管理業務主任者は食えない資格なのか?役立たないと言われる理由や将来性まで解説!
不動産関連の資格といえば、宅地建物取引士を真っ先に思い浮かべる人も多いかもしれません。ですが都心の再開発などに伴い、近年はマンション関連の資格も注目されているのをご存知でしょうか。
マンション関連の資格はいくつかありますが、特に注目されているのが管理業務主任者とマンション管理士です。ただし、求人数を見ると宅建士の求人などに比べて数が少ないため、「食えない」「役に立たない」などネガティブなイメージが先行している部分もあり、実態が気になるという人も多いかもしれません。
そこで、今回は特に管理業務主任者に注目して、その実態について分析してみましょう。
管理業務主任者は役に立たないのかざっくり説明すると
- 管理業務主任者の知名度はまだ低いため、評判と実態がかけ離れている
- 管理業務主任者は決して「食えない」「役に立たない」資格ではない
- 管理業務主任者の資格は将来性が期待できる
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管理業務主任者は食えないとされる原因5選
管理業務主任者が「食えない」と言われている主な原因は、以下の5つが考えられます。
- 資格の難易度がそこまで高くない
- 知名度がまだまだ低い
- 資格に加えて経験やスキルが必要
- 活躍の場が不動産業界などに限られる
- 単独の資格で独立開業は難しい
それぞれの原因について、以下の項目で解説していきましょう。
資格の難易度がそこまで高くない
法律系・不動産系の資格はいくつかありますが、管理業務主任者の合格率は20%前後で推移することが多く、令和3年度の場合は19.4%でした。合格に必要な学習時間も300時間程度と言われており、比較的短期間で合格しやすいと言えます。
一方、よく似た名称のマンション管理士の合格率は例年7~9%で推移しており、令和3年度の合格率は9.9%でした。必要な勉強時間も500時間程度と言われているので、マンション管理士の方が、価値が高いと考えられていた側面もあります。
ですが、必ずしも試験の難易度と需要は比例しません。これから需要が伸びる可能性を考慮すれば、管理業務主任者は役に立たないどころか、むしろコスパの良い資格だと言えます。
知名度がまだまだ低い
管理業務主任者は2001年に創設された、比較的新しい資格です。他の法律系の資格と比較すると、世間的にはまだ知名度が浸透していないと言わざるを得ません。
ただし、地方都市でもマンションの需要が増えてきており、特に高齢者などは、利便性が良く街の中心部に近いマンションを購入する傾向があります。したがって、管理業務主任者の本領発揮はこれからだと考えられるでしょう。
資格に加えて経験やスキルが必要
どの資格にも共通して言えることですが、資格を取得するだけでは、すぐに収入に直結するわけではありません。資格に加えて、経験やスキルを積んで同業者との差別を図るのが、収入アップへの道です。
考えようによっては、新しい資格である分だけ実力次第で業界トップクラスに躍り出る可能性もあるでしょう。そのためにも、合格後の登録実務講習のみで満足するのではなく、積極的に求人に応募するなど、活動の場を広げながら経験を積むのがおすすめです。
活躍の場が不動産業界などに限られる
管理業務主任者はマンションに特化した資格であるため、活動の場が不動産業界などに限られます。ただし、後述するように有資格者しか従事できない独占業務があるため、専門性が高いとみなされ、無資格者より有利な地位に立てます。
現在不動産業界において、マンションの需要は依然として伸び続けています。新築物件だけでなく、既存の物件でも管理組合との架け橋となる管理業務主任者は、不動産業界においてかなり重宝される存在だと言えるでしょう。
単独の資格で独立開業は難しい
弁護士や司法書士とは異なり、管理業務主任者の資格だけで独立開業する例は、まれでしょう。弁護士や司法書士は試験の難易度が非常に高く、報酬も独占業務の特殊性に比例して相場自体が高額であるため、高収入が期待できると言えます。
それに対して、管理業務主任者は独占業務や活躍するフィールドが限られるため、高収入を得るのは難しいと考えられています。そのため、マンションを開発するディベロッパー会社などに勤務していたり、不動産会社の社員として、業務の一環で資格を取得したりすることもあります。
