税理士になるのにおすすめの学部・学科は?大学院の学位で試験科目が免除になる?
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税理士
脇田弥輝
「税理士を目指す場合は大学の学部選びも気にすべきなのかな?」
「税理士になるのにおすすめの学部・学科を知りたい!」
税理士は知名度も高くて人気の資格なので、「将来は税理士になりたい!」と考えている高校生も多いと思います。
大学受験では自分の将来の夢や職業を意識して大学や学部を選ぶことが大切であり、税理士になるためにおすすめの学部や学科を知りたい人もいるのではないでしょうか?
そこでこの記事では税理士になるためにおすすめの学部や学科について詳しく解説します!
税理士試験を受けるための条件等を分かりやすく解説していくので、税理士になるには一体どうしたら良いのか理解できるはずです。
この記事を読むことで大学受験や税理士試験に向けたモチベーションアップに是非役立てて下さい!
税理士を目指す人におすすめの学部・学科をざっくり説明すると
- 税理士試験の受験資格の1つに法律や経済の科目の履修がある
- 税理士になるには学歴は関係ないが理系よりも文系がおすすめ
- 大学に資料請求してカリキュラム等を確認するのが確実な方法
- 免除制度を活用して税理士になる人が近年増えてきている
税理士試験の受験資格と学部の関係
税理士になる方法にはいくつかありますが、最も一般的なのは税理士試験合格と実務経験2年の2つの条件を満たす方法です。
そして資格試験の中には誰でも受験できる試験と受験資格がないと受けられない試験があり、税理士試験は後者に該当します。
税理士試験を受けるためにはそもそも受験資格を満たす必要があるので、まずは2パターンの受験資格について確認しておきましょう。
大学や専門学校での履修
大学や専門学校で一定の科目を履修すると税理士試験の受験資格を得ることができます。これが受験資格を満たす方法の中で最も一般的な方法です。税理士資格保有者は大卒者が多数を占め、専門学校卒も多くいます。
この受験資格は複数ある税理士試験の受験資格の中でも「学識による受験資格」と呼ばれるもので、具体的な内容は以下の通りです。
- 大学、短大又は高等専門学校を卒業した者で、法律学又は経済学を1科目以上履修した者
- 大学3年次以上で、法律学又は経済学を1科目以上含む62単位以上を取得した者
- 一定の専修学校の専門課程を修了した者で、法律学又は経済学を1科目以上履修した者
経済学部や法学部の出身者であれば1つ目の要件に、経済学部・法学部に在学中の学生でも大学3年生以上で62単位以上を履修していれば2つ目の要件に、それぞれ該当することが多いはずです。
また他学部の学生や出身者でも一般教養として〇〇法や□□経済学などの法律系・経済系の授業を履修している場合、大学卒業や62単位以上取得により税理士試験の受験資格を満たすことができます。
簿記1級や職務経験でも受験資格を得られる
税理士試験の受験資格には「資格による受験資格」や「職歴による受験資格」があるので、簿記1級の合格者や会計事務所等での実務経験が2年以上ある人も税理士試験の受験が可能です。
そのため「学識による受験資格」を満たしていない社会人が税理士試験を受験したい場合は、これらの受験資格を満たす必要があります。
ただし簿記1級の合格率は10%ほどなので取得は決して簡単ではありません。日商簿記2級や3級の知識を持っている場合でも更に約400~500時間ほど勉強しなければならず、時間と労力が必要です。
税理士を目指して大学を選ぶには?
受験資格を満たすことを意識して経済や法律の授業を履修できる大学を選ぶことも大切ですが、税理士を目指すのであれば大学院の免除制度が使える学部学科を選ぶのが基本的には賢い選択と言えます。
おすすめの大学などはランキング形式で紹介されることもありますが、各学部・学科の資料を請求して確認したほうが確実です。実際に資料を取り寄せてみることをおすすめします。
税理士資格取得者は東はMARCH、西は関関同立が多いのでそういった大学から資料請求するのも良いと思いますが、以下で解説する学部・学科選びのポイントを踏まえて資料請求先を選ぶと良いでしょう。
文系・理系どちらが有利?
文系学部は大学で学ぶ内容が税理士試験の内容に直結するので、文系と理系では当然文系のほうが資格取得率が高くなります。
理系学部でも教養科目として法律や経済の講義を履修して受験資格を満たすことは不可能ではないのですが、文系に比べて資格取得率は高くありません。
理系は実践的な内容を学ぶ科目の履修ができなかったり、研究や試験などで多忙になるケースも多くなります。税理士を本気で目指してそのために大学を選ぶのであれば文系を選択したほうが良いでしょう。
学部・学科はどうしたらいい?
税理士を目指すには文系のほうが良いと書きましたが、文系学部と言っても様々な学部があります。税理士になるには授業内容が税理士試験の範囲や勉強内容に関連している学部を選ぶべきです。
具体的には会計や税法科目の授業を履修できる商学部・経営学部・経済学部・法学部がおすすめであり、それらの学部が設置されている大学の資料を請求して以下の内容を確認してみて下さい。
- カリキュラム(必修科目)の編成
- 実践的な内容を学べる授業(資格講座)があるか
- 税理士のOB/OGがどの程度いるか
自分が税理士になる上で普段の授業等が役に立つかどうかという視点で学部・学科選びを行うことが大切です。
学歴や偏差値は考慮すべき?
