働きながら司法書士を目指すのは無理?メリット・デメリットや勉強法を紹介
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「司法書士の資格が欲しいけど、働きながら目指すのは無謀かもしれない…」
そんな疑問をお持ちの方もいらっしゃるかと思います。
スキルアップなどを目的として国家資格取得を目指す人は多いです。そして、数ある国家資格のなかでも難関といわれているのが「司法書士試験」です。
社会人が働きながら司法書士を目指すことは、現実的に可能なのでしょうか。
この記事では、社会人として働きながら司法書士を目指すメリットやデメリット、また具体的な学習法・勉強法について紹介します!
働きながら司法書士を目指す際のポイント
- 司法書士試験には受験資格がないので、誰でも受けることは可能
- 司法書士は極めて難易度の高い試験だが、合格者の大半が働きながら勉強した社会人の方である
- 専門学校や資格スクールを用いて勉強するのが一般的
- 合格のためには強い動機とストレスへの対処が大切
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働きながら司法書士を目指すには?
司法書士になるためには、どのようなことが必要になるのでしょうか。司法書士の基本的な知識とあわせて、詳しい内容をチェックしていきましょう。
そもそも司法書士とは
司法書士は、簡単にまとめると仕事を通じて人々の財産・権利などを守り、暮らしに関する「法的問題を解決する」仕事です。人々の生活と密に関わりを持つ職種といえます。
主な業務としては、依頼を受けて法務局・裁判所・検察庁などへの提出書類を作成することが挙げられます。それに加えて、他人の代理として登記手続きを行うなど、法律に関連した業務がメインです。
また、法務大臣の認定を受けた「認定司法書士」は、簡易裁判所が管轄する140万円以下の民事事件について、本人の代理になることも可能です。
法律を専門に扱う仕事には、司法書士のほかにも「行政書士」「税理士」などが挙げられます。ただし、これらの職種はそれぞれ扱える業務の範囲が異なるため、きちんと違いを理解しておくのが肝心といえるでしょう。
弁護士は内容に関係なく、基本的にあらゆる法律の相談・手続きを行えるのが特徴です。司法書士の業務範囲を超える事件には弁護士を紹介したり、事件を引き継いだりするケースもあります。
司法書士になるためには
司法書士になるためには、法務省が1年に1度実施する「司法書士試験」を受験し、それに合格する必要があります。
なお、司法書士試験には学歴などの受験資格は特に設けられていません。そのため、年齢・性別・国籍などに関係なく、希望者は誰でも受験できます。
司法書士試験を受験するには、例年4月ごろから配布される「受験申請書」を入手する必要があります。そこに、受験料として「8000円分の印紙」と「自分の顔写真」を貼り付けて応募するという仕組みです。
出願期間は5月、筆記試験は例年7月に行われています。そして、試験に合格した人だけが10月に行われる口述試験を受けられるのです。
11月には最終合格者が発表され、合格者には司法書士の資格を手に入れることができます。
司法書士の試験範囲
司法書士試験は大きく「筆記試験」と「口述試験」の2つに分かれています。筆記試験は午前と午後の二部制になっており、出題されるのは11科目です。
午前の部は「憲法」「民法」、「刑法」「商法」という科目です。午後の部は「不動産登記法」「商業登記法」「供託法・司法書士法」、「民事訴訟法・民事執行法・民事保全法」「不動産登記法記述式」「商業登記法記述式」の科目となります。
このうち、「民法」「商法」、「不動産登記法」「商業登記法」の4つは「主要4科目」と呼ばれており、全出題数の約8割を占めます。
そのため、司法書士試験を受ける際は、この4つの科目についてきちんと学習しておくのが肝心です。
一方、口述試験は受験に対する本人確認と、司法書士に必要なコミュニケーション能力を確認するためのものです。
口述試験については落ちる心配はそこまでありませんが、きちんと受け答えができるように対策をしておく必要はあるでしょう。
働きながら司法書士を目指す人は多いの?
