弁護士の転職状況は?イソ弁を辞める実態やアソシエイト・インハウスへの転職を紹介!
「弁護士の転職は難しいの?」
「弁護士の主な転職先や転職後の活躍が知りたい!」
そんな疑問を抱いている人もいらっしゃるかと思います。
司法試験は日本三大国家資格の一つです。数ある資格の中でも大変目立つ資格ですから、転職は簡単かもしれないと思っている人も多いでしょう。
ここではイソ弁をやめてしまうという実態や主な転職先への紹介も含めて、弁護士の転職状況の実態を解説します!
弁護士の転職状況についてざっくり説明すると
- 多くは企業弁護士として活躍する
- 転職を希望する弁護士は一定数いる
- 就職先や転職先は奪い合いになる
弁護士の転職事情
司法試験という難関を突破しても、必ずしも弁護士としての成功が約束されている訳ではありません。
ここでは、弁護士同士の競争がどれほど厳しいかや、弁護士の転職の難易度などに焦点を当てていきます。
司法試験合格後も競争がある
司法試験に合格して司法修習を終えた後、多くの人たちは企業弁護士として活躍したり法律相談所で活動したりします。
ただ、ずっとその事務所にいるわけではありません。ある程度年数が経つと、転職を希望する弁護士が一定数存在します。
また、司法試験は毎年行われています。司法試験に合格した人の中には、当然弁護士を目指す人もいます。
言い換えるなら、毎年新米弁護士が世間に排出されているということです。当然、この人たちも弁護士としての経験と実績を積むために就職活動を行ないます。
法律事務所や弁護事務所の中には大変人気の高い事務所があります。そのようなところには当然多くの弁護士が就職を希望します。
司法試験に合格したからという理由だけで、必ずしも第一志望の事務所に就職できる、または転職できるというわけではありません。
経験や実績は強みに
弁護士が転職する場合には前職の経験や実績があります。未経験よりは経験者を求める事務所も多数存在しますから、司法試験に合格したばかりの就職組よりは転職組の方が有利であることは確かです。前職での経験を前面に押し出して転職活動を行なえば成功する確率は上がるでしょう。
ちなみに2017年12月の「専門的・技術的職業」の有効求人倍率は2.41倍でした。この中には弁護士も含まれています。全体では1.59倍なので、それに比べると高い水準ではあります。
コロナ禍を踏まえた弁護士の転職市場の動向
コロナ禍の発生に伴って、経済の動向が不安定になり司法試験の実施も延期されるなど、弁護士の転職市場にも多かれ少なかれ変化が見られました。
コロナ禍の影響でM&Aやファンド関連などの案件は現象したとしても、一方で事業再生倒産やコーポレートの分野の案件などで弁護士の活躍が求められます。そのため、こうした領域に強い弁護士人材の採用は強化されると考えられます。
法律事務所ごとに弁護士の中途採用を継続的に行っているので、各自で最新の情報をチェックしてみるとよいでしょう。
弁護士が転職する理由
せっかく法律事務所に就職できたのですから、そのままその事務所に勤め続ければいいのにと思う人もいるでしょう。
ですが、転職したいと願う弁護士にはそれなりの理由があるのです。
弁護士が転職する理由について、特に2点に焦点を当てて解説します。
イソ弁はつらいのか
「イソ」弁とは、居候弁護士のことです。法律事務所に居候という形で弁護士として勤務し、経験や実績を積みます。もちろん実際には給料をもらって弁護士としての業務に携わっているので、厳密には居候とは言えません。最近は「アソシエイト弁護士」と呼ばれることもあります。
まず新人弁護士は法律事務所に入所して「ジュニアアソシエイツ」として勤務します。主な仕事内容はその事務所の所長や先輩弁護士の仕事を手伝うことです。弁護士業務を手伝うという経験を通して、実務で必要な知識や経験を積んでいきます。
3~4年経つと「シニアアソシエイツ」と呼ばれるようになります。この頃になるとある程度の経験や実績も積み重なってきているので、所長や先輩弁護士の手伝いだけではなく、具体的な弁護士としての仕事にも携わるようになります。
ただし、あくまでイソ弁ですから所長や先輩弁護士のような目立った弁護士活動の仕事ではなく、地味な事務作業や雑務なども行なわなければなりません。このあたりになると、法律事務所で働くことに疑問を感じる弁護士が現れます。
また、イソ弁は所長や先輩弁護士に比べて給料が少ないため、年収も必然的に低くなります。「他の弁護士はもっと年収が高いのに」と思い始めるのです。イソ弁として勤務している間は、年収が一気に上がるということはありません。
自分の弁護士としての在り方に疑問を感じ始め、イソ弁を辞めたいと思う人が現れます。もっと自分の能力や実力に合った事務所があるのではないかという気持ちが湧き上がり、転職を希望するのです。
弁護士を辞めたいという人もいる?
