行政書士は仕事がないって本当?食えない理由や仕事の取り方を紹介
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行政書士
宮城彩奈
「行政書士には仕事がないし、独立しても廃業するのがオチだよ」
「行政書士は食えない資格だから取得しても意味ないよ」
そんな噂を聞いて困惑してしまっている方もいるのではないでしょうか。
特に行政書士を目指されている方にとっては、こうした意見は見逃せませんよね。
また、競合の行政書士も多いから、コストパフォーマンスが悪いなんていう話もあります。
こうした行政書士に対するネガティブな噂の真偽は一体どうなっているのでしょうか。
ここでは行政書士は本当に「仕事がない」職業で「食えない」資格なのかを徹底検証していきます!
これを読めば行政書士を取り巻く現状や資格のメリットはバッチリ分かります!
行政書士は仕事がないという噂は本当なのか
- 行政書士は人々の生活に密着した身近な分野で活躍できる
- 行政書士には実際に競合が多く、開業してすぐに食べていけるとは言えない
- 行政書士の認知度は高くあらゆる場面で信頼を確保しやすい
- 行政書士に仕事がないというのは基本的には間違いである
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行政書士は本当に仕事がないのか?
行政書士は「代書屋」や「頼れる街の法律家」とも呼ばれ、いわゆる士業と言われる仕事の一つです。
行政書士は「食えない資格」「仕事がない資格」と評されている場面を見かけますが、主な理由としては法律系の資格の中では難易度が低く、比較的容易に取得できるため、必然と競争相手が多くなってしまうからだと言えるでしょう。
以下では行政書士が仕事がないと言われる理由を具体的に把握していきましょう。
廃業が多いから食えない?
行政書士のみならず、すべての士業は競争社会であり実務経験がものを言います。 そのため長年開業している行政書士が市場の中で圧倒的に有利です。
資格を取って独立したばかりだと、信頼も得られていない状態なので業務をこなすことができずに顧客が取れません。
開業後1年とたたずに廃業してしまう人多いことや、その廃業件数の多さから「食えない資格」というイメージが定着してしまっているものと考えられます。
自分でできる仕事内容だからやらなくてよい?
行政書士は、役所に提出する書類の作成や、書類を官公署に提出する手続の代理を主に行い、携わることができる書類の数は1万種類を超えるとも言われます。
このように行政書士はもともと「代書屋」と呼ばれており、他人の書類手続きを代行するのが主な業務です。身近な例ですと、「飲食店営業許可申請書」「一般旅券(パスポート)発給申請書」などがあります。
そのため行政書士業務には独占業務はあるものの「やろうと思えば自分でもできる」ような誰でもできる簡単な業務だと思われがちです。
もちろん実際は行政書士に頼まなければやってられないような煩雑で難しい手続きが多いのですが、世間のイメージとしては需要が少なく、仕事がないというものになってしまっています。
さらに社労士や税理士のように顧問契約を結ぶことも少ないので安定した収入を得られない資格だと思われがちです。
「儲けられない」という書き込み
試しに「行政書士 開業」などのワードで検索をかけてみてください。ほとんどがネガティブな経験談などが出てきます。
インターネット上に「仕事が全くありません」「事務所を開きましたがすぐに廃業しました」という書き込みが多く、これらのネガティブなイメージは拡散されやすいので「行政書士=仕事がない」というイメージが張り付いているのが実情です。
しかし、当然ながら安定的に収入を得ている行政書士は存在します。あまりネガティブな書き込みに踊らされないようにしましょう。
行政書士は「食える」といえる3つの理由
行政書士は扱う書類に身近なものが多いため、「街の法律家」として身近な相談相手となることができます。
そのため行政書士というのは、認知度や親しみやすさという点からも地域に密着したビジネスがとてもやりやすい士業であり、決して食えない資格ではないということです。
負け犬の遠吠え理論
まず、儲かっている行政書士は大抵忙しいので、インターネットなどで情報を流すことはあまりありません。
暇=儲かっていない行政書士が、インターネット上に色々と投稿していることに留意する必要があります。
つまり、インターネット上で「行政書士は食えない」「行政書士は仕事がない」という書き込みをしているのは事業がうまくいかずに不満を持っている者が多いと推察されます。
そもそも儲かっている行政書士や事務所の運営を頑張っている人は基本的に忙しいので、自分儲かっている旨の投稿をする時間もメリットも無いのです。
