AI登場で行政書士は廃業に?AI台頭と行政書士業務の代替可能性を考察!

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「行政書士の仕事がAIに奪われるって本当?」

「今後の行政書士はどのように変化していく?」

近年、コンピュータ技術の発達・普及による電子化により、様々な職業で「仕事が奪われる」という話を耳にすることも多くなってきています。

中でも行政書士は、AI(人工知能)による仕事の代替可能性が高い職業として挙げられることも多く、現在行政書士として働いている方、あるいは将来的に行政書士として働きたいと考えている方にとっては脅威に感じているのではないでしょうか。

この記事では、AI台頭後の行政書士業界がどのように変化していくのか、そのような時代の流れの中で行政書士が今後も稼いでいくにはどのようにしていけばよいのかについて考察していきます。

行政書士のAI代替可能性についてざっくり説明すると

  • 行政書士はAIによる仕事の代替可能性が高いと考えられており、AIに仕事が奪われることが懸念される
  • 顧客との対話という仕事はAIに代替される可能性は低い
  • 今後の行政書士のあり方として、AIに仕事を奪われる可能性の低い経営コンサルティングなどの働き方を構築するという手も

AIは行政書士の仕事を奪えるか

悩む様子

近年、大規模言語モデルの研究から生まれたChat-GPTなどのAI(人工知能)の登場により、今後多くの仕事が奪われるという話がしばしばニュースになっています。

AIに仕事を奪われる可能性の高い代表的な仕事として、経理やライン管理業務が候補に挙げられていますが、行政書士もその例外ではないといわれています。

なぜ行政書士がAIに仕事を奪われることになると考えられているのでしょうか?その理由について考察します。

AIが登場して業務が奪われる

「AIが登場すると行政書士の仕事が奪われる」という議論が最近活発に行われています。

その根拠として、行政書士の業務は役所に提出する書類などの作成・提出代理が主であり、「代書屋」とも呼ばれていることが考えられます。

このような単純な書類作成業務や手続き業務は「定型業務」と呼ばれていますが、これらの業務は事務作業ともいえるものであり、ルールにのっとった仕事を得意とし簡単に処理できるAIにとってはうってつけの仕事といえるのです。

独占業務は淘汰され二極化?

AIが本格的に台頭することになれば、大手の行政書士事務所がますます力をつけ、逆に小さい事務所はなくなってしまうという二極化の状況になってしまうことが予想されます。

どういうことかというと、財政力のある大手の行政書士事務所であれば仕事の効率化・合理化を求めますから、積極的にAI導入を進めて定型業務をAIに任せ、不要な人材は切り捨てて解雇するでしょう。

そして、超低価格での大量受注を行って他の大手事務所と競争するという流れになることが予想されます。

このような流れになってしまえば、定型業務を主な収入源とする資金力のない小さな行政書士事務所は、淘汰されて消えてしまうことが予想されます。

専門業務は置き換えられない

行政書士の仕事には前述した「定型業務」だけでなく、起業家の支援コンサルティングや、相続に関する人間関係の整理・遺言に基づいた相続手続きなどを行う「専門業務」と呼ばれる業務も存在します。

こうした業務を行うに当たっては、顧客の心を汲み取った上で課題解決をすることが求められるため、人と人との対話が不可欠です。

これらの業務は業界についての専門知識を持った行政書士にしか行うことができませんので、プログラム化されたAIでは代用することは難しく、代替の可能性は低いと考えられます。

時代の変化に迅速に対応する

行政書士の仕事の領域は、新たな法律の整備や新たな技術の導入によって広がり続けています。 近年ではマイナンバーカードに関する業務を行政書士が取り扱ったり、ドローン飛行許可の申請の業務を取り扱ったりしています。

このような時代の変化に対して、敏感に反応し迅速に対応することで新たに資格と知識を活かした業務の幅を広げることができます。

AI時代での行政書士業界の将来性は?

インターネットが主流になっているイメージ

今後AIによる電子化が進むことで、行政書士業界はどのように変わっていくのでしょうか?

