ビジネス会計検定の難易度はどのくらい?合格率・勉強時間・勉強のコツを徹底解説
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「ビジネス会計検定試験って難しいのかな」
と疑問を感じてる方もいるでしょう。
ビジネス会計検定試験はビジネスマンをはじめ、様々な人にメリットのある資格試験ですが、その難易度に関しては不明な点も多いはずです。
今回はビジネス会計検定の難易度について、合格率や勉強時間、勉強のコツを含めて詳しく解説します。
これを読めば、ビジネス会計検定の難易度や勉強法がよく分かるはずです。
ビジネス会計検定の難易度についてざっくり説明すると
- ビジネス会計検定は財務諸表の分析力に関する資格
- 2級と3級の難易度はそれほど高くない
- 勉強法は公式教科書と過去問演習がおすすめ
ビジネス会計検定資格を取得するためには
最近のビジネスマンには数字を読む力が必要とされています。数字を読む力とは会計に関する能力です。
会計の分からない管理職はいらないと言われることになり、キャリアアップに数字を読む力は欠かせません。
そうした数字を読む力、会計に関する能力を身に付けられる資格が「ビジネス会計検定」になります。ではその難易度はどのくらいなのでしょうか。
ビジネス会計検定を通じて分析力を養うことができる
ビジネス会計検定試験は、損益計算書や貸借対照表などの財務諸表に関する資格です。財務諸表についての知識や分析力が問われます。
資格は財務諸表が示す数値や内容を理解し、ビジネスに役立てることを目的にしています。
つまりビジネス会計検定試験は財務諸表の「分析力」に焦点を当てた試験だということです。
ビジネス会計検定のメリット
この検定に合格すれば、客観的に数字を捉え、判断する力を養うことができます。
また数字を通して会社の状況を理解するために必要な基本的な知識や考え方も体得できるでしょう。
さらにこの検定の勉強を通して、財務諸表に関する知識が深まれば、新聞や経済雑誌、ニュースを見る際の観点が変化するというメリットもあります。
ビジネス会計検定の仕事とは
新たな取引先の評価や自社の決算内容の理解、株式投資、新聞記事の読解など、現代においては様々な場面で会計の知識が必要です。
そのためビジネス会計検定は経理部門の人間に限らず、あらゆる人に役立つ資格試験だと言えます。
またビジネス会計検定試験は簿記試験とは別物です。ビジネス会計検定の目的は財務諸表の「分析」でしたが、簿記はむしろ財務諸表の「作成」に関わる資格になります。
簿記よりも専門性が高くないため、実社会で役立つ会計知識を得るられるのがビジネス会計検定の良い点です。
例えば会社員の場合、自社や他社の決算内容や業績を理解しやすくなるでしょう。
また日経新聞やニュースに取り上げられるような企業業績が分かるようにもなります。
数字を伴う論理的な思考力を身に付けられれば、ビジネスマンの世界では重宝される人材です。
実際にも、人材育成に重要であるとして、ビジネス会計検定の取得を推奨する企業も出てきています。
ビジネス会計検定は3段階ある
ビジネス会計検定試験は1〜3級の3段階に分かれています。
ビジネス会計検定試験の2級と3級に関しては年2回実施されます。実施時期は3月と9月ごろになります。
一方で1級は年1回の実施で、時期は3月です。
ビジネス会計検定に受験資格は無い
ビジネス会計検定試験はどの階級においても受験資格がなく、いきなり2級や1級に挑戦することも可能です。
2級と3級、1級と2級は試験時間をずらして実施されるため、併願することもできます。
実施団体である大阪商工会議所の想定としては、3級は一般企業の社員や学生等が受験するレベルのようです。
また2級は一般企業の管理職や経営者などになります。
さらに1級ではそれ以上の職階、例えば管理職や財務担当役員などが受験生として想定されています。
ビジネス会計検定資格の難易度・勉強時間はどのくらい?