ただし、ダブルライセンスやトリプルライセンスを所持していると、活躍できる領域が広がるので、「稼げない」と言われる状態を脱出し、独立の可能性が出てきます。さらに働き方改革が叫ばれるようになり、大手不動産会社でも管理業務を外注したり、業務提携を進める可能性もありますから、これから変革の余地がある領域だと言えるでしょう。
管理業務主任者は取得する価値が大きい
なぜ管理業務主任者はこれから需要が高まると考えられるのでしょうか。その要因について、分析していきましょう。
独占業務の存在は大きい
まずは、独占業務がある点です。管理業務主任者しか扱うことが認められていない業務で、以下の4つが法律で管理業務主任者の独占業務とされています。
- 管理受託契約前の重要事項の説明
- 重要事項に関わる書面への記名、押印
- 管理受託契約にかかる契約書への記名、押印
- 管理事務に関わる報告
マンションの建物自体は大手のディベロッパーなどが所持していても、実際にマンションを快適に利用できるように管理しているのは、入居者で作る管理組合です。
上記の手続きは、マンション管理を適正に運営する上で、欠かせない大切な仕事です。 有資格者がいないと法律的な話を進められませんし、どのマンションでも、1年に1度は必ず契約更新などに関連する説明を行わなければなりません。従って、独占業務の価値は非常に高いと言えるでしょう。
マンション管理会社に設置義務
マンション管理を扱う会社は、30管理組合につき1人以上の割合で、管理業務主任者を置かなければなりません。この基準を満たさない場合には2週間以内に基準を満たさなければならず、違反すると罰金の対象になります。
また、マンションの需要自体は増えているにも関わらず、受験者数は緩やかな減少傾向が見られます。他にも
- 宅建士との兼任に制限がある
- 5年毎に資格を更新しなければならない
- 2年以上の実務経験か、試験合格後に登録実務教習の受講+修了試験合格が必要
など、資格を維持し続けるにも労力が求められる資格です。
試験合格後に実際に管理業務主任者として活躍し続けている人は、まだ少数派だと言えるでしょう。
以上を勘案すると、管理業務主任者は需要に対して供給が少ない状態であり、有資格者は非常に重宝されやすい状況です。
適切なマンション管理のために不可欠
マンションを適切に管理していくために、管理業務主任者は
- 資料・活動記録の作成
- 理事会・総会の運営のサポート
- 住民・業者への折衝や対応
など、非常に多くの仕事をこなしています。マンションのフロントマンとして、住民・管理会社の橋渡し役を担い、どちらにとっても重要な人物だと言えるでしょう。
集合住宅では、住民同士や入居者と管理会社の感情のすれ違いは、よくあるものです。そのような場面を想定した知識を持つ専門家の存在は、マンション管理を適正に行う上でも大切な役割なのです。
管理業務主任者が活躍できる業界
試験に合格して資格を得ても、業界がマッチしていなければその価値を生かす事はできません。管理業務主任者が活躍する業界は、どのような業種が考えられるのでしょうか。
マンション業界で働くなら必須
ここまで述べてきたように、有資格者がいないとマンション管理会社は、管理委託契約を締結できません。従来のアパート経営よりも、専門的な知識が必要とされる場面も多く、マンション業界で働くならば、必須資格です。
また、国家資格であり資格手当の対象としている会社も多いです。後述するように、金融業界などもマンション管理業に進出しているので、従来の枠にとらわれない求人も増加傾向にあります。
その他の業界でも幅広く役立つ
昨今は不動産業界において、従来は戸建て中心に業務を行ってきた不動産会社でも、マンション経営・管理に乗り出す企業も増えています。さらに金融業界でも不動産部門を創設して管理に携わるケースも出てきていますから、ダブルライセンス狙いで取得するケースもあるでしょう。
管理業務主任者は、利用者の入居後のアフターケアにも携わりますから、管理業務主任者は営業・折衝能力も長けている方が望ましいと言われます。長年それらの業務に携わってきた人にも、おすすめの資格です。
管理業務主任者の年収は400万円程度
勤務型の管理業務主任者の平均年収は400万円程度と言われています。日本の平均年収よりやや低めですが、要因としては、次のような理由が考えられます。
- 受験者の年齢層が高い
- 資格創設からまだ日が浅く、専門職としての認知度が低い
- 勤務型の管理業務主任者が多く、収入がサラリーマンの平均とあまり変わらない
ただし、これは政府などによる正式なデータではありません。開業した人やダブルライセンサーなどの実態が反映されていないので、数値の信憑性や「稼げない」という一般論には、やや疑問が残ります。
