宅建の独立は儲かるの?開業資金や年収・失敗例もお伝えします!
この記事は専門家に監修されています
宅建士
関口秀人
「宅建士の資格を持っているけれど、資格をキャリアにうまく生かすにはどうすればいいんだろう?」
「宅建試験に合格して宅建士として独立したい!」
このようにお考えの方もいらっしゃるのではないでしょうか?
宅建士としての独立は、成功すればサラリーマンでは到底不可能な超高額の年収を稼ぐことも可能な夢のあるものです。
しかしながら、宅建士の独立には多くのリスクが伴うということも常に念頭に置いておかなければなりません。
この記事では宅建士として独立する際の開業資金や必要な手続きについてご紹介しながら、独立のメリット・デメリットを考察していきます。ぜひ開業の際の参考にしてみてください!
宅建士の独立開業についてざっくり説明すると
- 開業資金には最低でも300万円は必要
- 開業しても失敗するリスクは高いが、独立することでかなりの高収入を狙える
- 成功には、信頼関係を築いたり実務経験を磨いたりといった地道な努力が必要
宅建資格で独立開業する手順
宅建士として独立開業するためには、まず第一段階として宅建士試験に合格しなければなりません。
宅建試験に合格したのち、資格登録を行い、宅建士証の交付を受けてようやく宅建士として活動することができるようになります。
宅建士として独立・開業するとなると、これらに加えてさらに開業資金の調達や事務所の準備、開業のための免許取得など、様々な準備をする必要があるのです。
不動産業者としての開業には事務所が必要
開業するためには宅建業者として免許を受ける必要があるのですが、この免許を受けるには事務所を持っていることが条件となります。
ただし、事務所をただ用意すればいいというものではなく、専用出入り口や独立した事務所窓口スペースを設けるなど、不動産業を営むのにふさわしい事務所であることが義務付けられています。
事務所を借りるほかに自宅を事務所にすることも可能で、実際多くの開業者は自宅を事務所として登録しているのです。
なお、開業免許は申請してから交付されるまで2週間~1か月ほど時間がかかるため、免許の交付を待つ間は働くことができないので収入が得られませんが、事務所の賃料は払わなければなりません。
事務所を借りるという人は、このような無収入の期間がある程度存在するということも踏まえて、資金を用意しておくべきです。
会社設立費用は最低300万円
開業にあたって、必要になる費用は以下の4つです。
会社設立費用の内訳
- 事務所や設備の設置費
- 保証協会加入料
- 宅建協会加入料
- 広告費
なお、これらの資金はあくまでも会社設立に必要な費用であって、生活費は含まれていないという点に注意が必要です。
それでは、これらの4つの費用について見積もりをしてみましょう。
事務所や設備の設置費
まずはじめに、事務所を借りるための敷金・初期賃料といった物件費用が必要になります。
この物件費用で100万~300万円ほどかかるでしょう。
さらに、仕事を行うために使う事務家具・パソコンや、電話・インターネット開設費などといった事務所の設備にもお金がかかります。
パソコンや電話などの機器には20~100万円、通信費に5~10万円ほどかかります。
以上の物件費用と家具・通信費などの設備設置費を合計して、200万円前後はかかるとみておいたほうが良いでしょう。
保証協会加入料
営業を行うにあたり、営業保証金として1000万円の供託金を納める必要があります。
しかし保証協会に加入していれば、1000万円という高額な費用を支払う必要はありません。弁済業務保証金分担金として60万円を支払えば済むので、手続きをしておきましょう。
宅建協会加入料
宅建協会に加入する際にも、60万円の入会金が必要になります。
宅建協会に加入することで、契約書や重要事項説明書のフォーマットを使用することができたり、不動産のホームページである「レインズ」を見ることができるといったメリットがあります。
レインズは一般人では見ることのできない物件情報を閲覧できるポータルサイトで、宅建協会に加入することでログインIDを取得することができます。
レインズがあるのとないのとでは大きな差が出てくるので、宅建協会には必ず加入しておくべきです。
広告費
宅建業者にとって、自社ホームページの作成、あるいはSUUMOやHOME’sといった不動産情報サイトに物件を提示するなどの広告活動は不可欠です。
これらの広告費を見積もると50万円前後の費用がかかります。
生活費は別
以上を見積もると、会社設立費用には最低でも300万円はかかるとみるべきですが、前述したように上記で述べた4つの費用は会社設立のために必要なお金であり、自分の生活費は別に計上しなければなりません。
経営が軌道に乗るまで、生活費も含めて多額の費用が別途かかるということも考慮しておきましょう。
都心ではフリーランスでも稼ぎやすい
実際に開業する際には、都心をターゲットとする方が稼ぎやすいと言われています。
都心が良いと言われる理由と、その一方地方では難しいとされる理由について見ていきましょう。
都心では利益率が良く他の業界も可能
不動産業では、先述した不動産のポータルサイト「レインズ」による物件情報のネット検索システムが確立しています。
近年はこのサイトを利用してビジネスを進めるのが不動産業の主流であるため、初期投資にコストをそれほど必要としないことが利点のひとつとして挙げられるでしょう。
また、宅建業の収入の中心を占める不動産売買の仲介手数料は、「土地の販売価格の〇〇パーセント」と決まっていることがほとんどなので、土地価格が高ければ手数料も上がり、収入が増えます。
そのため、土地価格が高い都心部の物件を扱っていれば、物件の単価が高いことからその分手数料も高くなり、利益率が上がるのです。
さらに都心では小売・外食産業や、不動産の担保価値を判断する金融業界、企業が保有する不動産の運用など、不動産業以外のビジネスで商機が得られる可能性も高いです。
地方では利益率低下で苦境?