ビジネスマンをはじめ、様々な人に役立つビジネス会計検定試験ですが、その難易度や勉強時間はどのくらいなのでしょうか。
ビジネス会計検定の試験形式
ビジネス会計検定の試験形式や試験時間、合格基準点は以下の通りです。
試験方式 | 試験時間 | 合格基準点 | |
---|---|---|---|
3級 | マークシート方式 | 120分 | 100点中70点以上 |
2級 | マークシート方式 | 120分 | 100点中70点以上 |
1級 | マークシート方式+論述問題 | 150分 | 200点中、論述式で50点以上かつ全体で140点以上 |
*1級不合格者の内、120点以上得点した受験生は準1級として認定されます。
ビジネス会計検定の過去5回分合格率データ
過去の試験の合格率は以下の通りです。なお、カッコ内は受験者数になります。
3級 | 2級 | 1級 | |
---|---|---|---|
第29回 2021年10月実施 | 68.9%(4,160人) | 52.1%(1,948人) | 未実施 |
第28回 2021年3月実施 | 67.7%(4,321人) | 51.5%(2,860人) | 24.4%(217人) |
第27回 2020年10月実施 | 70.5%(3,937人) | 46.3%(2,340人) | 未実施 |
第26回 2020年3月実施 | 62.5%(2,886人) | 54.3%(1,568人) | 19.7%(188人) |
第25回 2019年9月実施 | 59.2%(4,502人) | 48.5%(1,850人) | 未実施 |
第24回 2019年3月実施 | 62.4%(3,859人) | 48.0%(1,858人) | 29.4%(211人) |
第23回 2018年9月実施 | 61.8%(3,847人) | 36.3%(1,671人) | 未実施 |
第22回 2018年3月実施 | 58.5%(3,438人) | 40.7%(1,731人) | 22.3%(224人) |
第21回 2017年9月実施 | 70.0%(3,581人) | 30.1%(1,494人) | 未実施 |
ビジネス会計検定の実際の難易度は?
ビジネス検定の合格率は3級は60%前後、2級は40〜50%前後を推移しています。1級は20~30%程度です。
よってビジネス検定2級と3級の難易度は普通レベルと言えるでしょう。
3級は難問や奇問の出題が少なく、基本的な問題が多い試験です。そのため公式テキストと過去問をやり込むことによって合格できます。
2級に関しても難問や奇問は少ないですが、基本知識をビジネスへ応用するレベルなので、3級よりは難しいです。しかし簡単な問題も出題されます。
1級は論述問題も出題されるため合格率が低く、難関レベルと言えるでしょう。
また論述問題には足切り得点が存在します。そのため論述問題で50点以上を確実にとりつつ、マークシートで点数を稼ぐのが定石です。
合格のための勉強時間は?
合格のための勉強時間の目安は、3級では50〜100時間程度になります。
また2級の勉強時間は100〜150時間程度、1級になるとそれ以上勉強しなければなりません。
これらの勉強時間はあくまで目安であり、予備知識によってかかる時間は各人で異なります。
勉強時間は事前知識で大きく変わる
試験問題に対して事前知識を持っているか否かで勉強時間は大きく変わると言えるでしょう。
簿記や会計の知識がある人なら、3級を飛ばしていきなり2級を受けることも十分可能です。また2級と3級を併願しても良いでしょう。
一方で会計分野の勉強に初挑戦する場合は、3級から受験しておくのが無難です。
ビジネス会計検定試験各級ごとの到達目標、出題内容
1〜3級に分けられるビジネス会計検定ですが、階級によって到達目標や出題内容などのように異なるのでしょうか。
ビジネス会計検定試験各級の目標到達レベル
ビジネス会計検定3級は、財務諸表を理解するための基礎的な力を身に付けるのが目標です。そのため会計用語や財務諸表の構造・読み方・分析などを扱います。
2級では企業の経営戦略や事業戦略を理解するために、財務諸表を分析する力をつけることが目標です。
さらに1級は、企業の成長性や課題、経営方針、戦略などを理解・判断するために、財務諸表を含む会計情報を総合的かつ詳細に分析し、企業を評価する力を身に付けることを目標としています。
3級の学習内容
貸借対照表や損益計算書、キャッシュフロー計算書などの財務諸表に記載されている項目とその計算構造を学びます。
さらには財務諸表分析の基本も学習内容です。具体的には企業の成長や債務の支払い能力、儲ける力、株価に対する利益の高低などを勉強します。
3級の出題内容
