【税理士試験】大学院による科目免除制度とは?申請手順やデメリットまで徹底解説!

更新

この記事は専門家に監修されています

税理士

脇田弥輝

税理士試験は難易度が高く、なかなか合格できないからと受験をためらってしまう方もいるのではないでしょうか。

しかし、税理士試験には、大学院で学位を取得することによって一部の科目が免除されるという制度があります。

活用することで税理士資格の取得が一気に近づく、近年注目を集めている制度です。

ここでは大学院に通うことにより税理士試験の科目免除ができる制度について解説します!

また、科目免除のために通う大学の選び方についても解説します。ぜひ制度を利用して、税理士試験への合格を目指しましょう!

大学院の学位による科目免除についてざっくり説明すると

  • 大学院の学位を取得することによって科目が免除される
  • 科目免除を受けることによるメリットは大きい
  • 働きながら大学院に通い、科目免除により試験に合格することも可能

大学院に通うと税理士の試験科目が免除される?

女性と手帳 大学院に通うと税理士試験の科目が一部免除することが可能です。税法であれば2科目、会計学であれば1科目が免除されることになりますが、ただ講義を受けて単位を取得すればよいというわけではありません。

税法は税法に関する科目の研究をして学位を取ること、また、会計学は会計学に関する科目の研究で学位を取ることが必要です。

つまり、免除を受けたい科目について修士論文で研究し、修士を取得することが前提になってきます。

あらかじめ1科目に合格しておかなければならない

免除を受けたい場合、免除申請前にその分野の1科目を試験で合格しておくことも必要です。しかし、合格しておく時期は入学前でも後でもどちらでもよいことになっていますので、現在何も合格していないという方でも問題ありません。

また、税理士試験は5科目に合格しないといけませんので、この1科目を合格するという条件はいずれ満たされるものになります。大学院に通ったからといって、特別に受けなければならない科目が増えるなどということはありません。

大学院に通って科目免除するメリット

子供たちとパソコン 大学院に通うのにはお金も時間もかかりますが、わざわざ大学院に通って科目免除をすることのメリットにはどのようなものがあるでしょうか。

科目合格を狙うよりも楽な場合が多い

修士課程では、順調に研究が進めば2年で修了することが可能です。先ほども述べたように、修士課程を修了後に科目免除を受けると、税法であれば2科目が免除できます。

税理士試験はもともと合格率が10%前後と難易度の高い試験ですので、2年で2科目の試験を受けて合格するというのは簡単ではありません。

しかし、大学院を修了するとほぼ確実に2科目が免除されるのですから、試験を受けるよりも大学院に進み科目免除を受ける方が効率的であると言うことができます。

働きながらでも通いやすい

税理士試験は難易度が高い試験であるため、自分で計画を立てて勉強を続けようとしても、ペースを崩さずに続けるのはなかなか難しいものがあります。

しかし、社会人の方向けの夜間制の大学院では仕事終わりに通うことができるため、働きながらでも学位を取得することが可能です。

実際に税理士事務所、会計事務所、一般企業などで働きながら大学院を修了し、税理士試験に合格を果たすという方もいます。働いているからという理由で大学院への進学を諦める必要はありません。

登録に必要な実務経験も積みやすい

税理士登録をするには試験に合格するだけではなく、2年以上の実務経験が必要になります。

税理士法人などで働きながら大学院に通うと、実務経験も積みつつ試験合格にも近づけるということになりますので、税理士になるための近道として最適なのです。

通信制の大学院も存在

地理的に通える大学院がないという方におすすめなのが通信制の大学院です。通信制はインターネット配信などを利用し自宅で講義を受けレポートを提出するというシステムです。

年に何回かは土日などにスクーリングといって実際に大学院に行き講義を受ける必要がありますが、基本的には自宅で学ぶことができるため、仕事との両立がしやすくなります。

ただ、通信制は人気が高く入試の倍率も高くなってしまうため、入学の難易度には注意を払う必要があります。

学位による科目免除の注意点

チェックリストとペン 科目免除を受けることは魅力的に見えメリットがありますが、デメリットもいくつか存在します。

入学から学位取得にも努力が必要

この免除制度を利用するためには当然大学院に入学しなければならないため、入試対策をしっかりすることが必要となります。

大学院入試は筆記、研究計画書、面接によって構成されており、それぞれに対策を立てて準備することが求められます。

また、入学後は定められた単位をきちんと履修・取得しながら研究を進め、修士論文を完成させ審査に合格しなければ修了することができません

修士論文は複数の教授陣によって審査され、口頭試問もあります。

一般的な試験とは性質が異なるため特有の大変さがあり、簡単に合格できるものではないことを理解する必要があります。

かなりの費用がかかる

大学院に通うためにはかなりの費用が必要となり、入学費を合わせると2年間で200万円ほどはかかると言われています。

2年で修了できない場合さらに学費がかかりますし、通信制で大学院が遠いところにある場合にはスクーリングの際の交通費、宿泊費もかかります。

予備校や通信講座に通うよりも費用が高くなってしまうため、社会人の方でも簡単に出せる額ではないと言えます。

しかし、税理士になることができればかかった費用以上の収入が見込めるため、借金をして大学院に通うという方もいます。

ご自分の経済状況と照らし合わせて、無理なく通えるかどうか検討することが必要ですが、社会人でも奨学金が利用できるケースもありますので、まずは利用できる制度をしっかり調べることが大切です。

科目免除は5科目合格者から見下される?

