宅建の建築基準法を理解しよう!用途地域、建ぺい率や容積率から直近の法改正まで解説
この記事は専門家に監修されています
宅建士
関口秀人
「宅建の建築基準法がわからない!」
「建築基準法のわかりやすい解説が欲しい!」
宅建を受験する方の中には建築基準法でお困りの方もいるでしょう。
建築基準法はとにかく分量の多い科目です。正誤問題として出題されるため、幅広い分野の正確な知識が必要です。
この記事では建築基準法について解説します。
分野ごとの重要ポイントや試験で狙われやすい場所などを取り上げます。読み終わるころには建築基準法の重要箇所が理解できているでしょう。
宅建の建築基準法ついてざっくり説明すると
- 毎年2問程度出題される。
- 分量が多いので、要点を絞って学習する。
- 法改正が行われた部分は特に重要。
建築基準法の出題数
宅建士の試験では建築基準法が毎年2問程度出題されています。出題形式は「建築基準法に関する次の記述のうち、正しいものを選びなさい」というものです。
選択肢には建築基準法に関する内容が幅広く取り上げられています。事例や分野が提示される問題とは異なり、文章の正誤を判定するタイプの問題です。
そのため、文字通り条文を正確に暗記する必要があります。建築基準法のすべての分野を正しく理解していなければ得点するのは難しいでしょう。
建築基準法の対策の仕方
建築基準法はとにかく分量が多い科目です。すべての内容を暗記しようとすると膨大な時間がかかるので、必要なこととそうではないことの区別をつけて覚えていく必要があります。
また、選択肢の正誤を判定する問題であるため、解答時には選択肢一つ一つを吟味する習慣をつけましょう。過去問を解く時は選択肢を吟味しながら暗記すると一石二鳥です。
よって、問題を解いた後は各選択肢の内容を復習していき、知識を蓄積していくことが大事になるでしょう。
建築基準法の出題内容①〜建築基準法の概観〜
建築基準法の概観
建築基準法とは建物を建てる際に最低限満たさなければならない基準を定めた法律です。生命や財産の保護を目的としています。
条文には「この法律は、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もつて公共の福祉の増進に資することを目的とする。」と書かれています。ここからも目的や意図がわかるでしょう。
建築基準法では敷地面積や建物の構造、設備、用途など広い範囲が定められています。個々の建物の基準となる単体規定と、環境と建物との関係によって求められる集団規定に大きく分けられます。
単体規定
単体規定とは個々の建物に対して求められる基準です。どのような場所や地域にあったとしても等しく適応される絶対的な基準です。
たとえば、火災や地震などの災害への対応、汚水処理や催行など衛生面での基準が規定されています。
集団規定
単体規定とは異なり、集団規定は周りの環境によって受ける制限です。建物が密集しない場所では適用されません。
集団規定が適用されるのは都市計画区域と準都市計画区域に含まれている区域の中だけです。それぞれ該当する都市計画区域、用途区域ごとに内容が決められています。
集団規定の主な内容は建物の用途制限、容積率や建ぺい率の制限、道路に関する制限などです。他の建物との関係に影響されるものばかりです。
建築基準法が適用されないもの
建築基準法はほとんどの建物に適用されますが、例外もあります。わかりやすいものは次の二つです。
まず、国宝や重要文化財です。文化財保護法で指定されている建物は建築基準法の規定を一切受けません。
次が既存不適格建築物です。建築基準法がつくられるよりも前からある建物で、当時は適法だったけれど法改正で今の法律を満たしていない建物になります。
主な単体規定
宅建士試験の建築基準法で問われやすい、主な単体規定を紹介します。
まず、住宅については次のようなことが定められています。
- 採光のために、床面積の7分の1以上の窓を設ける。
- 換気のために、床面積の20分の1以上の窓など開口部をすべての居室に設ける。
- 居室の天井は2.1m以上の高さにする。
- 屋上や2階以上の部屋のバルコニーは高さ1.1m以上のバルコニーを設ける。
