社会福祉士は独立できる?事務所を開業する手順や注意点・取得するべき資格も解説!

更新

「社会福祉士って独立できるの?」

「社会福祉士として独立するにはどうすれば良いの?」

こんな疑問をお持ちの方もいるのではないでしょうか?

社会福祉士としての資格を取ったのだから、独立開業したいと思う人は一定数以上います。結論から申し上げますと、社会福祉士として独立はできますし、実際に独立している人は一定数存在します。

そこで、社会福祉士として独立するための手順やメリット・デメリット、取得するべき資格について解説します。ぜひ、参考にしてください。

社会福祉士の独立についてざっくり説明すると

  • 社会福祉士は独立開業できる
  • 社会福祉士として独立事務所を立ち上げた場合はメリットばかりではない
  • 独立事務所を立ち上げるには取っておいた方が良い資格がある

社会福祉士の独立する際の基本知識

丸メガネ 社会福祉士が独立して事務所を立ち上げることはありますし、コミュニティソーシャルワーカーとしての役割も期待されています。地域に密着して、さまざまな施設との連携を強化することができるからです。

主な仕事内容は、企業や施設で勤務している場合とあまり変わりません。支援を必要としている人たちの相談に乗り、的確なサポートを提案することが仕事内容です。

ですが、相談や支援の業務だけでは生計を立てていくことが難しいという現状があります。そのため、成年後見人や大学の講師などの業務も行なっている人が多くいます。

ただ、社会福祉士として独立して仕事をしていくには、できる業務内容に制限があり、収入も少なくなってしまいます。業務内容の範囲を広げるために、多くの人たちは社会福祉士以外の資格も取得し、兼業で活躍しています。

社会福祉士は業務独占資格でない

社会福祉士は業務独占資格ではありません。そのため、社会福祉士としての資格がなくても社会福祉士と似たような業務を行なっている人が数多く存在しています。

福祉支援を必要としている相談業務や、具体的な福祉サービスを提案するという仕事は、言い換えるなら知識とある程度の経験があれば誰でもできます。誰でもできるということは、それだけでは収益を上げられないということです。

実際にはケアマネージャーなどの資格を取得して兼業したり、介護事務所や行政書士事務所などと兼業していたりするケースが多く見られます。これらにはすべて資格が必要ですから、当然資格を取得しているということです。

独立型社会福祉士の割合

独立して事務所を立ち上げている社会福祉士は存在します。ですが、その割合は2.5%と大変少ないというのが現状です。

社会福祉士が独立して事務所を立ち上げることは可能です。ですが低い割合の数字から見てもわかるように、独立事務所を立ち上げて社会福祉士としての仕事に従事することは一般的ではないのです。

独立した場合の事業形態は2種類

社会福祉士が独立して事務所を立ち上げた場合の事業形態は「請負型」と「個人事業主型」の2形態あります。

請負型は、福祉施設や介護施設や医療施設などから社会福祉士としての仕事を依頼され、請け負う形態です。施設の大きさによっては社会福祉士を臨時的に必要とするところがあります。そのようなところの仕事を請け負います。

個人事業主型は、社会福祉士としての仕事に従事する傍ら、学校講師やソーシャルワーカーとしての事業も行なっている形態です。社会福祉士としての仕事とそれ以外の仕事を両立させています。

独立型社会福祉士の年収

積み上げられたコインとお札 社会福祉士が独立開業した場合、平均年収は400~500万円程度と言われています。

しかし独立直後は依頼が少ないため、赤字になることも少なくありません。契約が結べるようになると収入は安定しますが、そこに至るまではある程度低い給料を覚悟しておく必要があるでしょう。

ソーシャルワーカー自体は営利目的ではありません。どちらかと言うとボランティアに近い状態です。そのため、独立しても高収入を得ることは難しいのです。

社会福祉士として独立開業し、高い収入を得たいのなら、他の資格を取得するか公演活動を行なう必要があります。幅広く事業を展開しなければ、高収入を得ることは難しいのが現状です。

