メディカルクラーク試験の難易度や合格率は?学科・実技の特徴も徹底解説!
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医師
安藤広真
「メディカルクラークってどんな資格なの?」
「メディカルクラークの試験って難しいの?」
このような疑問をお持ちの方、いらっしゃいませんか?
メディカルクラークの正式名称は医療事務審査技能であり、資格取得で身に付けた知識は病院や診療所などの医療機関で生かすことができます。
資格の取得を目指すにあたって、試験の難易度や合格率は気になりますよね。
そこで資格Timesではメディカルクラークの特徴や試験難易度・合格率について解説します!
メディカルクラークの難易度をざっくり説明すると
- 試験の合格率は60%台と比較的高い
- 200時間ほどの勉強時間が必要
- 学科と実技の両方に対応する力が求められる
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メディカルクラーク(医療事務技能審査試験)とは
そもそもメディカルクラークとはどのような資格なのでしょうか。
まずはメディカルクラークという資格の概要を簡単におさらいしましょう。
メディカルクラークは人気の医療資格
メディカルクラークは、40年以上の歴史がある試験であり、正式名称は医療事務技能審査試験です。
多くの医療機関の医療事務員が持っている代表的な医療系資格の1つであり、人気も知名度も高いという特徴があります。
医療機関では欠かすことができない、診療報酬請求事務業務や窓口業務などの医療事務職として求められる能力を高い水準で備えていることの証明となるため、就職や転職をする際には大きなアピールとなります。
メディカルクラーク試験は毎月開催
メディカルクラークは、医療事務の資格の中では最も受験者数が多く、非常に人気の資格です。
また、資格試験では珍しく毎月試験が行われているため、年12回実施されています。多くの試験は年に1回~3回の実施であるため、非常に珍しい試験であると言えるでしょう。
受験資格も特に設けられていないこともあり、気軽にチャレンジすることが出来るのです。
なお、試験日などはホームページなどで確認できるため、事前に確認しておくと良いでしょう。
メディカルクラーク試験の難易度
メディカルクラークは医療事務の資格の中では標準的な難易度となっています。
ここでは試験の合格率や実際に合格するにはどれほどの点数を取る必要があるかについて解説します。
メディカルクラークの合格率は約60%?
それでは、試験の結果データを見てみましょう。
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
2019年 | 15,795人 | 11,499人 | 72.8% |
2018年 | 17,616人 | 11,961人 | 67.9% |
2017年 | 21,789人 | 13,880人 | 63.7% |
2016年 | 24,620人 | 16,052人 | 65.2% |
2015年 | 21,803人 | 14,659人 | 67.2% |
2014年 | 29,594人 | 17,860人 | 60.4% |
合格率は60%台で安定していることがわかります。
試験の形式は学科・実技Ⅰ・実技Ⅱの3科目に分かれてり、この形式についても医科でも歯科でも同じです。
また、試験は絶対評価となっており、どんな試験問題でも70%を取れば合格となり、一つの科目で満点でも他の科目が7割未満だったら不合格となります。
なお、メディカルクラーク試験の特徴に「試験科目免除制度」というものがあります。
これは、3科目を同時に受験した回で得点率が70%を超えた科目は、6カ月の間試験免除となる仕組みです。
この制度を利用すれば、半年の間は不合格となった科目にだけ集中することができるため、合格の可能性が大きく高まります。
メディカルクラーク合格までに必要な勉強時間
合格のためには、個人差があるものの200時間ほどの勉強時間が必要と言われています。
医療事務の実務経験がない人であっても、実際に問題に取り組んでみる中で、実技Ⅰの400文字記述がスラスラ書くことができる人などはさらに短い時間で合格できる可能性はありますが、一般の人であれば200時間ほど考えておくと安心です。
期間にすると、社会人でも3カ月程度で合格を狙えるでしょう。
普段は仕事が忙しく平日に勉強時間をとるのが難しいという人は、ゆとりをもって4~6か月ほど前から勉強しておくと良いでしょう。
ただし、ただ闇雲にダラダラと200時間をクリアするのではなく「質を伴った200時間」でなければ意味がありません。
メディカルクラーク試験の受験者層
受験資格は設けられていないため、年齢や実務経験に関係なく誰でも受験することができます。
メディカルクラーク試験の受験者は約2万人で、男女比は男性が10%弱、女性が90%強となっています。
圧倒的に女性が多い理由として、事務職であれば時間を柔軟に使うことができるため家事・育児などと両立しやすいからであると考えられます。
女性の受験者数が多く、男性は受験を躊躇してしまうかもしれませんが男性にもおすすめな資格です。
最近は「イクメン」という言葉もある通り、育児に積極的に参加する男性も増えつつあります。
国も男性の育児休業の取得を促進しており、今後は男性のメディカルクラークも増えていくでしょう。
メディカルクラーク試験の難しいポイントとは?