- アスベストは使用禁止、ホルムアルデヒトなども使用が制限されている
- 建築物の敷地には雨水を排出する下水管、下水溝を設ける
災害対策としては次のような規定があります。防火関連は後から詳しく説明します。
- 崖などがある場合には擁壁を設ける。
- 高さ20mを超える建物には避雷設備を設ける。
- 高さ31mを超える建物には非常用昇降機を設ける。
- 建築物は、自重、積載荷重、積雪荷重、風圧、土圧及び水圧並びに地震その他の震動及び衝撃に対して安全な構造にしなければならない。
- 特に高さ60m以上の建築物は一定の技術水準に合わせる。
条例による制限の付加、緩和
建築基準法で定められた基準は一定ですが、各地方自治体が制限を付加したり緩和したりできます。そのため、裁量でより厳しい制限が課されていることもあります。
また、地方公共団体は災害危険区域を指定して必要な制限を定めることができます。逆に、市町村は国土交通大臣の許可を得て単体規定の一部を緩和することもできます。
建築基準法の出題内容②〜建築には確認を受ける必要がある〜
建築確認とは
建物の建築を実際に行う前に、建築確認という段階があります。建てようとしている建物が建築基準法などに適合しているのかあらかじめチェックする工程です。
建築確認は全ての建物に義務付けられているわけではありません。建物の規模や種類、行為、場所によって異なります。
建築確認の必要な建物
特殊建築物
特殊建築物とは防災上の配慮が必要な建築物で、全国どこでも建築確認が必要です。
特殊建築物に該当するのは事務所や一般住宅街以外で、延べ面積が100平方メートルを超える建築物です。大規模な公共施設や商業施設は大抵当てはまります。
具体的には学校、体育館、ホテル、病院、共同住宅、コンビニ、百貨店、工場、と畜場、火葬場、汚物処理場、倉庫、市場、などが挙げられます。
大規模建築物
大規模建築物は高さや構造が以下の表のいずれかの条件に当てはまる建築物です。大規模建築物の全国どのような場所であっても建築確認が必要です。
大規模建築物の条件 | 木造 | 木造以外 |
---|---|---|
階数 | 3階以上 | 2階以上 |
面積 | 500㎡超 | 200㎡超 |
高さ | 13m超 | |
軒高 | 9m超 |
宅建士の試験では、建物の階数や高さしか与えられません。
そのため、大規模建築物に該当するのか自分で判断する必要があります。よって、大規模建築物の条件は数字まで含めて覚えた方が良いでしょう。
一般建築物
一般建築物であっても、都市計画区域内等で建物を新築する際には建築確認が必要です。
都市計画区域内等とは都市計画区域、準都市計画区域、準景観地区、その他自治体が指定する区域のことです。
建築確認の必要な場合
上記のような建物以外であっても、建築確認が必要なケースはあります。確認しておきましょう。
新築、増築・改築・移転、大規模修繕・模様替えをする場合
新築、増築・改築・移転、大規模補修・模様替えを行う場合には、建物に関わらず建築確認が必要です。
ただし、増築・改築・移転の場合は10㎡以下なら不要です。しかし、防火地域・準防火地域の中にある場合にはたとえ10㎡以下でも建築確認が必要になります。
用途変更をする場合
次のような用途変更を行う場合には建築確認が必要です。なお、特殊建築物は床面積が100㎡以上ということにも注意しましょう。
- 特殊建築物ではないものを特殊建築物にする場合
- 一般建築物から特殊建築物に変更する場合
建築確認の手続き
建築確認の流れを確認しましょう。建築確認の申請から利用開始までの流れです。なお、 防火地域・準防火地域以外の一般住宅以外の場合は、消防長の同意が必要です。
- 建築確認の申請をする。
- 一般建築物の場合は7日以内、特殊建築物と大規模建築物の場合は35日以内に審査される。
- 建築確認が終わると着工できる。
- 工事が完了してから4日以内に到達するように、工事完了検査の申請をする。
- 申請後7日以内に検査済証が交付されるので、受け取って初めて使用可能になる。
- 7日以内に検査済証を交付されない場合も建物を使用開始できる。
