宅建試験の法改正のポイントは?建基法から民法まで出題予想を公開!

この記事は専門家に監修されています

宅建士

関口秀人

「宅建試験では、法改正事項についても押さえておくべきだろうか?」

「法改正された項目についてはどう対策すればいいの?」

こんな疑問を抱えている方もいらっしゃることでしょう。

これまでに宅建試験を複数回受験している方でも、改正される法律があれば、その点について改めて対策を立てる必要があります。

今回は、建築基準法と民法の法改正のポイントについて解説します!

法改正のポイントをざっくり説明すると

  • 接道義務・接道義務の例外の追加
  • 日陰規制の改正
  • 老人ホーム等の容積率の変更の特例
  • 仮設興行場等の仮設建築物の設置期間の特例
  • 防火構造にすべき特殊建築物の外壁に関する既定が削除
  • 自筆証明書遺言の方法の緩和
  • バリアフリー法及び森林経営管理法

建築基準法2019年の改正

複数のはてな

宅建試験は、民法・建築基準法などを問う法律系の国家試験ですから、改正点は必ず出題されると考えて下さい。

建築基準法の改正が重要なポイントです。

今年の宅建試験は令和元年10月20日(日)です。法改正の施工日が2019年4月1日よりも後になる法律もあるので、全ての改正が出題範囲になるわけではないことに注意しましょう。

特に建築基準法に関しては、多くの法令・規制が改正されていますので注意して下さい。

接道法が大きく改正(頻出)

接道義務とは、建築物が道路にどの程度道路に接していなければならないかを定めた基準です。

建築物の敷地は道路に2メートル以上接しなければならないのが原則とされています。

接道義務の例外が追加

法第43条 接道義務規定

  • 建築物の敷地は、敷地が道路に2メートル以上接していなければならない。

次のいずれかに該当する建築物については、適用しない.。

改正「前」の法第43条 ただしがき

  • 敷地の周囲に広い空地を有するなど基準に適合すること
  • 交通・安全・防火・衛生上支障がない事
  • 特定行政庁が許可

今回の改正で接道義務の例外が追加されました。

改正「後」の法第43条 ただしがき

  • 幅員4メートル以上の道(国土交通省令で定める基準に適合する道路)に2メートル以上接している
  • 利用者が少数であるものとしてその用途及び規模に関し国土交通省令で定める基準に適合するもの
  • 交通・安全・防火・衛生上支障がない事
  • 特定行政庁が許可
  • 基準を定めていないものは、従前の手続き

試験準備のポイント

  • 改正前:建築審査会の「同意が必要」

  • 改正後:建築審査会の「同意は不用」

条例による条件付加

建築基準法第43条第2項では、避難に支障の生じるおそれがあることから、地方自治体が下記の建築物の接道規制を強化できるとされています。

  • 用途により避難に支障

1. 特殊建築物

  • 構造により避難に支障

1. 階数が3以上である建築物

2. 政府が定める窓その他の開口部を有しない居室(採光・排煙上の無窓建築物)を有する建築物

3. 延べ面積が1,000平方メートルを超える建築物

避難に支障のある建築物は下記表を参照

避難に支障がある建築物 用途 避難に支障がある建築物 構造
1 不特定多数が集合 1+3 出口までの避難距離が長い
1 多数の者が就寝 2 光の不足又は煙による非難が混乱
1 火災荷重が大

近年、袋路状道路の奥に多くの人が利用している大型の建築物が建設されることが問題になっています。

避難の際に多数の人が接道部分に集中すると避難に支障が生じる恐れがあります。

このような建築物のうち、延べ面積が150平方メートル超のものについては、地方公共団体が条例で接道規制を強化できるように、制度の拡充が行われました。ただし、一戸建ての住宅は対象から除外されます。

試験準備のポイント

  • 地方公共団体が条例で規制を強化できる
  • 火災時に避難に支障がある建築物
  • 延べ面積150平方メートル超の建築物は接道規制を強化

容積率が改正(出題可能性あり)

改正の主な内容は、容積率規制の合理化による「老人ホーム、福祉ホーム、その他これに類するもの」の共用廊下や階段などが、共同住宅と同様に容積率の算定基礎となる床面積から除外されたことでしょう。

