知的財産管理技能検定1級の難易度は?受験資格や勉強時間・テキストの有無まで解説!
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「知的財産管理技能検定の1級ってどのくらいの難易度なの?」
と疑問に思う方もいるでしょう。
知的財産間技能検定は、2級までは比較的易しい試験ですが、1級は難易度の高い試験です。
今回は知的財産管理技能検定1級の難易度について、受験資格や勉強時間、テキストの有無まで詳しく解説します。
これを読めば知的財産管理技能検定1級が比較的難しい試験であることが分かるはずです。
知的財産管理技能検定1級の難易度をざっくり説明すると
- 学科試験の合格率は10%を下回る
- 実務経験者や2級・3級の合格者の一部に受験資格
- 公式テキストがないため、予備校や通信講座の利用もおすすめ
知的財産管理技能検定1級の難易度は高いの?
知的財産管理技能検定1級は、他の資格と比べて難易度の高い試験です。
実技試験こそ40〜90%の合格率であるものの、学科試験の合格率は一桁になります。
ちなみに1級では、実技試験が受けられるのは基本的に学科試験の合格者のみです。
そもそも知的財産管理技能検定とは?
知的財産管理技能検定は知的財産関連の仕事をしている人も向けの資格になります。
知的財産管理技能士の主な仕事は、企業内における知的財産の管理や活用です。
知的財産とはアイデアやブランドなどの無形財産を意味し、知的財産権とは著作権や実用新案権、商標権、意匠権などを指します。
知的財産管理技能士の専門領域は、弁理士のそれと重なります。しかし知的財産管理技能士に独占業務はなく、行える業務は限定的です。
ちなみに知的財産管理技能検定で得られる資格は国家資格で、有資格者は「1〜3級 知的財産管理技能士」を名乗ることができます。
知的財産管理技能検定1級の試験内容
知的財産管理技能検定1級の試験情報の詳細は以下の通りです。
学科試験 | 実技試験 | |
---|---|---|
試験内容 | 特許専門業務・コンテンツ専門業務・ブランド専門業務 | 特許専門業務・コンテンツ専門業務・ブランド専門業務 |
時間 | 100分 | 約30分 |
出題方式 | マークシート方式 4肢択一式 | 筆記試験と口頭試問 |
合格基準 | 満点の80%以上 | 満点の60%以上 |
受験料(検定料)は、学科試験が8,900円、実技試験が23,000円になります。
知的財産管理技能検定1級の出題範囲
知的財産管理技能検定1級は学科・実務試験ともに「特許専門業務」、「コンテンツ専門業務」、「ブランド専門業務」の3分野から出題されます。分野ごとの出題範囲の詳細は以下の通りです。
学科試験 | 実務試験 | |
---|---|---|
特許専門業務 | リスクマネジメント、契約、エンフォースメント、資金調達、価値評価、関係法規、特許専門業務(特許戦略、法務、情報・調査、国内権利化、外国権利化、特許関係法規) | 特許戦略、法務、リスクマネジメント、情報・調査、国内権利化、外国権利化、契約、エンフォースメント、資金調達、価値評価 |
コンテンツ専門業務 | リスクマネジメント、契約、エンフォースメント、資金調達、関係法規、コンテンツ専門業務(コンテンツ開発戦力、コンテンツ創造支援、コンテンツ保護、コンテンツ関係法規) | コンテンツ開発戦略、リスクマネジメント、コンテンツ創造支援、コンテンツ保護、契約、エンフォースメント、資金調達、価値評価 |
ブランド専門業務 | リスクマネジメント、契約、エンフォースメント、資金調達、価値評価、関係法規、ブランド専門業務(ブランド戦略、情報・調査、国内権利化、外国権利化、ブランド関係法規 | 特許戦略、法務、リスクマネジメント、情報・調査、国内権利化、外国権利化、契約、エンフォースメント、資金調達、価値評価 |
弁理士と1級はどちらの難易度が高い?
