技術士資格取得のメリットは?年収・転職事情から役に立たないといわれる原因まで解説
「技術士になるとどんなメリットがあるの?」
「技術士って役に立たないって本当?」
こんな疑問をお持ちの方もいるのではないでしょうか?
技術士という資格に興味があっても、よくわからないことが多いのではないでしょうか?これでは不安になってしまって、取ろうという気持ちになれないですよね。
技術士は五大国家資格で技術士の最高峰、つまりエンジニアのプロフェッショナルであることを証明する資格です。そのため、難易度は高いですが、取得すればさまざまなメリットが得られます。
この記事では、取得するメリットを中心に、どんな人が目指しているかや難易度、試験に合格するコツなどを詳しく解説していきます。読んでいただければ、技術士へ自信を持って踏み出せるようになりますよ。
技術士についてざっくり説明すると
- 技術士とは国家が認める一流の技術者のこと
- 取得の難易度は高いが、メリットが多い
- 取得するには膨大な勉強時間が必要
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技術士資格を取得するメリット
技術士とは、五大国家資格といわれ国を代表する資格であるだけでなく、技術者として世界でも認められる価値あるライセンスです。
弁護士や医師のように業務独占資格ではありませんが、名称独占資格であるので「技術士」を特別に名乗って仕事ができます。
では、技術士を名乗れることでどのようなメリットがあるのでしょうか?ここから詳しく説明していきます。
五大国家資格という信頼度の高さ
技術士の最大のメリットは、国家資格という信頼の高さです。国がエンジニアのプロフェッショナルとして認めているので、誰からも信用信頼されます。
もちろん、資格を得るためには単に専門知識に精通しているだけでは不十分です。応用的な問題解決能力と技術者としての倫理も併せ持っていなければいけません。そして、豊富な実務経験も求められます。
つまり、技術者とは知識と経験、倫理すべてを満たしていることを国によって認められるので、持っていない人と比べて圧倒的な信頼を勝ち取れるのです。
企業側にも大きなメリット
技術士は取得した本人だけでなく、雇用する企業にも大きなメリットがあります。それは、技術者を雇うことで信頼がアップするので、技術コンサルタントなど仕事の幅が大きく広がるからです。
また、公共事業の入札では技術士を何人雇っているかが評価になる場合があります。そのため、技術士を複数人雇っていると、官公庁の巨大なプロジェクトにも関わるチャンスが生まれるのです。
転職・独立に有利で将来性がある
技術士は雇用や経済環境が悪化しても、転職や独立に有利で将来性があることもメリットです。
年功序列が崩壊し長期雇用は望めなくなってきました。そんな中では、いかに即戦力になれるかを証明できるかが転職では必須の条件になってきています。
技術士は取得した本人だけでなく、雇用する企技術士は五大国家資格で非常に信頼度の高い資格なので、企業は安心して雇うことができます。
また、技術革新によって応用力のある専門性と実務経験などが求められていますが、技術士はそれらをクリアした存在。
そのため、企業は価値ある人材として、不況下でも積極的に雇ってくれる可能性もあるのです。
ちなみに、技術士は知識と経験を併せ持っているので、官公庁に勤めたり技術コンサルタントとして独立したりすることも無資格の人と比べれば容易にもなります。
年収アップを目指せる
「技術士になると収入面でメリットはあるの?」
技術士を目指すなら気になる点でしょう。結論からいって、資格を取得していると収入面でメリットを得やすくなります。
労働者 | 2019年の平均年収 |
---|---|
日本の労働者全体 | 約440万円 |
男性技術士 | 約673万円 |
女性技術士 | 約573万円 |
上のグラフを見ての通り、技術士になると収入面で大きなメリットが得られるのです。さらに、企業によっては資格手当があったり昇進しやすくなったりもします。つまり、さらなる収入アップの機会が増えるのです。
年収は所属している企業や独立して仕事をしているかにもよります。そのため、条件によっては年収1000万円を超えることも十分可能です。
ちなみに。技術士は日本ではそれほど知名度が高くなく、役に立たないといわれることもあります。しかし、ヨーロッパなどの海外では技術士資格所有者は仕事面や収入面で優遇される傾向にあります。
そのため、技術士になれば海外に行くことも選択肢として考えるのもいいかもしれません。
優秀な技術士とのコミュニティに入れる
技術士になると、人脈を広げやすくなるのもメリットです。
日本には日本技術士会などの技術士会がいくつも存在しています。そこにはすでに第一線で活躍している技術士も多数在籍しているので、関りを持ちやすくなるのです。
