中小企業診断士とMBAの違いとは?結局どちらを取得すべき?
この記事は専門家に監修されています
中小企業診断士
平井東
「中小企業診断士とMBAって、一体何が違うんだろう?」
「どちらも経営に関係するということはなんとなくわかっているけど具体的な違いは?」
そういった疑問を持っている人も多いと思います。
そこで今回の記事では、中小企業診断士とMBAの違いや共通点、さらにはどちらを取得するべきかについて紹介していきます!
中小企業診断士とMBAの違いをざっくり説明すると
- 中小企業診断士は資格、MBAは学位
- どちらも経営に関する内容を学ぶが、違いもある。
- キャリアアップ、グローバルに活躍したいのであればMBA、独立志向なら中小企業診断士がオススメ
このページにはプロモーションが含まれています
中小企業診断士とMBAの違い
中小企業診断士とMBAは、どちらも基本的には「経営」に関する事項を学びますので、その内容は重なる部分も多いです。
ですが、細かいところでは色々と違いがありますし、また、取り組み方やその結果として得られるものも、両者では異なってきます。
そのため、多くの違いがあるということをしっかりと認識することが大切となってきます。
分類の違い
中小企業診断士は、中小企業支援法に基づく国家資格です。中小企業支援法第11条に基づき経済産業大臣が中小企業診断士を登録します。
中小企業診断士の業務について法律で「経営の診断及び経営に関する助言」と法によって定められており、現状分析を踏まえた企業の成長戦略アドバイスが主な業務です。
日本には他に経営コンサルタントに関する国家資格が無いため、これが唯一の資格となります。
一方で、MBAは「Master of Business Administration」の頭文字を取ったもので、日本語では「経営学修士」と訳されます。
この「修士」という言葉からも分かるように、これは学校教育法に基づく修士号としての学位となっています。
両者の違いを簡単に言えば、例えば履歴書に記載する場合には、中小企業診断士は資格の欄に、MBAは学歴の欄に記載するものになります。
この点から、分類としては全く違うものと言って良いでしょう。
学べるものの違い
中小企業診断士はその名前の通り、主に中小企業に関する経営を題材として扱います。
一方で、MBAでは主に大企業を題材にしながら経営について学びます。
内容としてはどちらも同じように財務・会計や経営に関する事項を学びますが、題材としているものが異なっているため、論点や重要視する箇所が異なってきます。
なお、中小企業診断士の試験科目は以下のとおりとなっています。
中小企業診断士の試験科目
- 経済学・経済政策
- 財務・会計
- 企業経営理論
- 運営管理
- 経営法務
- 経営情報システム
- 中小企業経営・中小企業政策
MBAについては学ぶ場所によってその内容は様々ですが、一般的には、「ヒト・モノ・カネ・情報」といった経営資源を中心としてマーケティングからファイナンス・組織人事・オペレーション・経営戦略の策定について学びます。
理論を学んだ後に、グループでのディスカッションを通じてケーススタディを行うなど実践的な能力にも注力しているのが中小企業診断士との違いとして挙げられます。
また、中小企業診断士試験では触れられないもののMBA取得に際して触れられるケースの多い内容としては、「リーダーシップ」「グローバルマネジメント」「起業・新規事業構想」「企業倫理」などが挙げられます。
この内容からも、MBAが大企業を題材に扱っていることが色濃く読み取れるのではないかと思います。
中小企業診断士の試験科目についてより詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
身につく能力の違い
中小企業診断士とMBAは両方とも、ビジネスや経営についての体系的な知識を得られる点では共通しています。
しかし、中小企業診断士は「診断士」という名前からも読み取れるように、あくまで中小企業の経営を外部から助言してコンサルティングできる能力を鍛えることができるのです。
