電気主任技術者と電気工事士の違いは?資格の特徴から仕事内容・試験の難易度まで解説
「電気主任技術者と電気工事士にはどんな違いがあるの?」
「電気主任技術者と電気工事士、取得するならどっちの方がメリット多いの?」
このような疑問を持っている人は多いのではないでしょうか。
それぞれ名前が似ているので、電気関連の資格を目指している人はどんな違いやメリットがあるのか気になりますよね。
そこでこの記事では電気主任技術者と電気工事士の違いを具体的に説明していきます。また、試験の違いや難易度、資格の需要、取得者の年収など誰もが気になる部分も紹介していきます。
この記事を読んで自信を持って大きな1歩を踏み出せるようになりましょう。
電気主任技術者と電気工事士の違いについてざっくり説明すると
- 電気主任技術者と電気工事士は名前が似ているが仕事内容は全然違う
- 試験の難易度も全然違う
- ただし、どちらも需要が多い資格である
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電気主任技術者と電気工事士の違い
「電気主任技術者と電気工事士って実は同じものじゃないの?」
このように感じている人は多いのではないでしょうか。電気主任技術者と電気工事士は同じ電気関連の資格でかつ名前も似ているので、同じようにとらえている人が多いです。
しかし、仕事内容や資格の区分など、様々な点で異なります。ここでは具体的にどんな違いがあるのか説明していきます。
役割や仕事内容が異なる
・電気主任技術者と電気工事士の役割を簡単にまとめると以下の通りです。
- 電気主任技術者
電気事業法によって定められている資格です。事業用電気工作物の工事や維持、運用の際の保安監督役として選任される役割を持っています。
- 電気工事士
電気工事士法によって定められている資格です。最大500kw未満の電気工作物の電気工事の作業に従事できる役割を持っています。
それぞれ定められている法律が違うので、多くの点で異なってきます。以下で仕事内容に関して説明していきます。
電気主任技術者の仕事内容は様々
電気主任技術者の仕事は現場によって異なりますが、大きく分ければ①電気設備の保安と②管理、③工事の監督の3つです。
ビルや発電所、変電所などの施設に設置されている電気設備に異常がないかを点検し、時には運転操作業務としてコンデンサを操作することもあります。
こうして電気の供給が滞りなく流れるのを維持しているのです。
他にも、監視室の電圧の確認や月次報告書をまとめるような事務作業もあり、多岐にわたるのが電気主任技術者の仕事です。
電気工事士の仕事も施工方法次第
電気工事士はその名の通り電気の工事をするのが仕事で、屋内外の電気設備を設計したり施工したりするのが役割です。
ただし、施工方法によって仕事は多岐にわたり内容は大きく異なります。
例えば、がいし引き工事やバスダクト工事、フロアダクト工事、金属管工事、合成樹脂管工事などがあり、仕事の範囲が広いので担当する職人が変わることもあるくらいです。
さらに、電気工事の付随業務として、電柱の穴掘りやペンキ塗り、セメント補修などもする場合もあります。
つまり、電気の工事だけでなく、電気にまつわるあらゆることを行うのが仕事です。
資格の区分も異なる
名前が似ていて混同してしまいがちな資格ですが、仕事が違い資格の区分も異なります。
例えば、電気主任技術者の資格は第1種から第3種までの3種類が存在していて、それぞれに扱える電気工作物の最大電圧の制限が異なるのです。
種類 | 扱える電気工作物の制限 |
---|---|
第1種 | 制限はなく、すべての電気工作物が対象 |
第2種 | 電圧17万V未満の電気工作物が対象 |
第3種 | 電圧5万V未満の電気工作物が対象 |
電気主任技術者の資格は3つの段階に分けることで、より安全で確実に電気設備の保安・管理が行えるようになっているのです。
一方の電気工事士の資格は第1種と第2種の2種類に分けられていて、それぞれ電気工事ができる設備や施設が異なります。
種類 | 工事ができる規模 |
---|---|
第1種 | 最大500kw未満のビルや工場など |
第2種 | 600V以下の一般住宅や商業施設など |
電気工事士は2つに分けることで、携われる作業範囲を制限し、安全で確実に工事ができるようにしています。
資格取得の方法や試験の違い
「同じ電気のことだけど、電気主任技術者と電気工事士では資格取得方法や試験に違いはあるの?」
どちらの資格にも興味がある人は気になるのではないでしょうか?