一方、地方では土地価格自体が低い傾向にあります。
そのため売買の際の仲介手数料も低くなり、稼ぎも少なくなってしまうのが現状です。
地方のように土地価格の低いところでは、儲けることは難しいと考えておくべきでしょう。
開業しても失敗するパターンとその対策
いざ独立しても、思うように収入を得ることができず廃業してしまう…という方は多く見られます。
ここからは、独立に失敗してしまうケースと、失敗しないための対策法についてご紹介します。
顧客獲得に時間がかかる
開業に失敗する人で陥りやすいのは、会社勤めをしていた時は多くの顧客を獲得できていて多くの実績があったという人でも、独立したとたん集客できなくなったというケースです。
というのは、その人が勤務していた会社が大手の企業であった場合、顧客獲得ができていた理由として、会社のネームバリューから得られる信頼感というものがあったからです。
つまり、会社員時代は会社の名前を使って集客できていたものを、独立した後は全て自分の力で集客しなければなりません。
大企業の名前という看板を借りることなく有効な集客方法を見つけるためには自分で工夫をする必要があり、とても大変なことです。
同業者との信頼関係が大事
顧客獲得という課題を乗り越えるためにできる対策としては、不動産会社で数年間会社勤めを経験するなどして、同業者間での「ヨコのつながり」を作っておくことです。
売主や同業者と仲良くすることができれば、良質な物件を回してもらう機会も増え、顧客獲得の可能性も高くなります。
ただし同業者との信頼関係を築くには、人と人との関係であるため時間がかかるということを覚悟しておかなければなりません。
この人間関係を構築する期間は無収入という可能性も十分にあり得るので、1年間は無収入でも耐えられるほどの開業資金を用意しておくことも考えておきましょう。
実務経験の不足
会社勤めの間は、営業や契約など、自分の担当の仕事さえやっていれば収入を得ることができていたでしょう。
しかしいざ独立となると、それまでやっていた仕事以外にもかなりの量の仕事を自分の手でこなさなければならず、手が回らなくて混乱してしまう…というケースも多いです。
例えば、借主と貸主の間に入り、入居希望者の身元確認から、空き部屋の内見・段取り・案内といったことまで自分で行わなければなりません。
そのうえ、ここまでやっても確実に入居してもらえるというわけでもなく、むしろ実際に入居するということ自体が少ないです。
このように様々なところで苦労を背負うということを覚悟しておかなければなりませんし、こういった状況にできるだけ陥らないようしっかりと実務経験を積んでおくことが大切になります。
会社勤めの間に最低でも2~3年間の実務経験を積み、集客スキルや顧客とのコミュニケーションの取り方を学んでおけば、スムーズに顧客に対応することができるでしょう。
固定費による圧迫
開業にかかる費用の大きさについては最初に述べましたが、これらの初期投資のほかにも払い続けなければならない固定費が何種類かあります。
これらに苦しめられることも多いので、こちらにも注意が必要です。ここでは、フリーランスの宅建士を苦しめる2種類の固定費についてご説明しましょう。
事務所の賃料が高い
前述したように都心では地価が高いことが欠点となります。そこで事務所を都心に構えたところ、事務所自体の賃料が跳ね上がってしまって経費が圧迫されるというケースも多くあります。
安易に社員を増やすと利益は失われる
また、業務が一時的に軌道に乗ったからといって、すぐに社員を雇うのは危険です。
再び仕事が減ってしまった時に、社員が増えたことによって人件費が高くつくようになって財政を圧迫するようになります。とはいえ容易に解雇できるものでもないので、経済的に立ち行かなくなってしまうのです。
収入が安定するまで固定費は最小限に抑えるようにするのが賢いやり方でしょう。
そのためには、どんなに忙しい場合でも安易に人を雇うということはせず、必要に応じ外注などを駆使して仕事を効率的に進められるようにすることが大切です。
独立すれば年収1000万も狙える
独立をすれば、1000万円を超えるような、会社に勤めている時にはかなり難しい額の年収でも目指すことが可能になります。
大企業に長期間勤めていたという人であれば年収1000万に届く人も稀にいるでしょうが、それ以上の額となると雇われている身では非常に難しいです。
年収1000万円も夢ではない世界
独立した宅建士はかなりの年収を稼ぐ可能性のある職業ではありますが、必ずしも高収入が保証されるものでは決してありません。
独立後は、それぞれの営業力により年収の差が大きく開いてしまいます。
そのため、年収1000万円以上稼げる人もいれば、会社勤め時代と変わらず400~500万円程度に留まる人も大勢います。
しかし会社に勤めている限りは1000万円以上という年収を叩き出すことは難しく、このような高収入は独立して成功した人ならではの数値です。
高収入を狙いたい!という方は、忙しくなることを覚悟の上で独立する選択肢を選んでも良いでしょう。
ただし、家族の理解を得るということも重要なことですので、今後のことをしっかり考えて独立するかどうか自分で判断するべきです。
年商5億のおばあちゃん社長
さて、79歳にして宅建資格を取得、80歳で開業した「和田京子さん」という方をご存知でしょうか?
