技術士一次試験とは?技術士補から免除制度・受験資格・難易度・合格率まで解説!
「技術士試験の内容が知りたい」
「そもそも技術士ってどんな資格?」
科学分野のエンジニアとして高い実力を証明出来る技術士試験は、科学分野の仕事に関わる方達にとって欠かせない資格の一つです。
ここではそんな技術士の資格試験の中でも特に1次試験に着目して、試験内容や受験資格、難易度について解説します!
技術士の一次試験についてざっくり説明すると
- 国家資格である技能士になるために必要な試験
- 3つの科目から構成されており、広い範囲を勉強する必要がある
- 試験対策には通信講座や過去問を利用した効率的な勉強が必要
- 合格後は技能士補として二次試験の受験条件を満たす必要がある
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一次試験の内容と配点は?
技術士試験は一次試験と二次試験を行います。一次試験は五肢択一式のマークシート方式で行っており、以下の3つの科目から構成されています。
科目名 | 問題の内容 |
---|---|
基礎科目 | 科学技術全般にわたる基礎知識を問う |
適性科目 | 技術士法第4章の規定元首に関する適性を問う |
専門科目 | 受験する技術部門に関する基礎知識及び専門知識を問う |
配点は科目によって異なり、基礎科目と適正科目がそれぞれ15点満点、専門科目が50点満点となっています。
ちなみに一次試験では筆記試験を通じて基本的な知識が問われますが、二次試験では筆記試験だけでなく口頭試験も行われ、知識に基づいた判断力も求められます。
一次試験と技術士制度
技術士試験の一次試験は試験時間が基礎科目と適性科目がそれぞれ1時間ずつ、発展科目が2時間と決められています。1日がかりで問題を解いていかなくてはならないのです。
一次試験を突破すれば、技術士資格の前段階である修習技術者になる事ができます。この資格の意味は、技術士補になれる資格がある者という意味です。
この資格を得た後に一定の実務経験を積む等の条件を満たすと、技術士試験の二次試験を受けられるようになります。この仕組みが技術士制度です。
技術士一次試験とは?
技術士一次試験は、公益社団法人日本技術士会によって行われている試験です。技術士資格を得るには、まずこの試験を合格しなくてはなりません。
先程触れた通り、試験に合格すると修習技術者となり、登録を済ませれば技術士補になれます。試験に合格した方は、工学部や理学部、農学部の大学学部と同じ程度のレベルを持っているとみなされます。
二次試験に挑戦するには、一次試験に合格後さらに実務を積まなくてはなりません。受験条件を満たし、二次試験に合格して初めて技術士を名乗れるようになります。
技術士・技術士補の違いは?
技術士の前段階ともいえる技術士補ですが、違いはどの様な点にあるでしょうか。技術士と技術士補はどんな資格なのかを解説していきます。
技術士ってどんな資格?
技術士は科学技術に関する技術的専門知識と、高等の応用能力及び豊富な実務経験を有し、公益を確保するため、高い技術者論理を備えた優れた技術者であることを国から認められた資格です。
エンジニア資格の一つで、幅広い科学技術系分野を網羅した者であることを証明する資格でもあります。技術士は五大国家資格の一つでもあり、エンジニア系資格の中では、最難関の資格です。
名称独占資格でもあり、一次試験と二次試験を突破した方だけが技術士を名乗ることができます。
最難関国家資格の一つでもあることからも分かるように、かなり名誉ある資格です。 当然、取得していれば単なる技術者よりも圧倒的に高い信頼を集めることができます。
技術士の資格が与える仕事やキャリアへの影響
技術士の資格は、科学技術系エンジニアの仕事において、昇進や転職、独立の際に有利に働く資格でもあります。キャリアアップや独立を目指す一環として、技術士試験に挑戦する方はたくさんいます。
実際、宮内庁からの仕事等、かなり大規模なプロジェクトに関わっている技術士もいます。科学技術系エンジニアとして大きな仕事をしたいなら、技術士資格試験は避けては通れない難関です。
技術士補ってどんな資格?
技術士補は技術士試験の第一次試験に合格した修習技術者が、技術士補として登録することで得られる名称独占資格です。
技術士補は指導技術士の下で一定の実務経験を積むことで、技術士試験の第二次試験を受験する資格を得られるようになります。
二次試験を受けるための条件は?