建築基準法の出題内容③〜建築物と道路の関係〜
建築物や土地の使い方は道路との関係で変わります。ここでは建築物と道路との関係について紹介します。
道路の定義
日常会話でも普段から使われている道路という単語ですが、建築基準法では定義が決められています。宅建士試験を受験する際には、日常語の意味で捉えないように気を付けましょう。
道路は大きく、幅員4m以上の場合と4m以下の場合に分けられます。幅員とは道の横幅のことで、建築基準法では側溝の外側を境界線として測ります。
幅員4m以上の場合
幅員4m以上の道で、さらに次の条件を満たす場合には道路に該当します。単に4m以上というだけでは道路とは判断されません。
まず、道路法などの法律で決められた道路です。これは国道や市道などの公道が該当します。
次に、建築基準法適用時に既に存在していた道です。公道・私道の区別はありません。どちらも等しく道路として扱われるのです。
そして、2年以内に作られる予定の公道です。ただし、特定行政庁の指定を受けたものに限られます。指定を受けていない場合には道路には含まれません。
最後に、特定行政庁の指定を受けた私道です。位置指定道路と呼ばれている道路が該当します。
幅員4m未満の場合
幅員4m未満の道でも道路に該当することがあります。建築基準法適用時にすでに建築物が隣接しており、かつ特定行政庁の指定を受けた道です。建築基準法42条第2項で決められているため、2項道路と呼ばれています。
接道義務
建物の敷地には設置義務というものがあります。建設物の敷地は道路(自動車専用道路を除く)に2m以上接していなければならないと決められています。
接道義務の例外①
設置義務には例外があります。一つ目の例外は安全であると判断されるケースです。特定行政庁の許可があれば建築が認められます。
たとえば、隣接している場所が空き地の場合を考えてみましょう。この場合は道路に2m以上接していなくても安全と考えられます。
接道義務の例外②
二つ目の例外は特殊建築物、延べ床面積が1000㎡を超える建築物のケースです。この場合も設置義務はありません。
なお、この条件は地方公共団体の条例で条件を厳しくすることができます。しかし、条件を緩めることはできません。
セットバックが必要な場合
道路の定義に関して、幅員が4m以下の場合にも道路に該当しうるとお伝えしました。いわゆる2項道路のことです。
この定義に該当する道路は道路の規定が確立した時点ですでに建築物が並んでいたため、特定行政庁から指定されている道です。しかし、このままではいつまでも道路が4m以下の狭くて不便なままです。
そこで、セットバックという方法がとられます。セットバックとは道路の中心から左右それぞれに2m後退した線までを道路とみなすという方法です。
セットバックの線より道路側は道路として扱われるため、たとえ個人の土地であっても建物を建てることができません。
また、建ぺい率や容積率等の計算の際にはこの線よりも建物側だけを建築しても良い敷地面積として計算します。
道路の一方に崖や川、線路などが隣接していて道を広げられないこともあるでしょう。もし片側にしか道路を広げられない場合、崖や川との境界線から4mまでが建物側の境界線となります。
こうすると確実に道幅が4mになるというわけです。これが繰り返されることで、いずれほとんどの道が幅4m以上になりますね。
私道の保護
私道の保護とは設置義務に反するような変更や廃止を特定行政庁は禁止・制限できるというものです。私道を廃止したり変更したりする際にも設置義務は守られねばならないということですね。
道路内の建築制限
道路の中には原則として建築物は建築できません。通行の邪魔にならないよう、道路内の建築は制限されています。
道路上に建築していいもの
公衆便所、巡査派出所、アーケード等は道路内での建築が認められています。ただし、特定行政庁の許可が必要です。
道路の地下は建築していい
地盤面下つまり路面の地下には建築しても問題ありません。都市部に見られる地下街やビルの地下などです。
壁面線による規制
