宅建士は士業化で何が変わったの?試験の難易度への影響は?
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宅建士
関口秀人
宅建という資格は、色々な法律系の国家資格と比較しても受験者が多く、ダントツに人気のある資格と言えるでしょう。
毎年20万人以上が受験している宅建士試験ですが、合格率も15%前後で推移しており、ほどほどの難易度の資格と世間でも認知されています。
しかしこの宅建ですが、今般、宅建士に名称が変更となっており、いわゆる「士業化」されることとなりました。
これに伴って、どのような変化が起きたのでしょうか?また、試験の難易度への影響はどうなったのでしょうか?
そこでここでは宅建が士業化されたことによる変化や、試験への影響などについて解説していきます!
この記事を読むことで、きっと「士業」という言葉に尻込みすることなく、前向きに取得を検討することができるでしょう。
宅建の士業化についてざっくり説明すると
- 宅建の士業化によって、色々な変更事項が発生している
- 宅建の仕事が難しくなったことが主な要因である
- 試験の難易度そのものには直ちに影響しているわけではない
- 宅建士の活躍するフィールドはさらに広がっていく
宅建が名称変更されて士業に
平成27年度に行われた宅地建物取引業法の改正によって、これまでは「宅地建物取引主任者」と呼ばれていた人たちが、「宅地建物取引士」に名称が変更となりました。
また、これに伴い、正式に弁護士や司法書士と並ぶ、いわゆる「士業」の仲間入りを果たすこととなりました。
士業化で変わったこと
士業化となったことで変わったこととしては、以下の事項が挙げられます。
暴力団員を欠格事由とすること
暴力団員は宅建業者としての免許を受けることができなくなり、また、宅建士としての資格登録も行うことができなくなりました。
宅地建物取引士の業務処理の原則
宅建士は「購入者の利益の保護」と「円滑な宅地建物の流通に資する」ことで、公正かつ適正に業務を執行するということが、今回改めて明文化されることとなりました。
信用失墜行為の禁止
「宅建士」の資格の信用性を自覚させ、信用を失墜させるような立ち振る舞いを禁止することとなりました。
知識及び能力の維持向上
常に最新の法改正や制度などを把握し、宅地建物取引の専門家としてふさわしい知識・能力の維持を努力義務としたものです。
従業者の教育という点が変化したこと
宅建士に限らず、不動産業界全体が社員の教育を行う旨を義務付け、不動産業界の適切化を図ることとしたものです。
また、「宅建士」の士業としての質を担保するため、登録者講習では「宅建士の使命と役割」という科目が追加されています。
なお、改正が予想されていた「設置義務の厳格化」や「罰則規定」に関する改正・厳罰化は特に行われませんでした。
宅建の士業化の背景
なぜ、宅建士が士業化されることとなったのでしょうか?
その背景には、宅建士の業務が高度化してきたことが原因として挙げられます。
例えば、建物状況調査(インスペクション)の結果説明が重要事項説明の項目に加わることとなったなど、年々、宅建士の仕事の範囲が大きくなり、また、責任が増加している状況にありました。
この状況下では、従来の宅建のシステムや仕組みでは上手く機能せず、問題が発生し始めてきています。
これを解決するために、宅建士を「士業」の1つに追加することで、その専門性を高めることを意図したものとなっているのです。
宅建の士業化で必要になること
より深いコミュニケーション
今回の宅建士の士業化に伴って、弁護士や税理士などの他の士業と同じように、不動産売買だけにとどまらず、「コンサルタント」としての役割が期待されているようになりました。
コンサルタントとして顧客から受け入れられるためには、より高いレベルでのCS(customer satisfaction=顧客満足度)やその人自身の人間力が求められるようになります。
これを達成する手段として、顧客とのより深いコミュニケーションを通じて、顧客の課題や要望を上手く捉えて、解決策を提示するといったことが必要となってくるでしょう。
今まで以上にその人の人間性が大事になってくるのです。
中古住宅の活用
ひと昔前は毛嫌いされていた中古物件についても、リフォーム事業や住宅金融サービスの拡大などに伴って、現在は積極的に取引されるようになりました。
さらに、リフォーム物件というものは、住宅の持続や土地問題の解消などといった観点においても重要なものとなります。
これらの点を踏まえると、今後はこれまで以上に中古住宅・物件の活用が重要なポイントとなり、これにあたっては宅建士がイニシアチブを取って中古物件の取引を推し進める必要性がますます高まってくることになるでしょう。
今後は仕事が増加すると予想される
不動産業界においても、これからはテクノロジーの発達によって機械化などの波が押し寄せることが想定されています。
しかしながら、コミュニケーションなどの対人関係にベースを置く宅建士という職業は、機械に代替されにくい職業と言えるでしょう。
その上、不動産テックによって仕事が生まれることになるため、不動産業界としては今後も需要がどんどん増えていくだろうと予想されます。
また、「宅建マイスター」などの上級資格がより価値を持つようになることも想定されます。
試験の難易度はやや難化
宅建の士業化によって、試験の難易度はどうなったのでしょうか?