また大手のディベロッパーに勤務しており、その中で管理業務主任者として勤務している場合には、この数値よりも高い収入を得ているケースもよくあります。平均収入は、あくまでも参考値程度にとどめておくべきでしょう。
管理業務主任者とマンション管理士の関係
ところで、管理業務主任者とマンション管理士はダブルライセンスを目指す人も多いですが、両者の違いについてお分かりでしょうか。
管理業務主任者は管理運営会社側の視点で、マンション住民との折衝や運営のアドバイスを担当します。実際に業務を担当している人もマンション管理運営会社の社員が多く、事務仕事を始め、自治体や官公庁、住民との折衝など業務は多岐に渡ります。
一方、マンション管理士は住民側の視点に立って、マンションの住民に対してコンサルタントの役割を果たします。
- マンションの管理規約や使用細則の作成
- 大規模修繕計画の策定
- 住民同士のトラブル解決へ向けた予備交渉
- マンション管理に関する住民相談
などこちらも多くの業務がありますが、管理業務主任者と異なり、独占業務がありません。また、マンション管理士はマンション運営の顧問の役割を果たすので、マンション運営会社の利益を考慮する必要なく、独立開業を目指しやすいと言えます。
いずれにせよ、どちらの資格も法律上の知識だけでなくビルメンテナンスの知識などもある方が様々な局面に対応しやすいため、常に自己研鑽が求められる資格だと言えるでしょう。
管理業務主任者の将来性と取得するメリット
ここで、管理業務主任者の将来性と、資格を取得するメリットについて考察してみましょう。
将来性は十分にある
管理業務主任者はまだ未開拓の分野が多いにも関わらず、将来性が見込める資格です。その理由について、以下の項目で説明してきましょう。
今後も安定する見込みが高い
管理業務主任者は、独占業務がある点や設置義務を考慮すると、他の業種に代替されるリスクが少ないと言えます。また、マンション管理会社も経営が安定している企業が多く、就職・転職先としても有望です。
さらに、毎年20万戸の新築マンションが建設されていますが、今後経年劣化などにより必ず修繕の問題なども発生します。そのような局面において、管理会社への窓口として管理業務主任者の果たす役割は非常に大きいですから、活躍実績が見えてくるのはこれからだと言えるでしょう。
業界自体の発展の余地がある
法律・不動産系の資格の中では比較的新しい資格であり、専門職としてのノウハウはまだ発展途上にあると言えます。営業や折衝能力が必要な仕事ですが、この分野における改善の余地は大きく、他業種での従来の手法に捕われない柔軟さも必要でしょう。
管理業務主任者の資格を取得すべき理由
先に述べたように、管理業務主任者は比較的取得しやすい国家資格である上に、今後需要が高まると見込まれます。その理由について、触れていきましょう。
就職・転職や昇給に役立つ
マンション管理会社はいくつも物件を持っているのが通例であり、設置義務があるマンション管理会社に就職・転職する際には、大きなアピールポイントになります。国家資格ですから、資格手当の支給対象になる可能性も高く、待遇の向上が期待できるでしょう。
マンション管理会社の設立も可能
管理会社で3~5年の勤務経験を積むと、社内でも中堅以上のポジションとみなされるようになります。そこでさらに努力を重ね、他の業務の知識や経験を重ねれば、独立してマンション管理会社を設立することも可能でしょう。
現在の業界事情を考慮すると、まだ独立は簡単ではありません。ですが、地域の中小不動産会社とのコネクションを作り、新しい業務形態を提案するなどの発想力を磨けば、業界の発展に伴って成功する機会は増えてくるでしょう。
管理業務主任者は食えないのかまとめ
管理業務主任者の資格の価値まとめ
-
管理業務主任者は「稼げない」と言われるが、これから必要とされる資格である
-
需要の伸びは確実であり、難易度の割にコスパの良い資格である
-
管理業務主任者の資格は不動産業界内において重宝される
管理業務主任者は、今までは知名度の低さや業務の実態がよく知られていない部分もあり、受験者数も緩やかに減少しています。ですが、仕事としての需要は伸びると期待できますから、むしろ資格を取得して経験を積むことで、従来にはなかった業務形態の開拓にもつなげられるでしょう。
何かとネガティブなイメージで語られがちですが、管理業務主任者は業界内では重宝され、将来性のある資格です。「手に職を付けたい」と考えている人には、スタート地点として相応しい資格ですから、ぜひ挑戦してみてくださいね。