独立型社会福祉士の収入内訳の例

社会福祉士が独立して事務所を立ち上げたのち、どのように収入を得ていくらぐらい得ることができるのでしょう。年収500万円程度を稼ぐ場合のモデルケースをご紹介します。

社会福祉士の主たる業務とも言える相談業務は、相場が1時間に5,000円からとされています。相談業務の仕事は社会福祉士の資格がなくてもできますから、多くの収入は見込めません。

成年後見の仕事は1件当たりの相場が2万円程度です。これは月極めになりますから、月10件ほどこなす必要があります。成年後見の仕事をするには、基礎研修を受講して修了しなければいけません。

ケアプランの相場は1件当たり1万円程度です。こちらも成年後見と同じで月極めになり、最低でも月10件以上はこなさないと充分な収入にはなりません。

これだけでは、年収500万円にはなりません。更に講演や講師といった活動をすることで収入が一気に増えます。これらは大きな収入源になるからです。これくらいの仕事をこなさないと年収500万円を稼ぐことは難しいのです。

社会福祉士が独立開業するメリット

2体のスマイル人形 社会福祉士が独立開業するメリットについて解説します。

収入が増える可能性がある

社会福祉士としての仕事だけで独立開業するのは、正直難しいと言えます。ですが、成年後見人などのような業務の幅を広げれば、収入をアップさせることは可能です。

成年後見人の業務を行なうには、基礎研修というものを受講して修了しなければいけません。最短でも3年かかりますが、その分独立開業した時には大きな収入源となります。

仕事の自由度が増す

企業や施設などに所属して働くとなると、さまざまな制限があります。周囲の人たちとの協調性も必要ですし、上司に報告する義務も出てきます。

独立開業すれば自由に仕事をこなすことができます。独自の方法で相談者の支援ができたり、自分の能力に合わせて仕事の幅を広げたりすることも可能です。

更に、勤務時間や休日に縛られることもありません。自分で自由に決められるので、連休を取るなどのことも可能になります。

独立開業には初めの段階からリスク管理が必要ですが、その分自身のビジョンを貫き、より大きな成果を得るチャンスも提供されます。

地域に密着した仕事ができる

社会福祉士として独立開業すれば、自由に仕事を行なうことができます。自分のスキルなどに合わせて、地域密着のサービスを行なうソーシャルワーカーとして仕事をすることも可能になります。

どのような場所に開業するかにもよりますが、福祉の助けを求めている人が多い場所なら、多くの仕事を引き受けることができるでしょう。個人的な相談はもちろん、地域施設から仕事を請け負うこともできます。

住民の身近な存在として活躍できるので、やりがいを感じやすくなります。精力的に仕事に取り組めば、その分多くの人たちが頼ってくるようになりますから、仕事の幅も広がり案件も増えていきます。

社会福祉士の独立のデメリット

雪山と雪原 社会福祉士が独立した場合のデメリットについて見ていきます。

収入が不安定になる

社会福祉士に限ったことではありませんが、独立開業すると収入は不安定になります。収入は自分の頑張りに大きく左右されるからです。

施設や企業に勤めているのなら、毎月決まった給料をもらうことができます。極端な話、仕事がゼロであったとしても決められた日数出勤していれば、給料をもらうことができます。

しかし、独立すると仕事がゼロなら収入はゼロになります。独立すると必要になるのは自分の生活費だけではありません。事務所の維持費なども確保しなくてはいけなくなります。

よって、金銭面はリスク要因となりやすいでしょう。

責任が重くなる

社会福祉士として企業や施設に所属している場合、責任はある程度軽くなります。困ったことが起こった時は、企業や施設が救いの手を差し伸べてくれるからです。

しかし、独立開業すればすべての責任は自分で負わなければいけなくなります。企業や施設に所属していた場合のように誰かが庇ってくれるわけではないので、判断や提案は慎重に行なう必要が出てきます。

