司法書士試験の受験者数が減少している理由は?原因や今後の行末を徹底考察!
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「司法書士試験ってどれくらい受けるの?」
「受験者数が減っているって本当?」
司法書士試験を受験する際にこのようなことを思った人もいるのではないでしょうか。
司法書士は日本国内で法律の専門家である事を示す資格として、弁護士と双璧を成す存在と言っても過言ではありません。
また、難関資格としても知られており、一度取得してしまえば安定した地位と収入が手に入るというイメージも強いでしょう。
ところが、そんな司法書士試験の受験者数は年々減少しているというのが現状なのです。今回は司法書士試験の受験者数が減少している理由について考察していきましょう。
この記事を読んで司法書士試験の現状についてしっかり押さえていきましょう。
司法書士試験の受験者数についてザックリ説明すると
- 受験者数は現在減少している
- このままだと法律の専門家が極端に少なくなる「司法過疎」になる可能性も
- 需要はあるため司法書士試験を受けるには絶好のタイミング
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司法書士の受験者数は減少傾向
まずは、司法書士の出願者数の過去10年分の推移をグラフで見てみましょう。
出典:法務省司法書士試験
公式発表によると司法書士試験の受験者数が最も多かったのは平成22年度で、3万3166人もの人が司法書士試験に出願していました。
しかしこの年をピークに翌年の平成23年度は3万1288人、平成24年度には3万台を割って2万9379人になるなど徐々に減少していく事になります。
令和2度の試験では出願者数が1万4331人まで落ち込み、ピークだった平成22年度の半分以下となりました。
コロナ禍の回復もあり、令和4年度には少し回復しましたが、それでも全体として出願者数が減少傾向であることに変わりはありません。
実際の受験者数も平成22年度の2万6958人がピークでしたが、令和2年度には1万1494人まで減少しています。
司法書士試験の受験者数はピークの平成22年度から減少が止まらず、今後も減少し続けるのではないかという懸念の声が上がっているのです。
司法書士の受験者数が減少している理由について
司法書士試験の受験者数が減少している原因は1つだけでなく、いくつもの理由が複合的に重なった結果だとされています。
ここでは受験者数減少に繋がっていると考えられる理由をそれぞれ見てみましょう。
ネガティブな情報が多い
司法書士試験は難易度が高く、勉強していれば必ず合格出来るという類の資格ではありません。
血の滲むような努力を重ねて初めて合格を手に出来ると言えるでしょう。それ故、司法書士という仕事に興味を持っている人は試験を取り巻く情報に敏感になっています。
しかし、司法書士試験に関わる情報・報道にはネガティブなものが多いというのが現状になります。
例えば、「司法書士は資格を取得しても独立開業が難しい」「司法書士は年収が少ない」といった情報が飛び交う事があります。
確かに司法書士として生計を立てるには資格を取得するだけでなく、実務経験が重要です。
しかし、こうした極端にネガティブな情報があたかも司法書士全体の実情であるかのように報道されてしまうため、将来性に不安を感じた人達が司法書士への道を諦めてしまうとかんがえられます。
少子化が進んでいる
日本の社会問題として知られる少子化ですが、これも司法書士試験の受験者数減少に影響を及ぼしていると考えられています。
令和4年度司法書士試験の合格者は20代が16%、30代が31%となっており比較的若い層がほぼ半分を占める結果となりました。
少子化によって若年層の司法書士志望者が減少する事は、試験の受験者数減少に直結すると言えるでしょう。また、司法書士を志す若者は大学の法学部やロースクールへ入学する傾向が強いです。
少子化によって大学入学者が減少すれば司法書士試験の受験者数が減少するのも、また自然な流れとなります。
奨学金の返済で困っている
司法書士試験において特に若い世代の障害となっているのが「経済的事情」とも言われています。
大学や専門学校へ通う学生には学費を奨学金で賄っている人も少なくありません。
奨学金の返済がどの程度の負担になるかは個人差がありますが、特に卒業直後であまり多くの収入が望めないうちはそれなりに経済的な負担となるでしょう。
こうした状況下では司法書士試験のために講座を受講したりする費用の捻出が難しいというケースも多く、受験を断念しているのです。
安定した収入を求めている
社会的な風潮から言えば、景気の変動によって「大きく稼ぐ」事よりも「安定して収入を得る」という事に重点を置く人が増えたことも原因の1つに挙げられます。
司法書士はまず資格を取るために狭き門をくぐる必要があり、そこから事務所に所属して実務経験を積んで仕事を増やしていくというキャリアが一般的です。
