技術士の総合技術監理部門はどんな試験?概要から合格基準・試験免除要件まで解説!
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「技術士試験の総合技術監理部門ってどういう部門なの?」
「技術士試験の総合技術監理部門の難易度が知りたい」
こんな疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか?
技術士試験にはさまざま部門があり、部門名を見れば何となくどんな内容なのか想像できます。ですが、総合技術監理部門だけは名前を見ただけではどういう内容なのかわかりにくいでしょう。
そこで、技術士試験の中でも特に総合技術監理部門に焦点を当てて、概要や試験内容などを解説します。これを読めばきっと自分が総合技術監理部門を選ぶべきなのか明確になるでしょう。
技術士試験の総合技術監理部門についてざっくり説明すると
- 技術士試験は国家試験の一つ
- 総合技術監理部門は他の分野と特色が異なるので試験方式も特殊
- 総合技術監理部門は業務全般の総監技術士の人材育成が目的
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技術士試験総合技術監理部門の概要
技術士試験にはさまざまな部門が、すべて国家試験であり、科学技術系の試験の中では難易度がトップクラスです。すべての技術士試験には1次試験の2次試験、更に口頭試験があり、これらすべてに合格しなければいけません。
総合技術監理部門は、そんな技術士試験の21部門の中の1つに位置付けられています。ですが、内容は学術的な分野であり、他の分門とは試験内容や方式が異なります。かなり特殊な部門であるということです。
総合技術監理部門が生まれた背景
総合技術監理部門は、総合的に監督できる人材を育成するための部門です。その背景には、科学技術の巨大化や複雑化が関係しています。
例えば、ある特定の製造物を改善する必要があったとします。品質や価格の安定はもちろん、大量生産のための技術向上を目指さなければいけません。
さまざまな分野で活躍する多くの技術者が、自分の持っている能力をフルに活用し、一つの大きな技術力として結集させる仕組みが必要です。その一方で安全面などにも配慮しなければいけないという問題があります。
これらの要素をすべて把握し、総合的に判断して総監できる技術者が必要なのです。そのような総監を育てる目的で生まれたのが、総合技術監理部門でした。
総合技術監理部門で扱う技術体系
総合技術監理部門は、「経済性」「人的資源」「情報」「安全」「社会環境」の5つの管理で構成されています。どれか一つが欠けていても、総監としての役目を果たすことはできません。5つすべての管理能力に長けている必要があります。
これら5つの管理について総合的な分析と評価を行ないます。その上で、最適な計画を立てて実施を行なうことが、総合管理です。総合技術監理部門は、総合管理の監理業務を行なうことができる人たちの集まりなのです。
総合技術監理部門で学ぶ内容
管理 | 内容 |
---|---|
経済性監理 | 事業企画,品質の管理,工程管理,現場の管理と改善,原価管理,財務会計,設備管理,計画・管理の数理的手法 |
人的資源管理 | 人の行動と組織,労働関係法と労務管理,人材活用計画,人材開発 |
情報管理 | 情報分析,コミュニケーションと合意形成,知的財産権と情報の保護と活用,情報通信技術動向,情報セキュリティ |
安全管理 | 安全の概念,リスクマネジメント,労働安全衛生管理,事故・災害の未然防止対応活動・技術,危機管理,システム安全工学手法 |
社会環境管理 | 地球的規模の環境問題,地域環境問題,環境保全の基本原則,組織の社会的責任と環境管理活動 |
総合技術監理部門は5つの管理で構成されています。そのそれぞれの管理の内容を具体的に示したものが、上の一覧表です。
管理名だけ見ると難しいと感じるかもしれません。ですが、それぞれの具体的な内容は一般企業の管理者に求められるものと大差ありません。総監として求められる管理能力は、どの業種も同じだということです。
総合技術監理部門の受験者の特徴と受験者数
総合技術監理部門の受験者は、そのほとんどがすでに他の技術部門の技術士です。総合技術監理部門を受験するには、他の部門よりも多くの実務経験が必要となっています。そのため、受験者はすでにどこかの技術部門の技術士なのです。
総合技術監理部門は大変人気のある部門です。技術士試験には21部門ありますが、その中でも総合技術監理部門は建設部門に次いで2番目に多いという現状です。ちなみに2019年では3890人が試験に申し込んでいます。
しかし、合格率は大変低くなかなか合格できない人も多くいます。受験者数は建設部門に次いで2番目ですが、その中には2回以上試験に挑戦している人も一定数いるということです。
総合技術監理部門を受ける際の受験資格
総合技術監理部門の受験資格について説明します。まず、1次試験に合格するか日本技術者教育認定機構(JABEE)の認定コースを修了していることが絶対条件です。