そのような技術士のネットワークでつながりが深まれば、技術面や仕事面の相談ができて、さらに知識を深めていくことも可能です。また、自分の誤りに気づいて正しく理解できる機会になるかもしれません。
さらに、お互いのタイミングが合えば、他の技術士から新しいプロジェクトに誘われて仕事が得られる可能性すらもあります。
もちろん、お互いが刺激しあってモチベーションをアップさせることもあるでしょう。
他の国家資格を取る際に有利
技術士は他の国家資格を取る際にも、優遇処置が適用されて有利になります。
技術士とは、ありとあらゆる科学技術に精通している存在です。そのため。技術士試験に対応している内容が出題される場合は、一部もしくは全部の試験が免除されるのです。
例えば該当する資格には、弁理士や気象予報士、中小企業診断士、労働安全コンサルタント、電気施工管理技士などがあります。
もし、技術士を取得した後に、他の資格の取得も考えている場合は、技術士の資格によって優遇処置を受けられるかどうかを確認するとよいでしょう。
優遇処置が受けられれば、取得する資格の合格率を高められます。
部門別のメリットも豊富
「技術士」と一言でいっても、中身は21部門に分かれています。そのため、「部門別のメリットって何?」と思う人もいるでしょう。
実際、それぞれ部門によって違ったメリットはあります。特に、目指す資格によって試験免除を受けられるのが大きいです。
ここではいくつか代表的な部門のメリットを紹介していきます。
電気電子部門のメリット
電気電子部門の技術士になることで得られるメリットには、以下のものがあります。
1.建築業法における一般建設業を営む場合、電気工事業や電気通信工事業に関しては、営業所ごとに置く専任技術者になれること。
また、現場で工事をする際は、電気工事や電気通信工事の主任技術者になれます。
2.建築業法における特定建設業を営む場合、電気工事業や電気通信工事業に関しては、営業所ごとに置く専任技術者になれること。
また、現場で工事をする際は、電気工事や電気通信工事の監理技術者になれます。
3.建設コンサルタントとして国土交通省に部門登録をする場合、専任技術管理者となれること。
4.消防設備士試験の第4,7類と労働安全コンサルタント(電気)の科目、他にも、弁理士の全部門の論文試験が免除されること。
5.鉄道事業法により、設計管理者(鉄道電気)になれること
資格試験の免除に関しては、他にも免除されるものがありますので、興味がある人は調べてみてください。
6.消防設備点検資格者への受講資格が得られる
機械部門のメリット
機械部門の技術士になることで得られるメリットには、以下のものがあります。
1.建築業法における一般建設業を営む場合、機械設備設置工事業(全科目該当)、管工事業(熱工学、流体工学の科目のみ該当)に関しては、営業所ごとに置く専任技術者になれること。
また、現場で工事をする際は、機械設備設置工事(全科目該当)、管工事(熱・動力エネルギー機器、流体機器の科目のみ該当、※旧科目の場合には、熱工学、流体工学が該当)の主任技術者になれます。
2.建築業法における特定建設業を営む場合、機械設備設置工事業(全科目該当)、管工事業(熱・動力エネルギー機器、流体機器の科目のみ該当)に関しては、営業所ごとに置く専任技術者になれること。
また、現場で工事をする際は、機械設備設置工事(全科目該当)、管工事(熱・動力エネルギー機器、流体機器の科目のみ該当、※旧科目の場合には、熱工学、流体工学が該当)の監理技術者になれます。
なお、専任が必要な監理技術者の場合は、監理技術者資格証の申請と講習が必要です。
3.建設コンサルタントとして国土交通省に部門登録をする場合、専任技術管理者となれること。
4.消防設備士試験の第1,2,3,5,6類と労働安全コンサルタント(機械)の科目が免除されること。
5.鉄道事業法により、設計管理者(車両)になれること
機械部門に関しても、他の資格試験で免除される科目がいくつもあるので、興味があるものがあれば調べてみてください。
6.消防設備点検資格者への受講資格が得られる
化学部門のメリット
化学部門の技術士になることで得られるメリットには、以下のものがあります。
1.消防設備士試験の第2,3類と労働安全コンサルタント(科学)の科目が免除されること。
2.作業環境測定士(一種、二種)の試験では、分析概論が免除されること
技術士といっても、部門によって専門内容が全く違います。
そのため、免除になる規定はそれぞれ違いますので、他の資格試験を受ける際は、しっかりと確認するようにしましょう。
3.消防設備点検資格者への受講資格が得られる
情報工学のメリット
情報工学部門の技術士になることで得られるメリットは、以下のものがあります。
1.中小企業診断士で実施される一次試験、7科目のうち「経営情報システム」の科目が免除されること。
2.弁理士資格試験において、論文式筆記試験の選択科目「理工Ⅴ(情報)」が免除されること。
3.消防設備士(甲種)・労働安全コンサルタントの受講資格が認定される
技術士資格が役に立たないといわれる原因は?