ネットの情報は真偽も定かではなく、実際は行政書士資格の取得に失敗した方であったり、行政書士事務所の運営に失敗している人が「稼げない」というような虚偽の投稿を書き込んでいる可能性も大いにあります。
あまりインターネット上の投稿や書き込みは鵜呑みにせず、近くの行政書士事務所や実際にバイトなどで勤める体験してみる方が遥かに有意義でしょう。
士業の中でも社会的認知度が高い
行政書士は他の法律系資格と比べると難易度は易しいので、登録している人は多いです。
主な士業系資格の登録者数と比較してみると行政書士の登録者数が頭一つ抜けて多いことが分かります。
士業 | 登録者数 |
---|---|
司法書士 | 22,718人(2021年4月1日時点) |
社労士 | 42,887人(2020年3月時点) |
行政書士 | 49,708人(2020年12月時点) |
行政書士が「他の士業よりも登録者数が多いから稼げない」という噂や書き込みも目立ちますね。
しかし、その反面登録人数が多く受験者数も多い行政書士は社会的認知度や信頼度が高いといえます。
また、「カバチタレ!」という漫画で行政書士について取り上げられました。
それによりイメージアップはもとより、知名度が急上昇し親しみやすい「街の法律家」としての地位を確立しているのも事実なのです。
一定の需要が存在する
行政書士の仕事は「誰でもできる」と言われます。
確かに、役所へ提出する書類の作成や事務代行のため、やろうと思えば誰でもできるのは事実です。しかしそれは行政書士でなくても簡単に出来るということでは全くありません。
役所へ提出する書類を作成するのはとても手間や時間がかかる煩雑なものとなっています。また、もし書類に不備があり役所から再提出を求められたりもするので、普通の人がやろうとすると想像を遥かに超える労力がかかるでしょう。
行政書士は、民法・行政法に関する基礎知識や行政制度に関する深い理解を持っています。
つまり専門性の高い資格であり、公文書の作成に関してはプロフェッショナルであるため、難しい申請に関しては常に一定の需要があるのです。
行政書士として独立・開業するにあたって
行政書士として経験もないままいきなり開業・独立してしまうと、右も左も分からないまますぐに廃業してしまうケースが多いです。
独立開業を目指すためには、まずは他の事務所に勤務して経験を積むのが良いでしょう。
先輩や、経験者の方からいろいろとレクチャーしてもらい、少しずつ経験値を高めていくのが基本的なキャリアの作り方です。
こちらでは、行政書士として事務所運営を軌道に乗せるために必要な最低限のことをお伝えしていきます。
実務経験を得るための人脈づくり
実務能力がないと行政書士として食っていくのは極めて困難です。他の既に開業している行政書士にすぐに淘汰されてしまう能力主義の世界であることを頭に入れておきましょう。
実務経験がないまま資格を取ってすぐに独立してしまうと、運良く案件を受注できても仕事の流れが当然わからないですよね。
やったことがないため、どのように手を付けて良いかわからず、放置したために懲戒処分を受ける事例が実際に多くあります。
そのため、最初の内は能力があり信用できる先輩に仕事を教えてもらいのが得策です。
ビジネスマナーや書類の書き方と顧客との対応、事務所経営のやり方に至るまで、まずは実務経験を積んでいくことが大切です。
とにかく数年は耐え続ける
開業しても半年くらい仕事が入ってこないことはザラにあります。
そのため事務所を軌道に乗せるためには、開業前にしっかりと資金を準備しておくことも大切です。
顧客が獲得できないとなかなかやりがいがなく、モチベーションの維持も難しいですが、「とにかく数年は頑張って事務所を開く」という覚悟が必要になります。
長く続けてある程度業歴を積み重ね、得意の取引先や他の士業の方との人脈を作ることが大切です。
それにより安定的に仕事の案件を獲得することができるようになっていき、引いては事業利益の拡大につながります。
ポスティングやPPC広告が重要
顧客の獲得や拡大をする上で、営業活動は欠かせません。
行政書士が安定的に仕事を獲得する具体的な営業方法として異業種交流会に出かけて人脈を作ったり、支部の総会に出て先輩行政書士とのつてを作ることが挙げられます。
また、チラシを作ってポスティングを行ったり、GoogleやYahoo!などWeb広告を出すことなどの努力が必要になるのです。
とにかく多くの人目に付くようにし、興味関心を引くことが大切になります。
行政書士の独立についてより詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
行政書士で高収入を得るためには?