また、これらと一体となった宅配ボックスの設置場所に関しても、共同住宅と同じ算出率規制から除外されました。

共用廊下は、昨年の11月に運用が始まり、既に容積率規制の対象外となっています。

この改正によって、今まで老人ホームは「施設」と捉えられてきましたが、今後は「住居」というイメージに変わっていくと期待されています。

主な該当施設は以下の通りです。

法律所条文 該当施設 関係法
老人ホーム、またはこれに類するもの 老人ホーム、特別養護老人ホーム、グループホーム、有料老人ホーム等 老人福祉法
福祉ホーム、またはこれに類するもの 母子生活支援施設、児童養護施設、児童自立支援施設、乳児院ファミリーホーム等 児童福祉法
福祉ホーム、またはこれに類するもの 婦人保護施設、厚生施設等 売春防止法、生活保護法
福祉ホーム、またはこれに類するもの 福祉ホーム、グループホーム、ケアホーム、障害者支援施設等 障害者総合支援法

試験準備のポイント

  • 増築、改築、若しくは移転する場は、再度の許可が不要
  • 宅配ボックスの設置場所に関しても、算出率規制から除外

日陰規制が改正(出題可能性は低い)

日陰規制の条件の書き方は、「5-3時間/4メートル」あるいは「5時間・3時間・4メートル」となっています。

「5-3時間」という時間は日影がかかってもよい時間の「限界の長さ」を現しています。

日照時間がもっとも短い冬至の日の午前8時から午後4時の間に、敷地境界線から5〜10メートル離れた範囲では5時間以内、10メートルを超えるところでは3時間以内であれば日影になってもよいという意味です。

また、「4メートル」というのは地面からの高さが4メートルのところで測定したということを表しています。「4メートル」の高さは、2階の窓の高さを基準としています。

日影規制は、用途地域や自治体によって違いがあります。それぞれの地方自治体が建築基準法の内容に照らし合わせて基準を決めている日影による中高層の建築物の高さの制限のことです。

改正前

「特定の行政庁により日影規制の適用除外許可を受けた建築物の増築等を行う場合には許可を再度取得する必要がある。

改正後

「周囲の居住環境を害するおそれがないものとして政令で定める位置及び規模の範囲内において増築し、改築し、若しくは移転する場合は、再度の許可が不要

試験準備のポイント

  • 増築・改築・移転する場は、再度の許可が不要

仮設建築物に対する制限(出題可能性は低い)

例えば、東京オリンピック・パラリンピック競技大会では、プレ大会に備えて、開催の約2〜3年前から仮設観覧施設等を設ける必要があります。

その他の理由で1年を超える使用が必要になった時には、仮設建築物の使用は、「特定行政庁が、建設審査会の同意を得て」認めた場合に、「1年を超えることができる」とされました。

参考:第85条第1項・第2項

  • 国、地方公共団体、日赤が災害救助のために建築(第1項)
  • 被災者が自ら使用するために建築:延べ面積30平米以内(第2項)
  • 公益上必要な用途に供する応急K節建築物(第2項)
  • 存続上限:通常の災害では、2年3か月以内に恒久的な建築物が整備され、以降可能になるため。

試験準備のポイント

  • 仮設建築物の使用が1年を超えることができるようになった

防火構造にすべき特殊建築物の外壁に関する既定が削除(ほぼ出ない)

木造建築物等である特殊建築物の外壁等に関する制限は廃止されます。

第23条、24条で規定する対象建築物と求められる水準

対象法令 第23条 第24条
対象建築物 屋根不燃区域(第22条第1項)の全ての木造建築物等 屋根不燃区域(第22条第1項)の一定の用途・規模のもの(20分)
求められる水準 外壁の延焼の恐れのある部分について準防火性能 外壁・軒裏で延焼の恐れのある部分で防火性能(30分)

第24条が対象としている木造建築物等

用途 規模
A 学校、劇場、映画館、観覧上、公会堂、マーケット、公衆浴場 延べ面積1,000平米以下
B 自動車車庫 延べ面積50平米超1,000平米以下
C 百貨店、共同住宅、寄宿舎、病院、倉庫 階数が2かつ200平米超1,000平米以下

試験準備のポイント

  • 防火構造にすべき条件が厳しくなった

国、都道府県又は建築主事を置く市町村の建築物に対する確認、検査又は是正措置に関する手続の特例が追加(出題可能性は低い)