一方、MBAは実際に自分が経営者として事業の意思決定を下して、事業の戦略立案・実行するまでの能力を鍛えることを目的としています。
よって、両者で身につく能力を要約すると「企業へのコンサルティング能力」か「経営者として自ら企業の意思決定をできる能力」かという違いになります。
またグループでのディスカッションが多いのがMBAの特徴です。
グループの中には、出身国が違ったり母国語が違うなどの多様な生徒がいます。
このような多様な構成員のグループをリーダーとしてまとめ上げる経験を積めることがMBAの魅力の一つとなっています。
MBAの中で身につく能力は異なる
MBAは大学院という位置づけのため、それぞれで育てたい人物像や細かい学習内容が違います。
よって、当然身につく能力も各MBAで異なるものとなります。自分の将来像をイメージしたうえで、最適な能力を身につけられるMBAに行けるようにしましょう。
取得条件の違い
中小企業診断士は資格ですので、基本的には試験を受けてそれに合格すればその資格を得ることができます。
具体的な方法としては、①1次試験と2次試験に合格する。②1次試験合格後に養成課程を修了するという2つの方法があります。
また、受験資格に関して制限はありませんので、誰でも試験を受けることが可能です。
一方で、MBAは「修士号」ですので、大学院に入学するのと同じような手順を踏むことになります。
また、海外MBAを取得するか、国内MBAを取得するかでも、その手順で違いがあります。これは、海外の大学に進学するか、日本の大学に進学するかの違いと同じようなものです。
海外MBAの場合は、①GMAT(入学適性テスト)やTOEFLを受験、②志望校の必要書類(推薦状、英文エッセイなど)を準備・出願、③合否結果発表、渡航の準備という流れになります。
国内MBAの場合は、①志望校の必要書類(推薦状や成績証明書、エッセイなど)を準備・出願、②選考(書類選考や面接選考)、③合否結果発表、入学手続きという流れになります。
さらに、MBAの受験資格には「社会人経験3年以上(5年以上を推奨)」という暗黙のルールが存在しているようです。理由としては、一定の社会人経験を有している方が、MBA教育の恩恵を受けやすいということのようです。
費用の違い
中小企業診断士の場合は、試験に合格さえすれば良いため、突き詰めれば試験の費用だけで取得することが可能と言えます。
中小企業診断士の試験の費用(受験手数料)は、1次試験で13,000円、2次試験で17,200円となっており、これに交通費や宿泊費等の費用が掛かります。
そして、実際には試験の費用だけではなく、試験勉強のための費用が掛かります。
費用が掛かる順番としては、予備校通学>通信教育>独学ですが、予備校通学であってもおおよそ50万円以下であり、MBAと比べれば安いものです。
一方、MBAについては、大学院に通うこととなるため、その大学院によって金額が変わってきます。
国立、私立、海外でも金額に違いがありますが、国内であれば数百万円程度、海外だと数千万円掛かるケースもあるでしょう。
よって、MBAに通う場合の金銭的な負担はかなり大きいことを覚悟する必要があるでしょう。
年齢層の違い
中小企業診断士は40~60代の受験生が多い一方で、MBAは20~30代がメインとなっています。
中小企業診断士を受験する人の年齢層が高い理由としては、「今まで身につけてきた知識を社会に還元したい」という考えから資格取得を考える人などが多いからです。
これは、地元密着志向が比較的強い中小企業を扱う中小企業診断士ならではないかと思います。
「定年後に何かしたい」「独立したい」と考えている熟年層や、熟練者に囲まれながら仕事のスキルを学びたいと思っている若者にオススメな資格と言えます。
MBA取得者に若い人が多い理由としては、昇進などのキャリアアップを狙って取得する人が多いからです。
社内での昇進や、転職で年収アップを狙っている上昇志向の高い人にオススメと言えます。
また、それぞれで得られる人脈についても違いがあります。