ここでは資格の取得方法や試験科目、さらに免除制度などを紹介していきます。特に免除制度は資格取得に大きな影響を与えるので、しっかりと読んでください。
電気主任技術者試験の科目合格制度
電気主任技術者試験(電験)は第1種・第2種と第3種とでは試験が大きく異なります。
- 第1種・第2種
第1種・第2種はマークシート方式で多肢選択方式の1次試験と記述方式の2次試験の2部構成です。
1次試験は「理論」「電力」「機械」「法規」の4つの科目から出題され、すべての科目を合格した人だけ2次試験に進めます。
この4科目の特徴としては科目合格制度があることです。その有効期間は3年間あるのでそれぞれの科目で合格して3年で資格取得するのが一般的な流れです。
また、2次試験は「電力・管理」「機械・制御」の2科目から出題されます。これをパスすれば電気主任技術者の第1種あるいは第2種の資格が得られます。
- 第3種
第3種は第1種・第2種の1次試験に当たる「理論」「電力」「機械」「法規」の4科目の試験に合格することで資格取得ができます。
第3種の試験に関しても科目合格制度があるので、3年内で科目合格を積み重ねて資格取得できます。
電気工事士試験には技能試験が存在する
電気工事士の試験の特徴は、筆記試験と技能試験の2つがあることです。
知識があるだけでは資格を取得できず実際に工作物を作成する能力が求められます。技能試験があることは電験との大きな違いで、ここで苦戦してしまう人が多いのは事実です。
しかし、技能試験に出題される問題は事前に13つ候補が公表されます。そのため、工具や材料をそろえるなどして対策を練ることは十分にできます。
なお、筆記試験に合格した後の実技試験で不合格になった場合、筆記試験に関しては次回の筆記試験に限って免除を受けることが可能です。
もし、実技で不合格になった人はこの点をしっかりと頭に入れて、次回の試験では免除申請をするようにしましょう。
電気主任技術者資格は認定取得可能
電気主任技術者の資格は電験を受けなくてもある一定の条件を満たすことで認定取得が可能です。
例えば、大学で電気工学の科目を取得して卒業した人が、電圧5万V以上の電気工作物の維持や運用などの実務経験が5年以上あれば、第1種電気主任技術者資格の申請することで取得できます。
もちろん、認定の条件は一種・2種・3種でそれぞれ異なりますので、興味がある人は確認してみてください。
なお、第3種で認定を受けるには電圧500Vの電気工作物を扱った実務経験が必要です。そのため、第2種電気工事士の取得を目指す人が多く、ダブルライセンスをするのが一般的でもあります。
電気工事士にも免除制度が存在する
電験では合格科目が免除される制度がありますが、電気工事士にも筆記試験が免除される制度が存在します。
例えば、電気工事士第1種試験なら第1種の筆記試験に合格した人は、技能検定で不合格になっても次の筆記試験は免除され技能試験に合格するだけで資格取得が可能です。
他にも経済産業省が定める学校の電気工学科目を修めて卒業した人も該当します。
特に注目すべきは、種類に関わらず電気主任技術者の資格を持っている人は、第1種・第2種の電気工事士の筆記試験が免除されることです。
このことから第3種電気主任技術者の資格を取得してから第1種電気工事士を目指す人が多いです。
電験と電気工事士の難易度比較
「電気主任技術者と電気工事士の取得方法の違いは分かったけど、難易度にも違いがあるの?」
試験を受ける人はそれぞれの難易度も気になりますよね。そこで、ここではそれぞれの合格率や難易度を紹介していきます。
電気主任技術者の合格率
電験は第3種から第1種まですべての種類で合格率が極めて低く、かなり難しい試験です。
例えば、第1種や第2種は1次試験と2次試験の合格率は5% を下回るのは当たり前の状態で、年度によっては1% 台にまで落ち込むこともあります。
