宅建試験が簡単って本当?簡単といわれる真相を理由とともに徹底解説!
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宅建士
関口秀人
「宅建士試験は簡単って聞くけどホント?」
宅建試験について調べていると「宅建は簡単すぎる」といった声や「1ヶ月でも合格できる」といった意見が散見されますが、実際のところはどうなのでしょうか。
ここでは宅建が簡単と言われる理由とその真偽について、最近の試験傾向も含めて徹底考察していきます。
この記事を読めば、宅建試験に対する誤解はきっと無くなるはずです!
宅建が簡単と言われる理由についてざっくり説明すると
- 宅建は簡単に合格できる試験ではない
- 宅建が簡単と言われるのには理由がある
- 宅建試験はさらに難化傾向にある
宅建は簡単なのか
不動産取引のプロである、宅地建物取引士(宅建士)になるための試験を、宅建試験といいます。毎年約20万人が受験するともいわれている最も人気の国家資格の1つです。
宅建に合格すると、不動産業界だけでなく、金融、建設、住宅メーカーなど幅広い業種で資格を役立てることができ、宅建士への需要は高まっています。
さて、そんな宅建試験ですが、一発合格したという人もチラホラみられ一部では簡単な試験だと言われています。
以下は直近10年の宅建試験の合格率と合格基準点の推移です。
年度 | 合格率 | 合格基準点(一般受験者) |
---|---|---|
平成26年度 | 17.5% | 32点 |
平成27年度 | 15.4% | 31点 |
平成28年度 | 15.4% | 35点 |
平成29年度 | 15.6% | 35点 |
平成30年度 | 15.6% | 37点 |
平成31年度 | 17.0% | 35点 |
令和2年度(10月) | 17.6% | 38点 |
令和2年度(12月) | 13.1% | 36点 |
令和3年度(10月) | 17.9% | 34点 |
令和3年度(12月) | 15.6% | 34点 |
令和4年度 | 17.0% | 36点 |
令和5年度 | 17.2% | 36点 |
出典:不動産適正取引推進機構「試験実施概況(過去10年間)」
試験の合格率を見てみても、毎年受験生の8割以上が落ちていることが分かります。感じ方に個人差はあれど、この数字を見てみると簡単だと言うのは少々不適切であるように感じます。
それでは、なぜ宅建試験は簡単という声が目立つのでしょうか。
宅建が簡単と言われる理由
宅建が簡単と言われるのには、いくつか理由があります。
ここではその理由をそれぞれ見ながら、難易度の実態に迫っていきましょう。
他の国家資格と比べると難易度が低い
宅建の合格に必要な勉強時間と他の国家資格の勉強時間についてみていきます。
資格 | 勉強時間 |
---|---|
公認会計士 | 3000時間以上 |
税理士 | 3000時間以上 |
司法書士 | 3000時間 |
不動産鑑定士 | 2000時間 |
中小企業診断士 | 1000時間 |
社会保険労務士 | 1000時間 |
宅建士 | 約300時間 |
宅建士になるために必要な勉強時間が他の国家資格よりも少ないことは、表のように明らかです。
このように他の国家資格に比べて難易度が低いことが、宅建が簡単だという印象を与える大きな要因となっています。
受験資格が存在しない
宅建試験の受験資格については、年齢や性別、学歴などに関係なく誰でも受験することができます。
国家資格には受験資格があることが多いですが、宅建には受験資格の制限がありません。誰でもチャレンジ可能という面では受験ハードルが低いといえます。
不動産業界の人には有利な試験
不動産業界に長年勤めてきた人であれば、仕事を通じて不動産関連の用語にも慣れているでしょうし、一般の受験生よりも短い勉強時間でも合格可能です。
不動産関連の専門的な法律用語が基礎知識の段階で多く登場するため、事前知識の有無によって知識習得のスピードが大きく異なるのです。
ただし、そうでない人にとっても初めて学ぶことも多いので、決して簡単ではありません。
合格者の声の方が目につきやすい
ブログやネット上では1年かけて合格したという意見よりも、「一発合格」や「2週間で合格」などといった記事の方が、多くの人の注目・関心を集めます。
その需要を反映して検索結果にはそうした記事が多く目につくというカラクリです。
ただし、そういった情報の真偽は発信者にしか分かりません。仮に本当に1ヶ月足らずで合格した方の発した情報であったとしても、実際にはそういった人たちは全体の極一部に過ぎないということは忘れてはなりません。
昔の試験の簡単なイメージが残っている
「昔の宅建試験は簡単だった」というのが一般的な見解であり、この通説が現在でも残っていることが試験が簡単だと言われる理由の一つとなります。
宅建試験の合格率は1958年の最初の試験から1983年までは60%以上でした。しかし、その後はだんだん低くなり1994年には20%以下になり、今は15%くらいで安定しています。
そのため、現在の宅建士試験はきちんと学習を積み上げて8割近い点数を獲得しないと合格が難しい試験となっています。
しっかり勉強しなければ受からない
宅建の合格率や必要な勉強時間などを根拠とすれば、確かに宅建は国家試験の中では難易度の低い部類だといえます。
しかし、これはあくまで他の国家資格との相対評価に過ぎず、試験勉強を怠れば本番では全く通用しないでしょう。
また、一度不合格になると次にチャレンジできるのは1年後になってしまいます。比較的取得しやすいからこそ、十分に勉強を積んで、確実に一発合格を狙うという方が得策です。
今後の宅建試験は難しくなる?
宅建の受験者数は近年増加傾向にあります。
以下は直近10年間の宅建試験受験者数の推移です。
年度 | 宅建試験の受験者数 |
---|---|
平成26年度 | 192,029人 |
平成27年度 | 194,926人 |
平成28年度 | 198,463人 |
平成29年度 | 209,354人 |
平成30年度 | 213,993人 |
平成31年度 | 220,694人 |
令和2年度 | 204,250人 |
令和3年度 | 234,714人 |
令和4年度 | 226,048人 |
令和5年度 | 233,276人 |
表を見てわかるように、ここ6年間で受験者数は増え続けています。
また、宅建試験では毎年ほぼ一定数の合格者数を出していることも見逃せません。つまり、受験者数が増えれば合格率は今よりも下がりやすくなると予想されます。
更に、平成26年には宅建が宅地建物取引主任者から、宅地建物取引士へと名称を変更し、税理士や公認会計士といった士業の仲間入りを果たしました。
このように宅建が士業化してより有資格者の責任が増したことも、難易度の上昇に関係していると言われています。
この傾向は今後もしばらくは継続すると予想され、「宅建は簡単」という言葉はますます現実味のないものとなっていくでしょう。
宅建が簡単と言われる理由まとめ
宅建が簡単と言われる理由まとめ
- 宅建の合格率は約15%で簡単には受からない試験である。
- 宅建が他の国家資格と比較して難易度が低いことが、簡単と言われる理由の一つである。
- 受験生が増加傾向にあることなどを理由に、今後は合格率が下がり試験の難易度が上がる可能性がある。
宅建が簡単と言われる理由について、様々な角度から詳しく考察してきました。
他の国家資格と比べれば難易度は低いかも知れませんが、宅建は受験生も多く、簡単に合格できる試験ではありません。
合格に向けてしっかりと対策をして試験に臨まれることをおすすめします。