無事に開業し、事務所の運営を軌道に乗せることができたら、次のステップとして高収入を狙っていく人が多いです。
そのために必要なことは「顧客獲得のための努力」を怠らないことです。
顧客獲得のために出来ることとしては、大きく「営業と集客」「差別化戦略」の2つが挙げられます。
仕事の取り方が最重要
当然ですが、「資格を取得」するだけでは仕事は舞い込んできません。集客にはその人の信頼や人脈、実績などがかかわってくることは容易に想像がつくでしょう。
ところが行政書士資格を取って開業しても「イマイチ儲からない」と思っている人は、「資格を取れば仕事が降ってくる」と勘違いしている人が多いのが実情です。
行政書士よりも遥かに難しく、また稼げる印象がある超難関国家資格の代表である弁護士ですら、年収100万円以下が2割に上るという調査結果もあります。
つまり、弁護士や行政書士に限らずあらゆる士業では資格を取った後も顧客獲得のための努力をしていかないと稼ぐことが出来ないのです。
よって、資格はあくまでも仕事で活躍するための土台に過ぎず、そこからの活躍は資格取得後の頑張りによって大きく左右されてしまうのです。
試験に合格することは素晴らしいですが、開業の際はその後の展望や事業を進めるイメージを持ちながら人脈を広げていくことを意識しましょう。
営業力と集客力がものをいう
開業するとすべての事務や営業活動を一人で行う必要があるので、これまでのように会社の看板を借りて事業を行うことはできなくなります。
行政書士としてサラリーマン以上に稼いでいくためには、より一層地道な営業に力を入れて行うことが重要になります。
これまでの社会人生活で会った人や、名刺を交わした人の数だけ仕事の窓口は増えていきます。
日ごろから人との接点は大切にしておくのが良いでしょう。
思わぬタイミングで思わぬ人から顧客を紹介してもらえ、状況が大きく好転する可能性があります。
加えて、営業だけでは限界があるため24時間365日稼働してくれるインターネットを活用して広告を出したりブログを更新するなど行ったりしてより多くの人目に付くよう工夫を重ねることも大切です。
時には差別化も大事
行政書士として生き残っていくためには、日ごろの業務を丁寧に真摯に取り組むことで、コツコツと信頼を積み重ねていくことが何より大事です。
また、「この分野であればこの人が一番信用できる」「この人でなければ頼みたくない」と思わせるような差別化戦略を取ることも効果的になります。
例えば、「初回相談無料」などサービス面を差別化したり「建設の許可申請専門!」など専門分野を打ち出してみることも良いアイデアでしょう。
また行政書士は行政手続きのプロです。これまでの経験や知識を生かして書類の作成に加えて、企業が不安に思っていたり問題に感じていることの解決策を提案するコンサルタントのような仕事を請け負うのも一つの差別化になります。
顧客の強いニーズを感じ取り、それに特化した業務を行うことは行政書士として生き残るうえでは重要な戦略であるといえるのです。
ダブルライセンスで広がる将来性
差別化戦略の一環として、近年では行政書士資格に加えてさらに別の資格を取得する「ダブルライセンス」が増えてきています。
これにより、より豊富な知識を得ることができ、自身の市場価値を高め営業活動の幅が広がります。
宅建士と行政書士
宅建士は、宅地や建物に関する専門家です。
宅建士には独占業務があり、不動産売買の際の重要事項の説明や契約書の記名押印がそれにあたります。
つまり、ダブルライセンスにより建物や土地に関しての売買取引から契約書類、申請書類の作成まで一貫して行うことができるようになるため、不動産業界では一層活躍できることが見込まれます。
「あの行政書士は不動産に関する知識も豊富」というイメージを持ってもらえれば、さらに顧客を紹介してもらえる可能性が高まるなど、様々なメリットが期待できます。