先程から何度か触れていますが、技術士試験の第二次試験には受験条件があります。具体的な条件をまとめると以下の様になります。
- 技術士補に登録した後、指導技術士の下で4年(総合技術監理部門は7年)を超える期間の実務経験を積む
- 技術士補となる資格を得た後、職務上の監督者の指導の下で4年(総合技術監理部門は7年)を超える期間の実務経験を積む
- 指導者や監督者の有無や要件を問わず7年(総合技術監理部門は10年)を超える期間の実務経験
これらの条件を満たせば、技能士試験の第二次試験に合格できるようになります。
二次試験の技術部門について
技能士第二次試験は、合格した一次試験の技術部門に限らず、全ての技術部門の受験が可能です。一次試験と二次試験の部門が違っていても問題ありません。
例えば、一次試験で建設部門に合格した方が、二次試験で応用理学部門・地質を受験する事も可能です。
一次試験・技術士補制度はなくなる?
技能士制度は複雑な制度です。最近はこの複雑なあり方が議論されるようになっています。その影響を受け、現在は断続的に改正が行われてきています。
総合技術監理部門の一次試験はなくなっている
総合技術監理部門は令和5年3月現在、しばらくの間一次試験がなくなります。
総合技術監理部門の第二次試験を受けようとしている場合、一次試験は他の技術部門の試験を受験しなくてはいけません。
技術士補制度はなくなる?
この他では、技術士補制度がなくなるのではないかという議論がされています。
これは、技術士補に登録して技術士を目指す方が非常に少なく、2018年には受験者全体の1.2%しかいない上に減少傾向にあることや、指導する技術士自体が少なくなっていることが関係しています。
現在はまだ制度が残っていますが、今後は何らかの改正がされる可能性が高いです。制度自体無くなることも考えられます。
一次試験の合格率・難易度は?
次に、一次試験の合格率や難易度について解説していきます。
技能士試験の一次試験は、部門によって合格率が違います。大体30~70%が目安です。例えば、令和4年の合格率を見ると、応用理学部門の合格率は40.2%と40.2低めですが、資源工学部門は82.4%もあります。
この様に、技能士試験の一次試験は、部門ごとの振れ幅が大きく、一次試験の段階では難易度がかなり高いとは言えません。
しかし、二次試験は違います。二次試験は記述式と口頭試験の2つの試験があり、合格率が10%前後と非常に低いです。技能士試験が最難関資格の一つとされているのは、二次試験の合格率からだということが分かります。
しかし、一次試験の内容は今後修習技術者として実務を行う上で重要な知識です。簡単だからと気を抜かず、しっかり対策をした上で挑みましょう。
足切りはあるの?
試験に足切りとなる点数やラインが決められている場合があります。技能士試験の場合、基準点がそれぞれ50%以上とされています。つまり、1つでも半分を切ってしまうと足切りの対象になるということです。
因みに二次試験ですが、以前は足切りとして択一式問題がありました。令和になってから択一式問題はなくなったので、現在は無いと考えていいでしょう。
科目合格制度は存在する?
試験によっては科目ごとの合格制度を採用している場合があります。技能士試験の場合、残念ながら科目合格制は採用されていません。ある特定の科目で高得点を取っても、一次試験に落ちた場合は初めから受け直ししなくてはなりません。
技能士試験の第一次試験に合格するには、まんべんなく広い範囲を試験当日までに勉強し、確実に身に付けておかなくてはならないのです。
一次試験突破のための勉強方法は?
第一次試験を突破するには、幅広い知識を頭の中に叩き込み、試験対策を入念に行わなくてはいけません。効率的な勉強方法が求められます。次の項目で一次試験を突破するのに有効な勉強方法を紹介しますので、参考にして下さい。
無料の過去問を徹底活用すべし!
日本技術士会の公式HPでは、無料で過去問題が公開されています。平成16年から令和元年までの16年分の過去問が閲覧可能です。回答も合わせて公開されているので、自己採点もできます。
過去問の解答には解説は乗っていないため、詳しい内容を確認しながら自己採点したい場合は、試験対策の教材や通信講座を利用する必要があります。
ただ過去問を解くだけでなく、過去問の内容を読み込み、どんな問題が出題されているかを分析することも大切です。
理解や記憶できていない点があれば、それが試験における自分の弱点だと分かります。弱点が分かった後は、そこを中心に勉強し直しましょう。
2次試験対策は通信講座を活用すべし!
一次試験対策であれば、上記のように市販テキストや過去問を活用することで合格レベルまで達することができるでしょう。
一方で、後述するように技術士の二次試験は非常に難易度が高く、口頭試験等も用意されているので、自分一人では十分な対策を行うのは極めて難しいです。
二次試験に挑戦する際は、通信講座を活用しましょう。通信講座で体系的に分野を学んでいけば、市販テキストで自力で学ぶよりもはるかに効率的な勉強ができるでしょう。
一次試験と二次試験の違い
技能士試験には一次試験と二次試験がありますが、この2つの試験は性格が全く異なります。
一次試験は技能士の一歩と言える技能士補になるのに必須とされる基礎知識や専門知識を身につけ、規定を厳守する適正があるかを確認するための試験です。
それに対して二次試験は、単に専門知識だけを問うのではなく、それを応用した問題解決や課題遂行能力、いわゆるコンピテンシーがあるかを試される試験となります。
難易度に違いは?