法第6条「建築確認」の改正が行われます。現行の「第1項確認の対象」の建築・大規模修繕、大規模模様替えは、そのまま改正後の「第2項通知の対象」に移行されます。

改正後は法第2項(例外規定)の「前項の規定は、防火地域・準防火地域外において増築、改築、移転しようとする場合で、その部分の床面積が10平方メートルであるときは、適用しない。」という規定は除外されました。

試験準備のポイント

  • 法第2項の例外規定は除外された

民法2019年の改正

たくさんの本

宅建の試験は、実施年度の4月1日時点に施行された法令が対象になります。つまり、2019年度の試験も4月1日以降に施行された法令だけが対象になります。

今回の民法の改正については、「相続自筆証書遺言の方法緩和」が問われる可能性は非常に高いと言えます。

なぜなら、今回の法改正で、「相続自筆証書遺言の方法緩和」だけが実施年度の4月1日以降に施行されるからです。

では、改正点について詳しく見ていきましょう。

遺言のPC作成が可能に(出題可能性あり)

自筆証書遺言の方式緩和については、すでに2019年1月13日に施行されていますから、来年の試験の出題範囲に含まれます。

自筆証書遺言の方式緩和では、添付する財産目録(相続財産の一覧)に限って、自書でなくても認められることとされました。

ただし、パソコン等で作成した財産目録の「各ページ」には、全て署名、押印することが条件になっています。両面書きの場合は、裏面にも署名、押印が必要ですので注意して下さい。

また、財産目録をパソコンやワープロで作成し、預金通帳をコピーして添付することができるようになりました。

試験準備のポイント

  • 財産目録はパソコンでの作成可
  • 裏面にも署名、押印が必要

所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法(可能性は低い)

握手する人間と家

人口減少や高齢化に伴い、土地利用のニーズも低下しています。特に地方から都会への人口移動が顕著になっており、土地所有の意識も希薄化してきているといえます。

この状態が続くと、誰の土地なのか分からない所有者不明土地」が増加するという懸念が言われるようになりました。

所有者不明土地については所有者の特定が困難なため、公共事業の推進等にも支障が出ています。

このような課題に対応するために、平成30年6月13日に「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」が公布されました。

3つの制度が誕生

今まで土地所有者を見つけることは大変困難でしたが、今回の法改正で所有者特定に必要な公的情報(固定資産課税台帳、地籍調査票等)について、行政が閲覧・利用できるようになりました。

所有者不明土地の登記簿に、登記官の判断で長期層独登記等未了であることを記録できるようになりました。

これにより、地方公共団体の長(市区町村長など)が家庭裁判所に対して、財産管理人を設定することを請求することが可能になりました。

試験準備のポイント

  • 登記官の判断で登記簿に長期層独登記等未了と記録できる
  • 地方公共団体の長が家庭裁判所に財産管理人を設定し請求することが可能

3つの制度が誕生

個人が相続(相続人に対する遺贈も含む)により土地の所有権を取得した場合、その個人が相続する土地の所有権の移転の登記前を受ける前に死亡したときは、平成30年4月1日から令和3年3月31日までの間にその個人を土地の所有者の登記名義人とするための登記については、登記免許税は課せられません。

宅建法や契約に関わるその他の変更(可能性あり)

コップと本

宅建業も業務の効率化やプライバシーに配慮し、細かな規定の変更が行われています。

今までの規定をそのまま覚えていると、思わぬところでつまずいてしまいますので、ここでもう一度変更点について確認して下さい。

重要事項説明の削除

これまでは、宅地や建物を取引する場合は、買主または借主が宅地建物取引士であっても、一般の消費者と同様に重要事項の説明をしなくてはなりませんでしたが、法改正によりその説明をする必要がなくなりました。

ただし、35条書面引き続き交付しなければなりませんので注意して下さい。

また、宅建業者に対しては営業保証金と供託金等についても説明の必要はなくなりました。

従業者名簿への住所記載が不必要に

今までは、従業員名簿は事務所ごとに備えておかなければいけませんでした。また、関係者から開示請求があれば閲覧させなければならないという規定がありました。

しかし、プライバシー保護が重要視されている昨今の情勢に配慮し、従業員の住所を記載する必要がなくなりました。

宅建業者による取引は還付の対象外に

宅建業者と宅地建物取引業に関した取引をして生じた債権は、営業保証金または弁済業務保証金から弁済、還付を受ける権利がありましたが、今回の法改正により、その権利がなくなりました。

