危険物取扱者甲種・乙種の求人はあるの?仕事内容についても解説

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ガソリンスタンドのような所で事故が発生すると、取り返しのつかない被害が発生します。そのような事故を避けるため、そして社会のインフラを安全に支えるために活躍する存在が危険物取扱者です。

そんな危険物取扱者ですが、どのような所から求人があるのでしょうか?

ここでは危険物取扱者の求人事情や働き方の実態について解説します!

危険物取扱者の求人についてざっくり説明すると

  • 危険物取扱者は社会のインフラを安全に支える縁の下の力持ちである。
  • 化学薬品や医薬品を扱う会社や発電所からも求人が多い。
  • 危険物取扱者の資格には甲種・乙種・丙種の3種類があり、甲種が最も難しい。
  • 資格のランクが高いほど、就職先の候補が増える

そもそも危険物取扱者とは

安心 ガソリンスタンドや石油貯蔵タンクといった所では、一旦火災や爆発といった事故が発生すると甚大な被害が発生します。

もしこのような危険な施設のある所で、危険物について何の知識も経験も持たない人が業務をしていたとしたらどうなるでしょうか?その被害はさらに悪化することでしょう。

このような事態を防ぐために消防法では、一定の基準以上の危険物を取り扱う施設においては危険物取扱者の資格を持つ者を置くことを義務づけています。

この危険物取扱者は法に定める危険な物について扱うことを許可されているのですが、大きく3つに分類されます。具体的には甲種、乙種、丙種に分けられていて、それぞれ扱える危険物の内容が異なるのです

危険物取扱者の求人が多い仕事

求めてます ガソリンスタンドのような場所で、いったん爆発や火災といった事故が発生すると取り返しのつかない被害が発生します。このような惨事を避けるために、ある一定の場所には危険物取扱者の資格を有している人の設置が法律上、義務づけられています。

それでは危険物取扱者の資格を取得すると、どのような所から求人があるのでしょうか?言い換えれば、どのような所で資格を活かして活躍できるのでしょうか?

具体的な場面を挙げると、タンクローリーの運転手、危険物を扱う際に現場を監督する役目を担う危険物保安監督者、ガソリンスタンドの店員、化学薬品や医療・製薬等を扱う会社、発電所での勤務等で危険物取扱者の資格者が求められています。

タンクローリーの運転手

ガソリンや灯油を運ぶタンクローリーは、大変危険な物質を運んでいます。事故を起こすと火災や爆発などの大惨事に発展しかねません。

そのため、タンクローリーの運転手は危険物取扱者の資格を保有していることが求められます。運転手に資格がなくても、助手席の同乗者に危険物取扱者の資格があれば構わないことになっていますが、実際は運転手が危険物取扱者であることがほとんどです。

近年、マスコミ等でドライバー不足が言われて久しいですが、より厳しいスキルをタンクローリーの運転手は求められます。危険物取扱者の資格があれば、採用に有利に働くでしょう。

危険物保安監督者

危険物保安監督者とは、製造所等において危険物を取り扱う場合に、法令上現場に置くことが定められている者です。製造所等とは製造所や屋外タンク貯蔵所などを言います。このような所では常に危険を伴いますので、所有者や占有者に危険物を扱える資格者を置き、安全を期すことを求められているのです。

ただ資格者であれば良いのではなく、6ヶ月以上の実務経験がある甲種又は乙種であることが求められます。なお丙種では限られた危険物のみの監督者として勤務ができます。資格を持ち、現場経験が豊富な資格者であれば、このような所で活躍することが期待されます。

ガソリンスタンドの店員

危険物取扱者が求められる、一番身近な所がガソリンスタンドでしょう。ガソリンスタンドは一度事故が起こると、近隣も含めて多大な被害が発生するので、ガソリンや灯油を慎重に扱うことが求められます。

近年、セルフのガソリンスタンドが普及し、有人でサービスを行うスタンドが少なくなりました。とはいえ、人が全くいないわけではなく、モニター越しにスタンドの状況を監視しています。この監視する人も危険物取扱者の資格を持つ人です

ガソリンスタンドを取り巻く経営環境は厳しさを増していますが、危険物取扱者の資格が必要であることは今も昔も変わりません。

化学・医療製薬会社

化学薬品や医薬品を製造するような会社では、日々多くの薬品を使って製品の開発や実験を行っています。

中には取り扱いに慎重を要する危険な物質もあることでしょう。そのような薬品を扱う製造や実験等の過程で火災などの事故が起こることもありうるのです。そのため化学薬品や医薬品を扱う会社では、危険物取扱者の資格を持つ人の求人が多いです

中には先ほど紹介した危険物保安監督者の設置が義務づけられている施設もあるかもしれません。そのため、化学や医療・製薬の会社に就職を考えている人は危険物取扱者の資格を保有していると有利になります。

発電所での勤務

発電所というと、電気系の資格の方が仕事をする上では実益が大きいように思われるかもしれません。ですが、発電所にも色々なものがあります。

たとえば火力発電所では、石油や天然ガスを原料としてタービンを動かして電気を起こします。その過程では、やはり火災などの事故が起きかねません。そのようなリスクを回避するためにも危険物取扱者が現場を守る必要があります。

具体的には発電機の点検や修理、工事などの仕事を任されます。また火力発電所に限らず、病院などでは24時間稼働する非常用発電機を設けている所が多く、このような場所でも危険物取扱者の活躍が期待されています。

危険物取扱者の資格が就職の際に活かされる

アドバンテージ 危険物取扱者の資格を取得すると、どのようなメリットがあるのでしょうか?

