所得税法能力検定ってどんな資格?難易度・過去問・資格の実用性まで全て解説!
経理や財務の知識・技術をはかる資格はたくさんあります。その中の一つが、所得税法能力検定です。
所得税法能力検定は、経理や会計に関わる実務に役立てられるだけでなく、就職や転職にも活かせます。ここでは、所得税法能力検定のメリットや資格試験としての難易度、受験方法等を解説します。
所得税法能力検定についてざっくり説明すると
- 所得税の基本処理の知識や処理能力が身につく資格
- 経理に関係した部署や事務所に所属している方や、自営業の方が多く受けている資格
- 受験資格がなく、難易度もそれほど難しくないため、挑戦しやすい
- 実務はもちろん、就職や転職にも役立つ
所得税法能力検定ってどんな資格?
所得税法能力基本検定はその名前の通り、所得税の基本処理知識や実務での応用的な税務処理等が出来る力を証明する検定 です。
具体的には、以下の知識や書類の処理能力が身に付けられます。
- 源泉徴収
- 確定申告の基本的な考え方
- 個人事業主が自分で確定申告を行うこと
- その他税務署への提出書類作成等
内容を見ると分かりますが、個人や企業が所得税に関する処理を行う時に必要な知識や技術が身につきます。
そのため、経理に関連した仕事に就いている方や、個人事業主の方がスキルアップや税対策の一環として挑戦しています。
所得税法能力検定の主催団体
所得税法能力検定は 全国経理教育協会(略称:全経)が主催する能力検定です。
全国経理教育協会は簿記検定を行っている団体の一つで、経理やビジネスマナー等、企業で働く上で必要な力を身につけ、証明できる資格を多数主催しています。
所得税法能力検定も、その一つです。この資格の前身として1968年から行われていた「税務会計能力検定試験」があります。2012年を迎えた時に、この税務会計能力検定試験は、3つの検定試験に区分されるようになりました。
税務会計能力検定試験から生まれた資格試験
3つの検定試験の種類は、以下の通りです。
- 所得税法能力検定試験
- 法人税法能力検定試験
- 消費税法能力検定試験
所得税法能力試験は元の試験の内、所得税に関する部分が独立して今の形になっています。
後の2つの資格試験である法人税法能力試験と消費税法能力検定試験も、税やその処理に関わる知識や技術を得られる資格です。
法人税法能力検定試験&消費税法能力検定試験
残り2つの試験の内容は以下の通りになります。
- 法人税法能力検定試験 法人税の基本や企業内の税務処理の知識や技術があることを証明できる
- 消費税法能力検定試験 消費税の基本や、会計処理時の消費税の取り扱いに関する知識や技術があることを証明できる
税務署へ提出する書類の作成や手続き・実務の応用としての税務処理等、どちらの資格試験も企業で行う経理の仕事に役立ちます。
所得税法能力検定の実用性
所得税法能力検定試験は、実用性の高い資格です。資格試験で得た知識や技術が活きるポイントを解説していきます。
所得税法能力検定を生かした仕事内容
資格試験で得た知識が一番活用できる職場としては、企業の経理課や税理士事務所等、経理に関わる職場があげられます。
所得税は財務に深く関わる税金ですから、こうした職場で行う日常的な業務全てで活用できるのです。具体的には、以下のシーンがあげられます。
- 税務署への提出書類の作成
- 確定申告に関連した業務や作業
- 帳票作成
どれも経理の仕事で日常的に行う業務です。資格試験で得た知識や技術があれば、これらの業務をスムーズにこなし、時にはその内容を分析できるようになります。
個人事業者も生かすことができる
所得税法能力検定を活かせるのは、企業や事務所に勤める方だけではありません。 個人事業主の方にも役立ちます。
個人事業主の場合、確定申告等の処理は、税理士にお願いするか自分や処理をするかのどちらかになります。
所得税法能力検定を通して税務の知識があれば、お金を払って税理士に依頼しなくても、自分の力で確定申告の処理を行えるようになります。
資格取得で就職・転職に繋がる
所得税法能力検定2級は、企業の経理や財務部門に良いアピールとして活用できます。
簿記等の会計に関わる資格に加えてこの資格を取得すれば、他の応募者との違いを生み出せるのです。