社会人の場合、問題となるのが「働きながら司法書士を目指せるのか」という点です。
司法書士試験は国家試験のなかでも非常に難しいといわれています。ただ、不況における司法書士の需要や、ほかの仕事にも生かせる将来性の高さなどから、不動の人気を誇る資格の一つです。
20代で司法書士試験を受験する人は減少傾向にあり、令和4年度における司法書士試験の合格者の平均年齢は「40.65歳」で、全体の7割を30・40代が占めています。
受験資格を問われないこともあり、現役の学生だけではなく社会人も多く受験しているのが、司法書士試験の特徴です。
よって、働きながらでも合格している人がかなり多い試験であるといえるでしょう。
働きながら司法書士を目指すメリット・デメリット
仕事をしていて1日のすべてを学習に費やせない社会人が、働きながら司法書士を目指す場合、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
それぞれについて、詳しくチェックしていきましょう。
メリット
働きながら司法書士を目指すメリットには、以下のようなものが挙げられます。まずは「社会人経験を生かせる」ことです。
司法書士は試験合格後、すぐに実務を行えます。実務では即戦力を求められることも多く、社会人に必要なビジネスマナーやスキルを覚えられる期間は少ないのが一般的です。
そのため転職まで間を置かず、今までに培ってきた社会人経験をすぐに司法書士の業務に生かすことができます。
それに加えて、学習した知識を「現職や日常生活などで役立てられる」のもメリットの1つです。
司法書士の勉強をすることで、身近な法律についての知識が身に付きます。その知識を現職や日常生活のなかで生かせる場合があるのです。
また、司法書士に必要なのは「社会生活と密着した法律の知識」のため、身に付いた社会経験と常識を学習に生かせるでしょう。
さらに、働きながら司法書士を目指す場合、「精神的な余裕を持てる」のも大きなメリットとして挙げられます。
司法書士の学習をするとなると、学校に通ったり学習に用いる参考書を購入したりするなど、何かとお金がかかるものです。
働いていない場合、このような金銭的な負担が大きく、精神的な余裕がなくなってしまう場合があるため注意が必要です。
働きながら学習を行う場合、経済的な余裕に加えて、試験に失敗しても「無職にはならない」という安心感があります。
加えて、働きながらの勉強は「効率的な時間管理と自己管理スキルの向上」にも繋がります。
社会人として働く中で、限られた時間の中で学習を行うためには、高度な時間管理と自己管理が求められます。それは仕事と並行して学習を進めることで自然と身につくスキルであり、これらは司法書士として活動する上でも有用なスキルとなります。
さらに、自己管理能力の向上は、将来的に独立して事務所を開設する場合などにも役立ちます。自分自身の時間を効率的に管理できる能力は、事業運営においても極めて重要な要素となります。
ですので、働きながら司法書士を目指すことには、単に合格を目指すだけでなく、その後の活動にも多大な利点があると言えます。
デメリット
学習時間の確保が難しい
働きながら司法書士を目指すデメリットは、「学習可能な時間が少ない」ということです。
日中働いていると、勉強ができるのは必然的に夜間や休日に限られてしまいます。そのため、どうしても学習時間が少なくなってしまうのです。
人によって異なるものの、司法書士試験合格のために必要な学習時間は「3000時間」程度だとされています。1日に学習できる時間が限られているぶん、合格までの時間がかかりやすいのがデメリットといえるでしょう。
よって、働きながらの勉強はうまく時間を捻出したうえで勉強に取り組まなければいけないといえるでしょう。
継続するのが難しい
二つ目は「学習の継続性の確保」に難しさがあります。社会人として働きつつ試験勉強を進めると、その日の疲れや体調、仕事の状況により学習計画が立てにくい場合があります。また、忙しさから継続的な学習を怠ると、得た知識を忘れてしまったり、理解が浅くなってしまうリスクもあります。
また、働きながらの勉強は、一定のストレスを伴います。仕事と勉強の両方をバランス良くこなすことが求められ、これによるストレスは無視できません。
働きながら司法書士に合格した人の勉強法
働きながら司法書士に合格した人は、どのような方法で勉強をしていたのでしょうか。
実際の勉強方法について、2つのケースを見ていきましょう。
働きながら合格したケース1
1つ目は、会社員として働きながら「1度目の受験で合格した人の勉強法」です。
このケースの場合、まず「勉強時間」の計算をしっかりと行っているのが特徴です。自分の生活のなかでどのくらいの時間を勉強に割けるのか、緻密に計算しています。
また、基礎知識は通信講座の講義を利用してインプットを行い、ある程度の範囲の学習が終わるまでは講義内容の「復習」を徹底的に行うのです。そのうえで、自分で要点をノートにまとめています。
講義でひと通りの内容を学び終えたら、いよいよ過去問を解いていく段階に移ります。
答案練習を始めるまで、過去問でわからない点や曖昧な選択肢をなくすように、テキストやノートでくり返し学習を行うのです。年明けからは答案練習を行い、「書式の問題に慣れる」ことに専念しているのもポイントでしょう。
働きながら合格したケース2
2つ目のケースは、行政書士として司法書士事務所で働きながら「4度目の受験で合格した人の勉強法」です。
このケースの場合、もともと持っていた知識のみで受験した1年目と独学で受験した2年目は、ほとんど回答ができませんでした。
1日の学習時間は3時間しか確保できない状態でしたが、それでも自分なりに効率が良いと思った勉強法を貫き通してしまいました。講師によるサポートもなく、結果的には非効率な勉強法をしていたことになります。
3年目からは択一問題は過去問、書式はひな形が記載してあるテキストと、答案練習で出た書式をくり返し学習しました。