現在の日本の状況や、外国の例などを参考にして考えてみましょう。

AI登場以前に行政手続きは縮小化

そもそも2017年ごろから、政府は法人設立に関する全手続きをオンライン・ワンストップ化することを目標としています。

2017年に閣議決定された「未来投資戦略2017」では、IoTやAI・ロボット等を産業や社会生活に取り入れることで社会課題を解決するという施策を挙げています。

つまり政府としては、AIが注目される前からすでに行政手続きを簡略化させていこうとする狙いがあったと考えられます。

実際に今では、インターネットで少し調べれば申請書類などの行政手続き書類を簡単にダウンロードできるようになっていますし、行政書士に代行しなくても自分の力で書きやすい環境になっています。

つまり行政書士の独占業務の中でも、ごく簡単な書類記入・提出という業務はすでに需要がなくなってきているという状況であり、ここの市場は縮小しているといえるでしょう。

実はヨーロッパにも同じような流れが

電子国家の構築を目標に掲げるエストニアを例に挙げてみてみましょう。

エストニアでは、税金の納付・年金の支払い・住民登録の手続きが電子化され、簡略化に成功しました。

しかしながら、それに伴って行政書士や司法書士などといった士業が一気に職を失ってしまうという事態に陥りました。

さらに、フィンランドやデンマークなどでもエストニアのような電子政府化による行政手続きの簡略化を行っていることから、このような流れは世界的な潮流であり、日本もまた例外ではありません

AI登場で新たなビジネスチャンスが?

一方、AIの登場によって仮想通貨市場などの新たな仕事が登場する流れになりつつあります。

このような傾向は、行政書士にとっても新しいビジネスチャンスの場として注目することができます。

企業の事業展開支援などにおいて、企業が取り入れたAIを活用しながら、仮想通貨による会社設立・増資に伴い行政書士側が法律面でどのようなことを請け負うべきかなど、業務の中にも新たなフィールドが生まれることになるでしょう。

つまり、市場の変化により淘汰されるものと新たに生み出されるものの両方が考えられるため、完全に仕事がなくなってしまうという心配はしなくてよいのです。

過去にも行政書士の業務縮小の例が

AIの普及について、日本行政書士会連合会会長の遠田和夫氏が見解を述べていますのでご紹介します。

過去には、行政書士の仕事の大きな部分を占めていた運転免許の更新手続き業務が、国策によって行政書士の手を離れていくということがありました。

しかし、その代わりに空き家問題・所有不明地問題など行政書士が新たに取り組むべき分野が登場したという前例を取り上げ、このことからも、AI化により仕事が奪われることを特に心配することはないのではないかと遠田氏は見解を述べています。

代替可能性93.1%をどう見る?

疑問を持つ様子

2015年に株式会社野村総合研究所と英オックスフォード大学の共同研究が行われ、日本の様々な職種についてのAIによる代替可能性が試算されました。

さらに日経新聞による発表では、行政書士の業務のうち、10~20年後にAIによって自動化できるであろう技術的な可能性は93.1%と算出され話題になりました。

このように非常に高い数字が算出されたことで、近年行政書士の将来性が疑問視される意見も多く出ていますが、実際のところどうなのでしょうか?

93%の仕事はAIで代替可能

野村総合研究所とオックスフォード大学の研究によるAIの代替率の計算は、日本の601の職種について就業者2万人以上のデータを集めて分析を行い、職業興味・価値観・仕事環境・スキル・知識を数値化して比較し、他の職業との類似性を計算して分類した結果から、人工知能やロボットなどで代替される確率を試算するという方法で行われています。

なお、この研究により代替可能確率が最も高く算出されたのは経理の仕事で、99.8%という数字が出されています。

また、上述のように日経新聞の発表では行政書士のAIによる代替可能確率は93.1%で、経理に近く極めて高い数字が算出されました。

数字が大きく見えるけど

上記の数値は非常に脅威的に感じられますが、この研究の信憑性について疑問視する意見も多く出ています。

実のところ、この野村総合研究所とオックスフォード大学の研究ではサンプルを「2万人以上への調査」としていますが、実際には601という膨大な数の職業を扱っているため、単純計算すると1つの職業に対して33人程度のサンプルしか集められていません