宅建士の詳細な情報は以下の記事を詳しく見てください。
司法書士と行政書士
不動産売買の際の登記などを行ってくれるのが司法書士です。
司法書士は、行政書士よりもかなり難しい国家資格です。しかし、取得することができれば相続問題で重要になる不動産の移転登記に関する書類を扱えるようになるメリットがあります。
実際、相続に関する手続きを行政書士に依頼するケースは多くあるため、司法書士を取得出た場合、ほかの行政書士と決定的な差別化がでいるでしょう。
司法書士の詳細な情報は以下の記事を詳しく見てください。
FPと行政書士
FPは、家計相談や投資に関する助言などを主として行います。
FPは取得難易度が高くないので、行政書士とのダブルライセンスは比較的容易に可能です。
FPの知識を行政書士のものと併せて用いることで顧客の人生設計や資金計画等についてのアドバイスもできるようになり、包括的なコンサルタント業務が行えるようになります。
またFPも行政書士と同じく認知度が高い資格なので、顧客からの信頼度も上がり、業績のアップにつながることが見込まれます。
FPの詳細な情報は以下の記事を詳しく見てください。
行政書士の難易度は?
これまで、行政書士の仕事内容や開業後の仕事の取り方のコツなどを述べてきましたが、行政書士資格の難易度はどれくらいなのでしょうか?
合格率と合格基準
行政書士のここ数年の合格率は、おおむね10%程度で推移しています。
社会保険労務士よりもやや簡単で、宅建士よりも難しい、というイメージですね。
受検資格が特に設けられていないため、年齢、学歴、国籍等に関係なく、誰でも受験できます。そのため毎年4万人近くが受験する人気資格となっています。
これは宅建士にも共通して言えることですが、誰でもできる試験のため本気で受ける気が無く、あるいは圧倒的に勉強不足の人がいるため合格率が低い、ということが言えます。
なお、合格基準としては
- 法令等科目の得点122点以上
- 一般知識等科目の得点24点以上
- 全体の得点180点以上
の3つが必要となり、他の難関国家資格と異なり、基本的には絶対評価の試験となります。
よって、基準が明確であり、この点数を目指して勉強に邁進していくとよいでしょう。
行政書士の難易度については下記のサイトも併せてご覧下さい。
決して簡単ではないが目指す価値はある
合格率を見るとかなり難易度が高い印象を受けますが、行政書士はこつこつ真面目に勉強に取り組めば一発合格も目指せる資格です。
社会的な信頼度も高く、自分の力だけで稼いでいく力を手に入れられる非常に魅力的な資格なので、目指す価値は十分にあると言えるでしょう。
特に人生百年時代と言われる現在では、独立という定年を気にしない働き方が出来るのは素敵ですね。
「法律の勉強をしたことがなくて不安・・・」という人は通信講座の受講もおすすめです。
通信講座であれば通学制の予備校と比べてかなり安く受講できる上に、合格までのサポートも極めて充実しています。
以下ページでは行政書士の通信講座を紹介しているので、これから行政書士にチャレンジされる方は是非チェックしてみてください。
行政書士の需要・仕事に関するまとめ
行政書士に仕事はあるのかまとめ
- うまく差別化することで、食っていくことは十分に可能
- 営業や広告活動の努力を怠らなければ順調に稼げるようになる
- 人脈や営業力を生かせればより多くの仕事を受注できる
- 決して簡単ではないが法律系資格の中では比較的取得しやすく、努力して勉強する価値は十分にある
行政書士は身近な分野を取り扱う分、やりがいもある仕事です。
ネットにある「行政書士は稼げず、仕事がない」旨の記事を見て取得を見送るのは、とてももったいないことです。
取得することで自身の社会的な信用も上がりますので、少しでも興味をお持ちであれば挑戦してみることを強くオススメします!