「技術士の資格なんて役に立たないと聞いたことがあるけど…」
こんな不安をいだいている人もいるでしょう。技術士の資格は五大国家資格ですので、最高の権威があります。その一方で、役に立たない資格ともいわれているのも事実です。
では、どのような理由で「役に立たない」といわれているのか、説明していきます。
知名度が低い
まず挙げられるのは、技術士資格の知名度の低さです。独占業務がないので、「これが技術士の仕事」というものがありません。
そのため、資格を取得しても直接的に「役に立たない」と思われてしまうのです。
その傾向はIT業界では顕著で、知っている人が特に少ないです。
では、知名度が低いから本当に役に立たないのかというと全くそんなことはありません。なぜなら、実際に仕事をしてみれば確実に他の人よりも知識や経験が豊富なので、信頼を勝ち取れて高く優遇されるからです。
資格の知名度が低いため、名刺を見せて「すごい」とはならないかもしれません。しかし、仕事を見せることで確実に相手を圧倒させられるので、取得することは仕事に役に立つといえるでしょう。
責任が重い点をデメリットという人も
技術士が役に立たないといわれる理由のもう1つは、技術士法によってきつく縛られるからです。
例えば、技術士法の義務に違反すると、資格の取り消しやひどい場合は罰金や懲役刑を受けることすらあります。
つまり、他の人と比べればハンディキャップを負わされると感じてしまうのです。
しかし、本当は反対です。技術士は知識や経験だけでなく、高い技術者倫理も持ち合わせています。
そのため、義務や責任を全うしてくれると信頼につながることが多々あり、業務においても優遇されるケースが多いのです。
技術士法によって、無資格の人ならできることができない場合もあるのは事実です。それによって役に立たない資格といわれることがあります。
しかし、制約があったとしても技術士の資格があれば、それを知識や経験で凌駕できるのです。
技術士資格を目指すのはどんな人?
「技術士ってどんな人が目指しているの?」「自分でも目指せるの?」
こんな疑問を持っている人が多いので、ここではどんな人が目指しているのかを説明していきます。
専門家として活躍していきたい人
技術士とは高度な技術と豊富な経験を持った人、特定分野のプロフェッショナルです。つまり、専門家として活躍したい人が目指す資格です。
扱う分野の専門性を高めていけば技術士という肩書に重みが増していきます。そのため、専門性を商売道具の1つと考えるのであれば、技術士の資格はなくてはならないものといえます。
ちなみに、技術士になると、常に最新の技術や知識を義務として身につけていなければなりません。これは技術士CPDとして法律で定められています。
つまり、「常に高い見識と技術の水準を維持し、技術者としての資質の向上を目指して活躍を続けたい人」であれば、技術士を目指す資格があるといえるでしょう。
メリットが大きいだけに難易度が高い
憧れの技術士にはメリットが大きいので、その分資格取得までの道のりは長く、また難易度も高いです。
まず、技術士になるためには、一次試験と二次試験の両方に合格しなければなりません。一次試験に関しては受験資格がなく、合格率は高いので比較的通過しやすいです。
しかし、二次試験は非常に難関です。そもそも受験するためには、一般的に最低4年は社会に出て実務の経験を積んでいなければなりません。
そして、そんな経験を積んだ人が受験しても、合格率は15%程度と低いのです。
なお、二次試験は論述試験と口頭試験の2つで構成されています。論述問題は、示された問題を、いかにすれば解決できるのかを回答用紙何枚に渡って理路整然と説明しなければなりません。
口頭試験では、技術士としての適性を細かくチェックされます。これらをすべてクリアしてようやく技術士の資格が与えられるのです。
二次試験を受けるには実務経験が必須
