地方公務員の退職金はどのくらい?勤続年数・退職理由ごとの相場や計算方法も解説
「地方公務員の退職金ってどんな計算で算出するの?」
「地方公務員の勤続年数や退職理由について知りたい!」
このような疑問をお持ちの方、いらっしゃいませんか?
地方公務員は全国転勤がなく安心して働くことができるため、多くの人が目指す人気の職業です。
近年は、老後資金問題が取り沙汰されることもあることから、退職金について知りたい方も多いのではないでしょうか。
こちらの記事では、地方公務員の退職金の計算方法や金額の相場、支給日などについて詳しく解説していきます!
地方公務員の退職金などについてざっくり説明すると
- 退職金の支給は法律で規定されており、厳格に運用されている
- 自己都合で退職すると相場よりも安くなる
- 定年退職した場合、支給日は4月になる
- 老後資金作りは自助努力も必要
このページにはプロモーションが含まれています
地方公務員の退職金制度とその仕組み
地方公務員の退職金の額などについて解説する前に、まずは退職金制度やその仕組みについて知っておきましょう。
退職金制度は法律で規定されている
国家公務員の退職金制度が「国家公務員退職手当法」に定められているのと同様に、地方公務員の退職金も各地方の地方自治法第204条第2項及び第3項によって規定が設けられています。
また、退職手当については地方公務員法第24条第3項に基づき、国家公務員の制度等に順じて決定がなされています。
つまり、公務員の退職金に関する事項は法律によってルールが決められており、厳格に運営されているのです。
地方公務員の年金制度変化の影響
地方公務員の年金は、以前は「職域加算」という独自の加算がされていました。
しかし、現在ではこれが廃止され「年金退職給付」という制度が設けられています。
これにより、年金額の半分が生涯年金、残り半分が一時金もしくは10年か20年での受け取りとして変更されたため、退職後の収入源に変化が加えられました。
どちらにしても手厚い給付となっているため、コツコツとキャリアを積み重ねることが重要と言えます。
給与水準はラスパイレス指数で分かる
地方公務員の退職金の給与水準については
「ラスパイレス指数」
という指数によってある程度計算することができます。
なお、この「ラスパイレス指数」とは「国家公務員の給付水準を1としたときのその自治体の給付水準」を指します。
つまり、指数が1を超えていれば国家公務員よりも給付が手厚いというわけです。
地方公共団体ごとのラスパイレス指数を基準として給与水準を計測すると、政令指定都市→都道府県→市町村区の順番で給料が高くなっています。
ただし、退職金については必ずしもこの順番で高くなるとは限らない点に注意しましょう。
地方公務員の退職金の相場
地方公務員の全退職者平均退職金
令和4年度の給与・定員等の調査結果等を参考にすると、職種ごとの平均退職金は以下の表のようになります。
職種 | 平均退職金 |
---|---|
一般職員 | 1,210万円 |
一般行政職員 | 1,491万円 |
教育公務員平均 | 1,479万円 |
警察職平均 | 1,663万円 |
全職種平均 | 1,374万円 |
厚生労働省の発表する就労条件総合調査結果の概要によると、勤続20年以上かつ45歳の退職者(自己都合退職の場合)に支払われる退職金は平均1,586万円でした。
自己都合退職の場合は、計算の過程で乗じる数値が低くなる都合上、平均よりも低い金額となってしまうため注意しましょう。
地方公務員の60歳定年退職金
同様のデータを参考にすると、地方公務員の定年退職者の平均退職金額を職種ごとにまとめると以下の表のようになります。
職種 | 平均退職金 |
---|---|
一般職員 | 2,148万円 |
一般行政職員 | 2,175万円 |
教育公務員平均 | 2,230万円 |
警察職平均 | 2,199万円 |
全職種平均 | 2,204万円 |
前述した厚生労働省のデータを参考にすると、定年退職者に支払われる退職金の平均は1,941万円であるため、定年退職で退職する場合は退職金の額も大きくなります。
とはいえ、数十年後になると同じ金額の水準が維持できているとは限らないため、あくまで目安として考えておくと良いでしょう。
退職金は市町村区公務員の方が多い
総務省の発表する「令和4年度給与・定員等の調査結果等」を参考にすると、都道府県、指定都市、市区町村別にみた退職金の平均は以下の表のようになります。
地方公共団体名 | 平均退職金額 | 平均定年退職金額 |
---|---|---|
都道府県 | 約1374万円 | 約2204万円 |
指定都市 | 約1323万円 | 約2144万円 |
市区町村 | 約1238万円 | 約1764万円 |
給与水準では指定都市が最も高い水準ですが、退職金の平均では都道府県が最も高いという結果になっています。
国家公務員の定年退職金と比較
国家公務員の定年退職手当金額の平均は、常勤職員であった場合は約2658万円で、行政職俸給手当表の水準に則って計算すると約2694万円です。
出典:「内閣府 国家公務員の退職手当」