保証協会が研修費用を助成

保証協会の業務には、「保証協会は、全国の宅地建物取引士を直接または間接の社員とする一般社団法人に対して、宅地建物取引士等に対する研修の実施に要する費用の助成をすることができる。」という事項が新たに追加されました。

森林経営管理法改正(可能は低い)

森林経営管理法第4条では、市町村はその区域に存する森林の全部または一部について、民間業者に経営管理実施権の設定を行おうとする場合、経営管理計画を定めることとされています。

このとき、同法の第37条第3項では、

この場合において、同法第7条第3項の規定では、その公告後に当該経営管理権に係る森林の所有者となった者に対しても当該計画の効力が及ぶとされています。

また、同法第35条では「市町村は、その区域内に存する森林の全部又は一部について、当該森林についての経営管理の状況、当該森林の存する地域の実情その他の事情を勘案して、当該森林の経営管理権を当該市町村に集積することが必要かつ適当であると認める場合には、経営管理集積計画を定めるもの」とされました。

またこの場合において、「その公告後に当該経営管理権に係る森林の所有者となった者に対しても当該計画の効力が及ぶ」とされました。

そしてこれが重要事項説明の対象となりました。

バリアフリー法と重要事項説明(可能性は低い)

高齢者や障碍者等の移動をスムーズに行えるよう、「バリアフリー法」の一部法改正が行われました。

同法51条の2では、「移動等円滑化促進地区内又は重点整備地区内の一団の土地の土地所有者等は、その全員の合意により、高齢者、障害者等が円滑に利用することができる案内所その他の当該土地の区域における移動等円滑化に資する施設の整備又は管理に関する協定を締結することができる」と定められていました。

しかし同法第46条により「公告があった移動等円滑化施設協定については、その公告後に当該協定の対象である土地の所有者等となった者に対しても当該協定の効力が及ぶ」と改正され、この改正が重要事項説明の対象となりました。

改正部分は直接聞かれない?

話をする男女

宅建試験では改正された部分を直接出題することはあまりないので、参考書は合格した人からもらえばいい、なんて考えてはいませんか?

インターネットの書き込みをみても、同様のことが書かれているのを見かけますが、実際は結構な頻度で出題されているのです。

宅建試験は人気の資格ということもあり、書店に行けばたくさんの参考書や過去問題集が販売されています。

宅建試験は年1回しか行われませんので、参考書選びのミスなど、小さな失敗で1年を棒に振りたくないものです。最新版の参考書や過去問題集を買って勉強したほうが無難でしょう。

宅建試験に合格することは難しくない!

ここまで建築基準法と民法の改正ポイントについて解説してきました。今回の改正では、接道規制が大きく法改正されています。

特に 「ただしがき」の変更では、 「建築審査会の同意」 が必要か否かなどが試験対策のポイントになるでしょう。

また、自治体の条例の条件追加でも接道義務の規定が加えられています。これも要チェックです。

容積率については、共同住宅から老人ホームへの改築が容易になったことがポイントですので、しっかりおさえておきましょう。

また、日影規制や仮設建築物の分野も、オリンピック・パラリンピック大会と強く関係しています。オリンピックイヤーの試験ですから、出題される可能性は十分あると予想されますので、しっかりフォローしておきましょう。

民法については試験に関係する法令の改正が「自筆証書遺言の方式緩和」だけですので、必ず得点できるようにしておきましょう。

宅建試験の法改正のポイントまとめ

建築基準法

  • 接道義務の例外の追加法第43条ただしがき
  • 地方行政の条例の強化(接道義務に関係あり)
  • 容積率規制の緩和(老人ホームの容積率算出)
  • 日影規制と仮設建築物制限

民法

  • 自筆証書遺言の方式緩和

今回の法改正は、細かな規定などの変更や廃止が多いという印象ですが、ポイントを外さずに学習すれば、改正箇所の問題もそれほど難しくはありません。

こちらの記事を参考にして頂ければ、グッと合格に近づくはずです。

みなさんが合格の栄冠を手にすることを祈っています。

頑張ってください!

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