すでに説明した通り、二次試験に受けるだけでもかなり厳しい条件があります。条件は以下の2つです。
- 一次試験を合格すること
- 日本技術者教育認定機構(JABEE)の認定コースを修了することです。
どちらかをクリアして、なおかつ以下のうち、どれかを満たす必要があります。
- 技術士補に登録した後、指導技術士の下で4年(総合技術監理部門は7年)を超える実務経験を積む
- 職務上の監督者の指導の下で4年(総合技術監理部門は7年)を超える実務経験を積む
- 指導者や監督者の有無・要件を問わず、7年(総合技術監理部門は10年)を超える期間の実務経験を積む
ただ単に実務経験があるだけでは、技術士になれません。口頭試験でどのようにして今まで問題を解決してきたかを問われるからです。
そのため、社会に出た後も、積極的に知識を深める姿勢が求められます。
なお、理科系の大学院で修士課程、専門職学位課程の修了者及び博士課程に在学した人は、2年を上限にして実務経験の期間を減らすことができます。
技術士試験合格のコツ
「技術士試験の合格率を上げるコツってないの?」
メリットは多いが難易度が極めて高い試験ゆえに、こう考える人は多いでしょう。
実は、技術士試験に合格するためのコツはいくつかあります。ここでは合格に近づく方法を紹介していきますので、参考にしてください。
資格取得までは長期戦の覚悟は必要
まず、以下の2つを認識してください。
- 大切なことは資格を取得するには、年単位で長い時間がかかること。
- 二次試験に合格した後は実務経験が求められるので、仕事と勉学の両方をこなさなければならないこと
そのため、場当たり的では合格できません。技術士試験を目指したその日から、しっかりと計画を立てて一歩一歩進んでいく必要があるのです。
もし、計画を立てるのが苦手な人は、通信講座などを利用するとよいでしょう。スケジュールを立てやすくなるので、おすすめです。
合格するのに必要な勉強時間ですが、通常は1000~5000時間。多くの場合は複数年勉強し続けることが求められます。
一部には数か月で合格する人もいますが、基本的に資格を取得するためには長い時間がかかる覚悟を持ってください。
二次試験の論述方式に慣れることも重要
二次試験の論述問題は難易度が高いので、9割近くの人が跳ね返されます。
その理由は、他人が読んでもわかるように論理的に文章を書く必要があるからです。
つまり、問題を解決する方法をわかっているだけでは不十分で、しっかりと順序立てて物事を説明していく力が求められるのです。
この技術を磨くためには自分一人では難しいので、第三者に添削してもらって自分の文章の良いところを伸ばして、悪い部分を直していく必要があります。
その上で、論述問題になれていくようにすれば、合格率を高めていけます。
技術士についてのまとめ
技術士についてのまとめ
- 技術士は超難関なので資格を得ると、多大な信頼を得られる
- 技術士になると収入面で優遇されやすくなる
- 資格取得には長い時間が必要
- 目的意識を持って仕事と勉学に励む必要がある
技術士は五大国家資格であり、超難関の資格です。そのため、取得すれば知識はもちろん、経験も倫理観も素晴らしい技術者として認められます。
また、資格を得るために高い問題解決能力を磨いてきているので、会社に入れば管理職などに抜擢されやすく、収入面でも大きなメリットが得られるのです。
ただし、技術士になるためには、険しく長い道のりに耐えなければなりません。例えば、一次試験に合格後、多くの人は最低4年の実務経験を積まなければならないからです。
さらに、難関の二次試験に合格するために、仕事と勉学の両方をすることも求められます。それらをクリアして、ようやく技術士になれるのです。
誰でも自分一人で合格するのは困難です。難しいと感じたときは、通信講座を利用してみてください。ノウハウが詰まっているので、合格の助けになりますよ。
是非興味のある方は挑戦してみて下さい!