メディカルクラークの難易度は標準程度と言えるでしょう。
医療系資格の中では最も受験者数が多いため、この資格を基準にして他の医療事務の資格と比較されることも多いです。
資格取得には3種類の試験の合格が必要
メディカルクラークには「実技試験Ⅰ」「学科試験(択一式)」「実技試験Ⅱ」の3分野から出題され、また「医科」と「歯科」に分かれているのも大きな特徴です。
この3種の試験の混在がメディカルクラーク試験の難易度をあげる要因となっており、それぞれ出題形式が異なるため個別に対策する必要があります。
難易度は試験の順番通りに上がっていきます。
それでは、出題内容などについてより具体的に見ていきましょう。
長い記述が必要な実技Ⅰ
実技Iは持ち込みは不可であるものの、70%以上の合格率となっており3種類の中では最も簡単な科目です。
公式ホームページには、審査領域は「コミュニケーション」と記載されており、患者の発言に対してどのように応対するかが問われています。
「完全にこのような解答でなければ不正解」というような出題ではないため、「実務だったらこのように対応する」などイメージしながら柔軟に取り組むと良いでしょう。
試験では400文字の記述が必要となる記述問題が2問出題されます。また、試験時間は50分です。
解答作成の際に意識すべきポイント時は以下の通りです。
- 正しい敬語を使用すること
- 相手が理解しやすい言葉を使用すること
- 相手からの質問への回答に時間を要する場合は、その理由を伝えること
- 相手の不安を解消するための配慮を行うこと
これらは病院で応対業務をする際には常識ともいえる内容でしょう。
つまり、実際の応対をイメージしながら記述すれば大きく減点されることは無いのです。
3択だが複雑な学科試験
学科試験では3択の問題が25問出題され、試験時間は60分となっています。
電子機器以外の資料の持ち込みが許可されており、参考書などの持ち込みが認められている試験であるため、事前知識で解ける問題はほとんどないと思ったほうが良いでしょう。
そのため普段から使い慣れている参考書を準備し「どのページのこの分野が書いてある」といったことを把握しておきましょう。
なお、資料での関連箇所を見つけても、問題文で分かりづらく言い換えてあったり、そこに記載されている言葉をまた調べなければならないということもあるため、持ち込み可とはいえ想像以上に時間がかかります。
この科目の特徴として、問題を読む・資料を探す・解答を考える・答えを記入するという作業を繰り返すため、様々な作業を一度に行わなければならず、非常に消耗します。
医科も歯科でも共通している分野は、以下の6つです。
- 医療保険制度
- 高齢者医療制度
- 公費負担医療制度
- 介護保険制度
- 医事法規一般
- 医事業務
次の4分野は医科と歯科で異なる問題が出題されるため、注意が必要です。
- 診療報酬請求業務
- 医学一般
- 薬学一般
- 診療録
見落とし注意な実技Ⅱ
実技IIは4枚のカルテを基に作成されたレセプト4枚を照合し、誤りを訂正するという出題内容です。
持ち込みは可能ですが、この試験が最も難しいとされています。
出題で与えられたカルテに対し、間違いを含んだレセプトがあり間違いを訂正する問題であるため、正確に間違いを把握する能力が求められます。
レセプトは一見間違いが無いようにできているため、問われている箇所を見落としやすいため、細心の注意が必要です。
そのため、理解が曖昧だと間違っている部分も正しく見えてしまうため、正確にレセプトを理解できていないと合格することはできません。
正確に理解が必要な他、問題文にある中のあらゆるものを疑う姿勢が大事になってくると言えるでしょう。
試験時間は70分ありますが、1問に時間をかけすぎると解ききることができないことも起こり得ます。
そのため、実践的に数多くの問題で解答の練習をしておき出題形式に慣れておく必要があります。
関連資格との難易度比較
メディカルクラークとよく比較される医療系の資格について、難易度の面で比較してみましょう。
ドクターズクラーク
ドクターズクラークは、「医師事務作業補助者」とも呼ばれ、医師が行う事務作業を代行する者を指します。
具体的には、文書作成や事務処理などの業務を医師の指示を受けて補助し、医者や看護師の負担を減らすために紹介書・診断書やカルテなどの作成代行を行うため、専門的な知識が求められます。
医療機関の診療業務では多くの文書作成・事務処理業務がどうしても発生してしまうため、医師の診療業務をスムーズに行えるようサポートするドクターズクラークは医療機関になくてはならない存在なのです。
なお、ドクターズクラークは、メディカルクラークと同じ日本医療教育財団が行っていて、難易度も同程度でありダブルで取得する人も多いです。
医療事務管理士
医療事務管理士は、日本で最初の医療事務の資格として広く認知された資格として知られています。
医療機関内での患者の受付から書類の作成や管理などの医療事務全般の能力の高さを認定する試験です。
具体的には、病院の事務員として必要な受付・治療費の計算、診療報酬明細書作成・カルテ管理などを行い、こちらも多くの医療機関で重宝されています。
学科と実技の2つの試験で構成されており、合格率は50%程度です。
合格に必要な勉強時間は400時間程度と言われており、メディカルクラークよりもやや難しい水準と言えます。
インターネット受験で24時間いつでも受けることが可能なため、自分の仕事や家庭の都合に合わせて受験することができます。
医療事務管理士の難易度は下記の記事をチェック!