MBAの場合は、意識が高い人が多く、海外留学の場合にはグローバルな人脈であるため、世界的な規模のビジネスが展開できる可能性もあります。
一方で、中小企業診断士の場合は、地元のコミュニティーにつながることが多いため、その地域で活動していくうえでの人脈が得られることでしょう。
歩むキャリアの違い
中小企業診断士は、身につく能力でも言及したように、中小企業の経営診断をメインの仕事としていることから、商工会議所や中小企業経営に対する専門家として役割・中小企業のマネージャーとしてキャリアを歩んでいきます。
一方、MBAは将来の経営者候補や管理職候補を育成するだけでなく、難しい課題が山積しているビジネスの場面で高い思考力を発揮するビジネス人材を育成する場を提供しています。
よって、多くのビジネスマンにとってキャリアの幅広い選択肢を与えてくれるものであり、一概にどのキャリアに有効であるかは定めにくいでしょう。
欧米では、MBAを取得していることで一流企業へ採用されやすくなる、もしくは取得していなければ幹部への昇進ができないなど、採用、昇進に大きく結びついています。
人脈が得られるのはMBA
中小企業診断士は資格であるために、基本的に一人で独学する必要があります。
それと比較して、MBAの場合は、数年間グループでケーススタディなどについてともに学びます。
MBA時代の交流により、人脈が広がる機会が多く生まれます。
MBAの学位自体よりも、MBAでできる人脈をその後のキャリアに活かしたいと考える人も多いです
中小企業診断士とMBAはどちらが難しい?
資格と学位という違いがある以上、どちらの取得が難しいと一概に判断することは難しいと言えます。
試験一発勝負を得意とする人とそうでない人という観点からでも、どちらを難しいと感じるかは変わってくるでしょう。
しかしながら、いずれにしても多くの勉強が必要であることは間違いないでしょう。
あくまで一般論ですが、働きながら取得を考える人にとっては、自分のペースで勉強が進められ、取得計画も自分で考えられる中小企業診断士の方が諦めてしまうケースは少ないのではないかと思います。
合格率の違い
中小企業診断士の合格率については、1次試験、2次試験ともストレート合格は4%程度となっています。
MBAについては、入学から単位取得、卒業まで様々な過程を経て得るものであり、また大学院でもレベルが異なるので、一律に合格率という形にまとめることはできません。
取得年数の違い
中小企業診断士は、一般的には仕事をしながら2~3年かけて取得を考える人が多いようです。
また、前年度や前々年度合格した科目は免除になる「科目免除」の仕組みがあるので、1年で一発合格という手段だけではなく、数年単位でも取得を目指すことが可能です。もちろん、1年で一発合格、ということも考えられます。
MBAについては、各大学のカリキュラムに則り、1~3年程度で取得するケースが多いようです。
また、準備のためにかかる期間を考えると、少なくとも2年以上はかかると考えられます。
MBAのプログラムの中には、仕事を休職もしくは退職するフルタイムの大学院と、平日の夜間や週末だけ通学する大学院の二種類があります。
その他にも、通学せずに、オンラインで授業の履修が行える大学院も存在します。
自分がMBAに求めることや、得たい経験にプログラムがあっているのかなどを検討しましょう。
中小企業診断士とMBAの共通点
繰り返しになりますが、どちらも経営に関する知識を体系的に学ぶという点では共通しています。
「MBAは理論主導型」「中小企業診断士は現場主導型」という主張もあるようですが、実際には、近年のMBA教育はフィールドワークなどの教室外での課題が強化されており、一方の中小企業診断士でも国際化に向けた動きが進んでいるので、その観点からも共通点があると言えるでしょう。
さらに細かい点を挙げるなら、どちらも取得難易度が高く取得者は一目置かれる存在になれる点や、取得を通じて論理的思考力を高めることができる点なども共通しています。
中小企業診断士とMBAはどちらを取得すべき?
