法人税法能力検定ってどんな試験?資格の実用性・難易度まで徹底解説!
「会社の経理を担当していると、ときどき作成方法のわからない書類があって…」
たとえば法人税の確定申告を行うときなどに、書類作成で悩むことはありませんか?
法人税法能力検定は、法人税関連書類を作成するときに知っておくべきことを学べる資格で、経理実務に携わる方におすすめです。
今回は、法人税法能力検定がどのような資格なのか、また、試験の難易度や合格率、勉強法、受験に関する基本情報などをご紹介します。
ぜひ、法人税法能力検定で実務能力を身につけ、会社での業務に役立てましょう。
法人税法能力検定についてざっくり説明すると
- 法人税法に対する理解を深め、法人税関係の税務処理ができるようになる
- 法人税法能力検定の合格率は高めで、対策次第で合格できる資格である
- 税理士試験の選択科目である法人税分野を理解するのに役立つ
法人税法能力検定ってどんな資格?
この章では、法人税法能力検定で求められている知識は何か、また、どのような団体が主催している資格試験であるかを中心に解説します。
法人税法能力検定とは
法人税法能力検定は、企業で行う税務処理についての基本的な知識をはじめ、法人企業において税務署に提出する書類を作成するなどといった実際的な税務処理能力が問われる試験です。
簿記試験よりマイナーではあるものの、計算方法など会計実務で役立つ知識を多く得られるため、法人税法能力検定は受けておいて損のない資格と言えます。
法人税法能力検定の主催団体
法人税法能力検定は、公益財団法人全国経理教育協会(全経)が主催している資格試験です。
全経では簿記試験(全経簿記)も行っています。全経簿記のランクは上級・1級・2級・3級・基礎簿記会計の5段階に分かれており、上級が日商簿記の1級にあたると言われています。
法人税法能力検定は、前身である税務会計能力検定試験(税務検定)を含むと1968年から行われている、歴史の長い資格試験です。
1999年の第62回税務会計能力検定試験で消費税法が新たに加えられ、2012年度から、所得税法能力検定試験・法人税法能力検定試験・消費税法能力検定試験の3つに分けて行われるようになりました。
所得税法能力検定試験&消費税法能力検定試験
前身の税務検定種目であった所得税法能力検定と消費税法能力検定について、ここで簡単に触れておきましょう。
所得税法能力検定は、源泉徴収や確定申告といった実際的な所得税に関する税務処理ができることを目標としている資格試験です。企業で働く人はもちろん、個人で事業を行う人にも役立ちます。
消費税法検定試験は消費税法に関する基本的なことがらや、会計処理時における消費税の取扱いを学ぶことができる資格試験です。
どちらの資格も、企業の中堅経理担当として税務署に申請する書類を作る際や、実務で応用的な税務処理を行うときなどに役立ちます。
法人税法能力検定の出題形式&難易度
次は、法人税法能力検定の出題形式や出題内容、合格率などを見ていきましょう。
法人税法能力検定の出題形式
法人税法能力検定は1級・2級・3級の3段階に分かれています。試験時間は2級・3級は60分、1級の場合は90分です。
法人税法能力検定はどの級でも文章問題・仕訳問題・計算問題で出題され、筆記形式で行われていましたが、第109回目の試験以降試験形式が変更されました。
2・3級は基本的に従来の方法を踏襲している一方で、1級は3問制から4問制に変更されました。また解答用紙も大きさがB4からA4、枚数が制限なしから3枚程度に変更されており、最新の出題形式には注意が必要です。
100点満点で、2・3級の配点は以下のとおりです。
問題 | 形式 | 配点 |
---|---|---|
第一問 | 空欄補充問題 | 20点 |
第二問 | 個別論点問題 | 20点 |
第三問 | 総合問題 | 60点 |
大きな問題が3問で、それぞれの問題ごとに配点箇所が数ヵ所あるという構成になっています。
100点満点で、1級の配点は以下のとおりです。
問題 | 形式 | 配点 |
---|---|---|
第一問 | 空欄補充問題 | 20点 |
第二問 | 個別論点問題 | 15点 |
第三問 | 個別論点問題 | 15点 |
第四問 | 総合問題 | 50点 |
大きな問題が4問で、それぞれの問題ごとに配点箇所が数ヵ所あるという構成になっています。
法人税法能力検定試験の出題内容
法人税法能力検定では、
- 法人税法のしくみ
- 益金の額と損害の額
- 法人の会計処理
- 青色申告制度
- 法令等
- 基本原則
- 総則
- 同族会社
- 微税方式
などの内容について出題されます。受験する級が上がるにつれて、試験問題のレベルも上がります。
特に、1級は選択式ではなく記述式なので、漢字の書き間違いにも気をつけましょう。
法人税法能力検定の合格率・合格ライン
法人税法能力検定の合格ラインは、どの級でも100点中70点以上です。
合格率は他の資格と比べて高めとなっており、しっかり試験対策をしておけば手の届く資格であると言えます。
- 3級:85.5%
- 2級:56.5%
- 1級:40.6%
上の合格率はそれぞれ、第107回から第112回までの平均値を元に算出しています。
法人税法能力検定の合格率一覧
これまでに行われた法人税法能力検定5回分の合格率を、以下の表にしました。
実施年月 | 実施回 | 3級 | 2級 | 1級 |
---|---|---|---|---|
'23年5月 | 第112回 | - | - | 30.09%(113人) |
'23年2月 | 第111回 | 79.37%(606人) | 52.53%(554人) | - |
'22年10月 | 第110回 | 81.21%(495人) | 26.94%(594人) | 39.87%(153人) |
'22年5月 | 第109回 | - | - | 8.18%(110人) |
'22年2月 | 第108回 | 89.27%(522人) | 79.58%(377人) | 58.40%(262人) |
※合格率横のかっこ内は、実際に受験した人の数です。
決して簡単な試験ではない!
