大学生でも税理士になれるの?就活は科目合格だけでも有利になる?
この記事は専門家に監修されています
税理士
脇田弥輝
「大学生でも税理士試験は受けられるのだろうか?」
「税理士試験科目の一部だけでも合格したら就活に有利なの?」
税理士は知名度も人気も抜群の資格なので、税理士資格に興味を持っている大学生も多いと思います。
しかしそもそも税理士試験の仕組みが分からず、大学生でも税理士試験を受験できるのかや就活に有利になるのか、詳しく知りたい人もいるのではないでしょうか?
そこで今回資格Timesでは大学生が税理士を目指す際に満たすべき受験資格や税理士を目指すメリットについて解説していきます!
この記事を読めば、大学生のうちから税理士を目指して勉強を始めることが如何にメリットが大きいことなのかが分かるはずです!
大学生が税理士を目指すメリットをざっくり説明すると
- 受験資格を満たせば大学生でも税理士試験を受験できる
- 経理の知識をアピールでき一部科目合格でも就活で有利になる
- ただし試験合格以外に実務経験2年がないと税理士登録できない
- 大学生が開業するのは難しく就職して実務経験を積むべき
大学生からでも税理士は目指せるの?
税理士は非常に人気がある国家資格で毎年4万人もの人が税理士試験を受験しています。
11科目中5科目に合格する必要があり、「一部の科目が選択制になっていること」と「1科目ごとに合格・不合格が判定される科目別合格制が採用されていること」が特徴です。
まとめて全5科目に合格する必要はないので、例えば大学生の中には就活の時期までに1科目でも多く合格してアピールポイントにしようと考える人も多くいます。
ただし税理士試験には受験資格があって誰でも受験できるわけではありません。試験を受けるにはまず受験資格を満たすことが必要です。
税理士試験の受験資格は大卒の人が満たす場合が多いので受験者に占める割合も大卒者が多くなりますが、その一方で実は大学在学中に税理士試験の受験資格を満たす方法もあります。
大学生が税理士を目指す上では受験資格を理解することが最初のステップです。まずは税理士の受験資格について確認しておきましょう。
大学生が税理士の受験資格を得る方法
税理士試験の受験資格の詳細な内容は国税庁HPでも確認できますが、大学生が受験したい場合には主に以下のような方法が考えられます。
- 日商簿記1級または全経簿記上級の資格を取得する方法
- 大学3年生以上で、法律学または経済学に属する科目を含め62単位以上を取得する方法
前者の受験資格で受験する場合には日商簿記1級や全経簿記上級の試験日程に注意した上であらかじめ合格しておかなければいけません。
また大学生の場合は後者の受験資格で税理士試験を受けるケースが多いものの、そもそも税理士試験は年1回しかないため単位の取得時期には注意が必要です。
受験資格を満たしたら8月初旬に試験を受けて12月中旬に合格発表があります。4年の就活に間に合わせるには3年の初めから科目合格を目指す必要があるので、計画的に資格取得を目指すことが大切です。
税理士を目指すと就活に有利になる理由
実は大学生が税理士を目指すと就活でかなり有利になります。有利になる理由は1つだけではなく複数あり、大学生にとって税理士が目指す価値のある資格であることは間違いありません。
一体なぜ就活で有利になるのか、大学生にとっての税理士資格の魅力やその理由を以下で紹介していきます。
科目合格だけでも就活に活きる
税理士資格の有資格者だけでなく科目合格者であっても十分に誇れる経歴であり、科目合格だけでも就活に充分に活かすことができます。
特に会計科目である簿記論や財務諸表論の知識は企業の経理部や税理士事務所で重宝される知識です。
全5科目合格・税理士資格取得まで至っていなくても、会計科目に科目合格しているだけで採用に有利になることは間違いありません。
簿記論も財務諸表論も簿記1級以上のレベルに相当するので当然と言えば当然ですが、さらに法人税法や所得税法に科目合格していると会計事務所への就職・転職はかなり有利に進められます。
経理の知識をアピールできる
税理士は公認会計士と並んで会計系の最高峰の資格です。そのような資格を取得するために勉強している人の会計知識は他の人とは比べものにならず、就活では大きなアピールポイントになります。
経理の知識が全くない人を企業が採用するとそもそも会計知識の習得を目的とした社内研修等を実施する必要が生じますが、会計知識が豊富な学生を採用できればそのような必要もありません。
税理士に求められる水準の会計知識を活かして比較的早く戦力として機能することが期待できますし、豊富な会計知識を活かして会計経理関係の部署で活躍できる可能性も大きく高まります。