ネームバリューのある大学ならば大手事務所への就職で多少有利に働く可能性はあります。学歴や偏差値が高い大学には有名な教授もいて、より専門的で実践的な内容を学べるかもしれません。
しかし学歴や偏差値などよりも、税理士として活躍するためには科目選択や実務経験、その人の人間性等の方がずっと大切です。
自分なりの目標と情熱を持って努力をし続け、適切な経験と知識を得ることが非常に重要です。
大学受験でも税理士試験でも目標を高く持って勉強を頑張ること自体は大切ですが、税理士になるために学歴の高さにこだわったり偏差値の高い大学を目指す必要は基本的にはありません。
大学院の学位取得による免除制度
税理士資格の取得には税理士試験に5科目合格するのが基本ですが、近年は免除制度を利用して税理士資格を取得する人が増えています。
大学院で修士又は博士を取得することによって試験科目の一部が免除される仕組みになっているので、試験で5科目合格を目指す場合に比べて少ない勉強時間で合格を目指すことが可能です。
ただし学位の種類によって免除内容が異なることと、免除制度を利用するには特定の科目の学位を大学院で取得する必要がある点には注意しなければいけません。以下で免除制度について解説していきます。
学部によってどう変わるの?
まず修士・博士に関わらず、学位を取得した内容の科目が免除されるのが「学位取得による試験科目免除制度」です。
そして税理士試験の科目は大きく分けて税法に属する科目と会計学に属する科目の2種類あるので、免除制度も税法科目と会計学科目のそれぞれで規定が設けられています。
税法科目の免除を受けるには所得税法や法人税法などの税法に属する科目等で、会計学科目の免除を受けるには簿記論や財務諸表論などの会計学に属する科目等で、それぞれ学位を取らなければいけません。
修士と博士でどう違うの?
修士と博士では免除される科目数が違うので注意が必要です。
修士では学位を取得し且つ免除申請をする分野(税法領域または会計学領域)の試験科目のうち1科目に合格していると、その領域の残りの科目が免除になります。
つまり修士では会計科目の学位を取れば財務諸表論か簿記論のうちの1科目が免除になり、税法科目の学位を取れば選択必須科目・選択科目のうちの2科目が免除になる形です。
一方で博士の場合は修士よりも免除科目数が多く、そもそも修士のように1科目合格は要件に含まれていません。
博士の場合は税法科目等で学位を取得すると税法に属する科目3科目の試験が免除され、会計学科目等で学位を取得すると会計学に属する科目2科目の試験が免除されます。
ただし平成14年3月以前に大学院で学位を取得した場合の取扱いは異なるので、気になる方は国税庁HPで確認するようにして下さい。
大学在学中の資格取得
社会人が資格取得を目指す場合に比べ、大学在学中のほうが勉強に集中しやすいことも多いので、比較的短期間で合格を狙えることは間違いありません。令和4年度の試験結果がそのことを明確に表しています。
学歴 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
大学卒 | 21,822人 | 4,054人 | 18.6% |
大学在学中 | 1,463人 | 436 人 | 29.8% |
短大・旧専卒 | 660人 | 91人 | 13.8% |
専門学校卒 | 2,591人 | 463人 | 17.9% |
高校・旧中卒 | 1962人 | 433人 | 22.1% |
その他 | 355人 | 149人 | 42.0% |
合計 | 28,853人 | 5,626人 | 19.5% |
出典:国税庁HP
その他の区分を除けば大学生の合格率が突出して高く、全体の合格率19.5%を大きく上回って大学生の合格率は29.8%です。
税理士試験の受験者層は社会人が多いものの、大学生であれば親の扶養の対象内で金銭的な心配が少ない場合もありますし、実際に大学在学中に資格を取得している人がいることが分かります。
さらに大学院まで進学して学位を取得して免除制度を活用する方法もあるので、その場合には試験で5科目に合格するよりも短期間で資格取得を目指すことも可能です。
在学中に資格取得できないと長期戦になる可能性も
その一方で免除制度を利用する場合には大学院まで進学しなければならず、学費の面では費用負担が大きいことも事実です。
免除制度を使わない場合は試験で5科目全て合格することを目指すわけですが、こちらのルートも決して容易なことではありません。
税理士になるまでに何年もかかる人もいるので、仮に大学生のときから勉強を始めても在学中に5科目合格に至らないことも考えられます。
相当な忍耐力を持ちながら、資格取得という自分の目標に向かって進んでいくことが求められます。
税理士資格は取得できれば非常にメリットが大きいものの、取得できるまで長期戦になることも十分あり得るので、それなりの覚悟をもってチャレンジする必要があることは理解しておきましょう。
税理士を目指す人におすすめの学部・学科まとめ
税理士を目指す人におすすめの学部・学科まとめ
- 法律や経済の授業がある学部は試験の受験資格を満たしやすい
- 理系より文系がおすすめで、実践的な内容を学べる学部が良い
- 免除制度を利用する場合は修士・博士の違いに注意が必要
今回は税理士を目指す人におすすめの学部・学科について紹介しました!
税理士を本気で目指すのであれば大学や学部選びの時点から真剣に将来を見据えて考えることが大切です。
魅力も将来性もある税理士という資格の取得を目指して、大学受験も税理士試験も是非頑張って下さい!