壁面線とは建築物と道路の位置を揃えるための線です。環境の向上を図ることを目的として、特定行政庁が街区内で建築審査会の同意を得て指定します。
壁面線を超えて2m以上の門、塀、建築物の壁、柱を建築することはできません。
建築基準法の出題内容④〜用途地域による建築履の制限〜
宅建士の試験でも問われる概念に用途地域があります。用途地域とは場所によって建てられる建物が決まっているという制限のことです。用途地域について紹介します。
各種用途地域と用途制限の概観
用途地域は12種類あります。以下のような種類に分かれています。この区分は建築基準法の別箇所でもたびたび用いられるので、早い段階で頭に入れておくことがおすすめです。
- 第一種低層住居専用地域(一低)
- 第二種低層住居専用地域(二低)
- 田園住居地域(田園)
- 第一種中高層住居専用地域(一中高)
- 第二種中高層住居専用地域(二中高)
- 第一種住居地域(一住)
- 第二種住居地域(二住)
- 準住居地域(準住)
- 近隣商業地域(近商業)
- 商業地域(商業)
- 準工業地域(準工業)
- 工業地域(工業)
- 工業専用地域(工専)
建築できる建物の条件は用途地域ごとに決められています。それぞれ大まかな傾向があります。
一低や二低は特に厳しい制限が課されています。準住や商業、準工業などは制約が比較的緩めです。そして工専では工業に関係のない住宅などの建造物が制限されます。
用途制限各論
全ての用途地域で建てられるもの
建物によってはどの用途地域であっても建築できます。あらゆる用途地域で建築できるのは次のような建物です。宗教施設や医療・保育施設が中心ですね。
- 診療所
- 保育所
- 神社
- 寺院
- 教会
工専では建てられないもの
用途地域が工専に指定されている場合、以下のような建物は建設できません。
- 住宅、集合住宅、下宿等の住宅系の建物
- 図書館、博物館などの人しか来ない所
- 老人ホーム等の住み込みの福祉施設
工業専用だけあって人が生活する建築物は建てられません。工業に関する建物専用ということですね。
学校関係の建物
学校関連の施設は少々複雑です。建物によって建てられる用途地域が異なるので、気を付けましょう。
施設名 | 建設可能な用途地域 |
---|---|
幼稚園 | 工業、工専以外 |
小学校 | 工業、工専以外 |
中学校 | 工業、工専以外 |
高校 | 工業、工専以外 |
大学 | 低専、田園、工業、高専以外 |
専門学校 | 低専、田園、工業、高専以外 |
病院 | 低専、田園、工業、高専以外 |
工業、工専に建てられない建築物から見てみましょう。幼稚園から高校までの比較的若年者向けの教育機関が該当します。
低専、田園、工業、高専には建てることができない施設もあります。大学や専門学校など上位の教育機関が該当します。
病院は教育機関ではありませんが、建築可能な用途地域が同じなのでまとめました。大学の施設内に併設されている大学病院のイメージを持つと良いでしょう。
ポイントは二つです。低専と田園には建設できるのは、幼稚園から高校までです。大学や専門学校は建設できません。また、診療所はどの用途地域にも建設できる一方で病院は制限されています。
店舗・飲食店の建物
店舗や飲食店の建設には複雑な条件があります。基本的には建物の大きさが大きくなるごとに建てられる範囲が小さくなります。いずれの規模でも工専には建てられません。
建物の大きさ | 建設できる用途地域 |
---|---|
2階建以下で150㎡以下 | 二低から工業まで |
2階建以下で150㎡以上500㎡以下 | 一中高から工業まで |
500㎡から10000㎡まで | 二中高から工業まで |
10000㎡以上 | 近商業、商業、準工業のみ(用途地域外も建てられない) |
2階建以下で150㎡以下のものは二低から工業までほとんどの用途地域で建設可能です。一低と工専以外全てですね。
2階建以下で150㎡以上500㎡以下のものは一中高から工業までで建築できます。二低と田園の区分が無くなりました。
500㎡から10000㎡までの建物は二中高から工業までに限られます。一中高が減っただけですね。