診療報酬請求事務能力認定試験
診療報酬請求事務能力認定試験は、合格率30%程度の資格で医療事務資格の最高峰で、先ほど紹介した医療事務管理士よりもさらに難しい試験です。
初学者の場合、合格までに500時間の勉強が必要と言われており、メディカルクラークの取得後にステップアップとして目指す人が多いです。
実技Ⅱの試験で問われる内容のレセプト業務のスペシャリストになりたいと思った場合に受験すると良いでしょう。
この資格を持っていることで、レセプト業務を行うにあたって自分自身の能力の高さをアピールできるようになり、多くの医療機関で非常に重宝されるようになるでしょう。
診療報酬請求事務能力認定試験の難易度は下記の記事をチェック!
メディカルクラークは独学で合格可能?
医療事務の資格では標準的な難易度のメディカルクラークは、独学でも合格できるのでしょうか?
また、独学で進めるときにはどのような注意点があるでしょうか?
独学合格を目指す時の注意点
学科・実技1と2と、3科目で試験が行われますが、それぞれの問題で問われる論点はあまり難しくありません。
メディカルクラークは独学でも合格を狙うことができるので、実際に独学で合格する人も多いですが注意するべき点もあります。
試験形式が3種類あるため、各科目に対応できる力を付けなければなりません。特に、記述問題などは自分で読み返すだけでなく他人に添削してもらったほうが客観的な意見をもらえるため有意義でしょう。
記述問題の対策をするにあたって重要なことは、「どんな人が読んでもはっきり、わかりやすく伝わるように記述する」ことです。
また、試験にスムーズに取り組めるように、苦手分野やイマイチ自信がない論点は自分でノートなどを作っておくと良いでしょう。
「このような問題が出てきたらこうやって解く」というように、流れを確認できるようにしておくと安心です。
それぞれの出題形式に慣れ演習を重ねていけば、本試験でもどのような問題が出てきても対応できる学力を身に付けることができるため全く問題ありません。
テキスト選びが大切
試験の準備にあたり、必須の持ち込み資料として「診療点数早見表」を準備する必要があります。
また、数多くある市販のテキストの中で、どれが自分に合っているかを口コミだけでネットやフリマ販売で見つけるのは非常に困難です。
そのため、確実に合格するためにも、店頭などで実際に教材を比べてみて、確認してから教材を選ぶことが大事になります。
また、テキストは何冊も購入せずに、1冊に絞って集中的に学習する方が効率的です。
多くの教材を揃えたところで、書いてある内容や重要度の高い論点は同じなので、特段目新しい発見があるわけではありません。
1冊のテキストを徹底的にやりこみ、隅々まで理解するように心がけましょう。
なお、テキスト選びの際に参考にするべき点があり、以下の内容をしっかり学べるものを選ぶと良いです。
-
医療保険制度・介護保険制度の基礎知識
-
患者接遇マナーや職場でのコミュニケーションスキル
-
医療費(診療報酬点数)の算定方法
学習計画を立てて継続的に勉強する
合格には継続的な勉強が何より大切です。
継続的な勉強をするためには、自分の都合に合わせた学習スケジュールを立てると良いでしょう。
効率の良い学習スケジュールを立てることにより、合格までの道筋が見え勉強を継続しやすくなります。
また、毎月試験があるとはことで気が緩んでしまい「落ちてもまた次がある」と考えてしまう人も多いですが、このような考えは捨てましょう。
このような気の緩みがあると、勉強の質が落ちてしまいせっかく勉強した内容も忘れてしまいます。
そのため、全科目一回で合格するという強い意志を持ちつつ、身の回りの誘惑を断ち切ってコツコツ頑張ることが必要になります。
学科と実技Ⅱを中心に対策する
合格を目指す上で大切なことは、注力すべき科目を間違えないことです。
学科と実技Ⅱは持ち込みが可能なため気が緩んでしまい、自分はもう合格できるのではないかと勘違いしがちです。
しかし、共に難易度が高くテキストの該当箇所を見つけている間に時間を浪費してしまったりするため、自分が想定していない問題まで出ると思って、深く勉強するべきです。
油断した結果失点してしまうのは非常にもったいないので、気を付けましょう。
メディカルクラークの難易度まとめ
メディカルクラーク試験についてまとめ
- 医療機関での仕事を目指している人は必須
- 独学合格も不可能ではない
- 質の高い勉強を意識する事が大事
メディカルクラーク試験の出題内容や科目ごとの特徴、合格率についてお分かりいただけたと思います。
独学でも十分に合格が狙えますが、まずは自分が独学に向いているのかどうか分析してから勉強に着手するようにしてください。
メディカルクラークは今後ますます価値が高まり、高い需要があると見込まれているため、興味がある人は積極的に取得を目指してみてください!