法律事務所の仕事は激務です。
またレベルの高い弁護士ばかりが集まるので、事務所内での競争もかなり激しく、その中で頭角を表すには、外国語の習得など仕事プラスアルファの努力も必要になります。
大半の時間を仕事のために費やさなくてはならないので、ストレスもたまるでしょう。
成果報酬というプレッシャー
弁護士業は成果報酬の仕事なので、結果を出さなければならないというプレッシャーと日々向き合いながら働かなくてはなりません。
また時間的に逼迫した状況の中で業務を行うことも珍しくないので、定時で帰れるということは少ないです。
そのため、心身の健康を良好に保ちながら仕事を続けるのは比較的難しい環境だと言えるでしょう。
リストラや早期退職のリスクも?
かつては「Up or Out(出世かリストラか)」というような雇用を行う法律事務所も多かったのですが、弁護士業界の景気が比較的安定している昨今は、リストラなどのリスクは低いと言えるでしょう。
しかし、今後景気が後退すれば、リストラのリスクが再び高まる可能性もあります。
そのため、四大法律事務所に入ったら、リストラの対象とならないために、日々スキルアップや実績作りに取り組まなければなりません。
四大法律事務所へ就職するために必要なこと
ここからは四大法律事務所に就職するために必要な事柄について解説していきます。
司法試験の合格
弁護士秘書やパラリーガルではなく、弁護士として四大法律事務所に勤務したいのなら、司法試験の合格は必須条件です。
また予備試験や司法試験を上位で合格するなどの実績があれば、四大法律事務所の選考では有利になるので、ただ合格するのではなく、より良く合格しなければなりません。
四大法律事務所の弁護士は法曹界のエリートなので、弁護士になる前からもエリートでなければならないのです。
法律知識・思考力
四大法律事務所に入りたいなら、かなり勉強ができる必要があります。新卒の場合は学生時代の成績が、中途採用なら司法試験の合格順位が選考に大きな影響を与えるからです。
また弁護士として活躍するには、法律知識に精通していることはもちろん、その知識を有効活用できるだけの思考力も要ります。
そのため、採用の段階で思考力の高さをアピールすることも重要です。
語学力
四大法律事務所では、国際的な案件も多数取り扱うので、英語力は必須だと言えます。
TOEICであれば、800〜900点は取れないと入所は難しいでしょう。よって英語力もきちんと磨いておくべきです。
なお、英語だけでなく、他の言語も話せると良いアピールになるのでおすすめです。具体的には中国語やスペイン語などができると良いでしょう。
実務経験の有無
中途採用の場合は、能力重視の選考が行われるので、弁護士としてのスキルをアピールできるような実務経験を有していることは重要です。
特に志望する事務所が得意とする種類の案件を扱ったことがあれば、良いアピールになるでしょう。
またファイナンスの知識などは弁護士業にも活かせるので、弁護士以外の実務経験も役に立ちます。
四大法律事務所の採用の流れ
以下では四大法律事務所に採用されるまでの流れを紹介します。
履歴書の提出
履歴書やエントリーシートは、減点方式ではなく加点方式で評価されます。そのため、当たり障りのなう書類を作成しても意味はありません。
採用担当者の興味を引けるようなポイントを作ることを意識して作成しましょう。
多少の欠点があっても問題ないので、自分の個性を十分に発揮できるような書き方を心がけるべきです。
サマークラークやインターンへの参加
サマークラークとは、法曹志望の大学生や大学院生、司法試験合格者などに対して行われる研修のことで、法律事務所はこれを利用して優秀な人材を確保しようとします。
そのため、早急に内定が欲しい方や志望する法律事務所にしっかりとアピールしたいという方は、このサマクラに参加するのが良いでしょう。
またインターンも行われているので、そちらに参加するのも有意義です。
面接
「どうして弁護士を目指したか」というような定番の質問に関しては、スムーズに回答できるように準備しておきましょう。
なお、この手の質問はアイスブレイクのつもりでなされることもあります。
そのため、あまりにも熱意たっぷりに答えるのはおすすめしません。空気を読んでさらりとスマートに答えるべきです。
四大法律事務所の就活事情
以下では出身大学など、四大法律事務所の就活事情についてお伝えします。
出身大学に偏りはある?
四大法律事務所に属する弁護士の出身大学は東大が多いですが、慶應義塾大学や早稲田大学、中央大学、東大以外の旧帝国大学の出身者もそれなりにいます。
また東京大学法科大学院をはじめとするロースクールの出身者も多いです。
なお、五大法律事務所の一つであるTMI法律事務所に関しては、東大出身者はそれほど多くありません。
学歴以上に予備試験合格がものを言う
司法試験はロースクールの出身者と予備試験の合格者が受験できますが、後者の方が合格率は圧倒的に高いです。
司法試験の登竜門と言われる予備試験は、出題範囲が非常に幅広く、合格するのは法科大学院を卒業するよりも難しいと言えます。
そのため、予備試験と司法試験を共に上位の成績で合格すれば、出身大学は関係ありません。その人はおそらく並の東大出身者よりも評価されます。
よって予備試験を受験する場合は、予備校や通信講座なども活用して、上位での合格を目指すのが良いでしょう。
秘書やパラリーガル・トランスレーターの採用枠も
弁護士業には事務作業も多いため、それをサポートするための秘書やパラリーガル、トランスレーターなども法律事務所には多数在籍しています。
弁護士さながらの仕事をこなす弁護士秘書やパラリーガルもいるので、ますはそれらを目指すというのも良いでしょう。
パラリーガルとは?
パラリーガルは法律事務所で弁護士のサポートをする職業のことです。弁護士秘書との違いですが、弁護士秘書は一般的な事務作業を行うのに対し、パラリーガルは弁護士に監督されながら法律業務にも携わります。
しかし、日本にはパラリーガルに関する資格がないため、実際にはパラリーガルと弁護士秘書が明確に区分されない場合も多いです。
四大法律事務所についてまとめ
四大法律事務所についてまとめ
- 激務だが給料はかなり高い
- 成果主義だが昨今はリストラのリスクは低い
- 出身大学よりも予備試験や司法試験の成績が評価
四大法律事務所について解説しました。
エリート弁護士が属する四大法律事務所にはスケールの大きい案件が集まるので、激務ではあるものの仕事のやりがいは大きく、年収の水準もかなり高いです。
そんな四大法律事務所に弁護士として就職するには、司法試験に合格しなければなりません。
また四大法律事務所に採用されるには、予備試験や司法試験で良い成績を収める必要があります。
よって予備校や通信講座も活用しながら、十分に勉強するのが良いでしょう。
以上を参考に、早速予備試験や司法試験に向けた勉強を始めてみてください。