その上で、次の3つの条件のうちのいずれかを満たす必要があります。
-
技術士補に登録後、指導技術士の下で7年以上の実務経験がある
-
職務上の監督者の指導の下で、7年以上の実務経験がある
-
指導者や監督者の有無や要件を問わず、10年以上の実務経験がある
技術士試験の他の20部門でも、受験資格に実務経験が設けられています。ですが、総合技術監理部門は他の部門より3年多く実務経験を要していることが条件になっています。
出題範囲
1次試験に合格する形で、すでに別の部門の技術士資格を取得していた場合は、総合技術監理部門での1次試験は免除されます。ただし、別の技術士資格を取得しているけれど1次試験は免除された場合は、1次試験合格が必須条件です。
2次試験の筆記試験は以下の通りです。
科目 | 内容 |
---|---|
必須科目 | 「総合技術監理部門」に関する課題解決能力及び応用能力を問う問題(択一式と記述式) |
選択科目 | 総合技術監理部門以外の技術部門の必須科目及び選択科目 |
それぞれの科目の合格基準は60% で、合格点がそれ以下になると不合格となります。必須科目も選択科目も、どちらも合格基準を満たさなければならないということです。
必須科目には2時間の択一式と、3時間半の記述式の2種類があり、どちらも受験しなければいけません。具体的な内容としては、安全管理、社会環境と調和、経済性、情報管理、人的資源管理について問われます。
一方の選択科目には、機械部門から原子力・放射線部門まで20部門があります。この中から好きな部門を1つ選んで受験します。
選択科目免除の条件
総合技術監理部門の2次試験を受験する人の中には、選択科目が免除される人がいます。それは、すでに他の技術部門で2次試験に合格している人です。
総合技術監理部門を受験する際、すでに合格している技術部門に対応した選択科目を選択した場合、選択科目の試験は免除されます。同じ内容の試験を2回も受ける必要はないと判断されているからです。
多くの人たちはすでに合格している技術部門に対応した選択科目を選択して、総合技術監理部門を受験します。そのため、ほどんどは必須科目のみで受験することになるでしょう。
出題形式
必須科目には択一式と記述式の2種類があります。択一式は40問、記述式は2題出題されます。
合格基準は60%以上となっています。択一式問題だけで見た場合、合格基準の60%を満たそうとするなら最低でも24問は正答しなければいけません。そうしなければ、合格点には達しない計算になります。
更に記述式は2題出題されますが、1問目は答案用紙3枚以内、2問目は答案用紙2枚以内での論述が求められています。
合格基準である60%は、択一式と記述式の両方を合わせた合格点です。そのため、択一式で合格基準が満たせなくても、記述式でカバーして合格基準の60%まで引き上げることは可能です。
記述式はこの後に控えている口頭試験で出題される可能性があります。択一式で合格基準を満たし、記述式での点数が極端に低かった場合は、口頭試験で苦労することになるかもしれません。
このことから、択一式で記述式でも合格基準を満たせるようにしっかり準備しておきましょう。
総合技術監理部門の難易度
総合技術監理部門の受験者は、そのほとんどが技術士としてある程度経験を積んでいる人たちです。ですが、令和元年の最終合格率は15.4%しかありません。それだけ、非情に難易度の高い試験であるということです。
総合技術監理部門の合格率は例年15%前後
年度 | 筆記試験合格率(%) | 最終合格率(%) |
---|---|---|
令和3年 | 15.3 | 14.5 |
令和2年 | 13.2 | 12.6 |
令和元年 | 16.8 | 15.4 |
平成30年 | 6.5 | 6.4 |
平成29年 | 10.2 | 9.8 |
平成28年 | 16.3 | 15.0 |
平成27年 | 22.9 | 20.2 |
上の一覧表は総合技術監理部門の過去5年分の合格率を示したものです。最終合格率だけで見ると多少の幅はありますが、多い年で20%、少ない年では約6% であることがわかります。
なお、最終合格率とは2次試験の必須科目と選択科目を合格した人たちのことです。この後、口頭試験が控えていますが、その合格率は毎年80%以上と高くなっています。
口頭試験はほとんどが合格していることから、総合技術監理部門試験の最大の難関は筆記試験であることがわかります。
総合技術監理部門の合格ライン
総合技術監理部門の合格基準は、筆記試験では択一式と記述式の合計点が6割以上、口頭試験では体系的専門知識と経歴及び応用能力がそれぞれ6割以上です。どちらの合格基準も満たさなければいけません。
筆記試験に関しては、択一式と記述式の合計点が6割以上です。どちらも6割を超える必要はなく、どちらか一方で6割を超えるようにすれば良いということになります。