世間的に司法書士は収入が安定するまで時間がかかるというイメージが強いと言えるでしょう。こうしたイメージには、先に述べたネガティブな情報が出回っているという点も看過出来ません。
司法書士として独立を目指すよりも、公務員になった方が安定した収入が得られて安心出来ると考える人が多いのです。
企業求人が増加している
景気が司法書士試験の受験者数減少に関わっている点としてはもう一つ「企業求人の増加」という事が挙げられます。
景気が安定してくると企業が人を雇う余裕が生まれるというのが一般的です。雇用機会が増えると職種を選ばなければ比較的容易に就職出来るようになり失業率が低下します。
こうした環境では、わざわざ難関資格に合格して就職、独立開業するよりも、一般企業に就職して安定した給与をもらう方が得策だと考える人が多くなるのです。
また、資格を取得してスキルアップを図ろうという志向の人も減少する傾向にあります。特に司法書士をはじめとする難関資格は、取得するまでの労力と将来性のイメージを考慮して敬遠されがちなのです。
日本司法書士会連合会は危機感を持っている
平成22年度以降続いている司法書士試験の受験者数減少を受けて、日本司法書士会連合会は危機感を持っています。
日本司法書士会連合会とは、司法書士法第62条第1項に基づいてつくられた特別民間法人です。
司法書士となった人は日本司法書士会連合会の会員として登録する事が義務付けられているので覚えておきましょう。
このまま司法書士試験の受験者数が減少し続ければ、将来的に法律の専門家が極端に少ない地域が生じる「司法過疎」という現象が起きると言われています。
このような状況を避けるため、日本司法書士会連合会ではほぼ全国の簡易裁判所にまんべんなく司法書士を配置するなど「司法アクセスの充実」という方針を打ち出しているのです。
ただし、根本的に司法書士試験の受験者数減少を食い止める明確な取り組みは行われていないため、どのような対策を講じるか今後に注目が集まっています。
受験者が減少している司法書士試験に挑むべき理由
受験者数減少が続く司法書士試験ですが、人気がなくなっているからと言って避けてしまう必要はありません。
受験者数が減少しているからこそ、司法書士試験に挑戦する好機であるとも言えるのです。
ここではその理由をいくつか取り上げたいと思います。
合格率が年々上がっている
受験者数こそ年々減少しているものの、実は司法書士試験の合格率は上昇傾向にあります。
法務省によると、出願数のピークだった平成22年度の合格率が3.52%だったのに対して令和3年度では 5.1%、令和4年度には5.2%まで上昇しているのです。
こうした合格率上昇の原因を断定する事は難しいですが、一説には「最低限の司法書士を確保するため」であるとも言われています。
司法書士の数は首都圏を中心に不足しているとされているため、少ない受験者数の中から少しでも司法書士として活躍出来る人材を確保する必要があるのです。
こうした状況はまだまだ続くと見られており、難関資格である司法書士試験の合格率が上がるという事は資格取得のチャンスと言えるでしょう。
廃業者数が増えている
司法書士の数が不足している原因として、廃業者の増加という事情も挙げられます。
司法書士の廃業者数が増え始めたのは平成16年頃からと言われており、平成28年の司法書士廃業者数は482名となっているのです。
廃業者数が増加している原因は「仕事が無いから」ではなく、「仕事を取って来られないから」とされています。
法律に関する悩み相談件数は極端に増減しておらず、法律家が市民から必要とされているというのは事実です。
それでも依頼を取れない原因には、司法書士事務所としての営業力不足という事が指摘されています。
「法律問題の解決能力」と「事務所の経営・営業能力」はまた別物であり、優れた司法書士が優れた経営者であるとは限らないのです。
廃業者は増えても需要は減少していないため、このタイミングで司法書士になればライバルが少ない環境で活動出来ると言えるでしょう。
司法書士として独立開業するのは簡単ではありませんが、この機会に挑戦してみる価値は十分あります。
受験者数が減少していても司法書士の需要はある
司法書士試験受験者まとめ
- 受験者数は平成22年度を機に半分まで減少
- 減少理由として多くのネガティブな情報や少子化が挙げられる
- 合格率は年々上昇してきているので受験がおすすめ
ここまで司法書士試験の受験者数減少の現状とその理由について解説してきました。
司法書士は市民が抱える法律の悩みを解決するという重要な役割を担っているため、試験の受験者数が減少しようとも世間からの需要は今後も高い水準を保つと見て良いでしょう。
試験の合格率が上昇している事や廃業者が増えている事を考えれば、この環境は司法書士として活躍するチャンスと言えるのです。
この記事を読んで、司法書士という仕事を将来の選択肢に含めてみてはいかがでしょうか。