就職や転職を考えていなくても、資格試験を通して得た知識や技術は、スキルアップやキャリアアップにつながります。
実際、所得税法能力検定を昇給や昇進の条件にしている企業も存在します。
税理士試験受験に役立つ
税理士は会計系資格における高難易度資格であり、会計のスペシャリストです。資格試験や実務では、当然税の申告や書類作成の代行、それに関連した問題を解いていきます。
税理士試験の問題の中には選択科目があるのですが、この科目の中に、所得税または法人税の科目があります。所得税法能力検定に挑戦しておけば、税理士試験の試験対策もできるのです。
もちろん、これは法人税法能力試験や、消費税法能力試験にも同じことが言えます。
所得税法能力検定の難易度
資格試験や就活・仕事と幅広い所で知識や技術を活かせる所得税法能力検定ですが、試験の難易度や出題形式、その内容はどの様なものなのでしょうか。
次は資格試験の内容について解説していきます。
所得税法能力検定試験の出題形式
所得税法能力検定試験の出題形式ですが、全て 筆記試験となります。試験時間は受ける級によって違います。各級の試験時間は以下の通りです。
級 | 試験時間 |
---|---|
3級 | 60分 |
2級 | 60分 |
1級 | 90分 |
また、どの級でも共通して以下の形式で問題が出題されます。
- 文章問題
- 仕分問題
- 計算問題
特に計算問題では複雑な計算が出題されることもあるので、ある程度面倒な計算にも慣れておく必要があります。
所得税法能力検定の出題内容
次に出題内容ですが、所得税に関係した以下の科目から問題が出題されます。この科目に関連した問題が、先程の出題形式で出題されます。
- 所得税法の仕組み
- 各種所得の計算問題
- 事業所得の金額の計算
- 会計処理給与所得の金額の計算方法
- 青色申告制度
- 法令
- 総則
- 居住者の納税義務
- 源泉徴収
当然ですが、級が上がればその分出題される問題の難易度も上がっていきます。 これだけの科目を学習していくのは大変ですが、気を抜かずに取り組みましょう。
所得税法能力検定の合格率・合格ライン
次に所得税法能力検定の合格率や合格ラインを解説していきます。
所得税法能力検定の合格ラインは 100点中70点です。合格率は以下の通りになります。
級 | 合格率 |
---|---|
3級 | 80~90% |
2級 | 80~90% |
1級 | 60% |
合格率を見ると、どの級もそれほど難易度が高くないように見えます。しかし、だからといって油断はできません。
そもそも、所得税法能力検定は合格率の母数となる受験者の数が少ない検定です。母数が少ないために、合格率も高くなっています。
合格率は高いですが、誰でも合格できるほど簡単な検定ではありません。
所得税法能力検定の合格率一覧
参考として、過去の検定試験の合格率を表にまとめました。合格率の隣に記載している受験者数も一緒にご覧下さい。
実施日時と試験回 | 3級 | 2級 | 1級 |
---|---|---|---|
2020年2月実施 第103回 | 90.98%(643人) | 83.26%(442人) | 60.70%(201人) |
2019年10月実施 第102回 | 81.37%(1,063人) | 89.36%(799人) | 71.04%(259人) |
2019年2月実施 第101回 | 90.54%(740人) | 79.96%(469人) | 61.06%(226人) |
2018年10月実施 第100回 | 87.52%(1,146人) | 89.23%(808人) | 69.78%(268人) |
合格率と受験者数を見ると、同じ級でも受験者数によって違いがあります。また、1級は他の級に比べて受験者数が少ないのにもかかわらず、合格率が60~70%前後です。
実際の合格率と受験者数を見ると難易度はそれほど高くなくても、気を抜くと不合格の可能性が高まる試験だということが分かります。
所得税法能力検定の勉強法
気を抜くと不合格の可能性が高まってしまう所得税法能力検定ですが、そうやって勉強を進めていけばいいのでしょうか。
ここではおすすめの勉強法について紹介していきます。
所得税法能力検定の勉強法は?独学は可能?