民間企業では退職金の制度が無い企業もあるため、非常に手厚いと言えるでしょう。
退職金の額としては地方公務員の方が高いものの、地方公務員よりも基本的な年収は高い水準にあるため、生涯賃金で言えば国家公務員の方が高くなります。
地方公務員の退職金支給日
定年を迎えて退職する場合であれば退職は3月末となり、多くの自治体では退職金の支給日は概ね4月になります。
ただし、自己都合による退職をした場合は内部処理などの事務作業に時間がかかってしまう都合上、退職金の支給に数ヶ月の時間がかかってしまう場合があるため注意しましょう。
自己都合退職の場合の退職金支給日は「退職後3か月程度」と見積もっておけば安心です。
地方公務員の退職金は減少傾向
2006年の地方公務員定年退職金額は平均2800万円程度でした。現在は2200万円ほどになっているので、減少傾向にあることがわかります。
また、今後も一般会社員との格差是正や法改正の影響で、退職金が徐々に減少していく可能性が大いにあり得るでしょう。
さらに、法改正により定年退職が65歳に引き上げられ、60際〜65歳の給与が退職直前の7割に減額されることから、退職金のベースとなる退職直前給与も減少することになります。
65歳まで働くことができる点は歓迎できるポイントですが、退職金の支給の計算に関しては懸念すべきポイントであると言えるでしょう。
地方公務員の退職金の計算方法
基本額と調整額によって算定される
公務員の退職金の計算方法は、基本額と調整額という2つのポイントがあります。
基本額は、退職日の俸給月額と退職理由・勤続年数別支給割合の積で計算されるもので、コツコツと地道にキャリアを積んでいればそこそこの金額になるでしょう。
調整額は、調整月額のうちその額が最も多いものから60ヶ月分の額を合計した値として計算されます。
計算式としては、退職金額=基本額+調整額として算出されます。
勤続年数・退職理由で金額が変わる
退職時の勤続年数や退職理由によって上記の基本額の支給割合が変わってくるため、算出される退職金額も大きく変わってきます。
それぞれの条件において、退職金の支給率は以下の表のようになります。
勤続年数 | 自己都合 | 定年・勧奨 | 整理退職 |
---|---|---|---|
1年 | 0.6月 | 1.0月 | 1.5月 |
5年 | 3.0月 | 5.0月 | 7.5月 |
10年 | 6.0月 | 10.0月 | 15.0月 |
15年 | 12.4月 | 19.375月 | 23.25月 |
20年 | 23.5月 | 30.55月 | 32.76月 |
24年 | 31.5月 | 38.87月 | 39.624月 |
25年 | 33.5月 | 41.34月 | 41.34月 |
30年 | 41.5月 | 50.7月 | 50.7月 |
35年 | 47.5月 | 59.28月 | 59.28月 |
45年 | 59.28月 | 59.28月 | 59.28月 |
出典:「地方公務員の退職手当制度について」
退職理由によって退職金は増減
上の表のように、自己都合退職では退職金が減ってしまいます。
一方で、職場都合による整理退職や、定年を延長した際に受け取ることのできる退職金は増加します。
定年退職以外の場合の退職金の額についてもしっかりと押さえておきましょう。
地方公務員の退職金額の例
こちらで、地方公務員の退職金額を実際に例を用いて計算してみましょう。
実際に計算方法などを知っておくことで、公務員として働いた際の退職金をイメージしやすくなります。
なお、退職金額の一例として「勤続年数38年」「退職日の月額給与50万円」「退職理由は定年退職」「職員区分は第2号」として退職金額を計算してみると、退職金額は以下のようになります。
- 基本額約2385万円
- 調整額約234万円
- 合計退職金額約2620万円
大卒で採用されて60歳まで働いた場合は38年間働くことになるため、一般的な目安として参考にすると良いでしょう。
地方公務員が老後資金を貯めるには
前述したように、安泰と言われている公務員であっても、地方公務員の退職金額は年々減少しています。
そのため、地方公務員にこれからなろうと考えている人や、現在公務員としては足りていて退職までまだまだ年数がある方は、早い段階で老後資金の準備をしておくと安心です。
なお、具体的な資産運用の方法としてはiDeCoやつみたて投信などが挙げられ、こちらのトピックで詳しく解説していきます。
iDeCoが公務員でも利用可能に
iDeCoとは「個人型確定拠出年金」とも呼ばれており、簡単に言うと「自分自身で作る年金」です。
前までは公務員はこの制度の対象外でしたが、2017年から公務員もiDeCoに加入することが可能となりました。
iDeCoを利用することで節税面で大きなメリットがあります。
掛け金の全額が小規模企業等掛金控除の対象になるだけでなく、運用で利益が出たときも税金が引かれることはありません。
一般的な株式などでは運用益に20.315%の税金がかかってしまうため、iDeCoは非常に優れた資産運用方法と言えます。
デメリットとしては、公務員は一般の会社員に比べて月々の掛け金が少ないことや、原則60歳までお金を引き出せない点が挙げられます。
