宅建の名義貸しって何?報酬相場や見つかった時のリスクまで全て解説!
この記事は専門家に監修されています
宅建士
関口秀人
「宅建の名義貸しってどんなもの?」
「宅建の名義貸しをして副収入を得ようかな」
そんな考えをお持ちの方もいるのではないでしょうか?
現在も横行してますが宅建の名義貸しは違法行為です。懲役や罰金、免許取り消しの対象になるのでとてもリスクが大きいです。
この記事では宅建における名義貸しの意味や名義貸し求人の給与相場、リスクについて詳しく説明していきます。
読み終わった頃には宅建の名義貸しについて明確に理解し、適切な選択が出来るようになるはずです!
宅建の名義貸しについてざっくり説明すると
- 宅建の名義貸しは法律で禁止されている
- 常勤じゃないのに専任登録することも違法
- 違反した場合は罰則や免許取り消し、損害賠償もある
- 名義貸しの給与相場は3~5万円程度
「名義貸し」ってなに?
「名義貸し」とは名前の通り名前や免許番号を貸したりすることです。
単純に名前を貸すだけでなく、条件を満たさずに専任として登録したりすることも禁止されています。
宅建における「名義貸し」とはどのようなものがあるのか、具体的に見ていきましょう。
「名義貸し」の意味
当然ながら宅建士として働くことは雇用形態に関係なく全く問題はありません。 副業として働くことも可能です。
ただし、専任の宅建士として登録するためには会社に常勤して宅建士の業務に従事する必要があります。
つまり、会社に常駐しないなら社員として雇用契約を結んで専任登録をすることは違法になります。
もちろんその会社に勤務していないのに官公庁に提出する書類に名前や免許番号を貸したりすることも法律で禁止されています。
これも「名義貸し」に該当する
先ほども述べたように専任の登録をするためには会社に常勤する雇用形態で雇われている必要があります。
アルバイトや非常勤職員など常勤でない立場で雇用されたのに専任として登録することも違法になるので気を付けてください。
また、働いていない会社の事務所などに宅建士として自分の写真を掲載することも名義貸しに当たります。
名義貸しは違法行為でリスクが大きい
「名前を貸すだけでお金が貰えるなんて楽で良い」と簡単に考えてしまうかもしれませんが、名義貸しは違法行為なので懲役や罰金、免許の取り消しというペナルティがあります。
場合によっては損害賠償が請求される可能性もあります。
どれだけリスクが高いのかそれぞれ具体的に説明します。
宅建資格の名義貸しには罰則がある
何度も繰り返しているように、名義貸しは法律で禁止されています。もし違反すれば3年以下の懲役又は、100万円以下の罰金を課せられる可能性があります。
さらにせっかく苦労して取得した宅建士の免許は取り消しの対象になります。
重い罰則が科せられるため、これまでの努力が水の泡になってしまうでしょう。
損害賠償が請求されるリスクも
専任の宅建士は不動産取引において重要な役割を果たさなければいけません。取引で問題があった場合は「取引上の損害賠償」を請求される可能性もあります。
正規の宅建士社員は取引上でのトラブルに対処できるように損害保険に加入している方も多いですが、名義貸しをしている場合、責任をなすりつけられた上に無保険で損害賠償に対応しなければいけなくなることもあります。
さらに一度貸した名義は会社の名簿に5年間残ります。途中で名義貸しを辞めてもさかのぼって責任を問われるケースもあります。 安易な名義貸しは絶対にやめましょう。
なぜ名義貸しが横行するのか
法律で禁止されていて厳しい罰則もあるのにどうして名義貸しは横行するのでしょうか?
その理由は宅建士の設置義務と宅建の資格が簡単に手に入るものではないことが関係します。
どういうことなのか、詳しく見ていきましょう。
宅建士を事務所に配置する義務
宅建業法上、不動産業を営む場合最低一人は宅建士を置く必要があります。さらにその宅建士は会社に常勤して専ら宅地建物取引業の業務に従事する専任の宅建士でなければいけません。
しかも複数の事業所を持つ場合は事業所ごとに専任宅建士が必要となり、従業員が5人以上いる場合は5人に1人専任の宅建士を置かなければいけないという必置義務があります。
必置義務を守れないと廃業に
宅建業として新しい事務所を開設するためには必要数の専任宅建士を登録しなければ免許が取得できず、新規出店や事業拡大することもできません。
もし必要数の専任宅建士を登録して開業したとしても、万が一その宅建士が会社を辞めた場合は速やかに新しい専任宅建士を登録しなければいけません。違反した場合は事務所撤退に追い込まれることもあります。
こういったことから逃れるために自社で働いていない人や専任に登録する資格がない宅建士に名義貸しを依頼する業者があるのです。
どんな人が名義貸しの依頼をされやすい?