どのような目的で経営を学びたいのかによって、どちらを取得すべきなのかということは変わってきます。
社内での昇進など、キャリアアップを考えているのであればMBAが、将来的な独立を考えているのであれば中小企業診断士が良いと思われます。
しかし、費用の面などでも大きな違いがあることから、様々な要素を考慮して検討することが必要です。
また、MBAは大学によって学べる内容や得られる人脈についても変わってきて、上位の学校であれば良い結果が生まれる場合が多いでしょう。
しかし、そうでない場合は卒業したものの何も身に付かなかった、ということもあり得るでしょう。
よって、自分のいくMBAが自分のニーズに合ったものであるかを確認しておく必要があるのです。
以下では中小企業診断士とMBAの取得をおすすめする人の特徴を並べておきます。これを見た上で自分がどちらを取るか検討するのがおすすめです。
中小企業診断士がオススメの人の例
- 独立志向
- 地域密着型
- 定年後の活躍場所を探している -中小企業診断士の資格を、公的機関の業務に活かしたい
MBAがオススメの人の例
- 大企業勤め
- 上昇志向が強い
- 今の現場で結果を出したい
- ビジネスシーンでのコミュニケーション能力を高めたい人
- MBAを通して人脈を作りたい
グローバルに成功したい人は、海外MBAがおすすめ
その上で、グローバルに活躍したい人は国内外で評価の高い海外大学に進学することを視野に入れましょう。
海外のレベルの高いMBAプログラムでは、ディスカッションなどを通じて、実践的な英語力を鍛えることができます。
また、多様なバックグラウンドを持つ仲間の中でリーダーシップをとって議論を進めていく事で他では得られないビジネスに直結する経験を得ることができるでしょう。
中小企業診断士とMBAの同時取得が可能
中小企業診断士の1次試験に合格している方が、中小企業診断士養成課程を併設している国内のMBAに進学することによって中小企業診断士の2次試験が免除されます。
その結果、MBA の学位とともに中小企業診断士の資格を取得することが可能です。
この中小企業診断士養成課程を併設しているMBA大学院は、下記の通りです。
中小企業診断士養成課程を併設しているMBA大学院
- 法政大学大学院 イノベーションマネジメント研究科
- 兵庫県立大学大学院 経営専門職専攻地域イノベーションコース
- 関西学院大学大学院 経営戦略研究科
- 日本工業大学大学院 技術経営研究科
- 東洋大学大学院 経営学研究科
- 城西大学大学院 経営情報学研究科
MBAと中小企業診断士のダブル取得を目指す方は、まず中小企業診断士の1次試験の7科目合格を達成しましょう。
その後に中小企業診断士養成課程を併設しているMBA大学院に入学し、MBAを修了すればMBAと中小企業診断士のダブル取得ができます。
中小企業診断士と関連のあるそのほかの資格
中小企業診断士の資格を取得した後には以下の資格も併せて取得すると、転職などでも強い効果を発揮します。
また仕事の上でも有利になる場面が多く、報酬額が上がったり、より付加価値の高いアドバイスを提供できるようになることから、顧客からの信頼も獲得しやすくなります。
ダブルライセンス先としておすすめの資格の一例は以下のとおりです。
- FP(ファイナンシャルプランナー)
- 宅建
- 公認会計士
- 税理士
- 社労士
- 行政書士
- 簿記
一つの資格で満足することなく、そのほかの資格も取ることでより幅広い知識を得ることができ、それが結果として仕事の成果向上につながるのです。
中小企業診断士のおすすめダブルライセンス先については、以下の記事でより詳しく書いてあるので、こちらも是非参考にしてみてください!
中小企業診断士とMBAの違いまとめ
中小企業診断士とMBAの違いまとめ
- 資格or学位などの違いもあるが、共通点も多い
- どちらが難しいかは一概には言えない
- 自分の将来を踏まえた選択を行うべき
今回は中小企業診断士とMBAについて、様々な観点から比較してみました。
中小企業診断士とMBAの違いについていろいろ見てきましたが、結局は今の自分には何が必要かを見極めたうえで、どちらを選ぶかということが大切となってくるでしょう。
一生懸命考えた結果であれば、どちらを選んだとしてもその後の自分の成長にきっと繋がっていくことでしょう。
この記事が、皆さんの今後の方向性を決めるにあたっての参考になれば幸いです。