最も大規模な10000㎡を超える建築物の場合は近商業、商業、準工業でしか建築できません。用途地域外でも建築不可です。
地域の農作物の販売店やその農作物を使ったレストランに限っては、田園でも2階建以下で150〜500㎡で作ることができます。
事務所
事務所は二中高から工専で建てられます。ただし、住宅と兼用の場合は一低から工業までに限られます。
ボウリング場、水泳場、スケート場
ボウリング場などの建物は一住から工業までで建設可能です。住居地用や商業地だけでなく工業地でもOKです。
ホテル、旅館
ホテルや旅館は一住から準工業までです。宿泊施設は店舗・飲食店とは異なる区分なので気を付けましょう。
カラオケボックス、ダンスホール
カラオケボックスやダンスホールは二住から工専で建てられます。ボウリング場やスケート場とはわずかに範囲がずれています。
劇場、ナイトクラブ、映画館
劇場や映画館は規模によって使用可能な用途地域が異なります。境界は200㎡です。
200㎡未満のものは準住から準工業で建てられます。200㎡以上のものは近商から準工業で建設できます。後者は大規模な店舗と同じですね。
二低と田園の違い
用途地域についてよくある疑問が、二低と田園はどう違うのかです。両者は建設できる建物がほぼ同じなので分ける必要がないように思えます。
田園では農作業に関する建物が建設できる点が二つの違いです。農作物の生産・出荷・貯蔵に関する建物、農業の生産資材の貯蔵に供する建築物などが建てられます。
また、地域の農作物の販売店やその農作物を使ったレストランであれば2階建以下、150〜500㎡でも作ることができるます。
用途地域がまたがっている場合
広大な建物を建設する場合、異なる用途地域にまたがってしまうこともあります。この場合は敷地面積の過半が属している方の規制が適用されると決められています。
商業地域と工業地域にまたがっていて、商業地域の方の面積が大きい場合を考えてみましょう。この場合、商業地域の用途制限が提要されるので、高校を建てても良いと言えます。
建築基準法の出題内容⑤〜容積率、建ぺい率の制限〜
宅建士の試験では容積率や建ぺい率についても問われます。容積率とは敷地面積に対する延べ床面積の割合です。建ぺい率は敷地面積に対する建築面積の割合を指します。どちらも用途地域や都市計画によって決定されます。
建ぺい率について
建ぺい率とは
建ぺい率とは敷地面積に対する建築面積の割合、つまり建物を建てても良い割合です。漢字では建蔽率と書きます。建物で遮蔽してもよい比率ですね。
例えば、建ぺい率が8/10の場合で説明します。この場合は敷地の80%までは建物を建てても良いけれど、20%は建物がない状態にしなければいけないということです。
建ぺい率には用途地域ごとに何種類かの候補があります。その中から都市計画に応じて特定の値が選ばれます。
宅建で覚えておくべき知識
まず、基本的に商業地域の建ぺい率は8/10です。住宅系よりも商業系の方が高めに設定されています。この数字を基本として、次の条件に当てはまる場合にはさらに加算されていくシステムです。
もし該当地域が防火地域内にあり、かつ建物が耐火建築物の場合は建ぺい率が1/10増えます。ただし、元の建ぺい率が8/10の場合は制限がなくなります。9/10にはなりません。
また、該当地域が特定行政省庁に指定された角地の場合も元の値に1/10が加えられます。指定された角地だけなので、すべての角地で建ぺい率が増えるわけではありません。
もし、上記の耐火建築物の条件と角地の条件を両方満たす場合は元の値から2/10増えます。両方の恩恵を受けられるわけですね。これを角地緩和と呼びます。
また、建ぺい率が異なる地域にまたがる場合はそれぞれの地域で計算したものの合計になります。用地制限とは対応が異なるので気を付けましょう。
容積率について
容積率とは敷地面積に対する延べ床面積の割合です。延べ床面積なので、1階の床面積だけでなく2階の床面積や3階の床面積も加算して計算します。
容積率は都市計画および道路によって決ま設定されています。このうち、どちらか小さいほうが採用されます。
都市計画できまる容積率