税理士合格まで行けば敵なし
2021年度税理士試験の年代別受験者数・合格率は以下の通りです。
大学生で受験する人数はあまり多くないことが分かりますが、裏を返せば税理士合格まで行けば貴重な存在として敵なしとなります。
年齢層 | 受験者数 | 合格者数(合計) | 合格率 |
---|---|---|---|
41歳以上 | 10,289人 | 1,218人 | 11.8% |
36~40歳 | 4,334人 | 795人 | 18.3% |
31~35歳 | 4,506人 | 959人 | 21.3% |
26~30歳 | 3,890人 | 895人 | 23.0% |
25歳以下 | 4,280人 | 1,272人 | 29.7% |
25歳以下の税理士試験合格率は29.7%です。25歳以下で取得する人の8割が大学生だと仮定しても、学生のうちに税理士資格を手にできるのは毎年1000人にも満たないことが分かります。
税理士合格している大学生は希少価値の高い存在として就活の際にほぼ間違いなく名前を覚えてもらえるので、税理士合格者であることを最大限アピールして就活を有利に進めることが可能です。
20代の税理士は1%未満
税理士業界は高齢化が進行しており、20代の税理士は全体の1%以下となっています。このように、税務に精通している20代の人材は日本にほとんどいないことが分かります。
そのため、仮に大学卒業までに5科目合格できなかったとしても、20代のうちに税理士資格を取得することで圧倒的に市場価値の高い人材になることができるです。
大学生税理士の就職先
大学生が税理士資格を取得すれば、単に就職先の選択肢や数が増えるだけでなく魅力的な企業や業界への就職が可能になります。
以下では大学生税理士の主な就職先について紹介していくので、税理士試験に合格して自分自身が人気の就職先に勤めているイメージを膨らませて、試験勉強のモチベーションアップにつなげて下さい。
一般企業の経理など
税理士の資格取得後の就職先として増えているのが一般企業です。
最近では多くの企業が節税対策や会計業務の自社処理に力を入れていて、税理士の知識を活かした効率的で専門的なアドバイスができる人材を欲しがっています。
一般的な日系企業への就職において税理士は強い威力を発揮しますし、税理士試験合格後に経理の実務経験を積めるという点でも一般企業の経理部門への就職はおすすめです。
企業内部の会計業務や内情を知っておくことで独立する際に役立つことは間違いなく、将来独立開業する時にも「企業経営のことを知り尽くした税理士」として企業への税務サポートが可能になります。
税理士法人や会計事務所
税理士の資格取得後の就職先として最多なのが税理士法人や会計・税理士事務所です。
一般企業に就職して自分自身で経理業務経験を積むことも大きな意味を持ちますが、税理士法人や会計事務所であれば豊富な経験を持つ先輩税理士との人脈を築くことができます。
税理士法人や会計事務所の代表税理士は実際に開業した経験を持っているので、税理士としての開業ノウハウを学べる点もメリットです。
そのため税理士として将来的な独立開業を考えている場合には、独立開業に必要なノウハウを早く身に付けられる税理士法人や会計事務所へ就職すると良いでしょう。
大人気のコンサルティング業界も視野
一般企業の経理や税理士法人・会計事務所への就職とは異なり、最近では税理士試験合格者の就職先としてコンサル業界が増えています。
コンサルでは企業の中長期的な財政戦略や固定資産税、法人税削減施策、M&Aなどの業務を行うために会計税務に強い人材が必要であり、税に関する専門的な知識を持った税理士は引っ張りだこの状況です。
コンサルティング業界は大学生から特に人気で倍率の高い就職先ですが、税理士資格を持っていれば採用の際に超高学歴の人たちに対しても引けを取ることはありません。
外資系企業で働きたい人やコンサルタントとして企業再生など経営全般に深く関わりたい人にとって魅力的な就職先と言えるでしょう。
税理士として仕事を始める手順
実は税理士試験に合格しただけでは税理士にはなれません。税理士として活動するには税理士名簿への登録が必要であり、登録するためには試験合格に加えて2年以上の実務経験が必要です。
また税理士として開業するためには総額20万円以上の費用がかかります。登録免許税6万円や手数料5万円、各地域の税理士会への会費等、あらかじめ計画的に資金を準備しておかなければいけません。
そのため大学生が税理士試験に合格した場合にはまずは就職して働いて、開業のための資金を貯めつつ税理士登録に必要な実務経験要件を満たすために2年以上経験を積むという流れが一般的です。