また、実際にその職業に就労している人をサンプルとしていることから、客観的な調査とは言い難く、偏りが生じている可能性が高いことも指摘されているのです。

つまり、研究内容としては批判されるべき点が多いのに対して、その数字だけが過大評価されているという現状があるということも考慮しておくべきです。

AIが業務を代替する時の問題

新規性のあるアイデアを出すことはない

Chat-GPTなどの大規模言語モデルを用いた 人工知能(AI)の場合、過去の学習データを大量に読み込むことで、われわれの問いかけに応答している。そのため、過去のデータにない新しいアイデアを生み出すことはないと言われています。

入力した情報の安全性が担保できない

Chat-GPTなどのサービスを用いる際には、入力した情報も学習データの一部として取り込まれるため、顧客の情報などを入力すると顧客の情報がデータの一部として取り込まれて、流出する恐れがある。

解答が正しいとは限らない

Chat-GPTのような機械学習を用いている人工知能の場合、確率的な仕組みで動いているために、解答の精度が100%になることはない

以上のような問題点が指摘されています。特に個人情報保護などの観点からイタリアでは一時的にChat-GPTなどの使用が禁止されました。

将来的には解答の正確性などの問題は解決されると予想されていますが、入力された情報の取り扱いに関しては懸念が示されており、開発企業が取り扱いについて明らかにすることが求められています。

これらの問題を解決するまでは、行政書士の仕事の一部を補佐する形で人工知能が使われることはあっても、行政書士の仕事の大部分を代替することはないでしょう

AI台頭後でも「稼ぐ」ために

可能性を感じさせるイメージ

AIの代替可能性についてどれほど議論を重ねるにしても、政府の方針や世界的な電子化の流れを見れば、将来的には行政手続きのうちかなりの範囲をAIが席巻するであろうと考えられます。

このような時代に行政書士が生き残るためには、どのような手を打てばよいのでしょうか。

「心の声」に寄り添いたい

AIはルールにのっとって作業を効率的に行うことができるというのが強みとなりますが、人間同士の対話が必要な仕事には不向きです

つまり、顧客と会話を交わすことによって相手の悩みを読み取り、本質的な解決策を提示するという仕事は生身の人間である行政書士にしかできません。

お金や仲間、取引先についての悩みを抱える個人や経営者などにしっかり寄り添える行政書士になることができれば、ファンを獲得しやすく、AI時代に突入したとしても需要が維持できるはずです。

経営コンサルという道も

前述した野村総合研究所とオックスフォード大学の研究によると、中小企業診断士のAIによる代替確率はたったの0.2%という極めて低い数字になっています。

中小企業診断士とは、士業の中でも経営コンサル的な業務を主とする職業です。つまり、そういったコンサル業務を行う職業はAIに仕事を奪われにくいと考えることができます。

行政書士でも、書類作成業務だけでなく会計業務など経営に役立つ知識を生かし、企業コンサルティングの技術を磨くことによって、「経営コンサルもできる行政書士」として取引先の経営の立て直しや業績改善を請け負うのも一手とすることができるのではないでしょうか。

行政書士のAIによる代替可能性まとめ

行政書士のAI代替可能性まとめ

  • 電子政府化は世界的な潮流であり今後日本も取り入れることを目標としていることから、行政書士がAIの席巻を免れることは難しいが、逆に電子化による新たなビジネスチャンスの可能性も

  • 野村総合研究所とオックスフォード大学の研究によるAIによる代替可能性は93.1%と非常に高い数値であるが、研究について疑問視する声も

  • AIに仕事を奪われないためには、書類作成業務だけでなく顧客と対話することで問題解決を行うコンサル業務なども視野に入れるべき

ここまで、行政書士の仕事のAIによる代替可能性と、その対策について考察してきました。

AIの席巻は一見脅威とも取れますが、逆にそれを利用することで自身の仕事を効率化し、新たなフィールドを切り拓くチャンスであるともいえます。

今後さらに電子化が進む未来を行政書士として生き抜くためのヒントになれば幸いです。

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