先に解説した通り、一次試験は部門にもよりますが、合格率が高い傾向にあります。しかし、二次試験はわずか10%前後とかなり低いです。
出題の傾向も二次試験の方が難しくなっています。一次試験は選択式なので先にある答えから正しい物を選ぶ形ですが、二次試験は分量の多い論述と口頭試験で構成されています。
二次試験は問題自体の難易度がかなり高いことに加え、回答に時間がかかる形式で出題されます。一次試験よりもはるかに難易度が高いのはこのためです。
合格までの勉強時間の違いは?
合格までの勉強時間も大きく違います。一般的に一次試験は200時間未満で合格水準に達すると言われています。月に2~3時間の勉強を3か月ほど続ける位の時間です。
それに対し二次試験は、単に勉強時間を積めばいいというものではありません。技術士としての頭の使い方を問われる問題が主になります。そのため、一般的な勉強時間を計るのは困難です。
一般的には、数年単位で学び、技術士としての頭の使い方を理解し、身に付けていくことになります。
科目ごとの勉強のポイント
二次試験に比べると合格率の高い一次試験ですが、試験対策をしっかりしておかないと合格できません。
以下では科目ごとの勉強のポイントを解説していきます。
基礎科目
基礎科目では、技術史の様な、教養的な問題が出されます。それぞの内容を図にまとめると、以下の様になります。
科目名 | 内容 |
---|---|
(1)設計・計画に関するもの | 設計理論、システム設計、品質管理等 |
(2)情報・倫理に関するもの | アルゴリズム、情報ネットワーク等 |
(3)解析に関するもの | 力学、電磁気学等 |
(4)材料・科学・バイオに関するもの | 材料特性、バイオテクノロジー等 |
(5)環境・エネルギー・技術に関するもの | 環境、エネルギー、技術史等 |
一次試験では、この5分野から各6問ずつ出題されます。
また、2進法・10進法・16進法に直せるかを問う問題や、ベクトルの基礎的な性質から正解を導く問題等、高校数学の知識で解ける問題も出題されます。
試験対策
試験対策としては、過去問を少しでも多く解いて出題傾向に慣れることが大切です。問題を解いて、問題の傾向や自分の弱点を分析しましょう。
問題の傾向や弱点が分かってきたら、そこを中心に勉強して対策をしていきます。
適性科目
適性科目は基礎科目とは違い、計算等が必要ありません。そのため軽視されがちですが、技術士としての考え方を身に付けるという意味では、かなり重要な科目になります。
適性の有無は二次試験の高等試験でも入念に確かめられますから、おろそかにできない科目です。出題される範囲は大体決まっています。以下の内容が良く出る内容です。
- 技術士法
- 倫理規定
- 製造物責任
- 企業責任
- 公益通報
- 個人情報保護
- 知的財産
試験対策
基礎科目同様、過去問に取り組んで弱点や抜けを探し、そこを埋めていくような形で勉強していきます。
出る範囲が大体決まっているからと対策せずに一般的な感覚や常識で解こうとすると足元をすくわれる科目です。技術士として何が正しいかを知識として覚え、活用できるよう把握することが大切になります。
発展科目
発展科目は他科目の3倍以上、解答時間も2倍かかることからも分かる通り、重要な科目です。その上、選択する技術部門によって内容が変わってきます。
基本的にはテキストを用いたインプットと、問題集・過去問演習を通じたアウトプットをひたすら繰り返すことになります。
この時、インプットに時間をかけすぎず、アウトプット中心の学習をすることで、知識の定着を早める効果が期待できるでしょう。
一次試験免除の条件とは?