弁理士も難関の国家資格の一つです。弁理士試験の合格率は7%程度と言われています。
一方で知的財産管理技能検定も合格率8%と、弁理士試験と遜色ない難易度のように見えます。
しかし実際は弁理士の方が難易度の高い資格です。
弁理士の試験は短答式と論文式、口述式があり、論文式はいわゆる記述問題になります。
知的財産管理技能検定1級はマークシート方式と口頭試問のみで、記述問題はありません。
また弁理士試験に必要な勉強時間は3,000時間とも言われ、多くの受験者は予備校や通信講座を利用しながら4、5年かけて合格を目指します。
知的財産管理技能検定の勉強は独学が基本で、合格までに要する時間ももっと短いです。
このように合格率はそれほど変わりませんが、実態を考えると弁理士の方が難易度が高いと言えます。
弁理士試験の概要や難易度については、以下の記事で詳しく解説しています。
試験会場・試験日
知的財産管理技能検定1級の試験会場や試験日程の詳細は以下の通りです。
内容 | 備考 | |
---|---|---|
試験会場 | 北海道、宮城、茨城、東京、神奈川、石川、長野、静岡、愛知、京都、大阪、兵庫、岡山、広島、山口、香川、愛媛、福岡 | 実技試験は東京のみ |
試験日1 | 2020年7月19日(日) | 学科試験(コンテンツ専門業務、ブランド専門業務)、実技試験(特許専門業務)が実施 |
試験日2 | 2020年11月14日(土) | 学科試験(特許専門業務)、実技試験(コンテンツ専門業務、ブランド専門業務)が実施 |
合格発表1 | 2020年9月7日(月) | 試験日1に対応 |
合格発表2 | 2020年11月14日(土) | 試験日2に対応 |
1次試験は学科・実技試験共に科目によって受けられる試験日が限られるので注意が必要です。また実技試験は東京のみで実施されます。
知的財産管理技能士試験の受験資格
1級は以下のいずれかに該当する場合、受験資格が与えられます。
-
知的財産に関する業務について4年以上の実務経験を有する者
-
2級技能検定の合格者で、知的財産に関する業務について1年以上の実務経験を有する者
-
3級技能検定の合格者で、知的財産に関する業務について2年以上の実務経験を有する者
-
学校教育法による大学又は大学院において検定職種(1級)に関する科目について10単位以上を修得した者で、知的財産に関する業務について1年以上の実務経験を有する者
-
ビジネス著作権検定上級の合格者で、知的財産に関する業務について1年以上の実務経験を有する者
上記のいずれにも該当しない場合は、受験資格がないため注意が必要です。
免除制度について
知的財産管理技能検定1級には免除制度があります。学科試験の一部科目を合格した者に適用される制度です。
学科試験で合格した科目に関しては、翌々年度まで受験が免除されます。
なお、この免除制度を利用するには申請が必要です。
知的財産管理技能士試験の合格率
他の資格と比べて難易度が高いと言われる知的財管理技能検定ですが、その合格率はどれくらいなのでしょうか。
知的財産管理技能検定1級の学科試験合格率は一桁!
2018年から2019年にかけて実施された1級の試験に関する合格率は以下の通りです。
【学科試験】
科目 | 合格率 |
---|---|
特許 | 8.40% |
コンテンツ | 9.23% |
ブランド | 5.22% |
【実技試験】
科目 | 合格率 |
---|---|
特許 | 95.35% |
コンテンツ | 72.97% |
ブランド | 36.67% |
尚、学科試験に比べて実技試験の合格率が高いのは、実技試験の受験者が学科試験の合格者に限定されるためでしょう。
知的財産管理技能士1級合格までに必要な勉強時間
知的財産管理技能検定1級の合格に必要な勉強時間は、一般的に400時間以上と言われています。
そのため資格取得には最低でも1年は必要です。場合によってはそれ以上かかることもあるでしょう。
知的財産関係の専門用語に馴染みがない段階で1級を受けることは少ないと考えられますが、初学者が1級に挑戦する場合は大変な時間がかかります。
また学科試験に加え実技試験(筆記試験と口頭試問)の対策も必要なため、負担の多い試験だと言えるでしょう。
知的財産管理技能士試験1級の受験者層
1級ともなると特許や法律関係の仕事の従事者が受験することが多いようです。
知的財産教育協会が公開したアンケート結果によると、最も多かったのは大企業の知財部門に勤務する受験者でした。次に多かったのは、企業の研究開発部門や弁理士事務所に勤務する受験者です。
経産省の「知財人材データベース」に登録している専門家の属性を見ると、知的財産管理技能士は弁理士・弁護士に次ぐ割合となっています。それだけ知財人材の業界では知名度が高いということでしょう。
知的財産管理技能検定1級の取得メリット
知的財産管理技能士1級は2級に比べて格段に受験者の少ない資格です。では1級を取得するメリットはどういった点にあるのでしょうか。
昇進・転職に役立つ!
