宅建の不動産登記法を解説!登記の申請・順位・仮登記などを理解しよう!
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宅建士
関口秀人
「宅建試験の不動産登記法を毎回間違えてしまう」
「不動産登記法を効率良く勉強したい!」
宅建の勉強している方の中には、このような悩みや疑問を抱えている方も多いかと思います。
宅建試験における不動産登記法は民法ほど難しくないため、得点しておきたい出題ジャンルです。しっかりと勉強していれば、高い確率で1点を確保できる問題になります。
ここでは不動産登記法の具体的な出題傾向や学習のポイントをお伝えしていきます。
宅建の不動産登記法についてざっくり説明すると
- 宅建試験においてほぼ毎年出題されている
- テキスト内容を覚えることで解ける問題がほとんど
- 覚えることは多いが、難しくない
不動産登記関連の出題数
そもそも、不動産登記法とは、「不動産の表示及び不動産に関する権利を公示するための登記に関する制度について定めることにより、国民の権利の保全を図り、もって取引の安全と円滑に資することを目的とする法律」 です。
まずは法律が制定された目的を簡単に押さえておきましょう。
不動産登記法は宅建試験において毎年1問出題されている分野で、基本的にはテキストの内容を覚えてしまえば解ける問題が多く、確実に得点源にしたい分野です。
宅建試験は1点の差で不合格になるケースが多く、覚えることが多いからと、諦めてしまうのは非常にもったいないです。
不動産登記法の出題内容と学習のポイント
登記について
登記簿の作成
不動産の登記簿には、表題部と権利部があります。
表題部には不動産を特定するための状況が示され、土地であれば所在・地目・地積、建物であれば所在・家屋番号・種類・構造・床面積・附属建物等が記載されています。
権利部は甲区と乙区に分かれており、所有権についての記録が甲区、所有権以外の権利(抵当権や地上権等)の記録を乙区にするルールとなっています。
権利に関する登記の申請は義務ではなく、所有権の登記をしない場合は表題部に氏名・住所を書き込むことになっています。
この所有者を表題部所有者といい、甲区に所有権登記がなされると表題部所有者の記録は抹消されます。
一方、乙区に登記される所有権以外の権利、例えば抵当権などは、物権の一種であり、これにより該当の不動産に対する担保権が成立します。これによって、借金の返済がなされない場合、債権者は抵当権を行使してその不動産を売却し、その売却代金から債権を回収することが可能となります。
権利の順位
権利部一番左に順位番号、権利部の真ん中に受付年月日と受付番号が記載されています。
順位番号は甲区だけ、もしくは乙区だけに着目して登記された順番を表しています。
また、受付番号を見ることで全体の登記された順番を表しています。
つまり、甲区内、乙区内の権利の前後を調べるときは順位番号を、他の登記や甲区乙区にまたがって権利の前後を見たいときは受付番号を見ることで判断できるようになっています。
この順位には、もし物件が売却された場合、または債務不履行が生じた場合において、どの権利者が優先されるかという意味が含まれています。高い順位を持つ権利者(順位番号が小さい方)は、他の権利者に先立ってその権利を行使できます。これは、例えば抵当権者が物件の売却によって債権を回収する際に、優先順位が高い権利者から順に債権の回収が可能となります。
登記の申請
登記の申請の期限
権利に関する登記には申請の義務はないため、特に期限も設けられていません。
一方、表示登記については以下の場合に1ヶ月以内の申請義務があるので権利の登記と区別しておきましょう。
- 表題登記のない土地、新築の建物の所有権の取得
- 土地・建物の滅失
- 地目・建物の種類等・表題部の記載内容に変更がある場合
これらの事項が発生した場合、1ヶ月以内の申請義務があります。
登記の申請の仕方
共同申請
一部の例外を除き、権利に関する登記は登記権利者(買主、抵当権者等)と登記義務者(売主、抵当権設定者等)が共同で申請しなければなりません。
宅建本試験問題において、後述する論点と引っ掛けた「単独で申請できる」という誤りの選択肢がよく出てくるため、気をつけましょう。
この共同申請の原則は、双方の意思が一致していることを確認し、不当な権利移転を防止するために存在します。しかし、法律により一部例外が許されており、特定の条件下では登記権利者や登記義務者の一方だけで申請することも可能となっています。
単独で申請できるもの
単独で申請できる基準として、相手が存在するか・又は相手が必要かということを考えればわかります。
具体的に単独で登記できるものを列挙すると
表示の権利に関しては相手が存在しないため単独で申請できます。
所有権保存登記も表題部権利者が権利部に登記する時であり相手がいないので単独で大丈夫です。
登記を命ずる判決が出た場合は登記義務者(相手)が協力しない場合なので仕方がないです。
仮登記についても仮登記義務者の承認がある場合は単独でできます
相続や会社の合併が原因で生ずる登記は、そもそも相手がいないため単独で登記するしかありません。
変更登記・更正登記も同じように、そもそも相手が存在しないため単独登記となります。
所有権保存登記ができる場合
表題部所有者、裁判の判決で表題部所有者と認められた人、収用した場合などは、所有権保存登記をすることができます。
所有権保存登記は、その名の通り所有権を保全するための登記で、これにより権利者がその不動産に対する所有権を有していることを公示することができます。
不動産の権利関係を安定させないと、不動産取引においてトラブルが発生してしまうためです。
