宅建業法の手付金を攻略しよう!上限や保全措置・解約手付まで徹底解説!
この記事は専門家に監修されています
宅建士
関口秀人
「宅建業法の科目でたくさん得点したい!」
「手付金に関する出題でいつも間違えてしまう・・・」
宅建勉強中で、このようなお悩みをお持ちの方、いらっしゃいませんか?
こちらの記事では、手付金に関する問題の攻略などについて解説していきます。
宅建の手付金についてざっくり説明すると
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買主が不動産の引渡し前に支払う金銭
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手付金を貸与し契約を誘引する行為は禁止
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売主の宅建業者が倒産などの万が一に備えて保全措置などの規定もある
宅建試験での手付金関係の概要
まずは、手付金の概要や趣旨を押さえておかないと理解が進みません。
手付金等とは、「代金の全部又は一部として授受される金銭等で、代金に充当されるものであって、契約の締結日以後その宅地・建物の引渡し前に支払われるもの」 をいいます。
また、手付金は解約手付と解されています。解約手付とは、手付金額の放棄をすることで一方的な事情で売買契約を解除できるというものです。
手付金の趣旨は、業者が買い手に対して多額の手付金を設定することで、買い手の他の選択権を狭めてしまわないようにする 、ということです。
手付金に関する問題でわからなくなったら、まずはこの原点に立ち返るようにしましょう。
手付金の出題数
宅建士試験の問題全体の中で、宅建業法に関する問題が20問出題されています。その中でも手付金とその保全に関する問題は1問出ると思っていてください。
手付金の保全措置や受領できる上限などの手付金に特化した問題だけでなく、選択肢の中の一部に手付金に関する問題もあります。
宅建業法は、なるべる失点せずにできれば満点を狙いたい科目です。そのため手付金の問題はできるだけ完璧に理解しておくようにしましょう。
手付金の勉強のポイント
数字が絡んでくる問題が多いので、苦手意識を持つ人も多いかもしれません。
しかし、手付金の上限や保全が必要な場合の割合を覚えるだけで良く、覚える内容は実はシンプルなのです。つまり覚えるだけで得点ができる問題です。
あとは宅建業者自ら売主の場合なのか、手付金一般の場合なのか等出題されているシチュエーションを的確に読みとることも大事です。
宅建試験における手付金
手付金とは
手付金とは、売買契約の際に買主から売主に支払われる金銭です。
契約において特に定めのない場合は、手付は基本的に解約手付とみなされます。 つまり、売主や買主がより良い条件で売買ができる相手を見つけたときに、手付金を放棄することで「やっぱりやめた」と主張できるのです。
手付金は買主は手付を放棄することで、売主は受領した手付金の倍額を返還することで契約を解除することができるという性格を持っています。
手付による契約解除の期限
手付放棄の権利行使はいつまでできるのか、という論点も多く出題されています。
取引や契約が不安定なものとなるため、買い主の手付金放棄と売り主の受領金の倍返しによる契約解除はいつまでもできるわけではありません。
「相手方が契約の履行に着手した後は手付による契約解除はできない」、これがキーワードになります。
具体的には売主が引渡・移転登記を行なった後、買主が手付金以外の代金を支払った後であれば、契約の履行とみなされるため相手方は手付放棄による契約解除はできなくなります。
特約
宅建業者が自ら売主の場合は、法律で決まっている規定の他に買主に不利な特約は無効になります。 例えば、「手付放棄の他に50万円払わないと契約解除できない」というようなものは禁止です。
一方、それに対して売主に不利な契約は許容されます。宅建業法は宅建業者による悪徳取引から個人の買い主を守るための法律であるため、このような特約は許容されます。
また、買手の手付放棄による契約解除におり売主である宅建業者に損害が発生しても、買主は賠償する必要はありません。
手付金額の制限
宅建業者が取引の際に受領できる手付金には上限があります。
宅建業者が自ら売主の場合、手付金が代金の2割を超えてはいけません。
2割を超える額の手付を受け取っていた場合でも手付の金額は2割とみなされ、2割を超えて受領した部分については無効となります。(契約そのものが無効になるわけではないので注意が必要です)
また、買主による手付放棄での契約解除の場合でも2割を超えて受け取っていた分は返さないといけないなど、細かいところまで出題されます。
そのため、売主は宅建業者なのか・買主は宅建業者なのかを正確に見極めていきましょう。(買主が宅建業者である場合は、手付額の制限も手付金等の保全措置の規定もありません)
手付貸与の禁止