知的財産管理技能士は、実は就職や転職に強い資格です。主な就職先としては「コンテンツ製作部門」や「企業内の法務部・特許部」、そして「特許事務所」が挙げられます。それぞれの職場で、知的財産管理技能士の資格はどのように活きるのでしょうか。
コンテンツ制作部門
コンテンツを生み出す企業や団体では、知的財産の専門家である知的財産管理技能士の能力が求められています。
例えば映画会社や出版社には、著作権を扱う業務が多数あります。アパレルメーカーなどでは、自社ブランドを確立するために意匠権の登録が必要です。
またそれぞれの製品が世に出ていく際には商標登録の業務も発生します。
それらの業務において、どれだけ企業や団体の権利を守り、活用していけるかは、知的財産管理技能士の腕にかかっていると言えます。
企業内の法務部・特許部
研究開発や技術開発を行うメーカーでは、知的財産権を守るために法務部や特許部が設けられていることがあり、知的財産管理技能検定の有資格者にはぴったりの職場でしょう。
特許戦略を重視しているメーカーも多く、研究者や技術者を知財関係のスキルを活かしてバックアップすれば、会社の戦力となれるでしょう。
特許事務所勤務も可能
知的財産管理技能検定の有資格者は、知的財産権に関する知識が十分なため、特許事務所においても即戦力として働けます。具体的には弁理士のアシスタントとしての勤務です。
知財関係の仕事を極めたいと思う人であれば特許事務所は良い環境だと言えます。実力・経験ともに豊富な先輩の弁理士や知的財産管理技能士から様々なことを学べるからです。
実務を通して力をつけ、人脈も作れれば、知的財産管理技能士としての独立開業も夢ではありません。
弁理士への足掛かりに
弁理士の試験と知的財産管理技能検定には深い関係があります。
弁理士になるには3,000時間もの勉強時間が必要であると言われ、合格率も10%以下です。
初学者は勉強量の多さと難易度の高さに挫折してしまう人も少なくありません。
しかし知的財産管理技能検定を持っているなら、基本的な知財関係の知識はあるため、スムーズに勉強が進められるでしょう。
実際に知的財産管理技能士から弁理士になる人も数多くいます。
特許に詳しく企業内で活躍できる
知的財産管理技能士に独占業務があるわけではありませんが、知的財産関連の業務ならその知識を活かして幅広くカバーすることができるでしょう。
具体的には特許取得後のリスクマネジメントなどの業務を担当することになります。
先述したように、特許戦略を重視する企業では特に知財関係の知識や技術があると、大きな戦力になることが可能です。
業務効率の向上
仕事でコンテンツを扱うなら、知的財産権に関する知識は必須です。
知識が不足していると、言葉の使い方を間違え、業務を停滞させてしまう恐れがあります。
例えば「キャラクターの商品化権が欲しい」という人がいます。しかし商品化権という権利は存在しません。この場合、弁理士を介して特許庁へ権利の申請をする際、どんな権利を望んでいるのかが弁理士に伝わりません。
一から知的財産権について説明してもらい、希望がどの権利に該当するのかを確かめるという余計な時間がかかります。
また、そもそもキャラクターの入ったグッズを一点作るだけなら、権利者の承諾さえあれば申請は不要です。
業務を円滑に行うには知財関係の知識は必要で、知的財産管理技能検定ならその知識を身に付けることができます。
リスクマネジメントができる
最近はネット上での不正流用が問題となっています。知的財産権の知識がないために、多くの人がSNSなどで権利の侵害を行っているのが現状です。
具体的には、映像や画像、音楽などのコンテンツが不正に利用されています。
雑誌の写真をインスタグラムに投稿しているのをよく見かけますが、あれも実は違法です。
一方で本来は法によって保護されるべき内容をあえて公開することで自社や業界の活性化を図るというマーケティング手法も存在します。
知的財産管理技能検定で知財関係の知識を身に付ければ、知らず知らずのうちに法を犯してしまうリスクを回避できます。
さらに法律とビジネスの境目を判断し、業界の活性化を行うこともできるのです。
自信になる!