3級の出題内容の詳細は以下の通りです。 【出題範囲】
- 財務諸表の構造や読み方に関する基礎知識
(1)財務諸表とは
(2)貸借対照表、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書の構造と読み方
- 財務諸表の基本的な分析
(1)基本分析
(2)成長率および伸び率の分析
(3)安全性の分析
(4)キャッシュ・フロー情報の利用
(5)収益性の分析
(6)1株当たり分析
(7)1人当たりの分析
2級の学習内容
有価証券報告書の連結財務諸表に記載されている項目と計算構造が主な学習内容になります。
2級では、3級の内容に加え、多くの分析指標を学びます。また近年注目されているキャッシュフローの分析や、企業の採算性を探る収益分岐点分析などの応用的領域に関しても学習内容です。
2級の出題内容
2級の出題内容の詳細は以下の通りです。 【出題内容】
- 財務諸表の構造や読み方、財務諸表を取り巻く諸法令に関する知識
(1)会計の意義と制度
(2)連結財務諸表の構造と読み方
- 財務諸表の応用的な分析
(1)基本分析
(2)安全性の分析
(3)収益性の分析
(4)キャッシュ・フローの分析
(5)セグメント情報の分析
(6)連単倍率と規模倍率
(7)損益分岐点分析
(8)1株当たり分析
(9)1人当たり分析
1級の学習内容・出題範囲
投資関連の各種ディスクロージャーをはじめ、会計情報に関する体系的な知識が問われます。財務諸表と計算書類の総合的な理解を深める内容です。
また会計基準の内容を理解し、注記を含む補足情報の読み方に関しても学習します。
ビジネス会計の応用としての概念フレームワークや会計基準も学習内容です。
さらに内部統制やマネジメントにおける事業評価に活用できる企業価値分析の基本的な考え方や、その分析手法についても勉強します。
1級の出題内容
1級の出題内容の詳細は以下の通りです。 【出題内容】
- 会計情報に関する総合的な知識
(1)ディスクロージャー
ディスクロージャーとは、会社法上のディスクロージャー、金融商品取引法上のディスクロージャー、証券取引所が求めるディスクロージャー、任意開示、ディスクロージャーの電子化
(2)財務諸表と計算書類
財務諸表と計算書類の体系、連結損益計算書・連結包括利益計算書・連結貸借対照表・連結キャッシュ・フロー計算書、連結株主資本等変動計算書の内容
(3)財務諸表項目の要点
金融商品、棚卸資産、固定資産と減損、繰延資産と研究開発費、引当金と退職給付、純資産、外貨換算、リース会計、税効果、会計上の変更および誤謬の訂正、連結財務諸表注記と連結附属明細表、セグメント情報、企業結合・事業分離
(4)財務諸表の作成原理
概念フレームワーク、会計基準、内部統制
- 財務諸表を含む会計情報のより高度な分析
(1)財務諸表分析
分析の視点と方法、収益性の分析、生産性の分析、安全性の分析、不確実性の分析、成長性の分析
(2)企業価値分析
企業価値評価のフレームワーク、割引キャッシュ・フロー法による企業価値評価、資本コストの概念、エコノミック・プロフィット法による企業価値評価、乗数アプローチによる企業評価、これからの企業価値評価
ビジネス会計検定の勉強法
合格率から見ても、ビジネス会計検定試験の難易度はそれほど高くないため、独学で合格することは可能です。
ビジネス会計検定に合格するための勉強法について、3つのポイントを紹介します。
①公式テキストを繰り返し読み込もう
中央経済社刊が出版している「ビジネス会計公式テキスト(1〜3級)」は、ビジネス会計検定に準拠した内容になっています。
2級と3級は難問や奇問の出題が少なく、基本的な問題が多いです。そのため公式テキストは最低3回は読み込むべきでしょう。
初めて会計を学ぶという場合は、まずテキストを一通り読み、全体の流れを理解した上で勉強を始めることがおすすめです。
②過去問題集に取り組もう
問題集は同じく中央経済社刊行の「ビジネス会計検定公式問題集」を使いましょう。
この問題集は過去の出題をもとに、公式テキストの構成に沿って作成されています。そのためテキストと併せて、効率的に試験勉強を進めることが可能です。
また近年は過去問がそのまま掲載されているため、試験前には時間を測り、本番を想定した過去問演習として用いましょう。
演習の量は合格に直結すると言っても過言ではありません。できるだけ多くの問題を解くことを心がけましょう。
会計の知識がある場合、いきなり過去問を解くのも有効
簿記などの勉強を通じて、会計に知識がある人の場合、いきなり過去問演習を初めても良いでしょう。
試験の全体像や苦手部分をはじめに確認することによって、効率的に試験対策が行えるのでおすすめです。
対策講座に行ってみよう!