まず挙げられるのが就職する際に有利に働く点です。

周知のように、ガソリンスタンドや石油貯蔵タンクのような場所では、何よりも安全性が求められます。そのような場所で働くとなると、危険物に対する知識が不可欠です。危険物取扱者の資格があるということは、一通りの危険物に対する知識があり即戦力がありますから、求人する側もまさにそのような人を求めています。

具体的には履歴書の保有資格の欄に危険物取扱者の資格を書けますので就職活動では有利に働きますし、現場に出ても資格を持っていることで周囲に安心感を与えます。また通常よりも月々の給料がアップすることでしょう

通常より給与がアップする

危険物取扱者の資格には甲種・乙種・丙種と3種類があります。詳しくは後述しますが、その中でも甲種は合格率が低くて取得しにくい資格になっています。

もし甲種まで取得すると、危険物のエキスパートということが証明されるわけですから、給料に資格手当が付け加えられる可能性があります。また会社によっては昇給やボーナス、さらには昇進の際の判断材料にされることもあるでしょう。

就活が有利に

ガソリンスタンドの店員、タンクローリーの運転手では、そもそも危険物取扱者の資格がないと仕事ができません。

また薬品を扱う化学薬品メーカー等では、危険物取扱者へのニーズが高いので、就職活動で不利になる可能性すらあります。医薬品や化学薬品メーカーでは、危険物を常に扱っています。

危険物取扱者の資格があると、危険な物質についてのノウハウがあるわけですから、それだけ就職に有利に働きます。

周りからの信頼感が高まる

ガソリンにせよ、灯油にせよ、日常生活に大切なものですが、扱いを間違うと大きな事故を生む元になります。

このように危険物は生活の上で欠かせない一方で大きなリスクを伴います。危険物取扱者は国家資格であり、国によって危険物についての知識やノウハウがあると認められたわけですから大きな信頼の元となります。現場では頼もしい存在となることでしょう。

危険物取扱者の資格で扱える危険物

測定 危険物取扱者の資格を取得すると一定の危険物を扱うことができるようになります。ただし、この資格には甲種、乙種、丙種の3種類があり、扱える危険物もこの分類によって異なります。また、前提として危険物は第1類から第6類までに分けられています。

では、第1類から第6類には、どのようなものがあるのかについて、類別、性質と品名の概略について見ていきます。なお、この分類は消防法で定められているものです。

性質 品名
第1類 酸化性個体 塩素酸塩類など
第2類 可燃性個体 硫化りんなど
第3類 自然発火性物質及び禁水性物質 カリウム、ナトリウムなど
第4類 引火性液体 特殊引火物 第一石油類など
第5類 自己反応性物質 有機過酸化物など
第6類 酸化性液体 過塩素酸など

甲種で扱える危険物

甲種は乙種や丙種を含めた危険物取扱者の資格の頂点にあります。そのため、甲種の資格があると消防法で定められた第1類から第6類まで全ての危険物を取り扱うことができます

さらに甲種の取得者が6ヶ月以上の実務を行うと、危険保安監督者になることもできます。またこの危険保安監督者になれば、甲種防火管理者の有資格者にもなることができます。

乙種で扱える危険物

乙種は第1類から第6類の中で自分が取得した類の範囲の危険物を扱うことができます

乙種は甲種とは違い、防火管理者になることはできません。また6ヶ月の実務経験を得ると、取得している類の範囲で危険物保安監督者になれます。

丙種で扱える危険物

丙種が扱えるのは、第4類の特定の危険物のみとなります。甲種や乙種よりも取扱範囲が狭くなりますが、ガソリンや灯油、軽油や重油、第4石油類など日常的に目にする危険物が、そこに含まれています

また甲種や乙種の有資格者がいると無資格者が危険物を扱うことを認められていますが、丙種の場合は自分が扱うことを認められるだけで、無資格者が取り扱うのに際して立ち会うことは認められていません。

危険物取扱者の資格を取得するには?

ステップアップ 危険物取扱者の資格を取得するには、どうすればいいのでしょうか?