宅建は主婦や学生など、現場勤務ではない人の免許保有率が高い資格です。
名義貸しを依頼する際、すでに他社で専任登録している宅建士には名義貸しを依頼することができず、他に職のあるサラリーマンでは常勤していないことがすぐにばれてしまいます。
そのため現在どこにも勤めていない主婦や学生、定年退職後の宅建士が名義貸しのターゲットになりやすいです。
優秀な営業マンの確保という思惑も
上記のような理由に加え、宅建は合格率が低く簡単に取れる資格ではないということもあります。
不動産業界は歩合制のところが多く、優秀な営業マンほど労働時間が長くなりがちで勉強する時間を確保が難しいので、なかなか合格することができません。
会社としても「宅建取得よりも契約を多く獲得する優秀な営業マンをたくさん確保したい」と考えるため、宅建士の割合を極限に抑える傾向があるという不動産業界特有の事情があります。
不動産業者以外でも名義貸しはある
名義貸しが行われるのは宅建業者だけではありません。 建築業者や管理業者や、内装業者など多岐にわたります。
例えば建築業者の場合、自社で建築した建物の売却案件が回ってきたときに宅建資格を持っていれば自社で売却を行うことで利益を独占することが出来ます。
しかしもし宅建資格を持っていなければ他の不動産業者に案件を紹介して契約を結んでもらうことになるため、紹介料しか手に入らなくなってしまうでしょう。
勘違いされやすい2つの名義貸し
名義貸しと言っても実は宅建士が名義を貸すことと業者間で名義を貸す2つの名義貸しが存在します。 そして宅建法での「名義貸し」は業者間で行われる名義貸しのことを指します。
しかし現在はどちらの名義貸しも禁止とされています。
業者間の名義貸し
宅建業は宅建業免許がなければ宅建業者として仕事をすることは出来ませんし、有効期限が切れたり免許が取り消されたら宅建業を継続することは出来なくなります。
そのため免許がない業者が宅建業務を行いたい場合に宅建業の許可を受けた名義を貸して欲しいと依頼してくることがあります。
しかし宅建法では宅建業の免許を受けた人が名義を他人に貸して宅建業を営ませることは禁止されています。宅建業免許の名義貸しを行った場合は3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科せられる可能性があるでしょう。
宅建士の名義貸し
宅建士の名義貸しは先に述べたようにその会社で実際に働くことなく名義を貸す場合と、専任に登録する資格がない常勤でない宅建士が専任として登録する場合があります。
復習になりますが罰則は3年以下の懲役または100万円以下の罰金です。さらに宅建資格は取り消しの対象になります。
なお、宅建を持っているアルバイトの人や副業として働く人が専任としてではなく宅建士としてその会社で宅建業務を行うことは可能です。
現在でも消えない名義貸し
禁止されている上に罰則や免許取り消しもある名義貸しですが、難関資格なために必置人数の確保が難しくて未だにネット上で名義貸し目的の求人を乗せている業者もあります。
知らないうちに巻き込まれることがないように、しっかり見分ける力を付けましょう。
名義貸しの規制は厳しくなっている
完全にはなくならないと言っても現在は不動産協会などの指導や監視、管理体制が厳しくなったこともあって昔に比べると名義貸しは行われなくなってきています。
協会が「宅建業を開業する場合は代表者が宅建士でないとあまり好ましくない」と通達を出すほど名義貸しに敏感な県もあります。
しかし水面下では未だに名義貸しを続けている会社があることは事実で、完璧には取り締まれていないというのが現状です。
名義貸しの相場や雇用実態は?
未だに名義貸しをして業務を続けようとしている会社はネット上に名義貸し目的の求人を出しています。名義貸しの給与相場は3~5万円程度と言われています。
実際に会社に出勤する求人だとしても「週1回勤務でOK」など常勤でないアルバイトや非常勤の雇用形態なのに、面接に行ったら手当と引き換えに専任登録を持ちかけられることもあります。
繰り返しますが、常勤の宅建士でなければ専任の宅建士登録を行うことは出来ませんし、専任手当をもらうことは出来ません。報酬をもらった時点で名義貸しが成立してしまうので絶対に断りましょう。
名義貸しの通報はある?
宅建業の名義貸しをして処分を受ける業者はありますが、宅建士の名義貸しは年に数件の通報はあるものの、実際に処罰が下されたという事例は確認できていません。
しかし多くの場合、知人や同業者によっての通報がきっかけで見つかってしまいます。特に偽の専任登録は見つかったら隠すことは難しいです。
名義貸しのために資格取得はデメリットが大きい
「名義を貸すだけで収入が入ってくるなら宅建資格取得しようかな」と考えている人もいるかもしれませんが、上記でも述べたように名義貸しは違法なのでデメリットが大きいし、コスパも悪すぎます。
ここではなぜコスパが悪いのか、宅建を取得したらどう活かせば良いのか具体的に説明していきます。
名義貸しを目指した宅建取得はコスパが悪い
宅建試験に合格してもその時点ではまだただの 「宅建試験合格者」 です。試験合格後に全部で10万円ほどかかる登録講習や法定講習を受けた後に登録をして宅地建物取引証が交付された段階で初めて名義貸しが出来るようになります。
しかもその宅地建物取引証は5年ごとに更新しなければ免許が失効します。さらに更新のためには、その都度法定講習を受講しなければならないため、更新費用がかかる上に常に勉強もし続けなければいけません。
名義貸しの相場は3~5万円程度なので、名義貸しを目的として宅建資格を取得することはかなりコスパが悪いと言えます。
宅建おじさんを目指そう
宅建士の主な業務は重要項目の説明や契約時の書類記入で、これは宅建士にしか出来ない独占業務です。宅建おじさんとはこの宅建士にしか出来ない業務をするために雇われている人の通称になります。
営業や事務仕事に追われることがなく仕事が出来るので、定年退職後や他に仕事を持っているけど時間がある人などが行っていることが多いです。
免許を持っていれば、自分に合わせた仕事量で働くことも出来るし、常勤になれば専任として登録して雇われることも出来るので資格の有意義な活用法ですね。
宅建の名義貸しまとめ
宅建の名義貸しまとめ
- 名義貸しは違法なので断固拒否する
- 懲役、罰金、免許取り消し、損害賠償のリスクがある
- 名義貸しのための資格取得はデメリットが大きすぎる
宅建の名義貸しについて説明しました。
名義貸しは違法行為であり、せっかく取得した宅建の資格を失ってしまうことにもなります。
絶対に行わないようにしましょう。