名称変更後の宅建士試験においては、幸い合格率そのものに大きな変動はありませんでした。
しかしながら、試験の内容自体は、やや難化傾向になっており、また、周辺知識など細かい知識を問う部分からの出題が目立っています。
こうした問題の難化や合格率の固定化という2点を考慮すると、「受験者レベルの上昇」という現象が起こることが想定されるでしょう。
そのため、早期に合格することが最も最適であると言えます。
宅建士試験の範囲への影響
宅建士の試験は、不動産取引のために必要な知識を中心にして出題され、出題範囲も広範囲にわたっています。
宅建士試験の主な出題範囲としては、法令上の制限、宅建業法、民法、その他関連知識といったものが挙げられます。
これをさらに細かく分けていくと、土地と建物についての法令上の制限、権利の変動に関する法令、宅地と建物についての税に関する法令など、実に多種多様なものとなってきています。
こうした試験範囲が士業化によって変化するということは現状確認できません。
ただし、今後士業としての認知度が高まっていくにつれて、それぞれの試験範囲についてこれまで以上に深い専門知識が求められる可能性があります。
宅建士試験の試験範囲についてより詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
他の士業との関係は?
他の士業とは兼任できるの?
もし、法人として弁護士や司法書士を行っている人である場合には、不動産業専任の宅地建物取引士になることは出来ません。
一方で、個人事業主として不動産業を営んでおり、そこの専任となるケースであれば、問題なく登録することが可能です。
ただし、兼任する場合においては、常時、宅建業を優先して勤務できる体制にあることが必要条件となっています。
「〇〇事務所」を出したり「先生」って呼ばれるの?
宅建業界においては、昔からの風習で「(株)〇〇」や「〇〇不動産」と名前を書くことが伝統となっています。
現在でも、例えば弁護士のように「〇〇宅建士事務所」などとするケースはあまり多くないようです。
とはいえ、現場レベルでは、宅建の士業化によって、他の士業と同様に「先生」と呼ばれることも増えてくることでしょう。
「先生」と呼ばれるに恥ずかしくないような知識や経験を身につけておきたいものですね。
宅建の士業化についてのまとめ
宅建の士業化についてのまとめ
- 宅建の士業化によって、様々な変更点がある
- 宅建の仕事の高度化に伴う対応措置である
- 試験の難易度が直ちに上がっているわけではないので、決して臆することなく受験して欲しい
- 今後、宅建士が活躍する場面はさらに広がっていくことが想定される
今回は宅建の士業化に伴う変化の内容や、試験の難易度などへの影響度合いなど、色々な観点から解説してきましたが、いかがでしたしょうか?
「士業化された」と聞くと何となく試験も難しくなったのではと思うかもしれませんが、実はそれほど難しくはなっていないことが分かったかと思います。
決して「士業」という言葉に惑わされることなく、宅建士の取得を検討して頂ければと思います。