まずこの資格は消防法で定められた国家資格であり、試験に合格しなければなりません。また、合格後も受検地の都道府県知事に対して免状の申請をする必要があります。この免状を取得して初めて業務に従事することができます。

この試験は他の国家資格のように同じ日に試験が行われるのではなく、都道府県ごとに試験日が違います。また住民登録のある県でのみ受験できるという場所的制約もなく、隣接する他府県で受験することも可能です。

ただこの資格は甲類・乙類・丙類に分かれており、それぞれにおいて受験資格や出題科目が異なります。以下では、受検資格と甲類・乙類・丙類の出題科目や出題形式について見ていきます。

受検資格

甲種の試験を受検する場合には、以下のいずれかの要件を充たす必要があります。

  • 大学などの機関で化学系学科を修了して卒業

  • 大学などの機関で化学系の科目を15単位以上取得

  • 危険物取扱者の乙種の資格を有し実務経験が2年以上ある、又は乙種の資格を4種類以上保有

  • 化学に関する修士、博士の学位を保有

なお、危険物取扱者の乙種・丙種については、受検資格がありません

試験科目・内容

次に危険物取扱者の試験科目や内容について見ていきます。

前述のとおり、この資格試験には甲種・乙種・丙種と3種類があり、共通事項として、いずれも選択肢の中から答えを選んで解答するマークシート方式となっています。ただ、試験科目や試験時間、問題数は各種類ごとに異なります。そこで、以下では甲種・乙種・丙種に分けて説明していきます。

甲種

5つの選択肢の中から1つの答えを選ぶ方式となっています。試験科目は3種類で危険物に関する法令、物理学及び化学、危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法です。出題配分は、前述の順で15問、10問、20問の計45問です

試験時間は150分となっています。

乙種

5つの選択肢の中から答えを選ぶ方式です。試験科目は3種類で危険物に関する法令、基礎的な物理学及び化学、危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法です。出題問題数は順に15問、10問、10問の計35問です

試験時間は120分です。

丙種

甲種や乙種と違い、丙種は4つの選択肢から解答する方式です。試験科目は3種類で危険物に関する法令、燃焼及び消化に関する基礎知識、危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法です。それぞれ順に10問、5問、10問の合計25問が出題されます

試験時間は75分です。

危険物取扱者の合格基準・合格率

study 国家資格の中には司法書士や弁理士のように合格率が数%しかない最難関の資格試験もありますが、それらと比較すると危険物取扱者の資格は取得しやすい国家資格と言われています

ただ、この資格には甲種・乙種・丙種と3種類があり、それぞれの種類の特徴が試験にも現れています。

それでは、危険物取扱者の試験の合格基準はどのようになっているのでしょうか?また各種類において合格率はどのようになっているのでしょうか?

ここでは、各種類に共通している合格基準を最初に述べ、次に各種類の合格率を解説していきます。

特に乙種は乙4と他の類で合格率が大きく異なります。乙4については、何故このようなことが起こっているのかについて掘り下げて検討していきます。

危険物取扱者の合格基準

危険物取扱者の試験の合格ラインはどれ位でしょうか?甲種・乙種・丙種と3種類ありますが、いずれも出題される3つの試験科目の60%以上を正解していたら合格となります。逆に言うと1科目でも60%未満があれば不合格となります。

例えば、1つの科目で80%の得点を出していても、他の科目で40~50%という得点であれば、合格は厳しいです。

危険物取扱者の合格率

次に危険物取扱者の試験の合格率を見ていきます。甲種・乙種・丙種と3種類があり、試験の内容等で違いがあることは前述しました。当然、頂点となる甲種の合格率は低く、丙種の合格率は甲種よりも高い傾向にあります。

乙種は第1類から第6類までありますが、類によって合格率に差があります。具体的には乙4のみ合格率が極端に低くなっています。その原因についても解説していきます。

甲種

まず甲種の合格率について述べます。甲種の合格率は約30%です。これは他の乙種や丙種に比較しても低く、試験の難しさが窺えます。専門的な知識も突っ込んで問われるので、運や勘だけで合格するのは厳しいレベルにあると言えるでしょう。

乙種

次に乙種について見ていきます。乙種の全体的な合格率は約60%と標準的ですが、乙4だけは約30%前後です

乙4の合格率が下がる原因は大きく2つあると考えられます。一つは人気が高くて受験生が多い点です。乙4は工業高校や企業の集団受験が多く、それが合格率を押し下げる一因と考えられます。

もう一つの原因は科目免除です。乙4の合格者は試験科目が一部免除されるので、その反動として他の類で合格率が高くなる傾向にあります。

丙種

最後に丙種を見ていきます。丙種の合格率は約50%です。危険物取扱者の登竜門的な位置づけでにあり、試験の出題形式も他の種類と違って4択です。

甲種乙種よりも比較的簡単な試験ということもあって、運や勘だけで合格する人も多いようです。

危険物取扱者の求人状況まとめ

危険物取扱者の求人まとめ

  • 危険物取扱者は危険な物質を知り尽くしたエキスパート。
  • ガソリンスタンドだけでなく、製薬会社や発電所などからの求人も多い。
  • 甲種・乙種・丙種で扱える危険物について違いがある。

ここまで危険物取扱者の資格の業務内容や求人の多い業種、そして試験の概要等について見てきました。

近年、安全に対する意識がこれまで以上に求められています。事故の発生を未然に防ぐ上では、危険物取扱者の役割は今後も増していくものと思われます。

それが化学薬品等を扱う会社のニーズにも現れています。事故のない安全な社会を築くために資格を取り、日常を支える存在として活躍されることを願います。

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