ただ、法人税法能力検定の合格率が高いのは、必ずしも試験が簡単だからということではありません。
受験者の全体数が少ないうえ、税理士を目指す人や経理の経験がある人、または簿記の資格を持っている人など、ベースとなる知識を持った人が受験者の多くを占めるため、合格率が上がっていると言えます。
実際に過去問題を解いた人が、法人税法能力検定が思いのほか難しくて驚いたという話もあるので、合格率が高くても油断は禁物です。
法人税法能力検定の勉強法
ここでは、法人税法能力検定の勉強法についてご紹介します。独学はできるのか、どうやって勉強すると効果的なのかを解説しましょう。
法人税法能力検定試験は独学可能?
法人税法能力検定は、独学で臨む人が多いです。実務経験や税法に関する知識量の違いによって勉強にかかる時間は変わってきますが、試験問題は基本がわかっていれば、ある程度答えられるようになっています。
個人差はありますが、入念に準備して試験に取り組めば、法人税法能力検定は決して手の届かない資格ではありません。
公式テキストは1冊を繰り返し読もう!
法人税法能力検定の公式テキストは、清文社出版が発行している「演習法人税法(¥2,300+税)」です。随所に演習問題、巻末には総合演習問題もついています。
公式テキスト「演習法人税法」は基礎的なことを網羅していて学びやすく、資格を取った後でも役に立つと好評です。
試験は、毎年4月30日時点で施行されている法令等をもとに出題されます。それに従って改訂されるので、受験年度に合わせて新しいテキストを使いましょう。
ほかにも創成社の「ベーシック税務会計」など、法人税法能力検定のテキストや問題集は各社から出版されているため、説明などのわかりやすいテキストを選んで学習することをおすすめします。
また、テキストはよく選んだ上で1冊と決めて、それを何度も読み込むことです。「1冊では不安だから」と別のテキストを読み比べるのは良くありません。
過去問演習は重要!
法人税法能力検定の過去問題集は全経から販売されていますが、時期によって売り切れている場合もあるため、注意しましょう。
過去8回分の過去問を掲載している問題集のほか、全経では書籍未収録分のPDF版過去問題を販売しています。詳細は、公式サイトでご確認ください。
過去問を使うと、試験でどのような問題がよく出るのかという傾向がつかめます。重要なポイントが押さえやすくなるので、繰り返し活用しましょう。
法人税法能力検定試験では過去問と同じパターンの問題が出題されやすいことから、過去問演習を何度も行うことは重要です。
特に、計算問題では過去問の数字を変えて出題されることも多いので、たくさん解いて慣れておきましょう。
計算問題は部分点がもらえる
法人税法能力検定試験の計算問題は、簿記検定などのように「ひとつ間違えるとすべての計算が合わなくなって点数がもらえない」ということはありません。
減価償却などといった項目別に配点し、金額の合っているところには加点されるためです。
部分点がもらえるので、完璧に答えようと身構える必要はありません。時間がかかっても諦めず、わかるところだけでも金額を書き込み、少しでも得点を増やすようにしましょう。
法人税法能力検定の実用性
ここでは、法人税法能力検定が実際の仕事にどれだけ生かせるのか、また、関連性の高い税理士試験について解説しましょう。
法人税法能力検定を生かした仕事内容
税務検定から分かれた法人税法能力検定をはじめとする資格で学んだ内容は、実際に企業の経理部や税理士事務所などの財務で生かせます。
仕事内容を挙げると、税務署に提出する書類の作成や手続きをはじめ、課税所得金額の計算、帳票作成、損益計算といった、会計実務に必要な経理処理や分析などです。
法人税法能力検定試験は資格が取れたら終わりではなく、実務にとても役立つので、将来財務関連の仕事に携わりたい方にぜひおすすめします。
2級以上はキャリアアップにつながる
経理や財務部門への就職を考えている場合、企業に法人税法能力検定の資格を持っているとアピールするには、2級以上を取得しておきましょう。
経理をすでに担当している方は、法人税法能力検定試験で自分の仕事内容をより詳しく把握してスキルアップでき、税法のスペシャリストとして実務を行えます。
