危険物取扱者甲種ってどんな資格?試験問題の難易度や過去問題まで徹底解説!
「危険物取扱者甲種って難易度の高い資格なの?」
「甲種を取得するとどんなことができるようになるの?」
危険物取扱者試験の中でも難易度の高い甲種試験は受験する人自体も少ないため、その試験の実態や資格を取得するメリットは広く知られていない傾向にあります。
そのため、以上のような疑問をもっている人も多いでしょう。
この記事では、危険物取扱者甲種についてや試験の内容や難易度から、勉強方法・取得するメリットまで詳しく解説していきます!
危険物取扱者甲種についてざっくり説明すると
- 危険物取扱者資格の中で最も難易度が高い
- あらゆる範囲の危険物の取扱ができる
- 就職や待遇面でのメリットも大きい
危険物取扱者甲種ってどんな資格?
消防法が定める危険物を取扱うには国家資格である危険物取扱者資格を持つ人が立ち会う必要があると法律で定められています。
中でも、甲種資格は第1種から第6種までの全種類の危険物を取り扱う他、点検管理や保安監督まで行うことが可能です。そのため、甲種は試験の難易度は高い一方で、取得していると仕事上でも非常に優遇されます。
危険物取扱者甲種資格を有していると当然、乙種や丙種資格取得者であってもできるガソリンや灯油・重油・軽油などといった危険物の取扱等をすることができます。ただし、その他にも危険物取扱者として6ヶ月以上の実務を行うと「危険物保安監督者」として活躍することも可能になります。
このように現場の責任者として、責任ある立場で給与ややりがいの面でも魅力的な仕事ができるという点が甲種資格を取得する大きなメリットといえるでしょう。
さらに、甲種危険物取扱者免状の交付を受けている人は、防災管理講習や防災管理講習を受けていなくても、甲種防災管理者や防災管理者の資格を保持していると見なされさらに活躍する機会も増えます。
乙種まででは取得したとしてもこのような特典はないことからも、甲種資格の技能の高さは広く認められているということがわかります。
危険物取扱者甲種取得で可能になること
危険物取扱者甲種の資格を取得すると、危険物の取扱に関する幅広い業務をこなすことが可能です。
甲種取得者は乙種免許や丙種免許の業務も当然こなせるため、乙種と丙種の業務内容についても把握しておくべきといえます。ここでは、甲種を取得すると可能になる業務の他、乙種や丙種の免状取得者ができる業務範囲についても紹介します。
甲種で扱える範囲
既に述べているように、甲種とは危険物取扱者の中で最上位のランクです。乙種や丙種と違って取り扱える危険物に制限はなく、消防法が定めた、第1類から第6類までのすべての危険物を取り扱うことが許されます。
また、甲種取得者は6ヶ月以上の実務経験を積めば、危険物を取り扱う場所で作業員に保安の業務を指示する「危険物保安監督者」になることが可能です。
さらに、危険物保安監督者になれば、甲種防火管理者の有資格者として認められます。
ちなみに、危険物の取扱や点検を行う時に甲種取得者がいれば、資格を有していない一般の人でも立ち合い点検をすることができます。
甲種危険物取扱者は頂点の資格だけあって、危険物の取扱のありとあらゆることができるようになるのです。
乙種・丙種で扱える業務範囲もチェックしよう
乙種
乙種とは、危険物取扱者の真ん中のランクです。乙種を取得すると、以下の通り第1類から第6種のうち、自分が試験に合格して取得できた危険物のみを取り扱うことが許されます。そして、甲種の免状を取得すると、乙種の業務内容も行うことが可能です。
類 | 危険物 |
---|---|
第1類 | 酸化性固体 |
第2類 | 可燃性個体 |
第3類 | 自然発火性物質及び禁水性物質 |
第4類 | 引火性液体 |
第5類 | 自己反応性物質 |
第6類 | 酸化性液体 |
また、乙種取得者も甲種と同様に、6ヶ月の実務経験を得ることで合格している危険物に限り、危険物保安監督者になれます。
なお、乙種試験に合格しても甲種とは異なり、防火管理者としての資格は認められません。この点が乙種と甲種の大きな違いの1つといえるでしょう。
丙種
丙種は危険物取扱者の中では最も業務範囲の狭い資格で、第4類の特定の危険物のみ扱える資格です。第4類とはガソリンや灯油、軽油、重油などの引火性液体のことです。
つまり、上位資格である甲種や乙種と比べれば扱える危険物が少ないですが、ガソリンスタンドなどでの危険物の取り扱いと定期点検が可能となります。
丙種では無資格者の立ち合いが認められないという点が甲種・丙種資格と大きく異なっています。
また、甲種や乙種保有者が立ち合えば危険物取扱者でなくても取り扱いと定期点検ができましたが、丙種ではそれが認められていません。ある程度広い範囲の業務が行いたいという場合、甲種または乙種の資格が必要という点には留意が必要です。