つみたて投資はリスクが少ない
iDeCoと同じように節税の面でメリットがある資産運用方法につみたてNISAがあります。
つみたてNISAを用いることで、長期的な積み立て投資を行い運用益が出た時も非課税で運用することができます。
毎月コツコツと積み立てる方法は小額で始められる上にリスクが少ないため、投資経験が無い初心者に特におすすめの資産運用方法です。
特に、先進国インデックスは国内インデックスと比較して成長率も高く、おすすめの銘柄と言えます。
なお、つみたてNISAの対象となるのは安全性の高い投資信託に限られるため、リスクを許容できる方であれば途上国投信や全世界投信を選ぶのもおすすめです。
個人年金保険もおすすめ
個人年金保険とは、民間の保険会社で加入する私的年金のことで、個人年金保険特約が付帯されていれば年末調整で節税することも可能です。
加入時に将来受け取る金額が決定するという特徴を持っており、比較的安全に老後資金を作ることができます。
受け取りのタイミングは自分で決定することができ、柔軟に設定できるメリットがあるため公務員のみならず多くの社会人から人気があります。
ただし、途中解約してしまうと元本割れしてしまうケースが多く、結果的に損をしてしまうこともあるため、デメリットを踏まえてうえで加入するかどうかを判断しましょう。
公務員の資産運用方法について
老後2000万円問題や止まらない少子高齢化の影響もあり、今の現役世代は自分の老後については自助努力が大きく求められています。
「貯蓄から投資へ」というスローガンもあるように、「お金に働いてもらう仕組みづくり」を早い段階で作ることができればリタイア後も豊かな生活を送れるでしょう。
幸いなことに、公務員は給与が安定していることと、手厚い身分保障があるため資金計画が立てやすい強みがあります。
こちらのトピックでは、公務員のおすすめ資産運用方法について解説していきます。
iDeCoは最優先
先ほどのトピックで老後資金つくりの方法について解説してきましたが、最優先して加入するべき商品はiDeCoです。
iDeCoは60歳まで原則引き出すことができないため、まさしく老後資金作りに特化している商品なのです。
また、iDeCo最大の魅力は税金面の優遇です。
公務員は月額12,000円が上限となっていますが、掛金が全額小規模企業共済等掛金控除の対象となるため、非常に大きな節税効果があります。
具体的には、毎月12,000円を拠出している所得税率10%・住民税率10%の方であれば、
144,000×0.2=28,800
となり、年間で28,800円の節税ができるのです。
自分のお金が増えるわけではないため得をしている実感はありませんが、実際には非常にメリットがある、優れた資産運用商品なのです。
なお、つみたてNISAとiDeCoでの運用は「ドルコスト平均法」と呼ばれる手法が活用できるため、資産運用初心者でも低いリスクで運用することが可能です。
運用する商品は自分で選ぶことになるため、信託報酬が安い商品や手数料などのコストが低い商品をベースに選ぶと良いでしょう。
余裕があれば国債や株式投資も
安全に老後資金作りをするためにはiDeCoが最優先するべき商品ですが、手元の資金に余裕がある方であれば国債や株式の購入もおすすめです。
国債の変動10年は最低利率が0,05%になっており、リターンは少ないものの普通預金よりも高い利率で安全に運用することができます。
また、購入する金融機関によってはキャンペーンとしてクオカードなどをくれるところもあるため、色々と調べてみると良いでしょう。
一方、ある程度のリスクが許容できる方であれば株式投資もおすすめです。
「株式投資はリスクが高くて危険なのでは?」と考えている方もいると思いますが、自分で商品をしっかりと吟味すればそこまでリスクは高くありません。
ざっくり説明すると、自己資本比率が高く多く取引がされている人気の銘柄であれば、安全に運用することが可能です。
株式投資だと年で3~4%で運用することも可能で、会社によっては株主優待制度があり自社商品やカタログギフトを送ってくれるところもあるため、楽しみながら銘柄を選ぶこともできます。
最近は少額から株式投資ができる証券会社も出てきているため、興味がある方はぜひ株式デビューをしてみてください。
地方公務員の退職金などのまとめ
地方公務員の退職金などのまとめ
- 安定して支給されるが、近年は金額が減少傾向にある
- 勤続年数が長く定年まで勤めあげれば、そこそこの金額がもらえる
- 今は相場よりも高いが、定年延長によって退職金の減額が懸念されている
- iDeCoやつみたてNISAなども有効活用しよう
地方公務員の退職金の金額や支給日について解説してきましたが、いかがでしたか?
現在の支給相場は恵まれていますが、今後は定年延長や公務員の定数削減などの影響もあり減額することが予想されます。
とはいえ、法律で厳格に運用されており安定して支給される強みがあるため、その点は安心だと言えるでしょう。
自助努力などもしっかり行うことが豊かな老後につながるので、公務員の方や公務員を目指している方はぜひこの記事を役立てて下さい!