また、企業によっては、昇給や昇進などの評価に繋がることもあります。
税理士試験受験の足掛かりとなる
税理士は、顧客となる企業などの代わりに税務書類の作成や申告を行う、税金のプロです。
税理士になるためには税理士試験を受ける必要があります。その際、選択科目の税法に属する科目で、法人税法か所得税法のどちらかを必ず選ばなければなりません。
法人税法能力検定は、税理士試験のために法人税分野を学んでいる人が実力を測るときにも役立つ試験です。
同じように所得税法や消費税法も税理士試験の選択科目に入っているので、それぞれの勉強内容を生かすことができます。
法人税法能力検定の試験日程・会場・申し込み方法
最後に、法人税法能力検定の試験日程や会場、申し込み方法といった基本情報をご紹介します。申し込みの際には意外な注意点もありますので、ここで確認しておきましょう。
法人税法能力検定の基本情報
法人税法能力検定は年2回実施されますが受験する級によって時期が異なります。1級は5月と10月、2・3級は10月と2月となります。試験会場は、全国経理教育協会が指定する全国各地の専門学校です。
法人税法能力検定試験の日程は次のとおりです。
実施回 | 実施年月日(曜日) |
---|---|
第113回 | 2023年10月29日(日) |
第114回 | 2022年2月4日(日) |
※開始時間は試験会場によって違う場合があるため、受験票で確認しましょう。
制限時間は2級・3級が1時間、1級は1時間30分です。
法人税法能力検定の申し込みは、全国経理教育協会の公式サイトで行います。
検定に申し込むときは、公式サイトでメールアドレスを登録して、IDとパスワードを取得する必要があります。
発行されたIDとパスワードを使ってマイページにログインして、検定一覧から法人税法能力検定を選んで申し込みましょう。
申し込み後には受験料を支払い、受験票をマイページで印刷し、試験当日に持っていくのを忘れないように注意しましょう。受験票の印刷は、試験実施日の2週間前からできます。
法人税法能力検定の合否は試験日から1週間以内にマイページで確認できるので、IDとパスワードを紛失しないように注意しましょう。検定合格者には合格証書も届きます。
早めに試験に申し込もう!
法人税法能力検定試験の申込期間は下の表でわかるように、約1ヶ月間あります。
実施回 | 申込期間 |
---|---|
第113回 | 2023年9月4日~10月2日 |
第114回 | 2023年12月11日~2024年1月8日 |
しかし、この資格の場合は、受けると決めたら申込期間の初日に申し込んでも決して早すぎることはありません。
なぜなら、受験者の少ないマイナーな資格であるせいか、試験会場が限られている上、会場の規模も大きくないためです。
アクセスの良い会場はすぐに満員となり、受付も早期に終了します。ぜひ、早めに申し込みを済ませておきましょう。
法人税法能力検定に受験資格はある?受験料は?
法人税法能力検定試験には受験資格はないので、学歴や国籍などを問わず、誰でも受験できます。
また、自分の実務経験や知識のレベルに合わせて受験できるため、2・3級を飛ばして1級だけ受けることも可能です。
法人税法能力検定の受験料は税込で、以下のとおりです。
- 3級:¥2,300
- 2級:¥2,700
- 1級:¥3,500
受験料の支払いは、コンビニ決済・ペイジー・ネットバンキング・クレジットカード・キャリア決済・プリペイドのどれかで行うことができます。
法人税法能力検定まとめ
法人税法能力検定についてまとめ
- 法人税法能力検定は、税務処理の実務で役に立つ資格である
- 履歴書などでアピールするなら2級以上を取得しよう
- 計算問題は部分ごとに採点されるため、わかる箇所だけでも埋めよう
今回は、法人税法能力検定について掘り下げてみましたが、いかがでしたか?法人税法能力検定だけではなく、同じく税務会計能力検定から分かれた所得税法能力検定や消費税法検定試験の勉強も、経理実務で役に立ちます。
また、税理士を目指す方にも、選択科目である法人税法をどの程度理解できているのか把握するのに適した資格です。
ぜひ、法人税法能力検定を足がかりに、経理のスペシャリストを目指しましょう。