危険物取扱者甲種の試験概要
「危険物取扱者ってどんな試験があるの?」 「受験資格はあるの?」 など、疑問を持っている人は多いです。
そこで、ここでは危険物取扱者試験の受験資格や試験内容、試験日などを詳しく解説していきます。
危険物取扱者甲種の試験地・試験日
危険物取扱者甲種試験は都道府県ごとに実施されており、各都道府県で受験することが可能です。
都道府県ごとに試験が実施されるため、試験日や試験会場の数は各都道府県によって大きく異なるという点に注意が必要です。日によって受験できるランクが異なる場合があるため、試験日時はしっかり確認しましょう。
また、試験は4月から9月は前期、10月から3月を後期と分けられているので、基本的には自分の都合がいい日程の試験を選んでください。ただし、甲種試験には2ヶ月程度の勉強期間があれば合格できるという難易度なので、受験を先延ばしにしすぎずに短期集中型の試験対策を行うことがおすすめです。
危険物取扱者甲種の受験資格
危険物取扱者試験は乙種と丙種の場合、受験資格は課されませんが、甲種になると受験資格が課されます。
乙種と丙種試験は誰でも受験可能でしたが、甲種では受験するまでにも事前準備が必要という点でも難易度が高くなっています。
甲種を受験するための条件は、以下の5点があります。
- 大学などで化学系学科を修了して卒業した
- 大学などで化学に関する科目を15単位以上取得した
- 乙種危険物取扱者免許を持ち、危険物取り扱いの実務経験が2年以上ある
- 乙種の資格を4種類以上取得している(1類または6類、2類または4類、3類、5類)
- 化学に関する学科または課程の、修士・博士の学位を持っている
甲種は危険物取扱者の最上位だけあって、受験も簡単ではありません。受験を考えている人は、自分は受験資格を持っているかどうかしっかりと確認するようにしましょう。
大学で化学を専攻している人などでない限り基本的には乙種試験に合格するルートで甲種の取得も目指すことになるでしょう。
危険物取扱者甲種の試験内容と合格基準
試験と聞いて気になるのは、試験内容と合格基準ではないでしょうか。
ここでは、危険物取扱者の試験の科目や試験時間・試験形式はどのようなものなのか、またどれくらい得点すれば合格できるのかを説明していきます。
危険物取扱者甲種の試験内容
試験内容や実施方法は、3つのランクでそれぞれ違いがあります。
- 甲種
内容 | |
---|---|
試験時間 | 150分 |
試験形式 | 五肢択一のマークシート式 |
試験科目 | 3種類 |
試験科目は「危険物に関する法令(15問)」「物理学及び化学(10問)」「危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法(20問)」の3つで、試験問題数は合計45問です。
なお、以下でも比較しますが、危険物取扱者試験の中では甲種の試験問題数が最も多く、試験時間も長いため、丙種や乙種以上に知的体力も問われる試験といえるでしょう。
- 乙種
乙種試験では試験時間が甲種よりも30分短いですが、試験形式と試験科目は基本的には甲種と同様となっています。
内容 | |
---|---|
試験時間 | 120分 |
試験形式 | 五肢択一のマークシート式 |
試験科目 | 3種類 |
試験科目は「危険物に関する法令(15問)」「基礎的な物理学及び基礎的な化学(10問)」「危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法(10問)」の3つで、試験問題数は合計35問です。
- 丙種
丙種試験は試験時間は甲種の半分で、試験科目に本格的に物理と化学の問題が含まれていないため、比較的試験対策がしやすい試験になっています。
内容 | |
---|---|
試験時間 | 75分 |
試験形式 | 四肢択一のマークシート式 |
試験科目 | 3種類 |
試験科目は「危険物に関する法令(10問)」「燃焼及び消火に関する基礎知識(5問)」「危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法(10問)」の3つで、試験問題数は合計25問です。
ランクによって試験内容はもちろんですが、試験時間や問題数などに違いがあり、出題数に応じて対策の重要性も異なってくるという点に留意が必要です。
危険物取扱者甲種試験の合格基準点
試験の合格基準点は試験を受ける前の大きな目標となり、自分の合格得点の構成をイメージしながら対策をすることで効率的な試験対策をすることも可能になります。
危険物取扱者試験ではどのランクも合格基準は同じで、3つの試験科目でそれぞれ60%以上得点することが必要です。