中には、弁護士自体を辞めたいと思う人もいます。せっかく司法試験に合格したのに弁護士を辞めたいなんてもったいないと思う人もいるかもしれません。
ですが、弁護士自体を辞めたいと思う人にはそれなりの理由があるのです。
主な理由として挙げられるのが、弁護士そのものに向いていないと感じたからです。弁護士の仕事は、クライアントの人生や将来に責任を負うことでもあります。少しのミスがクライアントの人生や将来を大きく狂わせてしまうこともあるのです。
弁護士は大きなプレッシャーを伴う仕事と言えるでしょう。そのような重圧に耐えられず、自分は弁護士に向いていないと感じて辞めたいと思う人がいます。
また、弁護士活動を通して他の魅力的な仕事を見つけたという理由も挙げられます。弁護士はさまざまな職種の人たちと接する機会も多くあります。クライアントを通して「この仕事の方が弁護士よりもやりがいがある」と感じ、弁護士を辞めて転職する人もいるのです。
弁護士の転職先
弁護士の転職先は、今までの経験や実績を活かすことで幅が広がります。主な転職先としては、新たな法律事務所や弁護士事務所、またはインハウスローヤーがあります。また、独立開業するという方向もあります。
弁護士として転職した場合にどのような道があるのかについて解説します。
アソシエイト弁護士は年収も高い
転職先の一つとして挙げられるのがアソシエイト弁護士です。一言で弁護士事務所と言っても、その形態はさまざまあり、規模や形態によって年収も大きく変わります。
西村あさひ法律事務所などのような5大法律事務所や外資系法律事務所、企業法務系の法律事務所は、事務所自体の規模も大変大きく、仕事内容も多岐に渡ります。今までの経験や実績を活かせるだけでなく、新たなキャリアアップもできるでしょう。
また、抱えている案件も大変多いのでその分給料も多くなります。例えば5代法律事務所は入所3年ほどで年収が1,300万円以上という高水準です。また、外資系の法律事務所でも平均年収は1,200~1,700万円と言われています。
年収が高い分、高いスキルが求められますが、それだけやりがいがあるということです。年収だけではなく、今後のキャリアアップも考えるならアソシエイト弁護士として活躍するのがおすすめです。
アソシエイト弁護士として転職するのなら、弁護士キャリアドットコムやMS-Japanなどの転職エージェントを利用しましょう。アソシエイト弁護士の強みは前職の経験や実績です。その点を前面に押し出して転職活動すれば、新卒弁護士との差別が図れます。
ただ、アソシエイト弁護士として活動していくには、ハイレベルなスキルが必要です。ただ単に弁護士としての実務経験があるというだけでは不十分です。特に高いコミュニケーション能力が求められるので、その点に重点を置いて自分のスキルを高める努力をしましょう。
インハウスローヤーという選択肢
弁護士の転職先としては、インハウスローヤーという選択肢もあります。2006年の新司法試験制度の導入から、弁護士は増加傾向にあります。その一方で、企業内弁護士として働く人たちも増えてきています。インハウスローヤーとは、企業内弁護士のことです。
インハウスローヤーの業務内容は、その企業によって異なります。ですが、一般的な業務内容として挙げられるのは、契約法務やコンプライアンス対応といったジェネラルコーポレート業務です。特に国内の大手企業では、このジェネラルコーポ―レート業務に特化した企業弁護士を強く求めています。
外資企業ではM&Aやファイナンスといった専門的な知識が求められることもあります。ですが、そのような専門知識が求められるのは、そのような部署に配属された時のみです。外資企業でもジェネラルコーポレート業務に強い企業弁護士を求めることが多いのというのが現状です。
契約法務やコンプライアンスについての深い知識と経験を積めば、インハウスローヤーとして転職することが可能になります。昨今はジェネラルコーポ―レート業務の専門的な知識を持ったインハウスローヤーの求人が増加傾向にありますから、転職活動におすすめです。
ただ、アソシエイト弁護士として活躍した時と比べて年収の点で大きな差が生まれます。インハウスローヤーの年収は平均500~800万円と言われており、アソシエイト弁護士の年収に比べるとかなり低めです。その分、雇用環境が安定しており、福利厚生もしっかりしています。
就職先は企業ですから、場所によっては育児休暇などが取得できます。このような点から、女性弁護士が転職先の一つとして選択肢に加える傾向があります。
司法試験の順位は転職とも関係するのか
司法試験には合格順位があります。合格発表時、自分が全体の何番目で合格できたのかがわかるのです。1~3年くらいの若手弁護士が転職する場合には、司法試験の合格順位に注目されることもあります。経験値を司法試験の合格順位でカバーしているのです。
ですが、実際の業務で必要なのは司法試験の合格順位ではなく、コミュニケーション能力です。クライアントとはもちろん、事務所に所属するのであれば職場の人たちとも良い関係性を築く必要があります。その時に重要になるのがコミュニケーションです。
転職時には必ず面接があります。この面接で特に注目しているのは司法試験での合格順位ではなく、コミュニケーション能力です。更にはその人の雰囲気や人柄を観察して、職場の人たちとうまくやっていくかどうかも見ています。
また、グローバルな案件を多く取り扱う法律事務所や弁護士事務所では、英語力も重視します。英語だけではなく、それ以外の語学力もあれば転職は大変有利になるでしょう。
言い換えるなら、司法試験の合格順位は関係ないということです。それよりも、自分がどんな方向性で弁護士として活躍していきたいのかを考え、そのためのスキルとコミュニケーション能力を伸ばすことの方が大切なのです。
弁護士の転職状況についてまとめ
弁護士の転職状況についてまとめ
- アソシエイト弁護士として転職すると年収が高い
- 安定した職場環境や福利厚生を求めるならインハウスローヤーが良い
- 弁護士として転職する時に司法試験の合格順位はあまり関係ない
弁護士の転職状況について解説してきました。日本三大国家資格である司法試験に合格する必要がある弁護士。ですが、実際の転職状況は一般的な転職状況と変わらず、簡単とは言えません。
ただ、ある程度の方向性を決めて実務経験を積めば、転職を成功させる確率は格段に上がります。転職を考えている人は、どんな方向性で弁護士としてやっていきたいのか明確にしてみてください。