危険物取扱者の仕事ってどんなもの?甲種・乙4等種類別の違いや就職事情まで解説!
「危険物取扱者の資格って色々あるけど、どれを取ればいいの?」
「資格の名前は聞いたことあるけど、実際どんな仕事をするの?」
このような疑問をお持ちの方もいるでしょう。
「危険物取扱者」とひと口に言っても、免状の種類がさまざまあり、どこから手をつけたら良いのかわかりにくいです。
今回は、危険物取扱者の仕事内容から免状の種類、危険物取扱者に向いている人の特徴や就職後の年収などについて解説していきます。
この記事を読めば危険物取扱者の就職・転職や年収事情について詳しく知ることができます。
危険物取扱者についてざっくり説明すると
- 危険物を保管して取り扱う施設には、危険物取扱者が必要
- 甲種・乙種・丙種があり、ガソリン等を扱える乙種第4類(乙4)が人気
- 化学薬品や医薬品を扱う会社に就職したい人は取得しておくと有利
危険物取扱者の主な仕事内容
以下では、危険物取扱者資格を有しているとできる仕事について説明してきます。危険物取扱者は人々が生活する上で必要な仕事に携る場面が多いです。
タンクローリーの運転手
タンクローリーには、ガソリンスタンドへガソリンなどを輸送する車数台分にもなる長いタンクを載せた種類や、個々の住宅や施設に注文された灯油を運ぶ小型のタンク車まであります。これらのタンクローリーで危険物を運搬するのは、危険物取扱者の仕事です。
タンクローリーでガソリンや灯油・ガスなどを運搬する場面はよく目にしますが、危険物を運搬するには、危険物取扱者の資格が必要です。つまり、こうした危険物の運搬場面の分だけ危険物取扱者の活躍が求められるということです。
ほとんどの場合、危険物取扱者の有資格者がタンクローリーを運転するため、危険物取扱者の資格とともに大型自動車の免許があると即戦力になります。さらに、けん引免許も取得しておくと活躍できる場面は増えていきます。
もし、資格者が運転免許を取得していない場合には、運搬時に有資格者が乗車していればよいため、同乗者に運転してもらう形を取ることもできます。
このような体制を取ることで、危険物の適切な運搬が可能になり、事故を防ぐための重要な安全対策となります。安全な輸送の実現には危険物取扱者の専門的な知識と技術が不可欠であるといえるでしょう。
危険物保安監督者
危険物保安監督者は、危険物を取り扱う作業者へ必要に応じて指示をする人です。
危険物の製造所・屋外タンク貯蔵所・移送取扱所・給油取扱所では、危険物保安監督者を常時選任しておかなければなりません。そのため、このような危険物施設の分だけ、危険物保安監督者の需要もあるということになります。
危険物保安監督者になれるのは、危険物取扱者の中でも、甲種・乙種ともに実務経験を6ヵ月以上積んだ人です。
ただし、乙種の資格者は活躍できる場面が免状を取得した種類の施設に限定されます。そのため、免状が乙4だけであれば、乙4の危険物を扱う施設以外では危険物保安監督者になることができないので気をつけましょう。
また、丙種の資格者は第4類危険物の中でも扱えるものが限定されており、危険物保安監督者になることはできません。
ガソリンスタンドの店員
ガソリン車やディーゼル車に給油を行い、灯油を販売しているガソリンスタンドは「給油取扱所」とされているため、危険物取扱者や危険物保安監督者が必要です。
セルフ給油のガソリンスタンドでは周囲にスタッフがいなくても、常駐している甲種か乙4の危険物取扱者がモニター越しに利用客を監視しており、安全を確認してから給油の許可を行っています。
このシステムにより、セルフ給油でも危険物の取り扱いに関連する法令を遵守し、消費者の安全を確保しているのです。
化学・医療製薬会社への就職も可能
化学薬品や医薬品を製造する会社では危険物を扱う事も多いです。消防法による指定数量以上の危険物を扱うときや保管する場合には危険物取扱者を選任しなければならないため、ニーズが高いと言えます。
特に、薬品知識の豊富な薬剤師資格保有者が危険物取扱者を取得すると鬼に金棒といえますが、危険物取扱者資格を有しているだけでも化学や製薬関連会社への就職の際には評価されることが多いです。化学薬品や医薬品を扱う会社へ就職したいという方は、ぜひ危険物取扱者を受験してみましょう。
発電所での勤務
発電所やプラント施設にはプラントの見廻りや監視をはじめ、燃料の投入、設備の点検・修理、非常時の対応などさまざまな仕事があります。危険物取扱者の有資格者でなければできない仕事が多いため、現場で頼りにされます。