つまり、1科目でも60%未満があれば不合格になるので、満遍なくすべての科目を勉強するようにしましょう。
危険物取扱者甲種の受験料
危険物取扱者の受験料はランクによって違いがあります。
種別 | 受験料 |
---|---|
甲種 | 6,600円 |
乙種 | 4,600円 |
丙種 | 3,700円 |
なお、都道府県によっては、複数類を同時に受験することも可能です。ただし、同時に受験しても受験料の減額制度はありません。
また、一部試験の免除による試験料減額制度もないので、注意してください。
甲種試験では受験料は6,600円となっており、合格すれば多様な業務が可能になる資格であることを考えれば、受験料自体は妥当といえるでしょう。
危険物取扱者甲種の難易度・合格率・勉強方法
甲種試験は危険物取扱者試験の中では最も難易度が高いですが、具体的にどの程度の難易度なのでしょうか。
ここでは勉強時間や合格率や他の試験区分との難易度の相違から試験の難易度に迫っていきます。
危険物取扱者甲種の合格率の合格率は約30%
甲種の合格率は約30%と低めで、危険物取扱者の試験の中では最も低い難易度となっています。
危険物取扱者試験で唯一受験資格があり、ある程度危険物への理解がある人が受験してこの合格率ですので、比較的難しい試験といえるでしょう。
甲種の受験を考えている人は、準備をしっかりとするようにしましょう。
乙種は甲種よりワンランク簡単といえる
乙種の合格率は約60%となっていますが、類によってバラツキがあります。
特に人気の高い第4類は合格率が約30%となっています。乙4試験の合格率が低い理由は、工業高校などでまとめて受けさせられるために、対策をしていない受験者がいることと、乙種のンかでは4種に最初に挑戦し、科目免除制度を使うことができないということもあり、不合格となる人が一定数いるためだと考えられます。
一方、乙1種・2種・3種・5種・6種の受験者は乙4種の合格者が多く、「法令」と「物理学と化学」の科目が免除されています。このため4種以外の乙種試験の合格率は高くなる傾向にあります。
こうした難易度の乙種試験を突破してきた方々が甲種試験に挑戦しても、甲種試験の合格率は30%程度になっているため、甲種は難易度がワンランク上といえるでしょう。
丙種の合格率は約50%
丙種の合格率は約50%で、2人に1人が合格できるという難易度試験です。危険物取扱の基礎的な知識ばかりが問われるので、事前知識と勘だけで問題をといても合格基準点近くを取ってしまうという人もいるようです。
とはいえ、二人に一人は不合格となる試験ですので、初めて危険物取扱者試験に挑戦するという人の場合、しっかりと対策をして丙種試験に臨みましょう。
危険物取扱者甲種の勉強法
危険物取扱者の勉強法の基本は、最低1日1時間はこまめに学習することです。そうすることで、知識の定着を図れます。甲種試験に合格するには、1日1時間を前提とし、2ヶ月で60時間程度勉強することが望ましいです。
また、ここではおすすめの学習法2つを紹介していきます。
- 暗記事項は手を動かして書いて覚える
危険物取扱者の試験はいくつもの危険物の名前や性質を覚えなければなりません。ただ単に文章を読むだけで知識を定着させることは困難です。
そのため、自分の手を使って実際に書くことでしっかりとインプットが進みます。単語帳の形式にしたり、赤い暗記用シートを使用することも考えられますが、最終的には自分の手で書いて覚えるというのも手です。
暗記すべき事項は以下で紹介する「わかりやすい!甲種危険物取扱者試験 (国家・資格シリーズ 103)」に非常によくまとまっているため、こうした参考書をベースに知識を習得していくという勉強法がおすすめできます。
- 問題集をしっかりと解く
暗記事項をしっかりと抑えつつ、しっかりと問題が解けるかどうかということも確認していきましょう。危険物取扱者の問題集の問題は過去問が分析されて作られているため、何度も繰り返し解くことで得点力がアップします。試験で同じような問題が出ることもあるので、必ず何度も問題を解くようにしましょう。
腕試し用の問題集としては過去問に当たることも重要ですが、以下で紹介する「甲種危険物取扱者試験 2020年版 」では2019年~2015年の間に出題された解いておくべき651問が厳選されているため、非常におすすめといえます。
また、甲種試験は丙種や乙種以上に難易度が高いため、思うように学習が進まないという方もいますが、そうした場合は危険物取扱者甲種対策用の通信講座も利用することで効率的な試験対策が可能となります。
おすすめ参考書・問題集
危険物取扱者の試験におすすめの参考書がありますので、紹介します。
1.わかりやすい!甲種危険物取扱者試験 (国家・資格シリーズ 103) 3,080円