また、区分建物で表題部の所有者から所有権を取得した場合も所有権保存登記ができます。
売主(建物を建てた業者など)が全戸分の保存登記をするのはお金と時間がかかるからです。
代理申請
宅建試験において、取引の代理に関してはよく出題される論点です。
登記の代理権は、本人の死亡や法人の合併では消滅しません。
また、同一の法律行為について、当事者双方の代理人となる「双方代理」も認められています。
仮登記
仮登記とは
仮登記とは、本登記に必要な情報を提出できない時(書類の準備に時間がかかるときなど)や、予定されている権利移転の請求権を保全する時にとりあえず順位を押さえておくための行為です。
既に権利変動が済んでいる場合と、権利変動が済んでいない場合で第一号仮登記・第二号仮登記にそれぞれ分けられます。
仮登記の申請、抹消
仮登記の申請、抹消も基本は共同申請となります。
しかし、仮登記義務者の同意や、裁判所の命令がある時は単独でも申請することができます。
また、仮登記名義人と名義人の承諾を受けた利害関係人は単独で抹消を申請できます。
ここの論点は宅建試験で頻出となっています。
原則と例外の内容をしっかりと整理して、過去問を使いながらしっかりと対策を取るようにしましょう。
仮登記を本登記にする
仮登記のままでは対抗力が無いため、いずれは本登記をしなければなりません。
その際には、仮登記の下に余白を設けておき、そこに本登記にするタイミングで本登記と同じ内容を記載することにより本登記が完了します。
その結果、特に甲区で下に書いてある所有権等が上にくる権利と矛盾するケースがたまに発生します。そのときは、上にくる権利が認められ、下の権利は失われることになります。
抵当権の場合は順位が下がるだけで権利が失われることはないことに注意しましょう。
本登記にするための条件
仮登記から本登記にするためには条件があります。
まず、本登記をすることで権利を失う人もいるため、利害関係者の承諾が必要になります。
一方、抵当権の場合は順位が変わるだけで権利は失われないので承諾は不要です。
ここの論点も細かいですがよく出題される問題なので、注意しておきましょう。
区分建物の登記
区分建物とは、簡単に言うとマンションやアパートなどの集合住宅のイメージです。
これら区分建物は、建物の表題部と区分建物の表題部、権利部に分かれています。
専有部分の面積は、壁その他の区画の内側線で囲まれた部分で計算することになっています。
通常の建物と面積の測定方法が異なるため、区別しておきましょう。
なお、規約共用部分は表題部に記載することになっています。
土地の合筆と文筆
土地の合筆とは、複数の登記されている土地を一つにまとめることを言います。
その反対に、分筆とは一つのものとして登記されている土地を分けて別の土地として登記することを言います。
分筆又は合筆の登記は所有者の意思により、表題部所有者又は所有権の登記名義人のみが申請でき、他の人は申請できません。
また、登記官は分筆の登記申請がなくても、一筆の土地の一部が別の地目となったり地番区域が異なることになったりする場合に、職権でその土地の分筆の登記をすることができます。
合筆の可否
全ての土地で合筆ができるわけではなく、合筆をするための条件がいくつかあります。
宅建の試験対策上、合筆できない場合を覚えておけば良く、合筆することで不便が発生するときには合筆できない、とイメージすれば良いでしょう。
ちなみに、具体的に以下の場合は合筆できません。
- 互いに接続していない土地
- 地目が異なる土地
- 地番区域が異なる土地
- 所有者が異なる土地
- 所有者の持分が異なる土地
- 所有権の登記がない土地と所有権の登記がある土地
これらを一気に覚えようとすると大変なので、練習問題や過去問の勉強を通してインプットするようにしましょう。
登記の勉強のコツ
不動産登記法に関する出題は、表示部の変更の申請の期限といった数字や、例外的な場合などのパターンなど、覚えないといけないことが多いです。
しかし、この法律が制定された目的や背景を理解すれば、暗記できなくてもある程度考えれば正解することができます。
基本的なことや数字など覚えないといけないことと、きっちり覚えなくてもだいたいわかりそうなことのメリハリを自分なりにつけて勉強をしましょう。
また、単独でできる場合と単独ではできない場合をしっかりと整理して自分なりに表でまとめたりすることが効果的です。
このように効率よく暗記し、コツコツと勉強していけば確実に得点することができるでしょう。
宅建は繰り返し問題が多い
宅建試験は過去問からの繰り返し問題が多く、不動産登記法も例外ではありません。
そのため、過去問を繰り返し解くことにより、不動産登記法の出題は確実に1点取れるようになります。
勉強して間もない頃は覚えるべき事項が多く苦労するかもしれませんが、勉強していく内に自然と記憶できるようになるため、心配はいりません。
大切なのは、繰り返し勉強をする中でその内容をきちんと理解するよう考えながら勉強を進めていくことです。
宅建の不動産登記法に関するまとめ
宅建の不動産登記法に関するまとめ
- 単に暗記するのではなく、法律の背景などを考えると理解しやすくなる
- 自分で表などを作成すると効果的
- 確実に1点確保すべき!
宅建は他の資格の比較すると難易度は落ちるため、できれば一回で合格したいところです。
しかし、実際には1点に泣く人がとても多いため、得点しやすい不動産登記法はしっかりと得点しましょう。
不動産登記法はほぼ毎年のように出題されている論点ですから、「自分が出題者だったら」と考えながら様々なパターンに対応できるよう、日頃から勉強していくことが大事です。