第3種であっても合格率は以下のグラフの通り10% には届きません。仮に初学者が合格しようとすれば、1000時間は勉強時間を設けなければなりません。
つまり、電験は電気関連資格で最難関の試験といえるでしょう。
- 第3種
年度 | 合格率 |
---|---|
令和元年 | 9.3% |
平成30年 | 9.1% |
平成29年 | 8.1% |
平成28年 | 8.5% |
平成27年 | 7.7% |
電気工事士試験の合格率
電気工事士は試験の合格率が高く、比較的取得しやすい資格です。
例えば、第1種の合格率の平均は60% で第2種の合格率の平均は65% と、受験者の半数以上が合格できます。
合格に必要な勉強時間も比較的短く済み、第1種で60~150時間、第2種で50~100時間です。
ただし、電気工事士の試験では技能試験があり、頭で理解しているだけでは合格できない試験です。
実際に工具や材料などをそろえて工作物を作るなど正しい試験対策をするようにしましょう。
電気主任技術者の方が難易度が高い
ここまで説明してきた通り、電気工事士の試験よりも電験の方が圧倒的に難易度が高い試験です。
電気工事士は第1種・第2種ともに合格率が60%台なのに対して、電験はすべての種類で1桁台に抑えられています。
その理由として挙げられるのは、電験では電気に関してかなり本質的な内容が問われるからです。
そのため、合格するためには電気に関して網羅的かつ複眼的、そしてかなり高度な専門的な知識を備えておく必要があるのです。
あいまいな理解の部分があるとなかなか合格できません。このようなことから、電気主任技術者には簡単にはなれないのです。
電気主任技術者と電気工事士の転職事情
「結局、電気主任技術者と電気工事士の資格を取って就職や転職はできるの?」
資格取得を目指している人は、就職や転職事情が気になっているのではないでしょうか。
そこでここでは、それぞれの資格の就職・転職面での特徴を紹介していきます。
電気主任技術者も電気工事士も需要は高い
一言でいって、電気主任技術者と電気工事士の需要はどちらも高いです。
ある求人サイトで求人数を調べると、電気主任技術者の求人数は正社員・契約社員などで10000件以上ありました。また、電気工事士も正社員・契約社員などで30000件弱ありました。
理由としては、電気主任者は取得が難しく人材不足が懸念されるので求人が多い傾向にあります。
一方、電気工事士は取得が容易でかつ受験者も多いので、注目されているので求人が多くなっていると考えられます。
いずれにしても、どちらの資格を取得しても需要はかなりあるといえるでしょう。
若年層であればダブルライセンスを目指そう
若年層の人は時間に余裕があるので電気工事士を目指しつつも、電気主任技術者の勉強もしてダブルライセンスを目指すのがおすすめです。
電気主任技術者と電気工事士には電気理論などそれぞれ試験内容で共通する部分がいくつもあるので、一緒に勉強することは可能です。
特に電気工事士は取得しやすいので、若いうちに短期集中で勉強して取得してしまうのがいいでしょう。
中高年は電験3種から取得しよう
中高年は電験3種の取得を優先して目指すのがおすすめです。
すでに述べた通り電気工事士の求人はいくつもあります。しかし、取得者も多いので若い人が優遇され、中高年者は電気工事士の資格単体では不利になってしまいます。
それを大きくカバーできるのが電験3種です。電気主任技術者は認定取得できるのですでに実務経験がある人は経験を活用し、ない人は3年で4科目の合格を目指しましょう。
電気主任技術者と電気工事士の年収
「電気主任技術者と電気工事士ってそれぞれ年収はどれくらい?」
仕事の需要の次に気になるのは年収という人は多いのではないでしょうか?