技術士試験には科目ごとの合格はありませんが、一次試験を免除できる制度はあります。条件に当てはまっていれば、一次試験の一部、又は全部を免除出来るのです。免除の条件について解説していきます。
JABEE認定コース修了者は一次試験全部免除
日本技術者教育認定機構(JABEE)認定コースを修了した方は、すでに技能士補になる資格を保有しているとみなされ、一次試験を免除することができます。
JABEE認定プログラムを修了した時点で修習技術者となります。そのまま技術士補として登録すれば、二次試験を受けるための実技を積む段階に進むことができるのです。
一部免除の条件
この他、一定の条件を満たした方は一次試験の免除を受けられます。それぞれの条件と免除になる試験について説明していきます。
旧制度の下で二次試験に合格した人
旧制度の試験を受けた方の中には、第一次試験を経ずに、既にいずれかの技術部門で第二次試験に合格している方がいます。この方達が第一次試験を受験する場合、以下の試験科目が免除されます。
- 第二次試験で合格した技術部門と同じ技術部門で第一次試験を受験する場合 → 基礎科目と専門科目が免除になる
- 第二次試験で合格した技術部門と別の技術部門で第一次試験を受験する場合 → 基礎科目が免除になる
免除になる内容は2つありますが、多くの方が2つの科目を免除できる方を選択している傾向にあります。
中小企業診断士の資格を持っている人
中小企業診断士に登録している方が経営工学部門で受験する場合、経営工学部門の専門科目が免除されます。
登録していない方でも、以下の条件に当てはまる方も免除が受けられます。
- 養成課程又は登録養成課程を修了していて、当該終了日から3年以内の方
- 中小企業診断士第二次試験に合格していて、当該合格日から3年以内の方
情報処理技術者試験合格者
情報処理技術者試験の高度試験(平成21年度から実施されたもの)合格者や、情報処理安全確保支援士試験(平成29年度から実施されたもの)合格者で条件に当てはまる方は、専門科目の情報工学部門が免除されます。
条件に該当する試験は以下の通りです。
- ITストラテジスト試験
- システムアーキテクト試験
- プロジェクトマネージャー試験
- ネットワークスペシャリスト試験
- データベーススペシャリスト試験
- エンベデッドシステムスペシャリスト試験
- ITサービスマネージャー試験
- システム監査技術者試験
一次試験はどうやって受ける?
次に、一次試験の概要について解説していきます。この記事では令和2年度の内容を解説していきます。
試験概要
まずは試験概要です。概要は以下の図の通りとなります。
概要 | 内容 |
---|---|
受験資格 | なし |
受験手数料 | 11,000(非課税) |
受験会場 | 北海道、宮城県、東京都、神奈川県、新潟県、石川県、愛知県、大阪府、広島県、香川県、福岡県、沖縄県 |
受験資格は特になし!
試験概要を見ると分かる通り、技能試験の一次試験には受験条件は特にありません。受験資格が無いので学歴はもちろん、年齢や国籍も関係なく受験できます。
実際、過去に小学生で一次試験に合格した方もいます。技能士の資格を得て仕事をしたい方は、挑戦してみてはいかがでしょうか。
実際の試験の流れは?
次に実際の試験の流れです。試験を受ける際のスケジュール管理にお役立て下さい。
- 受験申込書等の配布を受けます。期間は令和5年6月9日(金)~6月28日(水)まで です。
- 次に受験申し込みを行います。期間は令和5年6月14日(水)~6月28日(水)までの期間に行って下さい。
- 期間内に所定の書類を揃えて郵送すれば、9月中旬頃に受験票が発送されます。
- 受験票を持って試験に挑戦します。試験日は令和5年11月26日で予定されています。試験問題の解答は試験終了後に発表されますので、こちらもチェックしましょう。
- 令和6年2月に合格発表があります。
合格発表時、試験に合格した方の氏名を技術士第一次試験合格者として官報で発表すると同時に、本人宛に合格証を送付や、発表後成績の通知が行われます。
受験申込に必要な物
受験申し込みには所定の書類や郵送形式があります。 これに沿って申し込みの手続きを取って下さい。
必要書類や郵送方法 | 内容 |
---|---|
宛先と消印 | 公益社団法人日本技術士試験センター 6月28日(水)までの消印 |
郵送方法 | 書留郵便 |
申込書 | 申込書には6ヶ月以内に取った阪神脱帽の4.5㎝×3.5㎝の写真を貼付けること |
その他の書類 | 旧制度試験で第二次試験に合格している方は、免除事項に該当する事を証明できる書類や書面の提出あり |
技術士の一次試験まとめ
技術士の一次試験まとめ
- 技能士試験の一次試験は誰でも受験できる
- 試験勉強は広範囲にわたり、受験内容によって合格率や難易度が変わる
- 免除制度があり該当者は試験の一部または全部を免除できる
- 2次試験対策は通信講座を使うのが効率的
技能士試験は大変な試験ですが、合格すれば科学技術系エンジニアとして高い信頼性を得られるようになる試験です。
合格を目指すなら効率的な勉強が必要になります。過去問等を有効活用しながら、最短経路での合格を目指しましょう!