宅建業者は早く取引を成立させたいと思いますが、宅地や建物の購入は業者ではない買主にとって、一生に一度あるかないかの取引です。そのため、宅建業者が手付を貸与することにより安易に取引の成立を急がせることを防ぐために、この規定が設けられています。
宅建業者が相手に対して手付の貸与を行うことや、その他信用の供与をすること(手形での支払い等)で契約の締結を誘引する行為は禁止されています。
単なる融資だけでなく、後払いや分割払いも実質貸与になり契約を誘引する行為となるため禁止されています。誘引する行為自体が禁止されており、その後に契約を締結したかどうかは関係ない点に注意しましょう。
この手付貸与等の禁止の規定は、買主が宅建業者でも適用されます。手付額の制限・手付金の保全措置は買主が宅建業者の場合は特に規定がありませんでしたが、手付貸与の禁止規定に関しては買主が宅建業者であっても禁止です。
ここは混同しやすい個所ですので、自分で表を作るなどしてまとめておきましょう。
ちなみに、手付金を減額すること・手付金貸付けのあっせんをすることは禁止事項に含まれません。過去問などで確認しておきましょう。
手付金等の保全措置を攻略しよう
手付金の保全措置に関する出題も頻出なのでしっかりと押さえておく必要があります。
宅建業者が自ら売主となる場合、倒産などで手付金等が返せなくなることがないようにある一定の額を超える手付金は保全措置を取らないといけない規定があります。
この規定の対象になるのは、「宅建業者が自ら売主であって、買主が宅建業者ではない時(すなわち一般消費者)」のケースの取引です。つまり、買主と売主がともに宅建業者である業者間取引や、売主が宅建業者でないケースは保全措置の対象外となります。
このケースの他にも売買代金によって手付金の保全が不要となるケースもあるので、併せて押さえておきましょう。
買主が所有権移転登記を受けていない場合で、「かつ」受け取る額が未完成物件の場合は代金の5%を超える時、完成物件の場合は10%を超える時、「もしくは」いずれの場合も1000万円を超える場合は手付金の保全措置を講じなければなりません。
保全措置が必要とされる条件
所有権移転登記を受けていない場合 | |
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未完成物件 | 代金の5%を超える,もしくは1000万円を超える時 |
完成物件 | 代金の10%を超える、もしくは1000万円を超える時 |
「かつ」と「もしくは」というフレーズが重要なポイントです。買主が所有権移転登記を受けていないことが前提条件となり、売買代金が5%を超える(完成物件なら10%を超える)もしくは売買代金が1000万円を超える場合に保全措置が必要です。
宅建業者は保全措置をしてからでなければ手付金は受け取れず、保全措置は「銀行等による保証」と「保険事業者による保証保険」の2種類の措置のうち、どちらか一つを講じればよいこととなっています。
ここは少々複雑で問題をこなしながら覚えていきましょう。
保全の対象は手付金だけではない
保全の対象となる手付金は、今まで受け取った手付金・中間金等の金額を全て足した金額です。この総額が上記の条件に当てはまる時に、その全額を保全しないといけません。
例えば2000万円で家を売買する契約をして300万円の手付金を受け取る場合、売買代金の10%を超えるため300万円の保全が必要になります。
また、2000万円の完成した家を買う契約をして150万の手付金を受け取るときは保全をする必要はありませんが、その後に中間金を150万円受け取る場合、合計して300万円で10%を超えるので、所有権移転登記が終わっていない場合は300万円を保全してから150万円を受け取らないといけないということになります。
このケースは試験でも頻出なので確実におさえておきましょう。
重要なのは過去問演習
宅建士の試験において宅建業法は得点源にしなければいけない科目です。宅建業法は複雑な出題は少なく、ほぼ暗記で対応できる問題が多いためです。
手付金に関しても、最初テキストを読んだだけでは「なんか複雑そうでよくわからないな」と思われる方もいるかもしれませんが、過去問を繰り返し解いていくと自然と慣れてきますので心配はいりません。
もしも勉強に不安があれば、パターン別に分けて自分で表を作成してみる等の工夫をしていきましょう。その後にまた過去問演習にとりかかれば徐々に理解ができていくはずです。
宅建の手付金まとめ
宅建の手付金に関するまとめ
- 毎年1問は出題されているので、しっかりと取り組むこと
- 最初は理解ができなくても、問題を多くこなせば理解できるので辛抱強く取り組むこと
- 売主が宅建業者か否か、買主が宅建業者か否かで適用の有無が違ってくるので注意すること
手付金に関して苦手意識を持っている人は多いですが、重要なのは問題に慣れることです。コツさえつかめればスラスラと解けるようになりますので、粘り強く取り組んでくださいね。