1級になると普段の業務には使わないような分野の知識まで勉強することになります。具体的には契約や外国の法律などです。
そのため試験勉強を通じて実務知識の幅を広げ、自己啓発を行うことができます。
また1級は専門性が高く、難易度もかなり高い試験です。その試験に合格すれば、その後知財関係の仕事をしていく上で大きな自信になることは間違いないでしょう。
知的財産管理技能士1級は独学で合格可能?
難易度の高い知的財産管理技能検定1級ですが、独学で合格することはできるのでしょうか。
独学用テキストはある?
1級の試験は合格率や勉強時間などを見ても難易度の高い試験だと言えます。しかしコツコツ勉強していけば十分合格が可能な試験です。
知的財産管理技能検定は等級に関わらず、基本的には独学で合格できます。しかし2級や3級と違い、1級には知的財産教育協会が指定した公式テキストが存在しません。
そのため「知財検定合格マニュアル」などの参考書を購入して勉強することになります。2級や3級に比べると勉強しにくい試験だと言えます。
参考書を読み込んだら問題演習に移りましょう。過去問や実技試験用の問題集も出版されているのでそれらの使用がおすすめです。
学習計画を立てて勉強する
合格には継続的な勉強が何より大切です。そのためにはまず学習スケジュールを立てましょう。
合格までの道筋をはっきりさせることで、勉強が継続しやすくなります。
スケジュールを立てる際のポイントは、適度に時間的ゆとりを持たせることです。
あまりに過密日程では疲弊してしまう一方で、ゆったりさせ過ぎてもモチベーションの維持が難しくなります。
頻出範囲を確認!
資格試験に合格するには、試験対策に特化した勉強を行う必要があります。満遍なく対策するのではなく、配点の高い科目やよく出てくる問題を重点的に対策するようにしましょう。
頻出範囲の確認する一番の方法は過去問を調べることです。
過去問は必須
過去問演習は頻出範囲や出題傾向の確認に最適です。過去問は知的財産教育協会のホームページから入手できます。
過去問の研究は点数アップに直結するため、入念に行うべきです。
間違えた問題は参考書を使って復習し、確実にステップアップを図りましょう。
独学におすすめのテキストは?
非常に難易度の高い知的財産管理技能検定1級を独学合格するためには、テキスト選びが特に大事になってきます。
資格Timesのおすすめするテキストは「国家検定 知財検定1級(特許専門業務)」です。
このテキストでは過去の試験で出題された内容を広くカバーしており、合格に必要な知識を余さず習得できるという利点があります。
さらに、暗記用問題集が含まれており、出題されやすい重要事項を効率よく覚えられるような内容になっています。
独学合格を目指す際には何周もすべきテキストと言えるでしょう。
次なるステップである弁理士について
知的財産管理検定を受験する人の中には弁理士に興味を持っている方も多いでしょう。最後に弁理士について少し解説します。
弁理士と知的財産管理技能士の違い
どちらも知的財産の専門家である点では共通していますが、弁理士には独占業務が存在します。
弁理士の主な仕事は、発明者の代理として、特許庁へ権利を申請することです。
弁理士になるには日本弁理士会が実施する資格試験に合格し、実務修習を修了する必要があります。試験は3,000時間もの勉強時間を要する難易度の高いものです。
一方で、弁護士資格を有する者や特許庁での長期の実務経験があるものは試験なしで弁理士になることができます。
年収は特許事務所で勤務した場合、700万円程度です。独立開業した場合は2,000万円を超える場合もあります。最近では企業内弁理士という選択肢もあるようです。
現代では知的財産に関する海外案件も増えているため、国際的に活躍する弁理士も多数存在します。
知的財産管理技能検定1級の難易度まとめ
知的財産管理技能検定1級の難易度まとめ
- 学科試験の合格率は8%程度の難関資格
- 長期の実務経験者や実務経験のある2級・3級の合格者に1級の受験資格がある
- 教科書なしの独学が厳しいなら予備校や通信講座を活用しよう
知的財産管理技能検定1級の難易度について詳しく解説しました。
1級は2級・3級に比べて難易度の高い資格ですが、就職や転職にメリットがあり、弁理士資格の第一歩にもなる価値深い資格です。