そこで、ここからはそれぞれの年収について紹介していきます。
電気主任技術者の年収は500万円程度
電気主任技術者の平均年収は500万円程度です。電験の合格率が1桁で資格取得が難しいことを考えると、かなり低い印象を受けるのではないでしょうか。
日本人の平均年収は平成30年時点で441万円なので、それと比較しても難関試験を突破した割には低いです。
しかし、第2種・第1種の資格を取得すると年収を一気に上げることが可能で、年収1000万円クラスも狙えます。
決して簡単ではないですが、電気主任技術者で年収を挙げたいなら、第2種・第1種を目指しましょう。
電気工事士の平均年収は450万円
電気工事士の平均年収は450万円程度で、日本人の平均年収を上回る結果になっています。資格取得が容易である点を考えると、かなりコスパが良い資格です。
ただ、電気主任技術者の資格のように「種類が変われば年収も変わる」ということがないのが特徴です。
電気工事士には第2種と第1種がありますが、第1種を取得したからといって年収が倍にアップすることはほとんどありません。
実務経験や上位資格で給料アップ
ただし、どちらの資格でもいえることは、実務経験を積んでベテランになることで給料は高まっていきます。高い給料をいただきたい場合は、長く継続して勤めるようにしましょう。
あるいは、電気主任技術者として特に顕著であったり、上位資格にチャレンジしたりすれば給料のアップも期待できます。
ちなみに、両方の資格を持っていると監査から工事までできるので、活躍の幅が広がって給料が増えることも考えられます。
電気主任技術者は独立すべき?
電気主任技術者が独立すべきかどうか、結論からいうとあまりおすすめできません。
電気主任技術者が独立するためには実務経験を積んで経済産業大臣の認可を受けなければならないので、独立すれば信用が得られることが考えられます。
しかし、それが実際の収入に結びつかないという意見が多くあるのが現状です。
また、独立すると取引先とのコネや交渉力も必要となるため、収入を安定させるのにかなりの時間を要します。そのため、電気主任技術者の独立はあまりおすすめできません。
どっちの資格を取得すべき?
ここまで電気主任技術者と電気工事士の取得方法や難易度、需要などを説明してきました。
しかし、「結局どっちを取得すべき?」「ダブルライセンスを目指す場合、どの順番がいい?」
このような疑問があるかと思います。そこで、ここではどっちの資格を取得すべきかついて解説していきます。
メリットが豊富なのは電気主任技術者
結論からいうと、資格を取得してメリットが大きいのは電気主任技術者です。
電気工事士の資格はコストパフォーマンスに優れた資格ですが、収入の大幅アップは望めません。
しかし、電気主任技術者は資格取得を苦労する一方でメリットは大きいのです。
例えば、資格を取得すれば給料をアップさせやすくなります。また、人材が不足気味でビルメンテナンス業界などでの需要も高いので、就職や転職もしやすくもなります。
就職面と収入面でそれぞれにメリットが大きいのは、電気主任技術者といえるでしょう。
まずは第2種電気工事士から取得しよう
ただし、だからといって電験を目指すのはスマートとはいえません。まずは第2種電気工事士の資格を目指すのがおすすめです。
その理由は、電気主任技術者には認定資格取得の制度があるからです。
まずは第2種電気工事士の資格を取得して、電圧500V以上の電気工作物を扱って実務経験を積みます。
そうすれば、難易度が高い電験を受けることなく第3種電気主任者の資格が得られるのです。
ダブルライセンスで最もおすすめの順番は以下の通りです。
-
第2種電気工事士
-
第3種電気主任技術者
-
第1種電気工事士
-
第2種電気主任技術者
-
第1種電気主任技術者
電気主任技術者と電気工事士の違いまとめ
電気主任技術者と電気工事士の違いについてのまとめ
- 電気主任技術者と電気工事士には共通点もあるが全くの別物
- 資格取得方法や試験内容、区分にも違いがある
- 電気主任技術者の年収は高く、電気工事士はコスパが高い
- ダブルライセンスにはおすすめの順番がある
電気主任技術者と電気工事士を混合する人が多いですが、実は全く違うものです。例えば、仕事内容はもちろん、取得方法や試験内容、資格の区分にも違いがあるのです。
特に取得の難易度に大きな違いがあります。電験はどの種類も合格率が1桁なのに対して、電気工事士は受験者の半数以上が合格できる試験です。
また、それぞれの特徴を一言でいえば、電気主任技術者は取得が難しいが年収は高くなる傾向にあります。
一方、電気工事士は取得がしやすい割に年収は高いのでコスパが高い資格です。ただ、最もメリットを享受できるのはダブルライセンスです。
ダブルライセンスを目指す人は最適な順番がありますので、その通りに取得していくことをおすすめします。
いずれにしても、電気主任技術者と電気工事士は長く勤めることでドンドン給料は高まる傾向にあります。
そしてどちらも需要が高い資格ですので、興味がある人は目指してみてはいかがでしょうか。