かなり有名な参考書で、作者の名前から「工藤本」と呼ばれています。特徴は見やすくごろ合わせで暗記しやすい工夫がされていることです。
2.甲種危険物取扱者試験 令和5年版 2,970円
試験前にやっておきたい参考書です。過去問を元に作られているため、試験にそのまま出ると評判の教材です。時間があまり取れない方や効率的に学習したい方は手元においてください。
おすすめ通信講座
危険物取扱者試験には独学で挑戦する人も多いですが、特に難易度が高く仕事の需要が高い甲種を受験する人は通信講座を利用して勉強するという人も一定数います。
通信講座の教材の質は高い上、わかりやすい解説講義も行われるため、非常に理解が進みやすいです。また、通信講座のカリキュラムなら試験合格に必要な知識が効率よく網羅されているため、学習していて無駄がありません。
なかでもたのまなの危険物取扱者講座は教材自体がわかりやすい上、丁寧な添削指導も行われるという非常に充実の内容です。また、他の通信講座会社でも危険物取扱者試験対策用の講座を提供していますが、受験者数の多い乙4対策用の講座しか提供していないといった予備校も多いです。そういった意味では、たのまなが提供している甲種対策専用の通信講座は貴重な存在といえるでしょう。
このように、甲種試験合格を目指している人にはたのまなの「危険物取扱者受験対策講座(甲種)」はおすすめの講座といえます。
危険物取扱者甲種資格を取得するメリット
危険物取扱者を取得すれば仕事上さまざまなメリットがありますが、特に甲種資格を取得していると多くの選択肢を得ることができます。
就職の選択肢が増える
甲種を取得するメリットは何といっても就職先の選択肢が増え、就職が有利になることです。求人の要件としては「危険物取扱者乙種以上」などという要件がある場合であっても、通常乙種取得者よりも甲種取得者の方が優先的に採用されます。
例えば、消防士やガソリンスタンド、ビルメンテナンス、危険物の運送会社などは、危険物取扱者の資格が必要なので有利です。
特に、化学工場や製薬会社、医薬品メーカー、化学製品メーカーの就職の際には甲種資格を最大限活かすことができ、中には年収650万円~1000万円という案件もあります。
危険物保安監督者になれる
危険物保安監督者になれることも甲種を取得する大きなメリットです。一定の条件を満たす製造所や給油取扱所などの対象施設では、危険物保安監督者を選任し、自治体に申告する義務があります。
そのため、こうした危険物保安監督者の仕事は景気の変動に関わらず仕事の需要は安定してあります。
賃金の待遇が良くなる
危険物取扱者甲種の資格を取るメリットは、賃金面などでの待遇が良くなることはやはりメリットといえるでしょう。特に、甲種はなかなか簡単にはなれないので、会社から資格手当が支給されることもあります。
企業によっては資格を取得していることがボーナスや昇給の基準になります。そのため、資格を持っていることでグッと賃金がアップするのであれば、ぜひ目指してみてはいかがでしょうか。
危険物取扱者甲種資格を有していると、大手の化学会社や石油プラントなどで1000万円以上の年収現場での統括者として活躍するなどという選択肢も出てきます。
履歴書への書き方
履歴書の資格欄に取得している資格を書く場合には履歴書の書き方のルールに従って正しく書くことが求められます。ここでは資格取得後に注意したい、履歴書への正しい資格の書き方を紹介します。
危険物取扱者の甲種資格を取得した場合、甲種は類は一つしかないため、
「~年~月 甲種危険物取扱者免状 取得」
と書けば問題ありません。
ちなみに、乙種には第1類から第6類まであるので、乙種について履歴書に書く場合、何類を取得しているのかまでを書く必要があります。
危険物取扱者甲種についてのまとめ
危険物取扱者甲種についてのまとめ
- 甲種には受験資格がある
- 合格率は約30%で2ヶ月以上の対策期間が目安
- 危険物取扱者の試験は都道府県によって日にちなどに違いがある
- 甲種を取得すると責任があり給与も高い仕事を任されやすくなる
- 甲種になると企業によっては待遇が良くなる
製造所や給油取扱所などでは、危険物取扱者の資格が必須です。とりわけ危険物取扱者甲種の資格を持っていれば、所長やセンター長などの責任ある高収入のポストを任されやすくなります。
一方で、甲種資格は受験資格が課される上、合格率も約30%と低めの難しい資格なので、しっかりと対策することが必要です。独学で対策することが難しく感じる場合は、通信講座を利用することもおすすめです。
甲種を持っていれば、就職や転職がしやすくなったり、職場での待遇が良くなったりすることが期待できるます。このように危険物取扱者甲種資格はおすすめの資格ですので、興味のある方や乙種まで既に取得しているという方は取得をめざしてみてはいかがでしょうか。