発電所の保守員を行う際には危険物取扱者は業務上必要な資格なので、取得支援を行っている企業も多いです。また、実務経験を積む過程で関連業務の専門知識を身につけると、働き方のバリエーションも増えるでしょう。
危険物取扱者が求められる職場
危険物取扱者がいなければならない施設や、資格のない人にはできない仕事が少なからず存在します。次は、危険物取扱者が必要な職場を挙げていきます。
危険物を扱う職場
当然のことながら、危険物を扱う職場では資格者がいなければ業務が行えません。危険物を扱う職場として代表的なのは、ガソリンや軽油・灯油などを扱うガソリンスタンドや、化学薬品会社などです。
資格を持たない従業員が消防法で指定されている危険物を扱う際は、甲種または該当種類の免状を持つ乙種危険物取扱者の立会いが必要です。
この立会いによって、危険物の取り扱いが法令に則って適切に行われるようにし、人々の安全と環境への影響を最小限に抑えるための重要な役割を果たしています。
危険物を保管する職場
石油プラントなどで危険物の保管をする職場でも、危険物取扱者が法律上必要と定められています。事業所が複数の場所に危険物施設を設置している場合、施設ごとに危険物保安監督者を選任しなければなりません。
たとえば、ホテルや旅館といった宿泊施設でも、ボイラーの燃料用に重油などを大量保管する場合は、危険物取扱者の資格を持つ人を置かなければならないと法令によって定められています。
宿泊施設ではボイラーに使用されるガソリンや灯油・重油などを扱うことが多いため、甲種や乙種第4類を持つ人が活躍できます。乙種第4類は「乙4(おつよん)」とも呼ばれ、危険物取扱者を受験する方たちにも人気の資格です。
危険物を運ぶ職場
危険物の運搬業務がある職場としては、ガソリンをはじめとした石油製品や医薬品を扱う企業などが挙げられます。
ガソリンスタンドや工場などに石油製品を輸送するときには、大型タンクローリーで行うことが多いですが、危険物取扱者取得者にはその他の場面でも活躍が可能です。
フォークリフトの免許と危険物取扱者の資格があれば、工場や倉庫で危険物を運搬する仕事もできます。
仕事内容によっては、乙4のほかに大型自動車免許とフォークリフトの両方を必須としている企業も見られるというのが現状です。そのため、より汎用性の高い危険物取扱者の資格を先に取得し、その後こうした特殊な免許証も取得すると仕事の幅は広がります。
危険物取扱者に向いている人
危険物取扱者資格を取得しても、実際の仕事内容に適性がないと、せっかくの資格もうまく生かせない恐れがあります。ここでは、危険物取扱者の適性がある人の特徴を見ていきましょう。
責任感が強い人
危険物取扱者は、少し間違えると大事故を引き起こしかねない製品を扱う仕事です。そのため、危険物取扱者として働くには、危険なものを扱っているという自覚を持ち、安全に作業を遂行しようという責任感が必要です。
実際に、危険物取扱者を取得すると「資格を持つ前よりも仕事に対する考え方が変わった」「責任感が増した」という人が多いです。
化学製品知識に詳しい人
危険物取扱者は業務上、硫黄やガソリン・アルコール類など数多くの化学製品を扱うため、化学製品の知識を持っていると、試験を受けるときのアドバンテージになります。
修士・学士の学位を持ち、化学を専攻していた人や、大学などで化学に関する学科を修めて卒業した人、化学に関する授業科目を15単位以上修得した人は、乙種を取得しなくても甲種の受験ができるので有利です。
そのほかの人が甲種を受験する場合には、乙種の免状を持った上で危険物取扱いの実務経験を2年以上積むか、経験がない場合は、定められた4種類以上の乙種危険物取扱者免状を取る必要があります。
集中力が高い人
危険物の取扱い中は絶えず注意を払わなければなりません。不注意による事故が起こることがないように危険物取扱者という仕事には集中力の高さが求められます。
作業中に気をつけるのはもちろん、施設内に不要な危険物が置きっ放しになっていないか、危険物保管庫の施錠はしてあるか、廃棄は確実に行われているかなど、細かい点まで目が利くことも大切です。
危険物取扱者の年収
重要な仕事である分、リスクも伴う危険物取扱者の年収はどのくらいなのでしょうか。また、年収は甲種・乙種取得者の間で給与面などでの違いはあるのでしょうか。ここでは危険物取扱者の給料に関する事情を見ていきましょう。
危険物取扱者の平均年収は500万~600万
色々比較してみると、危険物取扱者の平均年収は500~600万円程度であることが多いようです。ただし、就職した企業の規模や、携わる業務によって金額は違います。