以前は、科目免除者は試験のみでの合格者から見下される傾向にありました。

以前の制度では税法が3科目、会計が2科目免除になっていたため、それぞれの分野で修士を取ることにより5科目が全て免除になることも可能でした。

そのため、科目免除者は楽をしているというイメージがあり、見下されてしまうということがあったのです。

しかし、現在では全てが免除になることもなく、科目免除の制度自体も一般的になってきたため、そのような悪いイメージはなくなりました。

むしろ早く税理士になることができ、実務経験もより多く詰める優秀な人材になれるということで、科目免除者は認められてきています。

科目免除による合格者は増加中

男性とパソコン 最近では科目免除による合格者は増加してきていると言われています。データでくわしく見てみましょう。

登録者数と受験者数の変化

2015年度から2021年度までの受験者数(延べ人数)、合格者、新規登録者数についてまとめました。

年度 受験者数 合格者数 新規登録者数
2015年 53,663人 8,132人 2,750人
2016年 49,245人 6,498人 2,767人
2017年 45,462人 7,720人 2,885人
2018年 42,063人 5,382人 2,727人
2019年 41,158人 6,395人 2,648人
2020年 36,485人 6,357人 2,693人
2021年 37,673人 6,220人 2,490人

この表からは受験者数が減っているにもかかわらず新規登録者の数はほとんど変化していないことがわかります。

新規登録者数が一定であることは、科目免除を利用して試験に合格し、税理士資格を取得している方が増えていることも要因の一つだと言うことができるでしょう。

科目免除制度は廃止される?

科目免除制度については過去に1度、免除される科目数の減少や免除のための条件の変更が行われたことがありました。

現在では科目免除制度の廃止、または科目免除数を削減することについては議論がなく、今の段階では科目免除制度が廃止される心配をする必要はありません。

しかし、あまりにも科目免除者が増えるようなことがあれば、今後廃止される可能性が全くないと断言することはできないでしょう

免除申請可能な大学院の選び方

パソコンと人 税理士試験の科目免除申請ができる大学院はあまり多くはありません。大学院に行きさえすれば免除申請ができるというわけではありませんので、指定された条件がクリアできる大学院を選ぶ必要があります。

一般的に「経済学研究科」「商学研究科」「経営学研究科」「法学研究科」といった研究科であれば免除申請に対応しています。

しかし、その他の研究科名であっても免除申請が可能である大学院もありますので、研究科の名前だけで判断することはできません。

また、その研究科に免除を希望する科目について指導できる教官がいることも必須条件となります。まずは興味を持った大学院が免除申請に対応しているか調べるようにしましょう。

無理なく通える大学院を選ぶことも大切

通いやすい距離にあるかどうかも含めて考えるとさらに通える大学院は絞られてきます。働きながら夜間の大学院に通う場合は「職場から近い」「交通の便がよい」などの条件で決めることも必要です。

通信制であっても、遠すぎてスクーリングの際に交通費や宿泊費がかかってしまうとなると通えなくなり、修了することが難しくなる可能性も想定しておかなければなりません。そうすると、必然的に志望校は1~2校に絞られてくるでしょう。

Webサイトだけでは得られる情報は限られてきます。実際に大学院についてのパンフレットや募集要項などを取り寄せてしっかり読み、わからないところがあったら大学院に問い合わせるなどして正しい情報を得るようにしましょう。

専門職大学院で免除申請をすることは可能?

一般的な大学院の他に専門職大学院というものもあります。専門職大学院はより高度で専門的な知識を得ることを目的としており、社会人の方がキャリアアップのために進学することが多い教育機関です。

「大学院」と名がつくため、専門職大学院を修了しても科目免除が可能と思いがちですが、専門職大学院を修了すれば必ず科目免除が可能というわけではありません。

科目免除を申請するためには、修士論文により学位を取得する必要があります。専門職大学院の場合には、修士論文の提出が必須なところと提出が不要なところがあり、修士論文の提出がない専門職大学院の場合には免除申請はできません。

そのため、科目免除を希望している方が専門職大学院への進学を希望する場合には、修士論文の有無についてもチェックする必要があります。

大学院の学位による税理士試験科目免除まとめ

大学院の学位による税理士試験科目免除

  • 単位の取得と修士論文合格により、税理士試験の科目が一部免除される
  • 科目免除を利用して合格する人は増えつつある
  • 科目免除により早く合格できたり、実務経験が多く積めたりするためメリットが大きい

大学院の学位による税理士試験の科目免除について解説しました。

税理士試験は難易度が高く、合格が難しい試験の一つです。しかし、科目免除を利用することによって合格につなげることができ、試験のみで合格する人よりも早く税理士になることが可能です。

また、科目免除により合格する人は試験のみで合格するよりも早く税理士になることができるため、最近では実務経験を多く積むことができる人材だという評価をされるようになってきています。

試験が難しいからと税理士を目指すことを諦める必要はありません。科目免除の制度を利用して、より早く合格することを目指しましょう!

資格Timesは資格総合サイト信頼度No.1