用途地域などの都市計画によっても容積率は決められます。宅建では用途地域ごとの容積率までは覚える必要はありません。
複数の用途地域にまたがる場合は、建ぺい率と同じ方法で決定されます。また、用途地域の指定がない区域では特定行政庁が都市計画審議会を通して容積率を決定します。
前面道路の幅員によってきまる容積率
容積率は前面道路の幅員によっても設定されています。宅建で重要なのは前面道路の幅が12m以内の時の計算方法です。
前面道路の幅が12m以内の時には、道路の幅と法定乗数の積が容積率の上限となります。もし幅の違う複数の道路に面している場合は、幅が広い方の幅員を当てはめて計算します。
法定乗数は住居系の用途地域で0.4、非住居系で0.6です。低層以外の住居系では0.4から緩和されることもあります。
特定道路について
次の二つの条件を満たしている道路は特定道路と呼ばれます。特定道路に面している建物は容積率が緩和されます。
- 面している道路の幅が6m〜12mの場合。
- 幅員15m以上の特定道路から70m以内の場合。
容積率に含まれないもの
容積率の計算には延べ床面積が使われますが、例外もあります。宅建でも問われるので覚えておきましょう。
住宅や住み込みの福祉施設の地下室は算入されないことがあります。天井が地盤から1m以下の場合、全体の床面積の1/3を限度として参入しなくても良いことになっています。
また、次のものも容積率の計算には使われません。
- エレベーター(一部の例外を除く)
- 共同住宅の共用の階段や廊下
- 宅配ボックス(1/100が上限)
- 車庫(1/5が上限)
建築基準法の出題内容⑥〜高さの制限〜
建築基準法では高さの制限も規定されています。低層地域における絶対的な高さの制限と、日照を良くするための制限の2種類があります。
低層地域の高さ制限
用途地域が一低、二低、田園の場合、建物の高さが制限されます。都市計画によって10mまたは12mまでのどちらかが限度となります。
斜線制限
日照確保のための制限の一つに斜線制限があります。地面から引いた斜線の範囲内でのみ建築を許可するという制限です。斜線制限の目的は隣地や道路の日照確保です。
道路斜線制限
道路斜線制限はどこにでも適用されます。道路に日陰を作らないようにすることが目的です。
隣地斜線制限
隣地斜線制限は低層の用途地域以外に適用されます。隣の土地への日商確保のために存在します。
なお、低層系の用途地域(一低、二低、田園)には適用されていません。これらの用途地域は絶対高さ制限で厳しく制限されているため対象から外されているのです。
北側斜線制限
北側斜線制限は北側にある土地の日照を確保するための制限です。特に日商確保が必要な地域に限って特別に適用されます。
対象となるのは低層系の用途地域(一低、二低、田園)と一部の中高層の住宅専用地域です。
日影規制
日影規制は都市の過密化による日照条件の悪化を防ぐために作られた制限です。中高層建築物の高さを制限することで、日影をつくらないようにしています。
日影規制は条例によって指定された区域の中の建築物が対象となります。以下で詳しく紹介します。
対象の建物
低層系の用途地域(一低、二低、田園)から見てみましょう。これらの用途地域では軒の高さ7mもしくは3階以上の建物が対象です。
一方、低層系以外の用途地域では高さ10m超の建物が対象です。低層系よりは規制が緩くなっています。
また、用途地域の指定がない地域では条例で指定されます。なお、商業や工業系の用途地域(商業、工業、工専)では日影規制がありません。
建築基準法の出題内容⑦〜防火に関する規定〜
防火地域
防火地域とは、市街地における火災の危険性を除去する必要のある地域です。防火地域に指定されている地域では、特定の建築物は耐火建築物にしなければいけません。
耐火建築物にする定めがあるのは大きく2種類。3階建以上の建物と延べ床面積が100㎡を超える建物です。
それ以外の建物であっても準耐火建築物の基準を満たす義務があります。例えば屋上に設置されていたり、高さが3m以上あったりする看板なら不燃材料で作るか覆うかしないといけません。
準防火地域