独学での試験対策に不安を感じる人は、対策講座の受講がおすすめです。
各商工会議所によって有料の受験対策講座や無料講座が開催されています。
無料講座は、財務諸表の読み方や活かし方を学ぶセミナーです。近くの商工会議所でそうした催しがないか調べてみましょう。
必要に応じてTACなどが講座・講習会の検討を
予備校に通って試験対策を行うという選択肢もあります。
例えば資格の学校TACでは「ビジネス会計検定試験対策講座」を開講しています。2級と3級受験を対象にした講座です。
その他にも、弥生カレッジCMCによる対策講座や、ヒロ・ビジネス・スクールのeラーニングでの対策講座なども実施されています。
効率的な学習には、これら講座の利用も有効でしょう。
対策講座を利用した場合の勉強時間
商工会議所や予備校の講義は、試験対策に特化した内容だけを学べるため、勉強時間もその分短縮されます。
大阪商工会議所やTACなど対策講座での勉強時間は全部で15〜20時間です。
講座の予習・復習やそれらの自学を合わせると大体40〜50時間が勉強時間の目安となるでしょう。
もちろん受ける階級や自身の予備知識および学力などによってこの時間は前後します。
ビジネス会計検定と簿記試験
ビジネス会計検定に類似した試験として、簿記試験があります。両者の違いが分からない人もいるかもしれませんので解説します。
簿記試験とビジネス会計検定の違い
そもそも簿記とは、経営活動の記録や計算、整理を通して、企業の経営成績た財政状態を明らかにする技能のことです。
そのため簿記試験は財務諸表を作るまでの段階を主題としており、財務諸表の分析力を問われるビジネス会計検定とは一線を画します。
またビジネス会計検定は大阪商工会議所が主催団体なのに対し、簿記試験は日本商工会議所が実施する試験です。
簿記試験の合格率および難易度
簿記試験にも、ビジネス会計検定同様、1級〜3級までの試験があります。
簿記試験の3級の合格率は40%程度で、2級は20%程度です。これはビジネス会計検定では2級と1級に対応する合格率で、難易度は簿記試験の方が高いことが分かります。
また簿記試験1級の合格率は10%のため、さらに難易度の高い試験です。
簿記試験とキャリア
ビジネス会計検定もキャリアアップをはじめ、様々な場面に有効です。しかし簿記試験の方が難易度および知名度が高い分、就職や転職には有利と考えられます。
日本商工会議所によると、企業が応募者に求める資格ランキング(リクルートキャリア調べ)で日商簿記2級は第1位に輝きました。また日商簿記3級は同ランキングの第7位です。
また今後取得したい資格ランキング(日本経済新聞社・日経HR調べ)では、日商簿記2級と3級がそれぞれ第6位、第7位にランクインしています。
ビジネス会計検定と簿記の同時取得もおすすめ
どちらも経理分野をはじめとするキャリアップには有効な資格となるため、ビジネス会計検定と簿記試験の両方に挑戦するのも良いでしょう。
ビジネス会計検定の前に、簿記試験2級の受験を勧める声もあります。
簿記試験2級と3級の内容が、ビジネス会計検定試験の1〜3級に対応していると言われるので、簿記2級の有資格者は試験対策がしやすいはずです。
またまず難易度の低いビジネス会計検定を受け、それから簿記試験に進むのも良いでしょう。
ビジネス会計検定の試験日程・試験会場・受験料
最後にビジネス会計検定を受ける際に必要となるであろう試験日程や試験会場、受験料などの詳細を紹介します。
ここでは例として2020年度試験の日程を記載していますが、例年同様の日程で実施されます。
内容 | 詳細 |
---|---|
試験日程 | 第27回:2020年10月18日(日)3級・2級 第28回:2021年3月14日(日)3級・2級・1級 |
申込期間 | 第27回:2020年8月12日(水)〜9月11日(金) 第28回:2021年1月6日(水)〜2月5日(金) |
試験会場 | 札幌、仙台、さいたま、東京、横浜、新潟、金沢、静岡、名古屋、京都、大阪、神戸、岡山、広島、山口、松山、福岡の中から受験地を選択 |
受験料(税込) | 3級:4,400円 2級:6,600円 1級:1,1000円 |
なお、試験時間は2級が10時から(制限時間2時間)で、1級(制限時間2時間30分)と3級(制限時間2時間)が13時30分からとなります。
さらなる詳細は大阪商工会議所のHPから確認してください。
ビジネス会計検定の難易度についてまとめ
ビジネス会計検定の難易度についてまとめ
- 財務諸表を分析・利用する力をつけるのがビジネス会計検定
- 2級3級の難易度は低めで、1級も簿記試験より易しい
- 公式テキストと問題集での独学が基本だが、対策講座を利用しても良い
ビジネス会計検定の難易度について詳しく解説してきました。
ビジネス会計検定の資格は、色々な人にとってメリットがあり、難易度も低いので気軽な受験をおすすめできる資格の一つです。