ただし、記述式は後に控えている口頭試験で出題される可能性が高くあります。決しておろそかにできる試験ではないので、しっかり準備をしておきましょう。
総合技術監理部門が難しいと感じる理由
総合技術監理部門の試験が難しいと感じる理由の一つに、他の技術部門と内容が異なる点が挙げられます。
総合技術監理部門の試験では、安全管理や情報管理などの管理技術についての知識やスキルが求められます。つまりマネジメント能力が問われているのです。
他の技術部門では、マネジメント能力が問われることはほとんどありません。それぞれの部門での技術士としての知識やスキルが問われる問題ばかりです。
ところが、総合技術監理部門では管理技術の制約内でいかに目標を達成するかという能力が求められます。このようなことに多くの技術士は慣れていないため、難しいと感じるのでしょう。
総合技術監理部門向けのおすすめ勉強法
総合技術監理部門を受験するにあたって、どのように勉強すれば良いのでしょう。具体的なおすすめ勉強法について紹介します。
かなりの勉強時間が求められる
総合技術監理部門の受験資格に、実務経験があります。他の部門の技術士試験に比べて求められている実務経験の期間は長いため、具体的な勉強時間を出すのは難しいと言えます。
ただ、20部門に関しては独学で2000時間程度とされています。総合技術監理部門の受験者の多くは、すでに他の20部門のいずれかの資格を取得した人たちです。ですが、それでも合格率は6~20%程度しかありません。
必要とされている実務経験が20部門よりも多く設定されていることから、総合技術監理部門に必要な勉強時間が2000時間以上とは考えにくいでしょう。また、2倍以上の勉強時間が必要であるとも言われています。
20部門で必要とされる2000時間の2倍にあたる4000時間が必要と言われている総合技術監理部門ですが、それでも合格率は極端に低くなっています。この事実から考えると、4000時間以上の勉強時間が必要と予想と予想されます。
キーワード集を活用しよう
総合技術監理部門の概念や記述体型を示すものとして「キーワード集」が発表されています。わざわざ発表されているのですから、このキーワード集から出題される問題が多いことが予想されます。
言い換えるなら、キーワード集をしっかり読み込んで理解すれば、総合技術監理部門の合格基準に近づけることが可能だということです。
具体的な活用方法としては、一つひとつの用語を暗記するのではなく、さまざまな概念をリンクさせて理解しましょう。用語と概念をリンクさせれば、択一問題だけではなく、記述問題でも高得点を取る可能性が高くなります。
5つの管理技術を日々意識して実務に臨もう
総合技術監理部門の試験で難関なのは筆記試験です。ですが、2次試験は筆記試験だけではなく、口頭試験もあります。2つの筆記試験を合格した人は口頭試験を受け、合格することで初めて資格取得となります。
口頭試験では、面接官が業務経歴票をもとに質問します。自分が携わってきた業務の中で、5つの管理技術を現場で活かしてプロジェクトを完遂できるかが重視されます。
必ず自分がこれまで携わってきた業務について、5つの管理技術を通して説明できるようにしておきましょう。そのためには日頃から自分の業務における考え方や行動を、言葉で説明できるように意識した方が良いでしょう。
総合技術監理部門対策におすすめのテキスト
総合技術監理部門の対策テキストとして、おすすめするのは、「技術士第二次試験「総合技術監理部門」標準テキスト<技術体系と傾向対策> 」です。
この本は、受験に必要な技術体系と、過去問題を徹底分析した解説の両方を掲載している参考書となっています。
現在は、総合技術監理部門対策の際に必須とされていた青本がなくなったため、かつての青本の技術体系に沿いながら、内容を独自に検討しながら作成した1冊となっています。
この本1冊で、基本的な対策を打てること間違いなしです。
また、演習の際の問題集としておすすめする1冊は、「技術士第二次試験「総合技術監理部門」標準テキスト<技術体系と傾向対策>」です。
このテキストは、択一式試験と論文試験の両方に対応した「総合技術監理部門」に特化した厳選問題集です。
解説も充実していることから、問題を解いた後の復習もばっちりの1冊であるといえるでしょう。
技術士試験の総合技術監理部門についてまとめ
技術士試験の総合技術監理部門についてまとめ
- 総合技術監理部門の合格率は6~20%であり、最難関試験である
- 総合技術監理部門では、5つの管理技術をもとにしたマネジメント能力が問われる
- 相互技術監理部門の試験では、免除制度が設けられている
技術士試験の総合技術監理部門について解説してきました。総合技術監理部門は、21部門ある技術試験の中で唯一マネジメント能力を問う試験です。そのため、あまり慣れていないという点から難関と言われています。
ですが、資格を取得すれば総監として活躍することができます。試験は大変難しく、勉強時間も多く求められますが、得られるメリットは多分にあります。ぜひ、スキルアップの意味でも挑戦してみてください。