防火地域の他に、準防火地域もあります。準防火地域でも火災対策をする必要がありますが、防火地域ほど厳しくはありません。
耐火建築物にする義務のある建物から確認しましょう。地階を除いて4階建以上の建築物と延べ床面積が1500㎡を超える建物が該当します。
また、500㎡〜1500㎡以下の場合は準耐火建築物以上にしなければいけません。500㎡以下の場合は政令の基準に適合する建築物にする必要があります。
防火、準防火の指定がない地域
防火地域や準防火地域に指定されていない地域であっても、制限がないわけではありません。次のような制限があります。
1000㎡を超える建築物には指定がなくても制限があります。準防火構造にするか、防火壁で1000㎡以内になるように区切る義務があります。
また、行政から指定や規制を個別に受けることもあります。この場合は屋根を不燃物で作る、外壁で延焼する部分は準防火構造にするなどの対策が必要です。
複数の地域にまたがる場合
制限の異なる複数の地域にまたがる場合、最も厳しい地域の規制を受けます。また、防火壁で区切った場合はその区切られた部分ごとに最も厳しい地域の規制を受けます。
その他防火の規制
防火規制はこの他にもあります。ここでは比較的重要度の高い規制を紹介します。大きな建物や燃えやすい建物など被害が大きくなりそうな建築物には規制がされやすいと言えます。
高さや面積による制限
次の条件を満たす建物は耐火建築物の基準に適合するようにしなければいけません。可燃物が主要構造物に使用されている大きな建物、というイメージですね。
- 高さが13m又は軒の高さが9mを超える
- その主要構造部(床、屋根及び階段を除く)の政令で定める部分の全部又は一部に木材、プラスチックその他の可燃材料を用いたもの
同様に、次の条件に当てはまる建物も耐火建築物の規制を受けます。高さ制限が面積に変わっただけなので、セットで覚えると良いでしょう。逆に言えば、耐火構造にさえしてしまえば3000㎡以上の木造建築物も建築できます。
- 延べ面積が3,000㎡を超える建築物
- その主要構造部(床、屋根及び階段を除く)の政令で定める部分の全部又は一部に木材、プラスチックその他の可燃材料を用いたもの
また、面積の大きなってものには防火壁に関する規制もあります。延べ面積が1,000㎡を超える建築物は次の両方を満たさなければいけません。
- 防火上有効な構造の防火壁によって有効に区画する。
- 各区画の床面積の合計をそれぞれ1,000㎡以内にする。
例外的な建物
先ほど示した耐火建築物や防火壁に関する規制は、一部の建物には適用されません。例外的な建物を見てみましょう。
まずは卸売市場の上家や機械工場などの建物です。これらの建物は火災の可能性が低いため、耐火構造の制限を受けません。主要構造部が不燃材料で造られたものや、防火上必要な政令で定める技術的基準に適合するものが該当します。
次は畜舎などの建築物です。これらの建物は避難や延焼防止の観点から見て支障がないため、規制を受けません。その周辺地域が農業上の利用に供されるものなどで、国土交通大臣が定める基準に適合する建物が該当します。
建築基準法の出題内容⑧〜建築協定〜
建築協定とは住民同士が作った地域の環境を守るための決まりのことです。市町村の条例で許可されている場合にのみ締結できます。簡便な手続きで法的なルールが作れるというメリットがあります。
建築協定をつくるには、その地域の土地所有者全員の合意が不可欠です。さらに特定行政庁の認可や公開の意見公募も必要です。ただし、借地権者がいる場合には所有者の合意は必要ありません。
建築協定は幅広い内容を決められます。例えば建物の敷地、位置、形態、用途、意匠、設備などです。
締結や変更には土地の所有者全員の合意が必要ですが、廃止は過半数の意見のみで可能です。また、所有者一人でも協定を定めることができます。しかし、実際に効力を持つのは認可から3年以内に2人以上になった場合のみです。
なお、特定行政庁の認可が下りた日以降に土地の所有者や借地権者になった者にも効力が及びます。建築協定の作成時点でいなかったとしても、拘束されることに注意しましょう。
法改正された点が出題されやすい!