独立開業は実務経験を積んでから

木で舗装された道 社会福祉士として独立開業するための条件はありません。極端な話、資格取得後に実務経験ゼロの状態で独立開業することも可能です。

しかし、実際の仕事では豊富ない経験や知識が必要不可欠です。間違った判断をしてしまった場合は、誰かが庇ってくれるわけではありません。

すべての案件を正しく判断し、的確な提案や手続きを行う際には、今まで培ってきた経験や知識が必ず生きるでしょう。

また、社会福祉士として独立開業したばかりの間は、コンスタントに仕事は入ってきません。初めての人に相談しようと思う人は少ないですし、社会福祉士としての知名度もないからです。

独立開業の初期段階では、地道なマーケティングやネットワーキング活動を通じて自身の存在を知らしめ、信頼を構築することが必要です。

社会福祉士として独立開業したいのなら、まずはどこかの企業や施設に所属しましょう。そこで実務経験を積むとともに幅広い人脈も培うことが、独立開業を成功させる重要な鍵となります。

社会福祉士が独立するための手順

チェックリスト 社会福祉士が独立ための手順について見ていきます。

日本社会福祉士会の独立型社会福祉士名簿への登録がおすすめ

社会福祉士として独立するための最初のステップとして、ぜひ日本社会福祉士会の独立型社会福祉士の名簿に登録することをおすすめします。

この名簿には誰でも登録できるというわけではなく、いくつか条件があります。

  1. 都道府県社会福祉会の会員である
  2. 「認定社会福祉士」である
  3. 日本社会福祉会へ事業届を提出済み
  4. 独立型社会福祉委員会主催の独立型社会福祉士の研修修了
  5. 年次事業報告の提出を確約している
  6. 社会福祉賠償責任保険などに加入または加入を確約済み
  7. 独立型社会福祉名簿の公表に同意している

上記7つの条件をすべて満たしている場合のみ、日本社会福祉会の独立型社会福祉士名簿に登録できます。

この際押さえておきたいポイントとして、名簿に登録しなくても社会福祉士として独立できるという点です。

この制度は社会福祉士の独立を制限するためのものではないため、その点についてはきちんと理解しておきましょう。

名簿登録後は登記を行う

日本社会福祉会への名簿登録が完了したら、次に登記を行ないます。株式会社やNPO法人として登記します。ただし、個人事業主として立ち上げる場合は、登記ではなく、開業届を出します。

その後、事務所を設立して備品やスタッフなどの準備を行ないます。スタッフについては必要な場合のみです。自分だけで事業を行なう場合は、スタッフの準備は必要ありません。

独立開業には資金が必要

独立開業するために必要な資金や調達方法について解説します。

開業の際にかかる費用

開業する際にかかる費用は莫大です。例えば、法人を設立する場合は定款作成や登記に約30万円かかります。ただし、個人事業主の場合は登記は行なわないので不要です。

登記後に事務所を設立することになります。自宅以外の場所に事務所を立ち上げる場合には、家賃や敷金などが必要です。更に保証金などもかかってきます。

事務所の設立が終わったら、次は備品の準備です。パソコンや机・椅子などの購入も必要ですし、スタッフを雇う場合は給料のことも考えなければいけません。

また、ただ単に事務所を立ち上げるだけでは、仕事は入ってきません。社会福祉士として仕事をしていることを多くの人たちに知ってもらうために、チラシやウェブサイトを使って宣伝しなければならず、そのための費用も必須です。

よって、開業の際には諸々の費用が重くのしかかってくるといえるでしょう。

必要な資金を調達するには

社会福祉士として独立する場合には、たくさんの費用がかかります。必要な費用を自分の力だけで用意することが難しい場合もあるでしょう。

必要な資金を調達する方法として、日本政策金融金庫や民間の金融機関からの融資が挙げられます。また、補助金や助成金も利用できますので、開業の際には必ず調べて検討してみましょう。