一般的な方法としては、テキストや過去問を購入して独学で勉強するスタイルが多いです。
実務経験や予備知識によって勉強の難易度や勉強量は大きく変わりますが、多くの人が独学で試験に取り組んでいます。
所得税法能力検定は税理士試験等とは違い、初心者でも取り組みやすい難易度の試験です。勉強への取り組みはそれほど難しくないので、気後れせずに挑戦してみましょう。
公式テキスト・問題集
所得税法能力検定は、公式テキストが存在しています。清文社出版から販売されている 「演習所所得税法」(2,200円+税) です。
検定試験に必要な基礎的な内容が網羅されており、学びやすいテキストです。毎年改定されているので、購入の際は一番新しい版を購入しましょう。
この他にもテキストや問題集が色々な出版社から販売されています。また全国経理教育協会の所得税法能力検定のページでは、 eラーニング動画を公開していますので、これらの教材も合わせてご活用下さい。
過去問は存在する
資格試験勉強では、過去問集を解いて対策をするのが一般的です。この 過去問集も、全国経理教育協会のホームページでPDFの形で販売 されています。全部で8回分あるので、幅広い問題の対策が可能です。
過去問は頻出問題の把握や問題の重要ポイントを理解するのに有効です。 これは所得税法能力検定でも変わらないので、出来るだけ多くの過去問を解き試験対策に役立てましょう。
所得税法能力検定の試験日程・会場・申し込み方法
次は所得税法能力検定の試験に関わる内容を解説していきます。
試験日程や会場、申し込み方法などは試験を受ける上で重要なポイントなので試験勉強にのみ力を入れず、こちらも忘れずにチェックしておきましょう。
所得税法能力検定の基本情報
所得税法能力検定は 年2回行われます。 開催月は2月と10月です。例えば、2020年度の検定日程は以下の日程で実施されました。
- 第104回試験 2020年10月25日(日)
- 第105回試験 2021年2月7日(日)
どちらも日曜日に開催されるので、申し込む回に合わせてスケジュールを調節しておきましょう。
また、試験1週間後にはインターネットで検定結果を確認できます。 試験を受けた後は、合否の確認も忘れずに行って下さい。
申し込みと会場について
所得税法能力検定の申し込みは、インターネットで行います。全国経理教育協会の公式ホームページから申し込みの処理をして下さい。
試験主に全国各地にある専門学校で行われます。
しかし専門学校の教室を借りて行うので収容できる受験生数に限界があるため、申し込みは出来るだけ早めに済ませるようにしましょう。
受験準備の注意点
先程も触れましたが、受験会場に専門学校を使うため、試験会場に収容できる受験生数に制限があります。
申し込みが遅いと通いにくい会場へ案内される可能性が高くなるので、申し込みは早目に済ませましょう。
試験を受けるには受験票が必要ですが、 受験票は自分で印刷しなくてはなりません。
プリンターが無い場合は、コンビニ等のプリントサービスを利用する形になります。受験票の準備も忘れないようにしましょう。
また申し込み時には、氏名等を入力しますが間違えないよう申し込む前に一度確認しておきましょう。
合格後、合格証書の名前や生年月日が間違っていた場合、修正にお金がかかります。 余計な費用を出さないためにも、入力内容は確認しておきましょう。
所得税法能力検定に受験資格はある?
所得税法能力検定には受験資格はなく誰でも受験できる検定試験です。
しっかり試験対策をすれば、合格もそれほど難しくない試験です。経理や財務の実力を高めるのに丁度良い検定試験といえます。
所得税法能力検定の受験料
所得税法能力検定試験を受けるには受験料を支払う必要があります。それぞれの級に応じた受験料は以下の通りです(いずれも税込)。
級 | 受験料 |
---|---|
3級 | 2,300円 |
2級 | 2,700円 |
1級 | 3,500円 |
受験料の支払いや申し込みでは、受験級の変更や取り消し、払い戻しはできません。入力や振り込みの際は、間違えが無いようしっかり確認するようにして下さい。
所得税法能力検定まとめ
所得税法能力検定まとめ
- 所得税法能力検定は、経理や会計を処理する能力を高められる検定
- 受験資格がなく、難易度も受けやすいレベルだが気を抜くと不合格の可能性もある
- 勉強は独学が基本で、テキストや過去問集の活用がおすすめ
- 受験申込の手続きは早めに、正確に行うよう気を付ける
所得税は実に様々な所で出てくる税です。仕事をしている時はもちろん、何気ない生活の中でも触れる機会があります。
所得税法能力検定は、そんな所得税の知識や技術を身に付けられる検定試験です。
仕事で経理や会計に関わっている方はもちろん、それ以外の方にもおすすめの検定試験です。興味が湧いた方は、ぜひ一度、検定試験に挑戦してみて下さい。