宅建試験は不動産分野の法律に精通している人に資格を与える試験です。そのため、法律の変更点が出題されやすい傾向があります。
宅建士には有効期限があり、法定講習を6時間受講しなければ更新できません。しかし、合格後1年以内に限っては講習が免除されます。
これは、宅建試験では法律の変更点や改正点が出題されるため、合格者は最新の法律を知っていると判断されるためです。このことから、試験では最新の法改正における改正点が出題されると言えます。
法改正部分は過去問では対策が難しいので、個別に対策しましょう。改正前とどこがどう変わったのか、比較してみるのも有効です。
18年までの直近に法改正された点
2018年度までに変更された法改正部分のは重要箇所が多く見られます。2019年度のものだけでなく、こちらも合わせて確認しておきましょう。
空き家の活用
既存建築物である空き家は増加傾向にあります。空き家は建設当時の建築基準法に合わせて作られているため、最新の法律には適していません。そのため、空き家の転用には大規模な工事が必要でした。
そこで、空き家の活用を促進するための制度が導入されました。導入されたのは次の2点です。
- 戸建住宅等の福祉施設等への用途変更に伴う制限の合理化。
- 大規模な建築物等に係る制限の合理化。
この改正によって、段階的・計画的に現行基準に適合させていくことができるようになりました。一度に現行基準に合わせなくても良くなったということです。
また、一時的に特定の用途とする場合の制限が緩和されました。建物の用途を変更しやすくなったということですね。
建築物、市街地の安全確保のための防火規制
大規模な火災での延焼への対策のために、防火規制も改正されました。改正前に比べると規制が厳しくなっています。大まかな変更点は以下の3点です。
- 維持保全計画の作成が必要となる対象を広げる。
- 既存不適格建築物の所有者等に対して特定行政庁によって指導及び助言を行う。
- 防火地域・準防火地域内の延焼防止性能の高い建築物の建ぺい率を10%緩和する。
木造建築に関しての規定
木造建築に関する規制も改正されました。近年のニーズに沿うような内容に変更されています。
- 耐火構造等の規制対象の変更。(高さ13m・軒高9m超→高さ16m超・階数4以上)
- 耐火構造の基準の変更。(耐火構造以外の構造も可能とするなど)
- 防火地域・準防火地域内において高い延焼防止性能が求められる建築物への規制緩和。(内部の壁・柱等に更なる木材利用が可能になった。)
19年に改正された点
2019年度に改正された内容のうち、過去に宅建試験での出題実績がある分野や今後出題される可能性が高い分野をまとめます。ただし、2019年度の改正ではさほど大きな変更点はありませんでした。
道路の定義
道路の定義でも細かな条文の改正が行われました。しかし、道路の定義そのもには実質的な変更点がありません。
したがって、この記事でも取り上げた道路条件について念入りに勉強しておけば大丈夫でしょう。条文そのものは出題されやすいので、定義そのものは覚えておく必要があります。
接道義務について
接道義務での変更点は例外部分です。接道義務の例外を認めるための手続きに関してややルールが緩和されました。
幅員4m以上の道に2m以上接する建物で支障がない場合、接道義務が免除されることがあります。これまでは申請後に建築審議会を通して特例が認められていました。改正では建築審議会の同意が要件から外されました。
改正後は、国土交通省令で例外の基準が決められている場合建築審議会を通さず基準に適しているかどうかで特例が認められます。基準がない場合はこれまでと同じです。
対象となるのは、「その敷地が幅員四メートル以上の道(道路に該当するものを除き、避難及び通行の安全上必要な国土交通省令で定める基準に適合するものに限る。)に二メートル以上接する建築物」です。
この中で、「利用者が少数であるものとしてその用途及び規模に関し国土交通省令で定める基準に適合するもので、特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めるもの」には今回の変更が適用されます。
容積率
老人ホーム(入所系福祉施設)の容積率の計算が変更されました。この改正の目的は共同住宅から老人ホームへの転用を進めやすくすることです。
老人ホームの容積率の計算には、共用部分の怪談や廊下の床面積がこれまでは算入されていました。今後は共用部分の廊下や階段、エレベーターなどは共同住宅と同じ計算になります。
宅建の建築基準法まとめ
宅建の建築基準法まとめ
- 問題を解きながら一つ一つ正確に覚えていく。
- 法改正の内容は特に出題されやすい。
- 要点を絞って勉強する。
この記事では宅建の建築基準法について紹介しました。
建築基準法は宅建の試験科目の中でも特に分量の多い科目です。すべてを暗記しようとすると時間が非常にかかるため、ポイントを絞って勉強しましょう。
建築基準法では接道義務など一部の内容が繰り返し出題されています。最近の法改正の内容も問われやすい部分です。重要箇所を中心に何度も手を動かして覚えていきましょう。