たとえば、危険物運搬を行うタンクローリードライバーの場合、年収は350~500万円程度ですが、運転する距離や運搬する危険物の種類、残業や資格手当の有無で年収は上下します。
種類ごとに見ると甲種は年収が高く乙4も需要が高い
甲種の人はどの危険物でも扱えるだけではなく、危険物保安監督者として危険物施設の管理者に選任された際には、講習を受けずに「甲種防火管理者」の資格者となることが可能です。
このように、総合的な管理を求められるマネジメント職や、薬品などを扱う技術・研究職では甲種危険物取扱者の求人が多く、業務の重要さから年収は高くなります。
乙種の場合、危険物の約8割を扱うといわれる乙4類を取得していれば、危険物取扱者を求めている企業のニーズに広く応えられます。また、乙種でも立会いができるため、免状を取得している種類の危険物保安監督者になれます。
ただし、乙4は一番人気のある資格で取得者も多いため、正社員として就職するか、パートや派遣で働くかによって収入も変わってくるでしょう。
賃金手当を受けることができる
化学製品会社や製薬会社に就職すると、危険物取扱者には基本給のほかに資格手当などがつくことが多いです。
ガソリンスタンドでパート・アルバイトとして働く場合にも、危険物取扱者は無資格者より時給が高い、あるいは資格手当の支給や正社員となることが望めることもあります。
甲種や乙種4類の危険物取扱者の資格を持っていると、ボーナスを含めて待遇が良くなるようです。
危険物取扱者のやりがい・将来性
ここでは、将来的な見通しや危険物取扱者が行う仕事のやりがいについて触れます。
危険物取扱者は国家資格
危険物取扱者は「一般社団法人消防試験研究センター」が行う試験であり、都道府県知事が免状を交付する国家資格です。
危険物取扱者の資格を取ることで危険物に関する明確な知識が備わっている証明となり、周囲の信頼を得て自分に自信が持てます。職場で多くの仕事を任されるようになると、よりやりがいを見出せるでしょう。
危険物取扱者の仕事はなくならない
人々の生活は、危険物取扱者ひとりひとりの働きによって支えられていることが多いです。
例えば、車を動かすのに必要なガソリン類の給油は、常時スタンドに危険物取扱者資格を取得している人がいるからこそ、資格を持たない一般人でも給油できるのです。
また、危険物取扱者の資格を持つ人が、発電所の保守員として隅々まで目配りして設備保全を行っているからこそ発電所からも問題なく電気が供給されています。
また、新しい薬品の開発や販売が行われるときにも、原材料となる危険物を運搬する危険物取扱者の存在があります。
このような、数々の業種において必要とされる危険物取扱者の仕事はなくなることはないでしょう。
万が一事故が発生してしまった場合
どれほど気をつけて作業をしていても、もらい事故のように突然の自然災害などで異常事態が起こる可能性もあるため、危険物取扱者が細心の注意を払っていたとしても事故が発生する恐れはあります。
万一、非常事態が起こってしまったときには危険物取扱者は冷静に対応し、ほかの従業員に対して的確な指示を行い、被害を広げないよう最小限に抑える努力をしなければなりません。
危険物取扱者は中毒や火災などに対する応急措置を迅速に行うほか、消防・近隣施設関係者等への連絡といった、人の命に関わる大事な役割も担っています。
普段は地味な印象を持たれがちな危険物取扱者ですが、このような事態に真価が問われます。普段から最悪の事態を想定しつつ、落ち着いた対処ができるように心がけましょう。
危険物取扱者についてまとめ
危険物取扱者についてまとめ
- 甲種・乙種の有資格者は実務経験6ヵ月以上で危険物保安監督者になれる
- 大学等で化学を専攻していた人は乙種の免状がなくても甲種を受験できる
- 危険物取扱者は需要の多い国家資格。大型免許があれば就職に有利
ガソリンスタンドはもちろん石油化学薬品を扱う企業などにおいて、さまざまな形で危険物取扱者は仕事をしています。
タンクローリー運転手のように自分自身でガソリンなどを扱うのであれば丙種を取得していれば働くことができます。ただし、「将来的に危険物施設の管理をしたい」といった具体的な目標があるなら、やはり甲種や乙4をはじめとした乙種まで取得することがおすすめです。
危険物取扱者は、危険物を扱うという業務の性質から注意力や責任感が必要とされますが、その分やりがいのある仕事でもあります。
甲・乙・丙の3種類の中でも乙種と丙種には受験資格がないので、危険物取扱者に興味を持った人はぜひ挑戦してみてください。