独立開業の際の注意点

背負う人 独立開業する際の注意点について紹介します。

経営者としてのスキルが必要

社会福祉士として独立開業した場合、専門的なスキルが必要なことはもちろんですが、それ以外に経営者としてのスキルが必要不可欠になります。

独立開業した後は、事務所を維持していかなければいけません。そのためには、経営の知識や営業スキルが必要なのです。

事務所を維持していくためには、収入を得る必要があります。収入を得るには人脈が重要になりますから、開業前から準備しておきましょう。

具体的には、社会福祉の研修などに参加し、同業者のネットワークを作ると良いでしょう。また、実務経験を積んだ場所でも人脈づくりに努力をしておくことをおすすめします。

収支計画をしっかり立てよう

独立したばかりの時期は収入が不安定になります。コンスタントに仕事が入ってくるわけではないからです。契約が結べるようになるには、それなりに時間がかかります。

収支計画は慎重に立てて置いてください。独立開業したけれど収入がなく、1年足らずで廃業しなければいけなくなる、ということがないような計画を立てて置く必要があります。

独立開業した際の収入源に成年後見の仕事があります。ですが、この報酬は1年後に入るのでそのことも注意しておいてください。

独立するならダブルライセンスがおすすめ

積み上げられた本 社会福祉士として独立開業した場合、社会福祉士としての仕事だけで経営を維持していくことは困難です。他の資格を取得して業務の幅を広げると、収入が安定します。

独立する前に、社会福祉士の仕事と兼業できるような資格を取得しておく必要があります。ダブルライセンスを取ればそれだけで拍が付き、仕事の増えて収入もアップします。

社会福祉士の独立におすすめな資格

社会福祉士として独立するにあたって、ダブルライセンスに有効な資格は以下の通りです。

  • ケアマネージャー
  • 精神保健福祉士
  • 社労士
  • 司法書士
  • FP
  • 相談支援専門員
  • 訪問介護員(ホームヘルパー)

これらは一部ですが、社会福祉士として独立しようと考えている人の多くがこれらのダルブルライセンスを取得しています。取得しておくと仕事の幅が広がり、収入もアップするからです。

中でも精神保健福祉士は、社会福祉士の試験と共通している科目がが多くあるため、ダブル受験を目指す人も多くいます。

社会福祉士としての資格を取得していれば、免除される科目もあり、精神保健福祉士の資格が取得しやすくなります。

日本で社会福祉士の独立が難しい理由

水辺でしゃがみ込む女性 日本では社会福祉士の独立が難しいというのが現状です。その理由について見ていきます。

ソーシャルワーカーの定義が狭い

日本の法律では、ソーシャルワーカーの定義を「個人を対象とした相談援助を生業とする者」としています。ただ、社会変革に関する規定はされていません。

一方の国際定義では社会変革はもちろん、社会開発などにも積極的に関わっていく専門的な職業であるとしています。社会的に認められた専門職と定義されているため、活躍の場が広いのです。

この定義の違いが、日本における社会福祉士の独立を難しくしている一因と言えます。

日本の定義は国際的な定義に比べると非常に狭くなっています。そのため、社会的に社会福祉士が専門職として認められることが少なく、活躍の場も少ないというのが現状です。

社会福祉士が必須な職場が少ない

日本では、社会福祉士の設置が義務付けられているのが地域包括支援センターのみとなっています。それ以外の場所では、社会福祉士がいなくても良いということです。

社会福祉士が必須な職場が少ないということは、独立しても仕事が少ないということになります。すると、必然的に社会福祉士として独立開業すること自体難しくなります。

社会福祉士の独立についてまとめ

社会福祉士の独立についてまとめ

  • 社会福祉士は業務独占資格ではない
  • 社会福祉士として独立開業した場合の年収は400~500万円
  • 独立開業する場合はダブルライセンスを取得しておいた方が良い

社会福祉士の独立について解説してきました。福祉を必要としている人は増加傾向にありますが、社会福祉士が必須な職場が少ないため、独立した場合の仕事量は少ないというのが現状です。

ただ、ダブルライセンスを取得することで開業した後の仕事の幅はいくらでも広がりいます。社会福祉士として独立開業を目指しているのなら、精神保健福祉士などのダブルライセンスを取得することをおすすめします。

資格Timesは資格総合サイト信頼度No.1