会計事務所などで税理士業務を行う場合
会計事務所などに就職した場合は税理士の独占業務以外の仕事を手伝う税理士補助として実務経験を積み、2年間の経験を積んだら開業税理士・社員税理士・所属税理士のいずれかで登録が可能になります。
会計事務所や税理士法人などで勤務税理士として業務を行う場合は所属税理士としての税理士登録が必要です。将来的に独立する場合には開業税理士に切り替えることになります。
一般企業に勤める場合
一般企業に勤める場合は経理の仕事などで実務経験を積むことになります。税理士登録をしていない間は税理士の独占業務は行えません。
そして2年間の経験を積んで税理士登録をする場合には、企業内税理士として働けるようになるので開業税理士として登録が必要です。
企業内税理士は就職する企業や業界によって給与が異なりますが、税理士の主な勤務先である金融機関やコンサル業界は年収水準が高く、40代以上で年収1000万円も狙える可能性がある点が大きな魅力です。
大学生が税理士として開業は可能か
税理士試験に合格した後すぐに開業して自らの判断で仕事をしたいと夢見る人もいるとは思います。しかしはっきり言って大学生が税理士として開業するのは厳しすぎます。
大学生の場合には2年以上の実務経験がなくて税理士登録要件を満たしていないことが多く、そもそも税理士として活躍する上で重要な実務経験がない状態で開業してもすぐに廃業してしまいます。
営業をして仕事を獲る能力や実際に業務をこなす能力、引き続き顧客と契約を継続してもらう能力などは、大学卒業後に就職して実際に会計業務に携わる中で経験を積むしかありません。
会計事務所などで実務経験を積み、先輩税理士に話を聞くなどしながら独立に向けて十分な準備をした上で開業したほうが良いでしょう。
大学生のうちに税理士の勉強を始めるのがおすすめ
大学生のうちから税理士を目指すメリットは就活で有利になることだけではありません。
社会人になってから税理士資格取得を目指すよりも大学在学中に税理士試験の勉強を始めるほうがメリットが多いので、この点も踏まえて大学生のうちから税理士の勉強を始めてほしいと思います。
大学生のうちに集中して勉強時間を確保する
仕事が忙しい社会人の場合は5科目合格までにどうしても時間がかかります。税理士試験は科目別合格制なので1年に1科目ずつ合格する形でも目指せますが、5年や10年かかって長期戦にもなりかねません。
逆に十分な勉強時間を確保できて学習ペースを上げられる大学生は社会人より断然有利で、1年に複数科目合格を目指すことも可能です。
そして仮に大学在学中に5科目合格に至らなかったとしても、一部の科目だけでも合格しておけば、社会人になってから引き続き税理士を目指す際に必要な勉強量や負担を大幅に減らすことができます。
大学在学中の合格率は平均の2倍近い
令和3年度試験の大学生の合格率はなんと31.1%です。全体の合格率は18.8%なので2倍近くの合格率であることが分かります。
社会人よりも勉強に集中しやすい大学生のうちに税理士試験を受験しておいたほうが有利なことが合格率のデータからも読み取れるので、大学在学中に1科目でも多く合格しておくことがおすすめです。
すぐに税理士として働かなくても問題なし
税理士試験では合格した科目は一生涯有効なので自分のペースで5科目合格を目指すことができ、5科目に合格しておけば2年の実務経験をいつ積むのかや税理士登録をいつするのかは本人の自由です。
資格取得後にすぐに税理士として働く必要はなく、例えば慌てて会計事務所や税理士法人の採用面接に申し込んだり急いで開業する必要もありません。
税理士資格を持っている人が企業からスカウトされてCFOに抜擢された例もあるなど、税理士資格を持っているだけで他の人よりも相当有利になります。
将来的に独立することも可能であるほか、どんな職業に就いて経験を積んでいくのかなど、様々なキャリアプランを描けるようになります。
このように、人生の選択肢が広がることは税理士資格の大きなメリットと言えるでしょう。
大学生が税理士資格を取得するメリットまとめ
大学生が税理士資格を取得するメリットまとめ
- 大学生でも税理士試験の受験資格を満たす方法がある
- 科目合格でも就活で有利になり全5科目合格ならば敵なし
- 就職先の選択肢が広がり最近ではコンサル業界なども人気
- 税理士登録には実務経験2年も必要でいきなりの開業は難しい
今回は大学生が税理士資格を取得するメリットについて紹介しました!
税理士試験に合格するのは決して簡単ではありませんが、豊富な会計知識が身に付き就活でも大いに役立ちます。
大学生にとってメリットが大きい税理士資格の取得を是非検討してみて下さい!