惜しかった3度目の受験の翌年は本番の解答時間を意識して、過去問・答案練習をくり返し、模試も複数受けたとされています。
このように働きながらの勉強では、かなりの年数がかかってやっと合格するというパターンもあり得るのです。
働きながら司法書士を目指すときに注意したいこと
働きながら司法書士を目指すときの注意点には、以下のようなものが挙げられます。
まずは「強い動機を持つ」ことです。
司法書士試験は勉強量も膨大で、学習期間も長期にわたります。何となくの気持ちで勉強を始めると、心が折れてしまう場合があるため注意が必要です。
特に働きながらだと、仕事の疲れと相まってより一層心が折れるリスクが高まるため、気をつけましょう。
さらに、「ストレス解消法を見つけておく」のも重要なポイントになります。
働きながら司法書士試験合格を目指す場合、長期間学習に取り組む必要があり、ストレスがたまる可能性が高いです。ストレスをためすぎないように、適度に息抜きをする方法を見つけておくのが肝心となります。
定期的に運動を行う、好きな音楽を聴くなど、自分なりのストレス解消法を持っておくのがベストです。
司法書士の基本的な勉強の仕方
司法書士を目指すためには、法律の専門知識を勉強する必要があります。具体的にはどのような学習方法があるのか、主な勉強の仕方について見ていきましょう。
大学や短大
司法書士になるための方法の一つに「大学」や「短大」で勉強する方法があります。大学や短大の法学部で、司法書士として必要になる基本的な法律の知識について学ぶことができるのです。
司法書士になるための専門的な知識を学べる大学や短大は、基本的にないとされています。ただし、課外授業や講座などで、司法書士試験の対策が行われているところもあるため、確認してみると良いでしょう。
専門学校
勉強をするために「専門学校」を選ぶ人もいます。
法律について学べる専門学校では、司法書士になるための「専門コース」を設置しているところも多いのです。
司法書士になるための専門的な法律の知識を、少人数のクラスで学べるのが大きな魅力といえます。知識を深めることができ、効率的に勉強を行えるでしょう。
なお、専門学校によって、コースの種類やカリキュラムは大きく異なります。全日コースは最短で1年のケースもありますが、一般的には入学から卒業まで「2年間」程度かかることが多いです。
専門学校によっては、卒業後に提携している大学の法学部に、3年次編入できるところもあります。
また、全日コース以外にも、夜間・休日コースを設置している専門学校も多くみられます。
このコースの場合、主に夜間や休日などに授業が行われるため、社会人としての仕事と勉強の両立を果たせるのがメリットです。
また、各種奨学金制度を利用できる学校も多いため、気になる人は調べてみるのがおすすめです。
資格スクール
大学・短大・専門学校以外にも、「資格スクール」で勉強をするのも一案です。
資格スクールとは、その名の通り資格合格を目標として、勉強するための学校を指します。予備校や通信講座という呼び方の方が聴き慣れているでしょう。
資格スクールといっても、実際に学校に通って授業を受けるスクールもあれば、通信教育やインターネット授業といった在宅で学習できるスクールなど、種類はさまざまです。
自分のライフスタイルに合うスクールを選ぶことで、無理なく学習を進められます。
また、初級や上級というように、難易度ごとにコース分けされているケースが多くみられます。知識量や学習の進み具合に合うコースを選び、自分のペースでしっかりと勉強を行えるため安心です。
独学
司法書士の勉強は、必ずしも学校や資格スクールなどに通わなければならないというわけではありません。
司法書士に関する本を書店で購入して、「独学」での学習も行えます。ただし、独学の場合は資格取得が難しいという意見が一般的なので、注意が必要となります。
独学での試験合格者は、全体の合格者の「約10%」という厳しい調査結果もあります。つまり、合格者のほとんどは専門学校や資格スクールの修了・卒業者ということになるのです。
独学の場合、何よりも「根気」が必要となります。テキスト選びから試験対策まで、すべて自分で行う必要があることを、しっかりと頭に入れておく必要があります。根気強く時間をかけて、学習を進めていくのが肝心です。
受験の長期化を避けたい人にとっては正直おすすめできない勉強法です。
司法書士に合格した後の道すじって?
司法書士試験に合格したあとは、基本的に「司法書士法」によって定められた研修を受ける義務があります。
この研修は司法書士事務所に就職したあと、働きながら受けることも可能です。
司法書士事務所で働いたあと、1年程度で違う事務所に転職する人も多くみられます。これは、取り扱う業務が事務所によって異なり、「さまざまな仕事を経験するため」などの理由によるものです。
ある程度実務経験を積んだら、自分で司法書士事務所を開業するケースがほとんどだといわれています。
ただし開業の方法は多岐にわたり、事務所を借りて開業するケース、自宅で開業するケース、ほかの司法書士との合同・共同で事務所を開業するケースなど、人によってさまざまです。
自分に合った学習方法で働きながら司法書士を目指そう!
働きながら司法書士は目指せるのかまとめ
- 司法書士合格者の平均年齢はおおよそ40歳であり、働きながらでも合格できることは立証されている
- 講義などでインプットを終えたら過去問演習や答練をしっかりと行う
- 資格取得後は研修を受け、独立開業する人が多い
司法書士試験自体が非常に難しいなか、社会人として働きながら試験勉強をするのは、決して簡単なことではありません。
しかし、司法書士試験に合格した人の約半数以上が30代以降というデータもあります。社会人として経験を積んだうえで、司法書士として活躍している人は数多くいるのです。
自分に合った学習方法を見つけて、働きながら無理なく司法書士を目指しましょう。