和田さんは60年間主婦一筋でそれまで社会に出たこともありませんでしたが、欠陥住宅問題をきっかけに79歳の時に宅建の資格を取得して、80歳の時に「和田京子不動産」を開業しました。
和田京子不動産では「24時間営業」、「年中無休」、「買主への仲介手数料無料」という3つの差別化戦略が掲げられています。
この一見とんでもないような戦略が功を奏して、現在では年商5億円を上げるまでに至っています。
このように素晴らしい成果を上げている和田さんでも、開業して初めの2年間は、元主婦だからという理由で同業者から全く相手にされず物件を回してもらえなかったり、顧客からは嘘や不払いなどの露骨な嫌がらせを受けたりなど、多くの苦労があったそうです。
この期間の和田京子不動産の収入はゼロでした。
このように現在どれほど稼いでいる不動産業者であっても、開業直後の期間には時間をかけて地道に顧客・同業者の信頼を勝ち取るための努力と苦労をした過去があったのです。
ダブルライセンスで高収入を目指す
宅建士という職業は、システムがネットでほとんど完結していることから設備投資も大して必要なく、独立開業がしやすい職業といえます。
その一方で、宅建士の資格だけでは評価が上がりにくくなりつつあるというのが今の現状であるため、宅建士の中でも差別化を図るためにダブルライセンスの取得が非常に有効です。
コンサルタント
司法書士やファイナンシャルプランナーなどの資格を一緒に取得しておけば、土地や建物の相談だけでなく会社の経営面も含めた相談に乗ることもでき、不動産業界や金融業界でコンサルタントとして活躍する機会も得られます。
また、司法書士の資格を取得していれば宅建業者からの信頼が高まり、不動産の登記申請の業務が増える可能性があります。
また、行政書士の資格を取得していれば、建築や土木関係の許認可を支援することで有利な開業になる可能性があります。
このようにダブルライセンスを利用することで専門性がより明確になり他の業者と差別化も可能で、独立する上では非常に大きなメリットとなります。
不動産投資家
本業を持ちながら副業として不動産投資を行う「サラリーマン大家」と呼ばれるタイプの方々も存在します。
不動産投資を行うために特に宅建士資格が必要になるわけではありませんが、宅建士資格を持っていた方が圧倒的に有利に働きます。
具体的には、宅建士資格を取得しておくことで不動産情報サイト「レインズ」を閲覧し活用できるというのが、不動産投資を行う上で大きなメリットとなります。
レインズを利用することで、元付業者がどこなのかなど、一般人では見ることができない情報を見ることができます。
また、普通の人であれば仲介手数料を払わなければ買い付けできない物件でも、宅建士の資格を持っていれば自分でレインズを見て物件を探すことができ、仲介手数料ゼロで買うことが可能です。
不動産投資を行うにあたって、このように宅建士の資格を持っていれば投資のための物件確保をスピーディに行う条件が整っており、非常に有利になります。
独立の準備は慎重に!一匹狼という道も
宅建士にはライバル業者も多いため、前述したように宅建士資格を持っているというだけではやっていけないというケースも多いです。
他社との差別化など工夫を凝らしたり、あるいは同業者とのパイプを築いたりすることができなければ仕事を続けていくことが難しく、開業後1年で資金が尽きて廃業してしまうという方も多数います。
そこで、宅建士として独立という道を選択しなくても、自分の性格や持ち味を分析したうえで、どのような働き方であれば宅建士の資格を生かすことができるのかを考えてみることも重要です。
必ずしも宅建士として独立する必要はありませんし、企業に属して働きそこで資格を生かすという選択肢も当然あります。
あるいは営業が得意な方であれば、「一匹狼」と呼ばれる完全歩合制のフリーの営業マンとして、複数の企業を掛け持ちするという方法もあるでしょう。
宅建の独立まとめ
宅建の独立・開業まとめ
- 開業には開業免許の取得や事務所の設置など多くの手続きが必要になる
- 会社設立費用として最低300万円は用意しておくこと
- 十分な資金と不動産業での実務経験、顧客や同業者との信頼関係を築く努力が必要不可欠である
- ダブルライセンスを利用することで開業に有利に働き、別の職業への道も開ける
ここまで宅建士の独立について解説してきました。
宅建士として独立・開業することは大成功のチャンスですが、同時にリスクも大きいものです。
宅建の資格をどう生かすべきか迷っているという方も、この記事を参考にして、今後のキャリアについて計画を立ててみてはいかがでしょうか。